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第2章 火事
2 とにかく、現状を何とかせな!!
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「父君の死後すぐに…一門の大人たちが、利権を求めてギリアム様に、纏わりつき始めて…。
私とギリアム様は、その対処にとにかく忙しかった…。
それが一段落したころ…ギリアム様が酷い目にあっていた私兵たちの事を言い出し…、
専用の宿舎に、私と共に行ったのですが…。
全員すでに…死後大分経過していました」
言葉が無いよ…本当に…。
「死因は?」
私の代わりに…ジョーカーが聞いてくれた。
「ヒガンザという毒草を間違えて食したことによる、中毒死…と医師は判断しましたがね。
おそらく…毒殺でしょう」
へえ…毒殺としては、かなり珍しいのを使ったな。
「……そのころは…ジョノァドが普通に、ファルメニウス公爵家に出入りできたから…か」
スペードの声は…かなり悲痛そうだ。
「ええ…証拠は何も…ありませんがね。
そもそも恩赦した私兵は…父君よりもジョノァドの指揮下に入っていると言っても、
過言ではありませんでしたから」
フォルト…責任感じてるっぽい。
「まあ…汚れ仕事をさせるには、最適だろうからな…」
ダイヤの声も…とても暗くて重い。
そもそも…ギリアム父の性格の酷さを考えれば…こんな事は当たり前にあったのだろう。
どこか…酷い人間だと聞いても、本人に会ったことが無いから、実感がわかなかったのかも
しれない。
私の心は…嫌でも悲痛さに満ちたんだろう。
「……奥様は、優しすぎます!!」
ジェードが…いきなり口を開いた。
「確かに扱いは酷いかもしれません…ですが、その人間達は多かれ少なかれ、罪を犯して
そうなったんです。
奥様が必要以上に、気に病む必要はないですよ。
ましてその当時…奥様はここにいらっしゃらなかったんですから」
感情をむき出しにするジェードって…、なかなか見れないんだよね。
それだけ…私の事、心配してくれているんだなぁ。
「ありがとう…ジェード」
私は…気持ちが少し楽になった。
「そうですよ、奥様!!」
スペードがジェードに続いた。
「オレたち…恵まれすぎているの、ちゃんとわかってますから!!
自分がいなかった時の事でまで、苦しまないでくださいよ!!」
「そうですよ!!」
口々に言ってくれる…ああ、ありがたい。
そんなみんなに、ひとしきりお礼を言いつつ、私は改めてフォルトの前に行き、
「フォルト…私じゃなく、アナタの方が、ずっと苦しかったでしょう…。
ギリアムと一緒で…アナタはこういう事が大嫌いな人だから…」
私の言葉に…フォルトは下を向いたまま、奥歯を噛みしめているようだ。
「でも…だからこそ、アナタに心からお礼を言いたい」
私の言葉に、思わず顔を上げた。
「そんな状況にもめげずに…、逃げ出さずに、よくぞギリアムを守ってくれました…。
当代のファルメニウス公爵夫人として、御礼申し上げます」
私はフォルトの前で…今までで一番綺麗な…礼の形をとる…。
だって…紛れもない私の本心だったから。
「おやめください、奥様…。当然の事をしたまでです」
フォルト…涙腺が緩んじゃったみたいで、手で目頭を押さえている。
「それができない人が、いかに多いかわかっているから、あえてお礼を言いたいの。
他の一門がそうだったように…」
ねぇ…フォルト…。
私さっきまで凄ーく辛かったんだよ。
でも…アナタの方がもっと辛かっただろう…って思ったら、しっかりしなきゃ…ってなった。
だから…私を十分助けてくれてるよ。
私は…少しは働くようになった頭で、
「でも…ラディルス達の目的は…本当にこれで終りなのかな…」
「どういうことです?」
考えたことを言った。
「ギリアムが…言っていたんだ。
シュレンソとライラの遺体は…全部こちらで処理して、一切の情報は敷地の外に漏らしていない。
なのに…まるで見てきたように、2人の死因を話していたって。
でもそれは…ギリアムが記憶しているものとは、全く別…。
一体何が起こっているんだか…」
「でも…人は信じたいものを信じる生き物ですから」
ジェードが言うのだが、
「ん~、でも、ギリアムは…。
物凄く信頼している情報源が彼らにはあって…、信じ込んでるらしいの」
「だったら…だました人間が、たいしたもの…じゃないか?」
スペードが…みんなを代表したように言う。
ラディルス達は…それなりに力があるって、言っていたからな…。
「でも…だました人間がいるとしたら…。
その人間の正体や意図が…、全くつかめないから、嫌なのよ…。
なにが目的なんだろう…。
今更…過去の私兵の事なんて、ほじくり出してどうするのか…。
ラディルス達はそれが目的かもしれないけど…ね」
何だか…パズルのピースだけじゃなく、複雑に絡み合った糸がもつれまくって…さらに状況を
複雑にしているような気がする。
そもそも…敵は一つなんだろうか?
