ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第2章 急襲

1 不審な馬車は…

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今回やって来た馬車は…かなりの大きさだった。
多分…関係者が、ほぼほぼ集合して、乗っていると思ったほうがいい。

とはいえ、狭い場所で戦うなら、それ相応の訓練がいる。
武器だって、選ばにゃならん。

万が一…本当に病気だったことも考えて、委細は確認せねば…。

ラスタフォルス侯爵家と近衛騎士団には…ダリア…もしくは親族の姿が確認されたら、
鳩を飛ばすよう、指示した。

そして…問題の馬車に。

今回ばかりは護衛騎士も動員したよ…。わからないように、隠れていろ…ってね。
ギリアムはいるけれど…ね。

んで…門を開けて、馬車を入れる。
これは…どうしようか迷ったが、逃亡されるのを防ぐためでもある。

そして…かつらを被せてメイドの姿をさせた、ハートを近づける。

「失礼いたします…。中に乗っている人間を、確認せよとのことですので、開けていただけ
ますか?」

しっかり習っているから、いつもの喋り方はなりを潜めている。
声色も…少し変えているようだ。

ハートをカーテンの隙間から確認したようで、馬車の扉が僅かに開く。
そこから…扉を開けようとしたハートの腕を、中から出てきた腕が…掴んだ。

そのまま出てきた人物が、ハートを腕で自身の体に引き寄せ、腕を首に巻きつけ…文字通り
羽交い締めにした。

「動くなっ!!!」

出てきたのは…ダリナだった…。
まあ…いると思ったよ…。
ハートの顔…頬のあたりにナイフを突きつけ、

「抵抗しなければ、乱暴はしない!!私たちはこうしょ…」

ダリアの口上が止まったのは…ハートが仕込みトンファーで、ダリナの顔を殴ったから…だ。
ナイフは…かつらを搦めて、使えなくしている。
本当に…あるものを上手く使って、生きてきた人間ならではの機転だな…。

ハートは…もちろん一撃だけで、やめたりなどしない。
話しかけただけで、刃物を突き付けてきたんだから、私も止める気は無い。

ダリナが咄嗟に腰の剣に手を伸ばせば、その手の甲にナイフを突き立て、素早く剣を奪い、
遠くに放り投げる。
そのまま…仕込みトンファーで、顔を中心に…滅多打ち。
ハートは女だから、女の顔を殴ることに、抵抗が全くない…。

ダリナが臨戦態勢を整える隙など、ハートは与えない。
もうほとんど…意識など無いだろうが、ハートの猛攻は止まらない。

「お、おまちくださいぃぃっっ!!」

その言葉と共に、馬車から滑り出してきたのは、グレリオだった。

「そ、それ以上は、お姉様が…ぶべっ!!」

間に入ったグレリオの顔を…ハートの仕込みトンファーが襲う。
何だか…やっぱり顔中心にやっているよ…。

ああ…何かわかった。
ダイヤは…2人の顔が嫌いだからな…。
2人に罪はないが…罪が出来たこの時を狙って、これ幸いにやってるんだな…うん。

……心から、ほっとこう。
自ら犯罪者になりに来た奴なんか、それでええわ。

んで…ひとしきり叩き終わると満足したのか、

「じゃ、拘束ヨロシクぅ~。護衛騎士の皆さま~」

スッゴイ明るい声で、のたまう…。

まあ…この2人はいいとして…まだ馬車から出てこない奴は、どうするか…。
無理に引きずり出して、本当に病人や怪我人みたいに、振舞われても厄介だな…。
私がそんな事を考えていたら、

