34 / 43
番外編2 依頼
1 ヴァッヘン卿のお母様のお茶会へ
しおりを挟む
え~、今日は…待ちに待ったヴァッヘン卿のお母様のお茶会で~す。
ママンも一緒に参加するから、余計に楽しみだったんだよね~。
そんで、もう一つ…。
「今日はよろしくお願いします、オルフィリア嬢…」
レイチェルも参加することに、なりました~。
今日のお茶会に、フレイア伯爵夫人時代からお世話になっていた人たちも
参加するってことで…。
季節の付け届けとか、してくれている人たちだから、私と一緒なら安心だろうし
どう?って言ったら、ぜひってことになった。
ヴァッヘン卿のお母様にお聞きしたら、やっぱりぜひって言ってもらえた。
レイチェルの心配はしていたらしい。
そして会場へ…。
大分早く行ったのに…何と皆さんが全員集合でお出迎えしてくれた。
え~、なんで?
「初めまして、オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢…。
わたくし、エティリィ・ラドフォールと申します。
ようこそいらして下さいました」
とてもお上品な挨拶をしてくださった、ヴァッヘン卿のお母様…。
まさに…一目でヴァッヘン卿のお母様とわかる顔だ…遺伝子すげぇ。
だが所作の美しさから、代々続く由緒正しい血筋をにおわせている。
ヴァッヘン卿のお父様は亡くなったわけではないのだが、もともと内気な人だったらしく
ヴァッヘン卿が王立騎士団の師団長になった時点で、自分の爵位と財産をすべて息子に
譲り、地方の領地に引っ込んで、悠々自適な隠居生活をしているらしい。
最初はエティリィ夫人も一緒に行ったらしいのだが、あまりのド田舎っぷりにすぐ帰って
きて、今は年に何回か、会うだけとなっている。
しかしもともと入り婿であったお父様は、自然大好きな方で、
「ウチの両親は、離れてからの方が、すこぶる仲良くなりましたよ…」
と、ヴァッヘン卿が微妙な表情で語っていた。
夫婦の形って、本当に様々やね。
しかしとりあえず…私はかなり気になっていることを聞かねばならない。
「あの…時間、間違えていませんよね?」
私の今の身分は、序列最下位の男爵令嬢だ。
ここにいる人間の中で、一番身分が低いのだから、一番早くに来ねばならん…はずなのだが。
「ご安心ください、オルフィリア嬢…。
今日、私どもがあなた様より早く来たのは…皆でそうしようと決めたからです」
「はあ…」
敵意はないようだが、いまいちわからん。
見れば当初聞いていたより、人数が多い気がする…。
そんなことを考えていたら、エティリィ夫人含め、皆が一斉に私の前に来て、礼の形を
とった。
なにがおこっとる?
「これより先…わたくしたち、王立騎士団員の夫人&令嬢に…、オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢に
対し、ファルメニウス公爵夫人として接することを、お許しいただきたい」
ななな、なんですとぉ―――――――っ!!
髪の毛逆立つくらい驚くって、まさにこのこと。
「え…ええと、それは…私の一存では…」
「ギリアム公爵閣下の許可は、すでにいただいております」
静かに言われた…。
ヴァッヘン卿のお母様…出来る人や…。
でもこれで、私は今朝のギリアムの態度に納得がいった。
みょーに浮かれて…上機嫌だったからさぁ。
…帰ったら、仕置きじゃ!!
