ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 9

木野 キノ子

文字の大きさ
20 / 44
第2章 火事

9 喧嘩しないでよ~

しおりを挟む
そして翌日…。

「みんな!!おはよう!!
今日もよろしくね~」

私は元気に挨拶したが…その場の空気にすぐに気づいた…。

「ちょっと、ジョーカー。
ジェードとスペード、喧嘩したの?」

こそっと聞いてみると、

「いや…喧嘩と言いますか…スペードが一方的に絡んだ…と、言いますか…」

ジョーカー…ちょっと、答えずらそう。

よく見れば…明らかにシレっとしているジェードに、スペードが…絡んでる…と言ったほうが
正解の様だ。

私は…ちょっと、切れた!!
色々いろいろ、考えることが、次から次へと浮かんでくるってのに~。
処理しなきゃいけない問題も、沢山あるってのにぃ~。

「ちょっと!!ジェード、スペード!!こっちいらっしゃい!!」

私は…大きな声で、号令をかける。

素直に素早く来た二人の頭に…空手チョップを入れる。

「!!??」

2人ともわけわからん…って、顔するから、

「喧嘩してる場合じゃないでしょ!!
何が原因か、言いなさい!!」

「……」

2人とも、見事なくらいに貝になった…。

「クローバ…何があったか、喋ってくれる?」

何でオレ…?的な顔しているが…他の人だと、言わせるのに時間がかかる。
全員…私と眼を合わせないようにしてるし…。

「一言で!!いいから」

「え、ええ!!」

ただでさえ説明下手な人に、一言で…は、かなり難易度高い。
でも…それも一つの狙いよ。

「え…っと、えと…」

なんだかクローバの頭から、プスプスと煙が上がるのが…見える気がする。

「う~ん…と」

頑張れ、クローバ。
成功したら、美味しいご飯をあげるから!!

「えっと…2人は…ですね…」

「うん」

にこやかな私に対し…よけーなこと言うなよ、テメェ…的な目を、クローバに向ける2人…。

「そうですね…」

ファイト!!

「あ、そうだ、奥様に…」

2人の睨みが、一層凄くなるが…考えることで精一杯のクローバは気づいていない様子…。

「可愛がってもらいたいそうです!!」

……………………………。
いったい、どうして、そうなった?

という空気が、クローバ以外を支配した…。

「あら、そういう話をしていたの?」

「はい、そうです!!」

にっこにこしてら。
クローバちゃん、とってもいいお返事だこと。
では私は…これを信じ切った、行動を取ってみようと思った。

あらゆるお客様の忖度プレイに応じて来た、ガチ娼婦舐めんなよ!!

「オッケー、オッケー、そういうことなら、任せなさい!!」

私はジェードとスペードの頭を、動物のように撫でまわす。
ひとしきり撫でまわした所で、

「うっわ、スペードの髪…細かいだけじゃなくて、柔らかいねぇ~」

などと言いながら、スペードの頭を持って撫でまくる。

「おおお、奥様!!
オ、オレ…昨日すぐ寝ちまったから…風呂入ってなくて…」

かなり慌てふためいて、私から体を離そうとするが……逃がさんよ!!

「え~、それでこんなに綺麗で柔らかいの~、信じれな~い」

腕の力を強めつつ、さらに撫でる。
まあ、スペードが本気になったら、振り払われるんだろうが…振り払わないんだから、
好きにさせてもらお。
真っ赤になりながら、結局私の成すがままにされてるし。

そんな感じでスペードの頭を堪能していると…無表情のまま、どす黒いオーラを出している
ジェードが目に入る。

ああ、嫉妬してるのね、しょうがないなあ。

「ジェードの頭も気持ちいいよ、だからそんな顔、しな~い」

ちょっと無邪気っぽく、言ってみる。

「……」

言っただけではダメみたいだから、ジェードの頭も抱えてナデナデ…。
おや…オーラが出なくなった。
よしよし。

「ずっるーい、2人だけ!!奥様、アタシも~」

「じゃ、オレもお願いしま~す」

ハートとクローバが、私に寄ってきたから、もちろんナデナデしてあげた。
いやー、キミら位の子供がいて、全くおかしくない精神年齢だからさぁ…。
なんだか、微笑ましくなっちゃう…。

そんな私と私の周りを遠目で見つつ、

「先代…クローバの脳筋って…ショートすると、その場を解決できる能力でもあるんですか?」

ダイヤ…真顔なので、かなり真剣なようだ。

「いや…わしも初めて見た…」

ジョーカーも…信じられないものを見た顔だ…。

「今度何かあったら…一回ショートさせてみましょうか?」

「そうじゃな…」

なんて、ひそひそ話しているとは知らず、私は、

「ダイヤとジョーカーは、どうする?
いいわよ。
年齢関係なく、嫌か嫌じゃないかで判断して。
ここだけの事に、しとくからさ」

すると…ビクッとした後、2人は顔を見合わせたが、やがて…。

「じゃ、じゃあ、お願いします…」

何だか…おずおずとしてるけど、嫌じゃないみたい。

2人だけ仲間はずれも嫌だったから、結構しっかり目になでくりしてあげた。
ちょっと…照れ臭そうだったけど、やっぱり嫌がってない。
良かった…。

こうして仲直りしたフィリー軍団と一緒に…私はギリアムとした予想や、今後の展望について、
話をするのだった。


---------------------------------------------------------------------------------------------------


その日の朝は…ファルメニウス公爵家に激震が走った…。
いや、正確にはギリアムと私とフォルト…そしてジェードだろう。

「あの建物に…侵入者?」

驚いて、フォルトに尋ねれば、

「はい…朝の見回りで、鍵が開けられている事を、確認しまして…」

フォルトもかなり…信じられない…といった、面持ちだ。

「証拠品は!!」

ギリアムの言葉は短いが…切迫した様子を伝えている。

「大丈夫です、ご当主様…。
オレが確認した限りで、仕掛け扉は開けられていません。
中に入った形跡もなしです」

ジェードの答えに、少しホッとするギリアムだが、次の瞬間、

「ラディルス達か?」

かなり…眉根が吊り上がっている。

「わかりません…ただ…あの辺を巡回していた騎士が、人の声らしきものを…聴いた…と」

「なぜその時点で言わん!!」

「あそこは特に…近づかないよう、使用人には通達済みでしたから…。
ほんのかすかなものだったようで、風の音と思ったようです」

フォルトの報告に、かなりわなわな来ている。
ああ、いかん。

「ギリアム…、ひとまず証拠品は無事だったんですから、今後の対策を考えましょう」

ギリアムの手に私の手をそっと重ね、温め、撫でると…ちょっと落ち着いたみたい。

「フォルト!!護衛騎士を5人以上は配置しろ!!
絶対に持ち場を離れるな!!…と」

「そうですね…。
中に入っているものを、詮索されるのも面倒だったから、今まで配置しませんでしたが…。
侵入者があったなら、逆にいい口実になるでしょう」

フォルトが指示するために、すぐさま部屋を出る。

「奴らの目的は…身内の事ではなく、それなのか?」

ギリアムのつぶやきに、

「わかりません。そもそも依頼を、複数受けているのかもしれませんし。
でも、あの仕掛け扉は、簡単に開けられるものではないですし…。
警戒を怠らなければ、ひとまず大丈夫だと思いますよ」

ジェードが答えたが…ギリアムはまだ納得できない様子。

あの建物には…バカ王女が私を襲うために雇った人間達を…閉じ込めてある地下牢に…
通じる道があるんだ。
だから…立入禁止にしていた。
王家に対する、カードの1つだから…特に慎重に扱ったんだ。
でもだからと言って、あからさまに大切なものだと主張するような事をすると…、それはそれで
狙ってくる奴がいるから、適宜に…していたんだよね。

収まらないギリアムを…私はなだめすかして、仕事に行かせた。
その後、フィリー軍団のアジトで一服しつつ、

「あ~、もう、色々ありすぎる~」

愚痴っていた。

「何の関係もない、避難民を追い出すわけには、いかないしぃ~」

これが…一番問題だ。

「奥様…差し支えなければ、例の建物に…何が入っているのか、お教えいただけませんか?」

ジョーカーは…やっぱり質が良い。
凄く自然体で…穏やかな顔で聞いてくる。
そして…こっちが何も言わなくても、特にやることは変わりない…そういう雰囲気だ。
場合によっては、自分たちの安全にも関わることなのに…死が常に隣にいる状況で生きてきたから
だろうなぁ…。

「細かい事は、この件が片付いてから話すけど…。
簡単に言うと、王家があなた達の前に、私を襲うために雇った人間達を確保してあるの」

するとやっぱり…みんなの目の色と、顔色が変わった。

「だ、大丈夫だったんですか!!奥様!!」

みんなして心配そうに見つめてくれるから…ありがたいなぁ。
もうすっかり…私の子飼いの仲間だ。

心配そうに見つめてくるみんなを見渡し、

「大丈夫よ、そもそも未遂で終わってるから…」

と言えば、心底安心したようだ。

「奥様が襲われる前に、オレが確保しましたからね」

ひょいっと横から、ジェードが出る。

「そうだね…、あの時は助かったよ、ありがとう」

私の言葉に対し、満足気~に頭を出してきた…。
これ…撫でてくれって、サインなんだよね…。

「ジェードのおかげだよ~、うん」

私がナデナデしてあげると…本当に嬉しそう…。
でっかい猫を飼っている気分だよ、本当に…。

「詳しい事はこの件が終わったら…、ジェードから話してくれる?」

「はい、奥様」

ニコニコしながら言ってくれたので、ひとまずこの件は終わりにしよう。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生調理令嬢は諦めることを知らない!

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...