「フォルト!!馬車に火矢を打ち込め!!」

戦争経験者ゆえか、警察機構のトップゆえか、ギリアムは…犯罪者に容赦などしない。

「御意!!」

フォルトがすぐさま護衛騎士に準備させ、矢を放つ準備が整う。

「打てぇっ!!」

フォルトの声は…とてもキビキビして、通りがいい。
火矢が放たれ…火が馬車に燃え移る。

さてと…私は…火に巻かれる馬車を見守る。
多分…あと一人乗っているハズだ…。

出てこずに死んだとしても、自業自得だから、別にいいんだけどね…。
事後処理が面倒くさいだろうな~は、思っていた。

……ら。

何だか…馬車の出口から、言い争う声が…。

「……からひとまず出てください!!」

「ダメよ!!あちらが助け出そうとするまで…」

「死にますよ、本当に!!」

「こうでもしないと…」

「いいから出てください!!」

突き飛ばされる形で、ダリアが出てきおった。
その後…馬車から出たのは…イライザかい。

一緒に乗ってたのか…。まあいいけど。

出てきた後…馬車から引き離すため…というより、腹に据えかねての行動だろう。
ハートが二人の事もぶん殴り、遠くに飛ばした。

侵入犯はひとまず…引き取る人間が現れるまで、牢屋に繋いどけって、ギリアムが指示した。
んで、ヒルダ夫人の元に戻る。

今あったことを話すと…。

「あらまあ…」

さすがのヒルダ夫人も、言葉が無いようだ。

「奥様…この際もう、日記と遺書だけじゃなく、真実を全てぶちまけませんか?
あと…ローエン閣下とツァリオ閣下への遺書は…あちらが閲覧をやめてくれと言ったり、
ラスタフォルス侯爵家に渡せと言ったら、処分したいです」

ダイヤが…横から口を出した。

「まあね…。もう…庇いだてする範疇は、とっくに超えたわね」

私の言葉に、

「その通りだ。
ここまでしてやって…さらにこんな問題を起こすんじゃ、全ての傷を受けた方がましだ」

ギリアムも呆れるを通り越しているようだ。

「もうオレ嫌ですよ…特にあの女に執着されるの…。
旦那が抑えられるなら、少し様子を見てもいいと思ったんですよ。
奥様が言うように、旦那はマトモだし、いい人間みたいですから…。
何より間接的にでも、奥様やご当主様の役に立っているなら、オレはまあ…よかったし」

ダイヤは…恐れるというより、呆れかえる…だったんだろう。

「ダリナとグレリオだってそうですよ。
もういい大人なのに、あそこまであの女に協力するんじゃ…、害にしかならない。
こちらに接触してこないなら、少なくとも罪はないと思ったから、見逃してやりましたが…、
自分から罪人になりに来ているんだから、容赦はしたくない」

……まあ、その意見には私も賛成。

「でも…もしそうするなら、イザベラ夫人を関わらせないわけには、いかないわよ」

これなんだよ。私のネックは。
するとダイヤは…一瞬だけ眼をつぶり…その後すぐに私の目を見て、

「オレは…オレの家族は、フィリー軍団の皆と、奥様…ご当主様です。
そして…生涯ファルメニウス公爵家のお役に立ちたいです!!
だから…その障害となる者は、できるだけ排除したい。
その為にあの女に会う必要性があるなら、そうします」

ダイヤの目には…確固たる信念の色がうかがえた。
それは傍で見ていたギリアムにもわかったよう。

「オレはもう小さい子供じゃない。いい大人です!!」

言い切るその姿に…迷いは無いように思えた。
私とギリアムは意を決して、

「ヒルダ夫人…。イザベラ夫人を説得してください」

「と、いいますと?」

「今から…関係者全員に揃ってもらって…」

私は…少し下を向き、目線をそらし、

「全ての事に…決着を付けようと思います!!」

ギリアムも…頷いている。

「その内容は…イザベラ夫人も聞くべきだと思います。
ダイヤの気持ちがどうであれ、最重要の当事者です。
場合によって、確認せねばならぬこともあるでしょう。
そもそも今日ダリア夫人が、こんな強引にファルメニウス公爵家にやって来たのは、
イザベラ夫人を捕える事が、目的でもあると思うのです」

日記と遺書の内容がどうであれ、全てイザベラ夫人のせいにしてしまえばいい。
それが…目的だろうから。

もちろんヒルダ夫人も、その考えに至ったようで、

「わかりました。イザベラは私が説得いたします。
でも…ダイヤ…アナタが喋りたくなければ、もちろん喋らなくていいです。
アナタに自分からは話しかけないように、よく言って聞かせます。
それを破ったら、どうなっても私は知らないとも言います」

ああ本当に…しっかりした人だこと。

ギリアムは…ダイヤの方を改めて向き、

「よく決心したな…。私はキミの意思を尊重する。
今後ともしっかり、フィリーの為に働いてくれ」

とさ。

「ありがとうございます。ご当主様…」

ダイヤは…深々と頭を垂れている。

「あの…ギリアム。これは私の全くの予想なのですが…」

私は…ヒルダ夫人の話を聞いて、予想したことを話した…。
ギリアムは…少し考えた後、

「確かに…。それならあの執着っぷりも、異常性も少し理解できるな…。
まあ、同情はせんが」

「私もです…。だから…出来れば今日で仕留めたい。
これ以上、ダイヤに付きまとわれちゃ、たまったもんじゃない」

「そうだな…」

私とギリアムの意見がまとまった所で、フォルトに指示し…こちらの調査で集めた資料を
持ってきてもらう事にした。
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