ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第2章 急襲

3 遺書の前にもう一つ

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「さてと…じゃあ、手紙が来るまでにもう一つ、話をしておく…」

ダイヤは…ダリナとグレリオをちらりと見て、

「あの2人は…親父の子じゃない」

サラッと爆弾発言。

「なっ!!どういうことだ!!」

すかさずグレンフォ卿が食って掛かるが、

「親父が死んだのは、オレが3歳の時…。
ダリナが生まれたのは、オレが5歳の時だ…。
その後生まれたグレリオは、言わずもがなだろ」

冷静に…れいせーいに答えるダイヤ。

「これは…こちらの調査でも裏が取れました。
グレッド卿は例の神父さんの教会に埋葬されたのですが、大変几帳面でしっかりした方でね…。
埋葬した人の、亡くなった日付を正確に記録していたのです。
そして…ダイヤを取り上げた産婆が、ダリナ嬢とグレリオ卿も取り上げているのですが…やっぱり
出生日をしっかりと記録していました。
正確には…グレッド卿が死んでから、ダリナ嬢が生まれるまで、一年半の開きがありました」

ギリアムの言葉が終わると同時に、イザベラの方を向いたダイヤが、

「まっ、アンタが何で、2人とも親父の子だなんて、嘘ついたかは知らねぇがな。
調べりゃバレるぜ?ああ、それとも…」

ダイヤはここで…ちょっと言葉を止め、含みを持たせるように、

「オレがもう死んでるから、バレないと思ったのかね…。
だったら、残念でした~。
ま、オレとしては、どっちでもいいけど~」

大分…茶化す様に、言っている。
イザベラは…震えているだけで、言葉は発しない。

ダイヤの視線は2人に移るが、

「へえ…お前ら…」

「この事実…知ってたのかよ…」

私も…2人を見ていて、そう思った。
信じられない事実を告げられた…というより、前もって知っていたけれど、信じたくない
事実を告げられた…そんな風に見えたから。

「何年か前…」

グレリオがボソボソと言う。

「酒に酔った傍系の奴が、言っていたんだ…。
お前ら2人は、ラスタフォルス侯爵家の血じゃない…。
しょーもない犯罪者の血だと…」

「その後しらふの時に聞いたら…、そんなこと言ってないの一点張りだったから…。
そのままになったけど…」

グレリオの目から、ぽたぽたと垂れた涙が、地面に吸い込まれる。

「私もお姉様も…父にも母にも似ていなくて…。
この髪色だって眼の色だって、先祖の誰とも似ていない…。
だから…妙に信憑性があって…怖くて…」

ダリナは…何も喋らないが、その顔色が…やはりグレリオのいう事を、知っていたと告げる。

「間違いなく傍系は、真実を知っているぞ。
私が調査した数年前も…やはりグレッド卿とイザベラ夫人の肖像画を持って、しきりに聞きまわって
いた人間が、いたらしいからな」

「まあ神父さんは遺書と日記は、グレッド卿が指定した人間以外には、話さないで欲しいと
言っていたから、肖像画がキリーとティカに似ている事と、キリーがいつ死んだか…話した
だけだったそうだ。
産婆の方は…事情は何も知らなかったから、やっぱり知っていることを話しただけだったそうだが…、
それでも十分、あちらとしては、知りたかった情報なのだろう」

「恐らくグレリオ卿が、後継者として正式にお披露目されるか、グレンフォ卿が亡くなった時に…、
2人を追い落とすための、ネタにする気だろう」

グレンフォ卿…さすがにへたり込んじゃったよ…。

「お前さんの義父は、貴族ではないのか?」

当然の疑問を、じい様が投げかけるが、ダイヤは嘲笑うような笑みをこぼし、

「貴族どころか、身分証を作ることが出来ない…難民ですよ。
ご当主様の調べで分かったんですけどね。
どうも…自分の国でも、しょーもない犯罪起こして、この国に逃げてきたらしいですよ。
だから…外ズラよく家に転がり込んでからは、毎日働きもせず酒浸り。
親父が残したなけなしの金は、殆どコイツの酒代になっちまった」

「挙句金が無くなると…オレに近くの店で、置き引きやらせるんです。
バレて殴られても助けてくれるどころか…ヘマしたオレを家でまた殴って…。
ああ、失敗すると飯は食わせてもらえなかったな。
しかも変なところで、ずるがしこいから、あの女にも一緒にオレを殴らせてた。
バレたら全部、あの女に罪を着せて、逃げる気だったんだろーな」

ああ…じい様の眉毛がハの字になった挙句、めっちゃへこんだ。
ツァリオ閣下も同様だ…。

「補足しますが、ダイヤの義父は酒に酔っては暴れていたらしく、度々王立騎士団のお世話に
なっていましてね。似顔絵が残ってました。
ダイヤが…ダリナ嬢とグレリオ卿の顔が、父親に瓜二つだと言いましたが、それも裏が取れました。
あと、余計な事ですが、数年前に調べに来た傍系…この父親の犯歴と似顔絵…全部複写していった
ことも、付け加えさせてもらいます」

もう…追い落とす気満々だよね。

「その男は、今どうしとるんだ?」

じい様が…さらにへこんだ眉毛で聞いてきた。

「死にました」

「!!処刑されたんか?」

「いいえ。グレリオ卿が生まれた直後…酒に酔って階段で足を滑らせ…そのまま」

ここで…ダイヤに代わる。

「まあだから、あの女が言った、グレリオが生まれた直後、父親が死んだ…は、間違ってねぇ。
2人の父親は確かに、あの女が戻る直前に死んでいるからよ」

声の抑揚さ加減から…本当にどうでもいい事を、話している風だ。

そんな最中…ツァリオ閣下とローエンじい様への手紙が届く。

「未開封であることを、確認してください」

ギリアムが封筒を渡せば、

「確かに…」

短い言葉の後、じい様はペーパーナイフで封を開け、中の手紙をギリアムに渡す。

ギリアムは…眼を通した後、私に渡して…私は読んで、ダイヤに渡そうとしたら、自分はいいって…。
本当に…どうでもいいんだなぁ…親の事…。
ま、私も前世の実親が残した手紙なんてのが出てきても、同じ態度だったろうけど。
どうでもいいってより…今更見て、どうすんの?…って感じだろうな…うん。

