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第2章 火事
6 ファルメニウス公爵家の考え方
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私がみんなと合流し、アジトで一息ついているころ…。
ファルメニウス公爵家の本宅では…。
「キミたちは…一体何を考えているんだ?」
ムガルとハリスが、ギリアムの書斎に呼び出されていた。
傍にはフォルトと…もちろん護衛騎士の大半が一緒にいた。
「フィリー軍団が全員どうしても不在にせねばならぬゆえ…、以前から志願していたキミらを
護衛に付ける事、フィリーは了承したんだ…。
それなのに…」
ギリアムの声…めっちゃ怒声になってる…。
「敵にいいようにあしらわれて、フィリーを守るどころか、あまつさえ足を引っ張るなど、
言語道断だ!!」
私の言いたいこと…言ってくれているようなので、ありがたし。
「そ、そのようなことは、決して…」
2人は…かなり恐縮しているが、
「結果として敵の進行を許したら、言い訳など通じん!!
今まで通り…屋敷の見回りと、避難民の支援の仕事に戻れ!!」
ギリアムの怒りは…収まるところを知らない。
「つ…次こそは必ず…!!」
何とかすがろうとするが…、これは大変なマイナスだ。
なぜならファルメニウス公爵家では…。
「私は…雇う時に通達してあるはずだ。
ファルメニウス公爵家では、次…とは、しくじった瞬間から始まるのだ。
それで言えばお前たちは…2度も次を与えてもらいながら、さらにしくじった!!」
「え…」
2人は…何のことかわからないよう…。
こりゃ、ダメだぁ。
「まず…奴らが敵だとわかった時点で、速やかに確保するべきだったのに、それを怠った。
そしてその後…、フィリーに相談してくるものを、誰彼構わず威嚇した。
おかげでフィリーは…その人たちを落ち着けるために、余計な苦労をしたんだ。
しかも、一度誰かと変わるように言われたにもかかわらず、機会を与えろと言ってきかな
かった…。
主人が誰であるかを、全く分かっていない!!
本当だったら即解雇でもいいくらいだが…、今は少しでも人手が欲しいから…特別に…だ。
通常業務すら、陰りが見えるなら、本当に即解雇だからな!!」
「お前たちは…正直日々の比武の成績も、良くないしな…」
そう言われて、ムガルとハリスが、かなり前のめりになり、
「あ、あれは、比武とは…」
言おうとしたが、ギリアムのさらに激しい眼光に遮られる。
「これも雇用時、通達してあるはずだ!!
ファルメニウス公爵家での比武とは、騎士の決闘ではなく、戦場を基本としていると!!
戦場では…一対一で対決できる方が少ないし、矢や暗器はどこからでも飛んでくる!!
それに対処できないなら…解雇だとな!!」
2人は…青い顔で何も喋れなくなった。
ギリアムはため息つきつつ、
「キミらは以前言ったな。
罪人の私兵などより、自分たちの方が役に立つ…と。
それもあったから、今回キミらをフィリーの護衛としてつけてみたんだ。
だが結果は…キミらの方が、彼らよりずっと役立たずだ!!」
「それは!!いくら何でも!!」
「彼らはしっかりと、実績を残しているんだ!!」
ギリアムは書斎の机を、拳で思い切り叩く。
その音は…乾いた空気の中を、つんざくように切り裂いた。
「まず!!民衆の中に入っていた敵の間者…その大元をあれほど早く叩けたのは…、
ひとえに彼らの力だ。
彼らがわかりずらく隠してある、敵の本拠地を見つけ、隠し逃げ道にもあたりをつけ…、
塞ぐことによって、速やかに確保したんだ。
フィリーの元に戻ってきたジョーカーだって、直ぐに相手が敵だと見抜き、言葉巧みに
追い詰め、しっかりと確保しただろうが!!」
そこまで言うと、ギリアムは改めて鋭い目を彼らに向け、
「私は王立騎士団で犯罪者と接するから、よくわかっているが…。
本当の弱者と、弱者のフリをした悪人は…見分けるのがかなり難しいんだ」
「己の経験と鼻を効かせ…どちらであるかを判断する。
もしくは…言葉巧みに相手の言動の矛盾を突き、それに対し、どう言うか…。
そういった複雑な対応が、必要になってくるんだ。
王立騎士団の師団長たちや…それに類する人間達はそうやって、実績を残し、己の力を
証明して、その地位にいるんだ!!