さて、どうするか…。
王立騎士団の規模はかなり大きいから、全員が集まっているわけではないだろうが…。
おそらくフレイア伯爵夫人関係の…いわばデキル夫人はだいたい集まってるんだろーな…。
とするといつもみたいに、奥様違う!!の一言で片づけるわけにはな…。
さりとて規模が大きいからこそ、おいそれと了承すれば、反発勢力みたいなのが出てきても
おかしくない。
ここは慎重にいかんとね…。
私は笑顔を浮かべ、
「皆様のお気持ちは大変うれしく思います。
ですがそのお返事をする前に…どうしてそうしようと思ったのかを、ご説明頂きたいです」
するとエティリィ夫人は、私がそう答えるのが想定内と言わんばかりに、
「わかりました…しかしその前に…一人ひとり名乗らせてください」
あ~なんか…。
外堀埋められていってる気分…。
元来私の身分なら、私から名乗るのが筋なんだが…。
さすがに場の雰囲気悪くなりそうだし…。
というワケで、この場は一人一人の挨拶を笑顔で受けるわたくし。
もちろんみんな、私より身分は上。
しかし驚いたのは、このお茶会に来ている約半分が、エティリィ夫人よりも身分が上だと
いうこと。
しかし全員険悪な雰囲気も、抑えつけられているという空気の悪さもない。
みな、エティリィ夫人を上にすることを、心から納得しているようだ。
……なるほどね。
フレイア伯爵夫人は、その爵位のみで上に君臨していたんじゃない。
実力で皆を認めさせたんだ。
そしてその後釜に座ったのが、エティリィ夫人だとすると…。
ギリアムが王立騎士団の確固たる信念としたことが、夫人&令嬢にもある程度浸透してるって
ことだ。
いいねぇ!!!!
特権階級が自らの意志で、一部とはいえ特権を放棄する。
これこそが、人間って生き物の面白さだ。
ヘドネの生きたい世界だ!
私は一人一人の自己紹介を聞いた後、テーブルに着いた。
もちろん私が上座…。
そして全員が席に座ると、エティリィ夫人はゆっくりと語りだす。
「王立騎士団が変革したことで…良いこともたくさんありましたが、同時に悪いことも
それなりに吹き出てきてしまいました」
だろーね。
いい事だけ起こるってのは、どこの世界でも奇跡と言っていいからね。
「王立騎士団を追われた上位貴族の夫人&令嬢たちが…社交界で残った団員の夫人&令嬢たち
の事を…悪しざまに罵るようになったのです。
根も葉もないことが殆どでしたが、中には全く違うと言えないこともありまして…」
ま、実力本位主義について行けない特権階級なんざ、多かれ少なかれそんなもんだろーな。
「フレイア伯爵夫人がかなり全面的に前に出て…頑張ってくださいましたし、ここにいる
皆さまも、できることはすべてやりました。
そのおかげで少しは落ち着いたのですが…根強く残った差別意識はそうそう簡単に消える
ものではありませんでした」
それが人間の、負の部分の性…。
王立騎士団と近衛騎士団の不仲は、こういった夫人&令嬢の軋轢によっても、より強固に
なってしまったんだろーな。
フレイア伯爵夫人には、本当に相当な負荷がかかったハズだ。
いくらギリアムがバックに控えているとはいえ、本人の身分は伯爵夫人だし、テオルド卿だって、
序列は上位と言えど、それはあくまで伯爵内での話…。
そしてそのころ王立騎士団を攻撃してきたのは…殆ど侯爵家の人間だったって聞いた。
もちろん取り巻きは、伯爵以下のもたくさんいたそうだが。
私はちらりとレイチェルを見る。
だからこそ、おそらくみんながレイチェルには期待したはずだ。
身分としては伯爵夫人になるが、本人は侯爵令嬢だったんだから…。
そしてもうそのころ…ジュリアはかなり有能で性格もいいと、有名になっていたはずだし。
だが蓋を開けてみれば…。
フレイア伯爵夫人だって、ここまで実家で社交界について、何の教育も受けていないとは、
内心思わなかっただろうな…。
それでもしっかりといい所を見つけてあげて、教育してあげたり…本当にできた人だったのね。
皆も思ってるだろうが、惜しい人を亡くしたなぁ…。
それにここにいる人達だって…自分たちの期待を裏切ったからって、変な態度取ったり、何かを
強要したりはしなかった。
質のいい人たち…。
「その状況が!!オルフィリア嬢の登場からわずか数カ月で!!
劇的に改善したのです!!」
へ?そうなん?