ファルメニウス公爵家は…ギリアムは…もてはやされるが、その分敵も多い。
何も手が出せないだけで、実は…虎視眈々と狙っている者もいる。
どこか一つに綻びが生じれば…そこめがけて、別の勢力が台頭してきても、おかしくない。
私が…そんなことを考えていると、
「奥様!!大変でございます!!」
エマが部屋に…飛び込んできた。
「エマ!!どうしたの!!」
血相変えて駆け込んできたエマ…何が起こったのか、予想がつかない。
とりあえず…呼吸困難になりそうなほど、呼吸が荒いエマの背中を、私はさすった。
「火…火が…」
「え?火事!!どこで?みんなを消火に…」
「い、いえ!!ファルメニウス公爵家ではありません!!」
ウチの敷地内じゃなかったっポイ…。
ああ、良か…ねぇよ!!
どっかが火事って事じゃんよ!!
「街が…ファルメニウス公爵家の隣の町が、火の海なんです!!」
はいぃぃ―――――――――――っ!!
「お、王立騎士団は!!」
王立騎士団はもっぱら警察の役割だが…この世界に消防署というものが無いため、大規模火災の
時は、手伝う…というか中心になるのが鉄則。
小さなぼやや、小規模火災だと、自警団の役割になるんだけどね。
「当然もう、動いています…しかし…、問題はそこではありません!!」
その時私はハッとなった。
「この状況下で…避難民のために、庭を開放しなきゃいけない…か…」
「!!!!」
皆の顔が…一気に固まり…戦慄が走っているのが、よくわかる。
ラディルス達がこの機に…入ってこないはずが無いからね…。
「奥様…いかがされますか?」
フォルトが苦し気に聞いてくる。
ギリアムがいない以上、決定権は私にある。
私の答えは一つだった。
「開放して!!
エマは炊き出しの準備!!
フォルトは…防寒具をありったけ用意!!テントもね!!」
「はい、奥様!!」
2人とも…顔がキリッとした…。
私の判断に…身を委ねてくれる気だ。
「フィリー軍団!!
ものすごく大変になるけど…、覚悟して!!
己の身の安全のために、大多数の人間を犠牲にすることはしない…。
それが私とギリアムだから!!」
今は冬…いつ雪が降ってきてもおかしくない!!
着の身着のままで晒されたら…死人が出てもおかしくない。
「承知いたしました!!奥様!!」
皆も覚悟を決めてくれたみたい…良かった。
予想通り…ファルメニウス公爵家には、沢山の避難民が押し寄せてきた…。
一応貴族の屋敷は…他にないワケじゃないんだけど…、ギリアムの…いや、私も含め両方の
名声が相まって、殆どみんなこっちに来たんじゃないか…と思うくらいの量の人たちが
押し寄せちまった…。
…………………。
だから、有名になることが良い事じゃないんだっっつの!!
避難現場…もといファルメニウス公爵家の庭は、文字通り戦場のごとき忙しさ。
物資は沢山備蓄しているとはいえ…この人数を養うのだから、フィリアム商会にも大号令を
かけたのは言うまでもない。
手伝いの人間を、フィリアム商会からも派遣してもらったし、総括部のメンバーも駆けつけて
くれた。
医療施設は…ケガや火傷を負った人だけでなく、病気の人まで押し寄せたから、もう本当に…
目まぐるしいの一言。
私も当然手伝った。
危険だろうが、今はそんな事言ってられない!!
フィリー軍団はもちろん近くにいるし。
私は…どうしようもない不安と…ごちゃごちゃの頭の中に、風を入れるがごとく、動いて動いて
動きまくった。
考えたってわからないことは、今は考えない。
それよりも…困っている人たちに集中しよう。
雲行きの怪しい空は…雪が降る可能性を、存分にこちらに与えた。
「雪が降った時の対策をして!!
それまでに…できるだけテントを張るわよ!!」
私の号令で…サクサク動く人間達。
ああもう!!