それができないなら…下っ端仕事でいるしかない」
「特にフィリーは…フィリアム商会関係の仕事を、私に代わってやっている!!
そちらの交渉上手な人間達を…己の実力で認めさ、上に立っているんだ!!
交渉術というのはまさに…生き馬の目を抜く勢いで、情勢が変化する!!
その変化に対応できない側近など、私だって必要ない!!」
一気に…一息で言ってのけた…。
肺活量…すげぇ。
「それを踏まえた上で…挽回したいなら、出来るように頑張ることだ!!」
そこまで言ったギリアムは…フォルト含めた全員を、書斎から追い出した。
書斎を出た後、フォルトは2人に…、
「雇用時に通達した内容を忘れたなら、しっかりと読み直しておけ。
ギリアム様が次はないと言ったら、本当に次はない。
場合によっては、紹介状もなしで追い出される。
そういう職場だと言う事も、しっかり通達してあるはずだ」
これは…護衛騎士だけでなく、メイドのような使用人も同じ。
武のファルメニウス公爵家だからこそだろうが、すべからく戦場と同じ…と、判断されるのだ。
紹介状は…貴族社会では非常に効力を持つ。
だから…ファルメニウス公爵家の紹介状があると言うだけで、他の職場からは引く手あまただろう。
逆に…貴族の屋敷で働いていたにも関わらず、紹介状を出してもらえなかった…となると、
最悪不祥事を起こしたのではと、疑われるから…、いい職場への就職はかなり難しい。
ムガルとハリスは…かなり小さくなって、宿舎にもどっていったそう。
一方、フィリー軍団のアジトでまったりしている私は…、
「まあ、そんなような事を、ギリアムから言われていると思うからさ…。
私はもう少し後に帰るよ…」
お茶を飲みつつ、お菓子を食べて、のっぺりしている私…。
「まあ、ご当主様の眼はしっかりされているが、どうしたって環境が特殊ですからね…ここは」
ジェードは…長い分よくわかっている。
「まあ…身分の括りがここまで無い、貴族の家も珍しいよな…」
スペードは、貴族の家に出入りしていたから、予想がつくんだな。
「それもあるけどね…」
私は…お茶を一口。
「ファルメニウス公爵家ってさ…本当にブランド化してて、この家に勤めてる…ってだけで、かなり
自慢できるのよ…本当に倍率超高いし」
「それにギリアムの品行方正っぷりと、実力本位主義っぷりから…、身分どうこうより、実力で
見てもらえると思うから、下位貴族からの申し込みが後を絶たない。
実際、下位だろうが上位だろうが、実力があればとるわ」
「でもね…中に入って、実力を示し続けなければいけない…ってのが、言われていてもわかってない人、
多いのよね…」
「そう言うもんですか?」
クローバが不思議そうだ。
「ええ…、アナタ達も実際あっただろうけど、誰かと戦っている時に…横やりが入るでしょ?」
「ええ、大抵は」
シレっと答えてくれるってことは、やっぱりこいつ等雇って正解。
「騎士騎士した連中って…あれを予測できない事が、多いのよ」
「え~、何でですかぁ?
見えている敵だけじゃなく、トラップが仕掛けられている場合だってありますよぉ」
「そうね、ハート…。
まあ、さっきのクローバの話に通じるけど…、そもそも常時臨戦態勢…の意味を、はき違えている
人間が意外と多い…ってことよ」
「確かに騎士って…一対一の決闘で正々堂々と…ってイメージが強いですよね。
実際の戦闘なんざ、そんなの稀ですよ」
ラディルスに捕まった時のスペードだって…、袋叩きだったもんなぁ…。
「あはは、そうだね、ダイヤ…。
でもさ…ギリアムの同世代って…ギリギリ戦争を経験しなかったのが、結構いるの」
これはギリアムが…すでにいた正規兵と志願兵だけで、戦争を終わらせたことが大きい。
「だから…常時臨戦態勢ってのがそもそもどういう事か…ファルメニウス公爵家に入って初めて、
感じることも少なくない…。
あの2人…経歴を見る限りで、片田舎の有力貴族の出身者なのよ。
そして年齢による衰えで退職する人の伝手で入ってきた…」
「田舎育ちでも伝手でも、しっかり者は沢山いるけど…、あの2人はおそらく…使用人にかしずかれて、
日々安全な場所で…立派な騎士になることだけを、目指せばいい状況にいたのよ。
でもさ…ファルメニウス公爵家において、それはかなり…マイナスに働く」
「確かに…ここは雑用的なことが、かなり多いですからなぁ…」