さすがに貴族の夫人&令嬢同士の細かいことにまで、探るのは難しかったし、そんな暇もなかった
からなー。
「オルフィリア嬢の能力の高さは、建国記念パーティーから遺憾なく発揮されていましたが…、
クレア嬢のお茶会を通し強化され、さらに例の施設…太陽の家での近衛騎士団との一件で、
まさに昇華されたのです!!」
すっごい乗り出してきてるな~。
「あの一件以来、近衛騎士団の心ある方々の発言力が強くなったんです」
「悪意を持つ人間達は、なりを潜めざるを得ず、皆安堵しました」
「まさにオルフィリア嬢の功績です!!」
他の婦人方もみんな、絶賛しとる…。
私ただの、エッチ大好きおばはんなんやけど…。
「しかし、さすがに…」
エティリィ夫人は一歩下がり、
「わたくしたちはファルメニウス公爵家の事情にまで、口を出す立場ではございません。
ですから皆さまと話し、本日は親交を深めるだけに、留めようと思っておりました…」
まあだよね…常識的で、理性的な人達やからね…。
「ですがその間に起こった、ルベンディン侯爵家での仮面舞踏会…その顛末を聞いて、皆さまの
意見は変わりました!!」
あ~、やっぱりか。
「もう言葉では言い尽くせないくらい、感嘆して…ギリアム公爵閣下のお目の確かさを、
絶賛いたしましたわ」
私は…レイチェルとは真逆の状態だったんだろうなぁ。
ギリアムが私を婚約者にと発表した時、私は歴史なんてない名ばかり貴族の男爵令嬢、おまけに
アカデミー通学経験もなし、おおよそ貴族らしい教育をまともに受けたこともないって、みんな
予想がついただろうから…。
そーいえば、人間って…まったく期待していなかったものが大当たりすると、期待した時の
何倍も嬉しいもんなんだった…。
「フィリー…」
ママンがこそっと、私の肩をつついてきた。
その眼はとっても、心配そう…。
わかってるよ、ママン。
ママンは生まれながらの貴族…それも男爵とはいえ歴史ある由緒正しいところの出だから、
社交界の世知辛さもよくわかってて、心配してくれてるんだ。
私がファルメニウス公爵夫人としての扱いを受ける…それはつまり、ファルメニウス公爵夫人と
しての役割を担うことを意味する。
この人たちは、私が断ると言えば、この場でそれ以上は言わないだろうし、態度を変えることも
しないだろう。
…………………………………だからこそ!!
味方にしておいたほうが良い。
私が今現在…ギリアムから離れることを、考えないんならさ。
「皆様のお考えとお気持ちは…よくわかりました」
私は手に持っていた茶器を置き、
「では、私の考えを述べさせていただきます」
目線を真っすぐに整えた。
ママンも一緒に参加するから、余計に楽しみだったんだよね~。
そんで、もう一つ…。
「今日はよろしくお願いします、オルフィリア嬢…」
レイチェルも参加することに、なりました~。
今日のお茶会に、フレイア伯爵夫人時代からお世話になっていた人たちも
参加するってことで…。
季節の付け届けとか、してくれている人たちだから、私と一緒なら安心だろうし
どう?って言ったら、ぜひってことになった。
ヴァッヘン卿のお母様にお聞きしたら、やっぱりぜひって言ってもらえた。
レイチェルの心配はしていたらしい。
そして会場へ…。
大分早く行ったのに…何と皆さんが全員集合でお出迎えしてくれた。
え~、なんで?
「初めまして、オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢…。
わたくし、エティリィ・ラドフォールと申します。
ようこそいらして下さいました」
とてもお上品な挨拶をしてくださった、ヴァッヘン卿のお母様…。
まさに…一目でヴァッヘン卿のお母様とわかる顔だ…遺伝子すげぇ。
だが所作の美しさから、代々続く由緒正しい血筋をにおわせている。
ヴァッヘン卿のお父様は亡くなったわけではないのだが、もともと内気な人だったらしく
ヴァッヘン卿が王立騎士団の師団長になった時点で、自分の爵位と財産をすべて息子に
譲り、地方の領地に引っ込んで、悠々自適な隠居生活をしているらしい。
最初はエティリィ夫人も一緒に行ったらしいのだが、あまりのド田舎っぷりにすぐ帰って
きて、今は年に何回か、会うだけとなっている。
しかしもともと入り婿であったお父様は、自然大好きな方で、
「ウチの両親は、離れてからの方が、すこぶる仲良くなりましたよ…」
と、ヴァッヘン卿が微妙な表情で語っていた。
夫婦の形って、本当に様々やね。
しかしとりあえず…私はかなり気になっていることを聞かねばならない。
「あの…時間、間違えていませんよね?」
私の今の身分は、序列最下位の男爵令嬢だ。
ここにいる人間の中で、一番身分が低いのだから、一番早くに来ねばならん…はずなのだが。
「ご安心ください、オルフィリア嬢…。
今日、私どもがあなた様より早く来たのは…皆でそうしようと決めたからです」
「はあ…」
敵意はないようだが、いまいちわからん。
見れば当初聞いていたより、人数が多い気がする…。
そんなことを考えていたら、エティリィ夫人含め、皆が一斉に私の前に来て、礼の形を
とった。
なにがおこっとる?