目まぐるしすぎるっつの!!
平和くれよぉ…。
私とギリアム様は、その対処にとにかく忙しかった…。
それが一段落したころ…ギリアム様が酷い目にあっていた私兵たちの事を言い出し…、
専用の宿舎に、私と共に行ったのですが…。
全員すでに…死後大分経過していました」
言葉が無いよ…本当に…。
「死因は?」
私の代わりに…ジョーカーが聞いてくれた。
「ヒガンザという毒草を間違えて食したことによる、中毒死…と医師は判断しましたがね。
おそらく…毒殺でしょう」
へえ…毒殺としては、かなり珍しいのを使ったな。
「……そのころは…ジョノァドが普通に、ファルメニウス公爵家に出入りできたから…か」
スペードの声は…かなり悲痛そうだ。
「ええ…証拠は何も…ありませんがね。
そもそも恩赦した私兵は…父君よりもジョノァドの指揮下に入っていると言っても、
過言ではありませんでしたから」
フォルト…責任感じてるっぽい。
「まあ…汚れ仕事をさせるには、最適だろうからな…」
ダイヤの声も…とても暗くて重い。
そもそも…ギリアム父の性格の酷さを考えれば…こんな事は当たり前にあったのだろう。
どこか…酷い人間だと聞いても、本人に会ったことが無いから、実感がわかなかったのかも
しれない。
私の心は…嫌でも悲痛さに満ちたんだろう。
「……奥様は、優しすぎます!!」
ジェードが…いきなり口を開いた。
「確かに扱いは酷いかもしれません…ですが、その人間達は多かれ少なかれ、罪を犯して
そうなったんです。
奥様が必要以上に、気に病む必要はないですよ。
ましてその当時…奥様はここにいらっしゃらなかったんですから」
感情をむき出しにするジェードって…、なかなか見れないんだよね。
それだけ…私の事、心配してくれているんだなぁ。
「ありがとう…ジェード」
私は…気持ちが少し楽になった。
「そうですよ、奥様!!」
スペードがジェードに続いた。
「オレたち…恵まれすぎているの、ちゃんとわかってますから!!
自分がいなかった時の事でまで、苦しまないでくださいよ!!」
「そうですよ!!」
口々に言ってくれる…ああ、ありがたい。
そんなみんなに、ひとしきりお礼を言いつつ、私は改めてフォルトの前に行き、
「フォルト…私じゃなく、アナタの方が、ずっと苦しかったでしょう…。
ギリアムと一緒で…アナタはこういう事が大嫌いな人だから…」
私の言葉に…フォルトは下を向いたまま、奥歯を噛みしめているようだ。
「でも…だからこそ、アナタに心からお礼を言いたい」
私の言葉に、思わず顔を上げた。
「そんな状況にもめげずに…、逃げ出さずに、よくぞギリアムを守ってくれました…。
当代のファルメニウス公爵夫人として、御礼申し上げます」
私はフォルトの前で…今までで一番綺麗な…礼の形をとる…。
だって…紛れもない私の本心だったから。
「おやめください、奥様…。当然の事をしたまでです」
フォルト…涙腺が緩んじゃったみたいで、手で目頭を押さえている。
「それができない人が、いかに多いかわかっているから、あえてお礼を言いたいの。
他の一門がそうだったように…」
ねぇ…フォルト…。
私さっきまで凄ーく辛かったんだよ。
でも…アナタの方がもっと辛かっただろう…って思ったら、しっかりしなきゃ…ってなった。
だから…私を十分助けてくれてるよ。
私は…少しは働くようになった頭で、
「でも…ラディルス達の目的は…本当にこれで終りなのかな…」
「どういうことです?」
考えたことを言った。
「ギリアムが…言っていたんだ。
シュレンソとライラの遺体は…全部こちらで処理して、一切の情報は敷地の外に漏らしていない。
なのに…まるで見てきたように、2人の死因を話していたって。
でもそれは…ギリアムが記憶しているものとは、全く別…。
一体何が起こっているんだか…」
「でも…人は信じたいものを信じる生き物ですから」
ジェードが言うのだが、
「ん~、でも、ギリアムは…。
物凄く信頼している情報源が彼らにはあって…、信じ込んでるらしいの」
「だったら…だました人間が、たいしたもの…じゃないか?」
スペードが…みんなを代表したように言う。
ラディルス達は…それなりに力があるって、言っていたからな…。
「でも…だました人間がいるとしたら…。
その人間の正体や意図が…、全くつかめないから、嫌なのよ…。
なにが目的なんだろう…。
今更…過去の私兵の事なんて、ほじくり出してどうするのか…。
ラディルス達はそれが目的かもしれないけど…ね」
何だか…パズルのピースだけじゃなく、複雑に絡み合った糸がもつれまくって…さらに状況を
複雑にしているような気がする。
そもそも…敵は一つなんだろうか?