ジョーカーは何だかいたずらっぽく、笑った。
「そ。
まず、今回の避難民についてだけど…護衛騎士達がかなり世話をしている。
物資を配ったり、場所の配備…あとは喧嘩の仲裁や、問題の解決…もちろん使用人やフィリアム商会関係も
やっているけど…ファルメニウス公爵家は基本、手が空いている人間が、やる!!が基本だからね。
おそらく実家じゃ…使用人や雑用係の仕事だったことを…、普通にやらされる」
私はお茶を…結構がぶ飲み。
喉乾くんだもん。
「そしてファルメニウス公爵家はその気質上…平民に対して横柄な態度は許されない。
実家では素っ気なく対応して許されたことを、一切許してもらえない。
あくまで自分と同列の人間として扱い、話を聞き、真摯に対応することが求められる」
「多少がなり立てられようが、武器を向けるどころか、威嚇するのさえもってのほか。
威嚇するなら、威嚇するだけの理由があったことを説明しなきゃだし、もし間違えたら自分で全責任を
取るのも当たり前」
「だからさっきみたいに、弱者に混じった悪人を見抜くための…複雑な交渉術と話術…自分の言った
ことや行動に対し…相手がどう反応するか。
それによって、次の自分の行動を180度変えるような、テクニックも求められる」
私はティーポットから、お茶を手酌し、またがぶがぶ。
「長くなったけど、ファルメニウス公爵家では…騎士の仕事だけしてれば認められることなんて、
まずない。
それ以外の力がかなり要求されちゃうのよ」
「あはは~、じゃあ、クローバは崖っぷちだねぇ~」
ハートがクローバの肩をバンバン叩きながら、笑っている。
「え~、オレ、頑張ってますよぉ、奥様ぁ!!」
何だか…涙目になっちゃったね…。
「あはは、大丈夫よ…。
精進するのは大事だけど…それぞれに求める役割が違うんだから。
騎士の能力をメイドに要求するのはおかしいし、その逆もまたしかり…でしょ?
私が求める、最低限度の基準を満たしているかどうか…、そこをクリアーした上で、他との調和と
能力を求める…ってことだからさ」
ありゃ…クローバの頭に?がいっぱい浮いてら…。
説明が必要だね…。
ファルメニウス公爵家の本宅では…。
「キミたちは…一体何を考えているんだ?」
ムガルとハリスが、ギリアムの書斎に呼び出されていた。
傍にはフォルトと…もちろん護衛騎士の大半が一緒にいた。
「フィリー軍団が全員どうしても不在にせねばならぬゆえ…、以前から志願していたキミらを
護衛に付ける事、フィリーは了承したんだ…。
それなのに…」
ギリアムの声…めっちゃ怒声になってる…。
「敵にいいようにあしらわれて、フィリーを守るどころか、あまつさえ足を引っ張るなど、
言語道断だ!!」
私の言いたいこと…言ってくれているようなので、ありがたし。
「そ、そのようなことは、決して…」
2人は…かなり恐縮しているが、
「結果として敵の進行を許したら、言い訳など通じん!!
今まで通り…屋敷の見回りと、避難民の支援の仕事に戻れ!!」
ギリアムの怒りは…収まるところを知らない。
「つ…次こそは必ず…!!」
何とかすがろうとするが…、これは大変なマイナスだ。
なぜならファルメニウス公爵家では…。
「私は…雇う時に通達してあるはずだ。
ファルメニウス公爵家では、次…とは、しくじった瞬間から始まるのだ。
それで言えばお前たちは…2度も次を与えてもらいながら、さらにしくじった!!」
「え…」
2人は…何のことかわからないよう…。
こりゃ、ダメだぁ。
「まず…奴らが敵だとわかった時点で、速やかに確保するべきだったのに、それを怠った。
そしてその後…、フィリーに相談してくるものを、誰彼構わず威嚇した。
おかげでフィリーは…その人たちを落ち着けるために、余計な苦労をしたんだ。
しかも、一度誰かと変わるように言われたにもかかわらず、機会を与えろと言ってきかな
かった…。
主人が誰であるかを、全く分かっていない!!
本当だったら即解雇でもいいくらいだが…、今は少しでも人手が欲しいから…特別に…だ。
通常業務すら、陰りが見えるなら、本当に即解雇だからな!!」
「お前たちは…正直日々の比武の成績も、良くないしな…」
そう言われて、ムガルとハリスが、かなり前のめりになり、
「あ、あれは、比武とは…」
言おうとしたが、ギリアムのさらに激しい眼光に遮られる。
「これも雇用時、通達してあるはずだ!!
ファルメニウス公爵家での比武とは、騎士の決闘ではなく、戦場を基本としていると!!
戦場では…一対一で対決できる方が少ないし、矢や暗器はどこからでも飛んでくる!!
それに対処できないなら…解雇だとな!!」
2人は…青い顔で何も喋れなくなった。
ギリアムはため息つきつつ、
「キミらは以前言ったな。
罪人の私兵などより、自分たちの方が役に立つ…と。
それもあったから、今回キミらをフィリーの護衛としてつけてみたんだ。
だが結果は…キミらの方が、彼らよりずっと役立たずだ!!」
「それは!!いくら何でも!!」
「彼らはしっかりと、実績を残しているんだ!!」
ギリアムは書斎の机を、拳で思い切り叩く。
その音は…乾いた空気の中を、つんざくように切り裂いた。
「まず!!民衆の中に入っていた敵の間者…その大元をあれほど早く叩けたのは…、
ひとえに彼らの力だ。
彼らがわかりずらく隠してある、敵の本拠地を見つけ、隠し逃げ道にもあたりをつけ…、
塞ぐことによって、速やかに確保したんだ。
フィリーの元に戻ってきたジョーカーだって、直ぐに相手が敵だと見抜き、言葉巧みに
追い詰め、しっかりと確保しただろうが!!」
そこまで言うと、ギリアムは改めて鋭い目を彼らに向け、
「私は王立騎士団で犯罪者と接するから、よくわかっているが…。
本当の弱者と、弱者のフリをした悪人は…見分けるのがかなり難しいんだ」
「己の経験と鼻を効かせ…どちらであるかを判断する。
もしくは…言葉巧みに相手の言動の矛盾を突き、それに対し、どう言うか…。
そういった複雑な対応が、必要になってくるんだ。
王立騎士団の師団長たちや…それに類する人間達はそうやって、実績を残し、己の力を
証明して、その地位にいるんだ!!
それができないなら…下っ端仕事でいるしかない」
「特にフィリーは…フィリアム商会関係の仕事を、私に代わってやっている!!
そちらの交渉上手な人間達を…己の実力で認めさ、上に立っているんだ!!
交渉術というのはまさに…生き馬の目を抜く勢いで、情勢が変化する!!
その変化に対応できない側近など、私だって必要ない!!」
一気に…一息で言ってのけた…。
肺活量…すげぇ。
「それを踏まえた上で…挽回したいなら、出来るように頑張ることだ!!」
そこまで言ったギリアムは…フォルト含めた全員を、書斎から追い出した。
書斎を出た後、フォルトは2人に…、
「雇用時に通達した内容を忘れたなら、しっかりと読み直しておけ。
ギリアム様が次はないと言ったら、本当に次はない。
場合によっては、紹介状もなしで追い出される。
そういう職場だと言う事も、しっかり通達してあるはずだ」
これは…護衛騎士だけでなく、メイドのような使用人も同じ。
武のファルメニウス公爵家だからこそだろうが、すべからく戦場と同じ…と、判断されるのだ。
紹介状は…貴族社会では非常に効力を持つ。
だから…ファルメニウス公爵家の紹介状があると言うだけで、他の職場からは引く手あまただろう。
逆に…貴族の屋敷で働いていたにも関わらず、紹介状を出してもらえなかった…となると、
最悪不祥事を起こしたのではと、疑われるから…、いい職場への就職はかなり難しい。
ムガルとハリスは…かなり小さくなって、宿舎にもどっていったそう。
一方、フィリー軍団のアジトでまったりしている私は…、
「まあ、そんなような事を、ギリアムから言われていると思うからさ…。
私はもう少し後に帰るよ…」
お茶を飲みつつ、お菓子を食べて、のっぺりしている私…。
「まあ、ご当主様の眼はしっかりされているが、どうしたって環境が特殊ですからね…ここは」
ジェードは…長い分よくわかっている。
「まあ…身分の括りがここまで無い、貴族の家も珍しいよな…」
スペードは、貴族の家に出入りしていたから、予想がつくんだな。
「それもあるけどね…」
私は…お茶を一口。
「ファルメニウス公爵家ってさ…本当にブランド化してて、この家に勤めてる…ってだけで、かなり
自慢できるのよ…本当に倍率超高いし」
「それにギリアムの品行方正っぷりと、実力本位主義っぷりから…、身分どうこうより、実力で
見てもらえると思うから、下位貴族からの申し込みが後を絶たない。
実際、下位だろうが上位だろうが、実力があればとるわ」
「でもね…中に入って、実力を示し続けなければいけない…ってのが、言われていてもわかってない人、
多いのよね…」
「そう言うもんですか?」
クローバが不思議そうだ。
「ええ…、アナタ達も実際あっただろうけど、誰かと戦っている時に…横やりが入るでしょ?」
「ええ、大抵は」
シレっと答えてくれるってことは、やっぱりこいつ等雇って正解。
「騎士騎士した連中って…あれを予測できない事が、多いのよ」
「え~、何でですかぁ?
見えている敵だけじゃなく、トラップが仕掛けられている場合だってありますよぉ」
「そうね、ハート…。
まあ、さっきのクローバの話に通じるけど…、そもそも常時臨戦態勢…の意味を、はき違えている
人間が意外と多い…ってことよ」
「確かに騎士って…一対一の決闘で正々堂々と…ってイメージが強いですよね。
実際の戦闘なんざ、そんなの稀ですよ」
ラディルスに捕まった時のスペードだって…、袋叩きだったもんなぁ…。
「あはは、そうだね、ダイヤ…。
でもさ…ギリアムの同世代って…ギリギリ戦争を経験しなかったのが、結構いるの」
これはギリアムが…すでにいた正規兵と志願兵だけで、戦争を終わらせたことが大きい。
「だから…常時臨戦態勢ってのがそもそもどういう事か…ファルメニウス公爵家に入って初めて、
感じることも少なくない…。
あの2人…経歴を見る限りで、片田舎の有力貴族の出身者なのよ。
そして年齢による衰えで退職する人の伝手で入ってきた…」
「田舎育ちでも伝手でも、しっかり者は沢山いるけど…、あの2人はおそらく…使用人にかしずかれて、
日々安全な場所で…立派な騎士になることだけを、目指せばいい状況にいたのよ。
でもさ…ファルメニウス公爵家において、それはかなり…マイナスに働く」
「確かに…ここは雑用的なことが、かなり多いですからなぁ…」
ジョーカーは何だかいたずらっぽく、笑った。
「そ。
まず、今回の避難民についてだけど…護衛騎士達がかなり世話をしている。
物資を配ったり、場所の配備…あとは喧嘩の仲裁や、問題の解決…もちろん使用人やフィリアム商会関係も
やっているけど…ファルメニウス公爵家は基本、手が空いている人間が、やる!!が基本だからね。
おそらく実家じゃ…使用人や雑用係の仕事だったことを…、普通にやらされる」
私はお茶を…結構がぶ飲み。
喉乾くんだもん。
「そしてファルメニウス公爵家はその気質上…平民に対して横柄な態度は許されない。
実家では素っ気なく対応して許されたことを、一切許してもらえない。
あくまで自分と同列の人間として扱い、話を聞き、真摯に対応することが求められる」
「多少がなり立てられようが、武器を向けるどころか、威嚇するのさえもってのほか。
威嚇するなら、威嚇するだけの理由があったことを説明しなきゃだし、もし間違えたら自分で全責任を
取るのも当たり前」
「だからさっきみたいに、弱者に混じった悪人を見抜くための…複雑な交渉術と話術…自分の言った
ことや行動に対し…相手がどう反応するか。
それによって、次の自分の行動を180度変えるような、テクニックも求められる」
私はティーポットから、お茶を手酌し、またがぶがぶ。
「長くなったけど、ファルメニウス公爵家では…騎士の仕事だけしてれば認められることなんて、
まずない。
それ以外の力がかなり要求されちゃうのよ」
「あはは~、じゃあ、クローバは崖っぷちだねぇ~」
ハートがクローバの肩をバンバン叩きながら、笑っている。
「え~、オレ、頑張ってますよぉ、奥様ぁ!!」
何だか…涙目になっちゃったね…。
「あはは、大丈夫よ…。
精進するのは大事だけど…それぞれに求める役割が違うんだから。
騎士の能力をメイドに要求するのはおかしいし、その逆もまたしかり…でしょ?
私が求める、最低限度の基準を満たしているかどうか…、そこをクリアーした上で、他との調和と
能力を求める…ってことだからさ」
ありゃ…クローバの頭に?がいっぱい浮いてら…。
説明が必要だね…。
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