「これより先…わたくしたち、王立騎士団員の夫人&令嬢に…、オルフィリア・ステンロイド男爵令嬢に
対し、ファルメニウス公爵夫人として接することを、お許しいただきたい」
ななな、なんですとぉ―――――――っ!!
髪の毛逆立つくらい驚くって、まさにこのこと。
「え…ええと、それは…私の一存では…」
「ギリアム公爵閣下の許可は、すでにいただいております」
静かに言われた…。
ヴァッヘン卿のお母様…出来る人や…。
でもこれで、私は今朝のギリアムの態度に納得がいった。
みょーに浮かれて…上機嫌だったからさぁ。
…帰ったら、仕置きじゃ!!
さて、どうするか…。
王立騎士団の規模はかなり大きいから、全員が集まっているわけではないだろうが…。
おそらくフレイア伯爵夫人関係の…いわばデキル夫人はだいたい集まってるんだろーな…。
とするといつもみたいに、奥様違う!!の一言で片づけるわけにはな…。
さりとて規模が大きいからこそ、おいそれと了承すれば、反発勢力みたいなのが出てきても
おかしくない。
ここは慎重にいかんとね…。
私は笑顔を浮かべ、
「皆様のお気持ちは大変うれしく思います。
ですがそのお返事をする前に…どうしてそうしようと思ったのかを、ご説明頂きたいです」
するとエティリィ夫人は、私がそう答えるのが想定内と言わんばかりに、
「わかりました…しかしその前に…一人ひとり名乗らせてください」
あ~なんか…。
外堀埋められていってる気分…。
元来私の身分なら、私から名乗るのが筋なんだが…。
さすがに場の雰囲気悪くなりそうだし…。
というワケで、この場は一人一人の挨拶を笑顔で受けるわたくし。
もちろんみんな、私より身分は上。
しかし驚いたのは、このお茶会に来ている約半分が、エティリィ夫人よりも身分が上だと
いうこと。
しかし全員険悪な雰囲気も、抑えつけられているという空気の悪さもない。
みな、エティリィ夫人を上にすることを、心から納得しているようだ。
……なるほどね。
フレイア伯爵夫人は、その爵位のみで上に君臨していたんじゃない。
実力で皆を認めさせたんだ。
そしてその後釜に座ったのが、エティリィ夫人だとすると…。
ギリアムが王立騎士団の確固たる信念としたことが、夫人&令嬢にもある程度浸透してるって
ことだ。
いいねぇ!!!!
特権階級が自らの意志で、一部とはいえ特権を放棄する。
これこそが、人間って生き物の面白さだ。
ヘドネの生きたい世界だ!
