ひとまず一回ヤりましょう、公爵様3

木野 キノ子

文字の大きさ
6 / 43
第一章 観劇

5 レイチェル・ホッランバック伯爵夫人

しおりを挟む
「オルフィリア嬢…一体何を…」

デイビス卿も困惑しているようだが、

「デイビス卿…あなたはすでに、今日のようなことが、日常的に起きているのではと
疑っているのではないですか?」

するとデイビス卿の顔色が変わった。

「色々調べるにしても、王立騎士団の仕事もあるし、レイチェル伯爵夫人をここに
おいておいて、いいことは無いと思います」

するとため息つきつつ、

「オルフィリア嬢は…本当に慧眼でいらっしゃる」

優秀な人間に褒められると…本当にこしょったい。

「ちょうど、ルベンディン侯爵家の仮面舞踏会の対策もしようと思っていましたし、
レイチェル伯爵夫人と打ち合わせも必須ですから、ファルメニウス公爵家に来て
頂いた方が、色々利点があるかと思いました。
よろしいですよね?
ギリアム様」

「それは…あなたのお好きなように」

そう言ってくれると思った。

「わかりました…今回ばかりはお世話になります。
団長、オルフィリア嬢」

と、デイビス卿は言ったが、私はレイチェル夫人の手を取り、

「レイチェル夫人はどうですか?」

と、尋ねた。
いくら気が弱いからって、置き去りにしちゃいかんよ、うん。

「ご…ご迷惑では…」

本当に消え入りそうな声ね。

「いいえ。
むしろ色んなことをお話しするのに、来ていただいた方が助かります」

終始笑顔の私。

「……わかりました」

よしよし、オッケー。
素直に従ってくれるのはありがたし。

まあ、それだけこの家の状況が、過酷ってのもあるかもだけど。

私は握ったレイチェルの手が、わずかに震えているのを感じつつ、色々な
思案をするのだった。


----------------------------------------------------------------------


同時刻、コウドリグス侯爵家。

「まあ、そういうワケでギリアムの奴が、手紙隠しちまったみたいだ」

ローカス卿は二人の人間と相対しながら、話をしている。
一人はベンズ卿…もう一人は…ジュリア侯爵夫人だ。

年のころは二十代半ばぐらいだろう。
癖のあるウェーブを際立たせ、肩ぐらいで切った髪は、不思議と雰囲気に
合っている。
美人と言える目鼻立ち…しかし目じりがきりっと上を向いているさまは、
かなり気が強い印象を受ける。

「なるほど、わかりました。
多忙であることは理解しておりましたので、すぐに返事が来るとは思って
いませんでしたが…そうですか…」

声色もとても美しいが、やはり節々のアクセントのしっかりした口調から
本人の切符の良さがうかがえる。

「ふむ…通常であれば、過保護すぎると言えますが…。
建国記念パーティーとクレア嬢のお茶会は、本当にひどかったですからね…」

「まあなぁ」

3人ともやはり、わかっているようだ。
建国記念パーティーやクレア嬢のお茶会は、心の脆い令嬢であれば、自殺しても
おかしくないものだ…と。

「でも…ローカス卿のお話しから察するに…オルフィリア嬢はギリアム様の
行動を予測しているようですね」

ジュリア侯爵夫人の声は、かなり弾んでいる。

「ああ、だから心配いらんだろ。
ギリアムが完全に、尻に敷かれる姿を見ることになるとはなぁ…」

ローカス卿は何とも愉快そうだ。
そしてジュリア侯爵夫人も…。
それを見たベンズ卿が、

「お前がそんなに嬉しそうなのは、久しぶりだな…」

「そりゃあ、そうですよ。
最初にオルフィリア嬢の話を聞いた時、ギリアム様は随分とロマンチストだと
思ったのですが…」

「どうやら、リアリストな上での、ロマンチストだったようですので」

「建国記念パーティーとクレア嬢のお茶会…。
私は私の伝手の限りを尽くし、その場にいた人間複数から、直接話を聞きました。
ハッキリ言って、見事の一言です。
社交界とは何かをしっかり理解し、その荒波を渡る…いえ、荒波そのものを
撃破する力がある」

ジュリア侯爵夫人はとても目を輝かせて、話している。

「そして何より、あの王女殿下を不敬罪に問われることなく、二度も退けた。
弱冠16歳の令嬢とはとても思えません」

「それにあなたから聞いた、フィリアム商会の施設での一件は…善良なものを
一切傷付けない、思慮深さと慈悲深さが、ありありと出ている。
彼女がレイチェルの味方になってくれれば、もう心配いらないわ」

ジュリア侯爵夫人はいつになく陽気に話す。

「しかし…レイチェル伯爵夫人とオルフィリア嬢が出席するのが、あのルベンディン
侯爵家の仮面舞踏会と言うのは…」

ベンズ卿の眉間にしわが寄る。

「それはオレも心配している。
とくにブライト卿の質の悪さは、群を抜いているようだし…」

するとジュリア侯爵夫人は、今までの愉快そうな表情とは打って変わって暗くなり、

「ブライトはまた…何を企んでいるのやら…」

「やはり相当酷いのか?」

ベンズ卿が問えば、

「ええ。
昔からレイチェルをおもちゃにして、悪質ないたずらをしていました。
傷付くあの子の姿を見て、本当に楽しそうにして…私が言うと少しの間はやめる
のですが…またほとぼりが冷めたころにやりだして…の繰り返しです」