ファルメニウス公爵家は…ギリアムは…もてはやされるが、その分敵も多い。
何も手が出せないだけで、実は…虎視眈々と狙っている者もいる。
どこか一つに綻びが生じれば…そこめがけて、別の勢力が台頭してきても、おかしくない。
私が…そんなことを考えていると、
「奥様!!大変でございます!!」
エマが部屋に…飛び込んできた。
「エマ!!どうしたの!!」
血相変えて駆け込んできたエマ…何が起こったのか、予想がつかない。
とりあえず…呼吸困難になりそうなほど、呼吸が荒いエマの背中を、私はさすった。
「火…火が…」
「え?火事!!どこで?みんなを消火に…」
「い、いえ!!ファルメニウス公爵家ではありません!!」
ウチの敷地内じゃなかったっポイ…。
ああ、良か…ねぇよ!!
どっかが火事って事じゃんよ!!
「街が…ファルメニウス公爵家の隣の町が、火の海なんです!!」
はいぃぃ―――――――――――っ!!
「お、王立騎士団は!!」
王立騎士団はもっぱら警察の役割だが…この世界に消防署というものが無いため、大規模火災の
時は、手伝う…というか中心になるのが鉄則。
小さなぼやや、小規模火災だと、自警団の役割になるんだけどね。
「当然もう、動いています…しかし…、問題はそこではありません!!」
その時私はハッとなった。
「この状況下で…避難民のために、庭を開放しなきゃいけない…か…」
「!!!!」
皆の顔が…一気に固まり…戦慄が走っているのが、よくわかる。
ラディルス達がこの機に…入ってこないはずが無いからね…。
「奥様…いかがされますか?」
フォルトが苦し気に聞いてくる。
ギリアムがいない以上、決定権は私にある。
私の答えは一つだった。
「開放して!!
エマは炊き出しの準備!!
フォルトは…防寒具をありったけ用意!!テントもね!!」
「はい、奥様!!」
2人とも…顔がキリッとした…。
私の判断に…身を委ねてくれる気だ。
「フィリー軍団!!
ものすごく大変になるけど…、覚悟して!!
己の身の安全のために、大多数の人間を犠牲にすることはしない…。
それが私とギリアムだから!!」
今は冬…いつ雪が降ってきてもおかしくない!!
着の身着のままで晒されたら…死人が出てもおかしくない。
「承知いたしました!!奥様!!」
皆も覚悟を決めてくれたみたい…良かった。
予想通り…ファルメニウス公爵家には、沢山の避難民が押し寄せてきた…。
一応貴族の屋敷は…他にないワケじゃないんだけど…、ギリアムの…いや、私も含め両方の
名声が相まって、殆どみんなこっちに来たんじゃないか…と思うくらいの量の人たちが
押し寄せちまった…。
…………………。
だから、有名になることが良い事じゃないんだっっつの!!
避難現場…もといファルメニウス公爵家の庭は、文字通り戦場のごとき忙しさ。
物資は沢山備蓄しているとはいえ…この人数を養うのだから、フィリアム商会にも大号令を
かけたのは言うまでもない。
手伝いの人間を、フィリアム商会からも派遣してもらったし、総括部のメンバーも駆けつけて
くれた。
医療施設は…ケガや火傷を負った人だけでなく、病気の人まで押し寄せたから、もう本当に…
目まぐるしいの一言。
私も当然手伝った。
危険だろうが、今はそんな事言ってられない!!
フィリー軍団はもちろん近くにいるし。
私は…どうしようもない不安と…ごちゃごちゃの頭の中に、風を入れるがごとく、動いて動いて
動きまくった。
考えたってわからないことは、今は考えない。
それよりも…困っている人たちに集中しよう。
雲行きの怪しい空は…雪が降る可能性を、存分にこちらに与えた。
「雪が降った時の対策をして!!
それまでに…できるだけテントを張るわよ!!」
私の号令で…サクサク動く人間達。
ああもう!!
目まぐるしすぎるっつの!!
平和くれよぉ…。
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