「では…どうぞ、ローエン閣下」

ギリアムに渡された手紙を見たら、まあじい様の眉毛が…過去最高位にひしゃげちゃったよ。

「な、なんと書いてあったのですか!!」

当然詰め寄るグレンフォ卿に、じい様はどう言っていいものか…と思ったようだが、さりとて
ダイヤとの約束もあるから…。

「今から読み上げるが…。覚悟しろよ。相当キツイぞ」

以下…グレッドの遺書

ローエン閣下…。
突然このような手紙を受け取り、さぞ驚かれたことでしょう。
ですが、父母に対抗できる人間は少なく、無礼を承知で書かせていただきました。
私は…残念ですが余命いくばくもありません。
決して治らぬ病気ではありませんが、莫大な金がかかります。
私が…貴族出身であると見抜いている知り合いからは、私にしきりに家に帰るよう勧められましたが、
断固拒否しました。
あんな家に帰るくらいなら、死んだ方がマシだからです。
ですが…残されるイザベラと息子・キリアンに対してだけ、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
アナタには耳の痛い話でしょうが、私の親は巷で言われるような、いい人間ではありません。
私を長い間虐待し続けた…最低最悪の親です。
私の味方をしてくれた使用人を…紹介状も年金も出さず、身一つで追い出すような親です。
私は…騎士になりたいと思った事は、一度もありません。
ずっと…女性用アクセサリーの細工師になりたいと、思っていました。
でもそれを言ったら…軟弱だと言って、私の気に入っていた絵本も細工の本も…道具も…
全て燃やされてしまいました。
父も母も周りも…だれも耳を貸してくれなかった。
かわりにいつも…修練場に引っ張って行かれ、体が動かなくなるまで、騎士の訓練をさせられ
ました…。
それでも最初は…頑張れば、私の希望を聞いてくれるだろうと思い、修練に励みました。
でも…それは大きな間違いだった。
どんなに剣をやっても、いい成績を残しても、望む職についても…父母や周りは変わらず
私の嫌な事ばかり、押し付けてきました。
私の希望は…一度も聞いてもらえなかった…。
だから逃げた…。愛するイザベラと共に…。
イザベラと暮らし、息子・キリアンが生まれ…細工師として生きたこの4年…私は本当に
幸せでした。
やっと…この世に生まれたことを、神に感謝できた…。
だから悔いはありません。
でも心残りは、イザベラとキリアンです。
ラスタフォルス侯爵家に任せれば…父母は…周りは…私がこのような生き方を選んだこと、
私の意志ではなく、全てイザベラがたぶらかしたと言い、無実のイザベラを貶めるでしょう。
そしてキリアンを奪い取り、私と同じように…自分たちの虚栄心を満たすためだけに、牢獄に入れ
育てるでしょう。
キリアンの意志など、何も聞かずに…。
ローエン閣下…何卒お願いです。
父母から…ラスタフォルス侯爵家から、キリアンを…イザベラをお守りください。
キリアンが私のような、犠牲者にならぬよう、お守りください。
そしてもう一つ…。
キリアンにイライザを絶対に近づけないでください。
あの女は…実の妹の目を潰しても、平然としていられる、血も涙もない女です。
キリアンを殺すくらい、平気でするでしょう…。
何もお返しできない状態で、このようなお願いが無作法とわかっておりますが、
何卒お願い申し上げます。
キリアンには…ラスタフォルス侯爵家が私にした悪事を記録した、日記を持たせました。
実は…複写したものを、ラスタフォルス侯爵家の私の自室に置いてきました…。
恐らく処分されているでしょう。
でも…それが奴らが悪事を隠ぺいした、何よりの証拠とお考え下さい。
どうかどうか…イザベラとキリアンを、くれぐれもよろしくお願いいたします…。

追伸…ツァリオ閣下にも、遺書を残しました…。
どうか…協力してキリアンを…イザベラをお守りくださるよう、重ねてお願い申し上げます。
                              
                            グレッド・ディル・ラスタフォルス

まあ…遺書の公開が終わった後の反応は…様々だった。
グレンフォ卿はへたばっちゃうし…。
ダリアは奇声を発しながら、泣きわめくし…。
イライザは突っ伏して泣いているし…。
他の人間は…死人の方がまだマシ…ってくらい、青くなっている。

「なんだか…本当に凄い内容ですね…」

他人事だからこそのローカスが、ローエンに話しかけている。

「…信じられません。
グレンフォ卿もダリア夫人も…そのようなタイプではないハズなのですが…」

ベンズも…どういう表情をしていいのやら…と言う顔だ。

そんな中…。

「では次は…ツァリオ閣下の遺書の番ですね」

「い、いや…。ちょっと待たないか、ギリアム公爵閣下…」

さすがのツァリオ閣下も…この状況で言うんですか?…みたいな顔だ。
無理もないが…。

「じゃ、焼却炉に持って行きますよ、ご当主様…」

なんて、ダイヤが手を出すから、

「ま、待ってくれ!!見ないとは言っていない!!」

慌てて遺書を受け取るツァリオ閣下…。
なんともなぁ…。

それじゃ…次の発表、いってみよか…。
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