ジュリア侯爵夫人はかなり苦しそうな表情になる。

「…舞踏会自体を断ることは、やはり難しいのか?」

ローカス卿が言えば、

「それが一番いいのは、レイチェルもわかっているでしょうが…。
現在あの子は、実家に弱みを握られている…それを何とかしない限り、難しいで
しょうね…」

やはり苦しそうな顔になる。

そこで、

「失礼いたします、奥様。
緊急のお手紙が…」

「来客中です、後になさい」

対他用の声色になる、ジュリア侯爵夫人。

「し、しかし…。
この家から来た手紙は、いつでもすぐお持ちするようにと…」

「どこの家?」

「…ルベンディン侯爵家です」

そこで3人の顔色が変わる。

「わかったわ。
持ってきてちょうだい」

その手紙は…例の仮面舞踏会への、コウドリグス侯爵夫妻への招待状だった。

「うわ~、凄いタイミングだな、驚いた。
こういうのは、よく来るのか?」

「たまに…ですね。
でも、悪趣味なパーティーだとわかっているので、今までずっとお断りして
いましたよ。
でも今回は…あなた!!」

「もちろん出席する。
お前の大事な従妹と、オルフィリア嬢が関わっているんだ。
悪趣味なら余計、心配だ。
正式に参加させてもらえるなら、むしろありがたいよ」

3人の話は、まだまだ続く…。


-----------------------------------------------------------------------


さて、後日…。
ファルメニウス公爵家にやってきたレイチェルはと言えば…。

まあ、見事なくらいに私だけじゃなく、使用人に対してまで委縮している。
本人の生来の性格とか、環境とか…色々相まってのことだろうし、悪いことでは
ないが、とても社交界の荒波は渡れんな…。

デイビス卿から、本人の趣味とか好きなことを聞いて、ひとまずそれをやって
もらっている。
立場としては、お客様だからね。

ルベンディン侯爵家の仮面舞踏会は、招待に応じる旨返信すると、詳細な場所や
日時、ドレスコードなどが知らされる仕組みだ。

だいたい予想はしてたけど…会場はルベンディン侯爵家、日時は1週間後の夜、
馬車は家門をつけていないものに、乗ってくること。
使用人は連れてきてもいいけれど、会場外で待機。
そして肝心のドレスコードは…ルベンディン侯爵家で用意したものに、当日会場入り
してから着替えろだとさ。
よくもまぁ、これだけきな臭いにおいを、プンプンさせられるっつーの。

しかしまあ、いくっかないね。

しかし私には、仮面舞踏会に行く前に、どうしても片付けねばならない重要案件が
ある…。

なにかって?

そりゃー、夫婦の寝室で、仮面舞踏会への出席を決めてから、ずっとぶすくれが
直らない、ギリアムをなだめることだね。

わたしゃ別にいいんだけど、せっかく私らを好いてくれている、王立騎士団の皆さまに
ご迷惑をおかけするわけにはいかない。

前世だったら、余すことなくテクをご披露して、篭絡することもできるんだが…。
いかんせん、私は今世ギリアム以外とエッチしていない設定なので、やれることが
限られるんだよね~。

あ~~~~、もどかしい!!

とにかく今日も、出たとこ勝負でいくっきゃない!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

望まぬ結婚をさせられた私のもとに、死んだはずの護衛騎士が帰ってきました~不遇令嬢が世界一幸せな花嫁になるまで

越智屋ノマ
恋愛
「君を愛することはない」で始まった不遇な結婚――。 国王の命令でクラーヴァル公爵家へと嫁いだ伯爵令嬢ヴィオラ。しかし夫のルシウスに愛されることはなく、毎日つらい仕打ちを受けていた。 孤独に耐えるヴィオラにとって唯一の救いは、護衛騎士エデン・アーヴィスと過ごした日々の思い出だった。エデンは強くて誠実で、いつもヴィオラを守ってくれた……でも、彼はもういない。この国を襲った『災禍の竜』と相打ちになって、3年前に戦死してしまったのだから。 ある日、参加した夜会の席でヴィオラは窮地に立たされる。その夜会は夫の愛人が主催するもので、夫と結託してヴィオラを陥れようとしていたのだ。誰に救いを求めることもできず、絶体絶命の彼女を救ったのは――? (……私の体が、勝手に動いている!?) 「地獄で悔いろ、下郎が。このエデン・アーヴィスの目の黒いうちは、ヴィオラ様に指一本触れさせはしない!」 死んだはずのエデンの魂が、ヴィオラの体に乗り移っていた!?  ――これは、望まぬ結婚をさせられた伯爵令嬢ヴィオラと、死んだはずの護衛騎士エデンのふしぎな恋の物語。理不尽な夫になんて、もう絶対に負けません!!

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...