私は一人一人の自己紹介を聞いた後、テーブルに着いた。
もちろん私が上座…。
そして全員が席に座ると、エティリィ夫人はゆっくりと語りだす。
「王立騎士団が変革したことで…良いこともたくさんありましたが、同時に悪いことも
それなりに吹き出てきてしまいました」
だろーね。
いい事だけ起こるってのは、どこの世界でも奇跡と言っていいからね。
「王立騎士団を追われた上位貴族の夫人&令嬢たちが…社交界で残った団員の夫人&令嬢たち
の事を…悪しざまに罵るようになったのです。
根も葉もないことが殆どでしたが、中には全く違うと言えないこともありまして…」
ま、実力本位主義について行けない特権階級なんざ、多かれ少なかれそんなもんだろーな。
「フレイア伯爵夫人がかなり全面的に前に出て…頑張ってくださいましたし、ここにいる
皆さまも、できることはすべてやりました。
そのおかげで少しは落ち着いたのですが…根強く残った差別意識はそうそう簡単に消える
ものではありませんでした」
それが人間の、負の部分の性…。
王立騎士団と近衛騎士団の不仲は、こういった夫人&令嬢の軋轢によっても、より強固に
なってしまったんだろーな。
フレイア伯爵夫人には、本当に相当な負荷がかかったハズだ。
いくらギリアムがバックに控えているとはいえ、本人の身分は伯爵夫人だし、テオルド卿だって、
序列は上位と言えど、それはあくまで伯爵内での話…。
そしてそのころ王立騎士団を攻撃してきたのは…殆ど侯爵家の人間だったって聞いた。
もちろん取り巻きは、伯爵以下のもたくさんいたそうだが。
私はちらりとレイチェルを見る。
だからこそ、おそらくみんながレイチェルには期待したはずだ。
身分としては伯爵夫人になるが、本人は侯爵令嬢だったんだから…。
そしてもうそのころ…ジュリアはかなり有能で性格もいいと、有名になっていたはずだし。
だが蓋を開けてみれば…。
フレイア伯爵夫人だって、ここまで実家で社交界について、何の教育も受けていないとは、
内心思わなかっただろうな…。
それでもしっかりといい所を見つけてあげて、教育してあげたり…本当にできた人だったのね。
皆も思ってるだろうが、惜しい人を亡くしたなぁ…。
それにここにいる人達だって…自分たちの期待を裏切ったからって、変な態度取ったり、何かを
強要したりはしなかった。
質のいい人たち…。
「その状況が!!オルフィリア嬢の登場からわずか数カ月で!!
劇的に改善したのです!!」
へ?そうなん?
さすがに貴族の夫人&令嬢同士の細かいことにまで、探るのは難しかったし、そんな暇もなかった
からなー。
「オルフィリア嬢の能力の高さは、建国記念パーティーから遺憾なく発揮されていましたが…、
クレア嬢のお茶会を通し強化され、さらに例の施設…太陽の家での近衛騎士団との一件で、
まさに昇華されたのです!!」
すっごい乗り出してきてるな~。
「あの一件以来、近衛騎士団の心ある方々の発言力が強くなったんです」
「悪意を持つ人間達は、なりを潜めざるを得ず、皆安堵しました」
「まさにオルフィリア嬢の功績です!!」
他の婦人方もみんな、絶賛しとる…。
私ただの、エッチ大好きおばはんなんやけど…。
「しかし、さすがに…」
エティリィ夫人は一歩下がり、
「わたくしたちはファルメニウス公爵家の事情にまで、口を出す立場ではございません。
ですから皆さまと話し、本日は親交を深めるだけに、留めようと思っておりました…」
まあだよね…常識的で、理性的な人達やからね…。
「ですがその間に起こった、ルベンディン侯爵家での仮面舞踏会…その顛末を聞いて、皆さまの
意見は変わりました!!」
あ~、やっぱりか。
「もう言葉では言い尽くせないくらい、感嘆して…ギリアム公爵閣下のお目の確かさを、
絶賛いたしましたわ」
私は…レイチェルとは真逆の状態だったんだろうなぁ。
ギリアムが私を婚約者にと発表した時、私は歴史なんてない名ばかり貴族の男爵令嬢、おまけに
アカデミー通学経験もなし、おおよそ貴族らしい教育をまともに受けたこともないって、みんな
予想がついただろうから…。
そーいえば、人間って…まったく期待していなかったものが大当たりすると、期待した時の
何倍も嬉しいもんなんだった…。
「フィリー…」
ママンがこそっと、私の肩をつついてきた。
その眼はとっても、心配そう…。
わかってるよ、ママン。
ママンは生まれながらの貴族…それも男爵とはいえ歴史ある由緒正しいところの出だから、
社交界の世知辛さもよくわかってて、心配してくれてるんだ。
私がファルメニウス公爵夫人としての扱いを受ける…それはつまり、ファルメニウス公爵夫人と
しての役割を担うことを意味する。
この人たちは、私が断ると言えば、この場でそれ以上は言わないだろうし、態度を変えることも
しないだろう。
…………………………………だからこそ!!
味方にしておいたほうが良い。
私が今現在…ギリアムから離れることを、考えないんならさ。
「皆様のお考えとお気持ちは…よくわかりました」
私は手に持っていた茶器を置き、
「では、私の考えを述べさせていただきます」
目線を真っすぐに整えた。
80
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】記憶を失くした旦那さま
山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。
目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。
彼は愛しているのはリターナだと言った。
そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる