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第2章 急襲
2 関係者、全員集合
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集められた関係者は…やっぱりそれなりの数になった…しょうがないけど。
面倒くさいが、列挙しておこう。
ラスタフォルス侯爵家から、グレンフォ卿、ルイス、ヒューバートもだ。
あ、ヒルダ夫人とイザベラ夫人も来ているよ、もちろん。
んで…近衛騎士団から、ローエンじい様、ローカスとベンズ。
そいで…ガルドベンダからツァリオ閣下…どうしてかって?それは後で話す。
以上だ。
それが揃った時…もう面倒くさいから、捕らえた人間全員に、お越し願った。
「ギリアム公爵閣下…昨日の今日で、本当に申し訳ございません」
グレンフォ卿の開口一番は…やっぱり謝罪だった。
「まあ…覚悟はできているものとみなすから、別に構わんさ」
ギリアムの答えは…非常に抑揚が無く、シンプルだった。
「お待ちください!!ファルメニウス公爵家に来たのは、イザベラを引き渡してもらうためです!!
話しをしてもらえれば、無礼を働くつもりはありませんでした!!」
ダリア…もう、黙っといた方が、いいと思うんやけど…。
「あの~、無礼を働く気が無かった人間が、どうしてメイドを人質にとるんです?
言動不一致人間は、誰にも信用されませんよ」
口出したよ…さすがに。
「そ、それは、話も聞かずに、追い出そうとしたからで…」
今度はダリナが出てきたが、
「予約もなし、尋ねてきた人間の名前も言わない…では、追い返されるのが普通ですよ。
どこの家でも、大抵はそうだと思います。
急病と言われたから、防衛できる人間に、様子を見せに行かせた。
それを羽交い絞めにしておいて、今更話し合いがしたいなど、よく言えましたね」
本当のホントに、呆れ声しか出てこんわ。
「仰ること、いちいちごもっともです!!
もはや、いかようなる罪に問われても、致し方ございません!!」
また謝るのは、グレンフォ卿なわけ?
「グレンフォ卿…もう、黙っていていただけませんか?
先ほどから見ていて、アナタばかりが謝っている…。
当事者たちが言い訳ばかりで反省していない以上、こちらは許す気はありません」
ギリアムも…かなり据えかねたよう。
グレンフォ卿…かなり顔色が悪いや…。
何だかなぁ…。
「実は…ダイヤから提案がありましてね。
ダリア夫人はこのままだと…自分への執着をやめないと思う。
だから…もうこの際、真実を全て…公表してハッキリさせた方がいいと。
ああ、グレッド卿の日記と遺書以外にも、色々あるんですよ」
これには…関係者全員が、かなり驚愕の表情だったが、気にせず進み出たダイヤは、
「あのさ…グレンフォ卿…。
オレは公式演武の時に、アンタに嘘はつかなかった…。
でも、全ての真実を、話したわけじゃない」
「それは…裁判で言っていたそうだな…。
遺書と日記が残っていて…保管していると…」
「…っていうか、アンタどうして、あそこにいなかったのさ。
アンタがいれば…カミさんの醜態も、もうちょっとマシだと思うが?」
これは正直、私も疑問に思った。
グレンフォ卿の姿が…無かったからさ…。こんな大事な裁判を投げ出すなんて…。
「それは…母の邸宅から使いがきて…。
母が急に倒れて…危篤になるかもしれないと…。
ただ…行ってみたら、そんな事実はないと…」
ありゃま…。多分相手方の作戦だろーな…。
まんまとしてやられたか…。
ヒルダ夫人の居住は王都の外れだから、中心地から行ったら…帰ってきたのは裁判が
終わった後だったろうなぁ…。
文字通り、後の祭り…か。
「ギリアム公爵閣下!!オルフィリア公爵夫人!!」
これに対しては…ヒルダ夫人がキツイ声を上げた。
「それに対して、一切の同情は不要です!!
そもそも近衛騎士団なり王立騎士団なり…入団する際、親の死に目に会えない事を、
了承せよとなっております!!」
そうなんだよね…。
国務を放り出すような人間、そもそもいらないからさ…。
「その近衛騎士団に…半世紀近くいるにもかかわらず、あのような大事な裁判を
親の死に目に会うために、すっぽかしたのなら!!本人の自業自得です!!」
うわ~お、厳しい…。
でも、ラスタフォルス侯爵家も、コウドリグス侯爵家同様…代々近衛騎士団の家系
だからな…。確かヒルダ夫人の旦那も近衛騎士団員で、任務中に死んだって…。
あ…ダリアがヒルダ夫人を睨んでる。
アンタって…本当におこちゃまなんだねぇ…。
「母上の仰る通りです、ギリアム公爵閣下…。全ては自分の不徳の致すところ…」
あくまで事実を告げただけで、同情してもらう気は、グレンフォ卿にないのが救いだな。
「まあいいや。オレには関係ない事さ…。
それじゃ、真実を公表するとするか…」
ダイヤは…えらい事務的だ。
「ギリアム坊主…逆に全ての真実を、なぜ裁判で語らんかった?」
言葉が出ないグレンフォ卿のかわりに…じい様が聞いてきたよ。
「……ローエン閣下なら、お分かりかと思うが…。
真実というのは、決して人に救いをもたらすものばかりでは、ありません…。
真実がわかったからこそ、奈落に突き落とされてしまう者もいます…」
ギリアムが…少しだけ言葉を止めた。
「ダイヤの記憶から、我々は住んでいた町に到達し…そこで調査を行いました。
その結果出てきたものは、ハッキリ言って…当事者を救うより、奈落に落とす可能性の方が、
大きかった」
「それで…フィリーとダイヤとも相談しましてね。
この事実を…全てではなく、断片的に話し、その上でダイヤの気持ちを…希望を伝えることに
しました」
「それで向こうが、ダイヤの気持ちや希望を、最大限に尊重するなら…いい関係を築くのも
悪くない…とね。
しかし…実際は何度言っても、執着することをやめず…あまつさえ犯罪にまで手を染める事態に
なっては…もう、隠しておく義理などないと判断しました」
ギリアムの口調は…やっぱり淡々としているからこそ、聞く者の不安と詮索を煽った。
「日記と遺書以外に、一体何が出てきたんじゃ?」
さすがのじい様も…緊張しているよう。
「ご当主様…ここからはオレが自分で話します…。
だから、補足があれば、お願いします」
ダイヤが…出てきた。
「わかった。キミの好きにしたまえ」
ギリアムは…黙って引く。
「親父の日記と遺書は…明日、公開することになっているからな…。
それはひとまず置いておいて…」
「そ、それはラスタフォルス侯爵家にあるべきものです!!すぐにお返しください!!」
やっぱりダリアか…。
「そもそも、なんと書いてあったのだ?」
グレンフォ卿は…本当に何も知らないんだな…。
反応の違いでよくわかる。
「止めてくださいアナタ!!すぐに引き取ってください!!
家に帰ってから、みなで見ればいい話です!!」
グレンフォ卿の話を遮るように、ダリアがひときわ大きな声で叫んだ。
あ~あ、こりゃ…余計黒だって言っているようなもんだなぁ…。
「まあ、待てよ…順を追って話すから。
まずオレが…グレンフォ卿に言った、親父からワッペンを託されて、王都の赤い制服の人に
見せろ…の下りは確かに言われたが…。
途中にワンクッションあったのさ」
「ワンクッション?」
「ああ。まず協会の神父さんを頼れ。あの人には全部説明してある。
もし神父さんを頼れないなら、王都に行って…だったのさ」
ダイヤの説明を…食い入るように聞くのは、みな同じだった。
「オレは親父の顔は覚えちゃいないが、この言葉だけは何度も言われて復唱させられたから、
鮮明に覚えてるんだよ。
そういえば少し…咳をしながらだったから、もう…病気で先が長くない事、わかっていたんだ
ろうなぁ…」
その言葉に…グレンフォ卿の目が僅かにうるんだ…。
「んで、調査のため神父さんに会った時、神父さんは預かっていた親父の日記と遺書を渡してくれて、
親父から聞いていた話も、全部してくれたんだ」
ダイヤは…本当に他人事のように語っている。
「とにかく遺書と日記を、引き渡してください!!」
うるっさいなぁ…ダリア…。
猿ぐつわかましてもいいんだけど、喋れるようにしといた方が、いいとも思うしなぁ…。
私はそんなことを思っていたが、ダイヤも思ったらしく、
「うるっせーな、くそばばぁ。
そもそも親父はテメェやラスタフォルス侯爵家の人間には、自分の事聞かれても、絶対に知らぬ存ぜぬ
を通してくれって言ってたんだよ…。
だからテメェらに親父のものを渡さないのは、親父の意思だよバーカ!!」
ダイヤのダリアへの視線は…、氷の礫をぶつけているようだった。
「それはいったいどういう事だ!!説明してくれ!!」
詰め寄ってきたグレンフォ卿に、やっぱり冷たい目を向けつつ、
「アンタさ…。ホントに何も気づかなかったのかよ…。
アンタのカミさんが…その周りが…、親父に何をしていたか…」
「え…」
グレンフォ卿の呆けた表情を見て、深いため息をつき、
「その様子じゃ…ホントに知らなかったんだな…」
言い捨てると、
「そもそも遺書は複数あったが…ラスタフォルス侯爵家宛てのモノなんてないぜ。
遺書は…オレへと…ツァリオ閣下、ローエン閣下へのモノだ」
ツァリオ閣下とローエンじい様は、家族をすっ飛ばして自分たちに当てられた遺書しかない…と
聞いて、困惑を隠せないようだ。
「見ます?」
2人に対し、ぶっきらぼうに聞く。
「そ、そりゃあまあ…」
何で自分?…って空気が、ふんだんに出てるね…2人とも。
まあ、遺書って普通、自分の子供や親族に当てるものだ。
「条件があります」
「なに?」
「偽装したと言われないために、未開封で取ってあります。
その封を開けたら、まずはご当主様と奥様に見せてください。
その後…この場で読み上げてください。
最初、遺書は…宛てられた本人に任せようかと思っていたのですが、ここまで迷惑を
掛けられたら、配慮はしません!!
イヤなら捨てます。
オレは正直、そんなものどうでもいいんで」
ツァリオ閣下とローエンじい様はお互いを見てから、地面とダイヤを交互に見て、少し考える。
やがて…。
「わかった。こうまで強硬な態度を崩さぬでは…致し方あるまいよ」
「わしも了承する…」
2人とも…オッケーしたよ。
ツァリオ閣下は…メイリン達が今回の騒動を起こしたことを重く見てるのだろう。
ローエンじい様は当事者じゃないが、関りはあるからな…。
「止めてください!!遺書は…せめて主人に渡してください!!」
ダリアが最後のあがきをしているが…、
「やめんか!!ダリア!!お2人は信用できる人間だ!!
逆にお前は、何でそんなに引き取りたがるんだ!!おかしいぞ!!
内容を知っているわけでもあるまいに!!」
さすがのグレンフォ卿も…擁護できなくなってきたみたい。
ダリアは…旦那にそう言われて、黙って下を向くしかなくなったようだ…。
内容は知らないが…おそらく予想できるんだろう…な。
「では…持ってこさせます」
ギリアムが使用人に指示する。
面倒くさいが、列挙しておこう。
ラスタフォルス侯爵家から、グレンフォ卿、ルイス、ヒューバートもだ。
あ、ヒルダ夫人とイザベラ夫人も来ているよ、もちろん。
んで…近衛騎士団から、ローエンじい様、ローカスとベンズ。
そいで…ガルドベンダからツァリオ閣下…どうしてかって?それは後で話す。
以上だ。
それが揃った時…もう面倒くさいから、捕らえた人間全員に、お越し願った。
「ギリアム公爵閣下…昨日の今日で、本当に申し訳ございません」
グレンフォ卿の開口一番は…やっぱり謝罪だった。
「まあ…覚悟はできているものとみなすから、別に構わんさ」
ギリアムの答えは…非常に抑揚が無く、シンプルだった。
「お待ちください!!ファルメニウス公爵家に来たのは、イザベラを引き渡してもらうためです!!
話しをしてもらえれば、無礼を働くつもりはありませんでした!!」
ダリア…もう、黙っといた方が、いいと思うんやけど…。
「あの~、無礼を働く気が無かった人間が、どうしてメイドを人質にとるんです?
言動不一致人間は、誰にも信用されませんよ」
口出したよ…さすがに。
「そ、それは、話も聞かずに、追い出そうとしたからで…」
今度はダリナが出てきたが、
「予約もなし、尋ねてきた人間の名前も言わない…では、追い返されるのが普通ですよ。
どこの家でも、大抵はそうだと思います。
急病と言われたから、防衛できる人間に、様子を見せに行かせた。
それを羽交い絞めにしておいて、今更話し合いがしたいなど、よく言えましたね」
本当のホントに、呆れ声しか出てこんわ。
「仰ること、いちいちごもっともです!!
もはや、いかようなる罪に問われても、致し方ございません!!」
また謝るのは、グレンフォ卿なわけ?
「グレンフォ卿…もう、黙っていていただけませんか?
先ほどから見ていて、アナタばかりが謝っている…。
当事者たちが言い訳ばかりで反省していない以上、こちらは許す気はありません」
ギリアムも…かなり据えかねたよう。
グレンフォ卿…かなり顔色が悪いや…。
何だかなぁ…。
「実は…ダイヤから提案がありましてね。
ダリア夫人はこのままだと…自分への執着をやめないと思う。
だから…もうこの際、真実を全て…公表してハッキリさせた方がいいと。
ああ、グレッド卿の日記と遺書以外にも、色々あるんですよ」
これには…関係者全員が、かなり驚愕の表情だったが、気にせず進み出たダイヤは、
「あのさ…グレンフォ卿…。
オレは公式演武の時に、アンタに嘘はつかなかった…。
でも、全ての真実を、話したわけじゃない」
「それは…裁判で言っていたそうだな…。
遺書と日記が残っていて…保管していると…」
「…っていうか、アンタどうして、あそこにいなかったのさ。
アンタがいれば…カミさんの醜態も、もうちょっとマシだと思うが?」
これは正直、私も疑問に思った。
グレンフォ卿の姿が…無かったからさ…。こんな大事な裁判を投げ出すなんて…。
「それは…母の邸宅から使いがきて…。
母が急に倒れて…危篤になるかもしれないと…。
ただ…行ってみたら、そんな事実はないと…」
ありゃま…。多分相手方の作戦だろーな…。
まんまとしてやられたか…。
ヒルダ夫人の居住は王都の外れだから、中心地から行ったら…帰ってきたのは裁判が
終わった後だったろうなぁ…。
文字通り、後の祭り…か。
「ギリアム公爵閣下!!オルフィリア公爵夫人!!」
これに対しては…ヒルダ夫人がキツイ声を上げた。
「それに対して、一切の同情は不要です!!
そもそも近衛騎士団なり王立騎士団なり…入団する際、親の死に目に会えない事を、
了承せよとなっております!!」
そうなんだよね…。
国務を放り出すような人間、そもそもいらないからさ…。
「その近衛騎士団に…半世紀近くいるにもかかわらず、あのような大事な裁判を
親の死に目に会うために、すっぽかしたのなら!!本人の自業自得です!!」
うわ~お、厳しい…。
でも、ラスタフォルス侯爵家も、コウドリグス侯爵家同様…代々近衛騎士団の家系
だからな…。確かヒルダ夫人の旦那も近衛騎士団員で、任務中に死んだって…。
あ…ダリアがヒルダ夫人を睨んでる。
アンタって…本当におこちゃまなんだねぇ…。
「母上の仰る通りです、ギリアム公爵閣下…。全ては自分の不徳の致すところ…」
あくまで事実を告げただけで、同情してもらう気は、グレンフォ卿にないのが救いだな。
「まあいいや。オレには関係ない事さ…。
それじゃ、真実を公表するとするか…」
ダイヤは…えらい事務的だ。
「ギリアム坊主…逆に全ての真実を、なぜ裁判で語らんかった?」
言葉が出ないグレンフォ卿のかわりに…じい様が聞いてきたよ。
「……ローエン閣下なら、お分かりかと思うが…。
真実というのは、決して人に救いをもたらすものばかりでは、ありません…。
真実がわかったからこそ、奈落に突き落とされてしまう者もいます…」
ギリアムが…少しだけ言葉を止めた。
「ダイヤの記憶から、我々は住んでいた町に到達し…そこで調査を行いました。
その結果出てきたものは、ハッキリ言って…当事者を救うより、奈落に落とす可能性の方が、
大きかった」
「それで…フィリーとダイヤとも相談しましてね。
この事実を…全てではなく、断片的に話し、その上でダイヤの気持ちを…希望を伝えることに
しました」
「それで向こうが、ダイヤの気持ちや希望を、最大限に尊重するなら…いい関係を築くのも
悪くない…とね。
しかし…実際は何度言っても、執着することをやめず…あまつさえ犯罪にまで手を染める事態に
なっては…もう、隠しておく義理などないと判断しました」
ギリアムの口調は…やっぱり淡々としているからこそ、聞く者の不安と詮索を煽った。
「日記と遺書以外に、一体何が出てきたんじゃ?」
さすがのじい様も…緊張しているよう。
「ご当主様…ここからはオレが自分で話します…。
だから、補足があれば、お願いします」
ダイヤが…出てきた。
「わかった。キミの好きにしたまえ」
ギリアムは…黙って引く。
「親父の日記と遺書は…明日、公開することになっているからな…。
それはひとまず置いておいて…」
「そ、それはラスタフォルス侯爵家にあるべきものです!!すぐにお返しください!!」
やっぱりダリアか…。
「そもそも、なんと書いてあったのだ?」
グレンフォ卿は…本当に何も知らないんだな…。
反応の違いでよくわかる。
「止めてくださいアナタ!!すぐに引き取ってください!!
家に帰ってから、みなで見ればいい話です!!」
グレンフォ卿の話を遮るように、ダリアがひときわ大きな声で叫んだ。
あ~あ、こりゃ…余計黒だって言っているようなもんだなぁ…。
「まあ、待てよ…順を追って話すから。
まずオレが…グレンフォ卿に言った、親父からワッペンを託されて、王都の赤い制服の人に
見せろ…の下りは確かに言われたが…。
途中にワンクッションあったのさ」
「ワンクッション?」
「ああ。まず協会の神父さんを頼れ。あの人には全部説明してある。
もし神父さんを頼れないなら、王都に行って…だったのさ」
ダイヤの説明を…食い入るように聞くのは、みな同じだった。
「オレは親父の顔は覚えちゃいないが、この言葉だけは何度も言われて復唱させられたから、
鮮明に覚えてるんだよ。
そういえば少し…咳をしながらだったから、もう…病気で先が長くない事、わかっていたんだ
ろうなぁ…」
その言葉に…グレンフォ卿の目が僅かにうるんだ…。
「んで、調査のため神父さんに会った時、神父さんは預かっていた親父の日記と遺書を渡してくれて、
親父から聞いていた話も、全部してくれたんだ」
ダイヤは…本当に他人事のように語っている。
「とにかく遺書と日記を、引き渡してください!!」
うるっさいなぁ…ダリア…。
猿ぐつわかましてもいいんだけど、喋れるようにしといた方が、いいとも思うしなぁ…。
私はそんなことを思っていたが、ダイヤも思ったらしく、
「うるっせーな、くそばばぁ。
そもそも親父はテメェやラスタフォルス侯爵家の人間には、自分の事聞かれても、絶対に知らぬ存ぜぬ
を通してくれって言ってたんだよ…。
だからテメェらに親父のものを渡さないのは、親父の意思だよバーカ!!」
ダイヤのダリアへの視線は…、氷の礫をぶつけているようだった。
「それはいったいどういう事だ!!説明してくれ!!」
詰め寄ってきたグレンフォ卿に、やっぱり冷たい目を向けつつ、
「アンタさ…。ホントに何も気づかなかったのかよ…。
アンタのカミさんが…その周りが…、親父に何をしていたか…」
「え…」
グレンフォ卿の呆けた表情を見て、深いため息をつき、
「その様子じゃ…ホントに知らなかったんだな…」
言い捨てると、
「そもそも遺書は複数あったが…ラスタフォルス侯爵家宛てのモノなんてないぜ。
遺書は…オレへと…ツァリオ閣下、ローエン閣下へのモノだ」
ツァリオ閣下とローエンじい様は、家族をすっ飛ばして自分たちに当てられた遺書しかない…と
聞いて、困惑を隠せないようだ。
「見ます?」
2人に対し、ぶっきらぼうに聞く。
「そ、そりゃあまあ…」
何で自分?…って空気が、ふんだんに出てるね…2人とも。
まあ、遺書って普通、自分の子供や親族に当てるものだ。
「条件があります」
「なに?」
「偽装したと言われないために、未開封で取ってあります。
その封を開けたら、まずはご当主様と奥様に見せてください。
その後…この場で読み上げてください。
最初、遺書は…宛てられた本人に任せようかと思っていたのですが、ここまで迷惑を
掛けられたら、配慮はしません!!
イヤなら捨てます。
オレは正直、そんなものどうでもいいんで」
ツァリオ閣下とローエンじい様はお互いを見てから、地面とダイヤを交互に見て、少し考える。
やがて…。
「わかった。こうまで強硬な態度を崩さぬでは…致し方あるまいよ」
「わしも了承する…」
2人とも…オッケーしたよ。
ツァリオ閣下は…メイリン達が今回の騒動を起こしたことを重く見てるのだろう。
ローエンじい様は当事者じゃないが、関りはあるからな…。
「止めてください!!遺書は…せめて主人に渡してください!!」
ダリアが最後のあがきをしているが…、
「やめんか!!ダリア!!お2人は信用できる人間だ!!
逆にお前は、何でそんなに引き取りたがるんだ!!おかしいぞ!!
内容を知っているわけでもあるまいに!!」
さすがのグレンフォ卿も…擁護できなくなってきたみたい。
ダリアは…旦那にそう言われて、黙って下を向くしかなくなったようだ…。
内容は知らないが…おそらく予想できるんだろう…な。
「では…持ってこさせます」
ギリアムが使用人に指示する。
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