ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第2章 急襲

6 言いたいことは言う

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さてと…ひとまずラスタフォルス侯爵家の事は、ひと段落だ。
ただダイヤが…思い出したように、

「あのさ…オレはラスタフォルス侯爵家なんてどうでもいいし、お前らの事だって、血縁上どうあれ
粉かけてきたら、粉砕するだけの存在だぜ。
お前らは…オレを傍流からの防波堤にするつもりだったんだろうが…、オレはそんな事、一切
する気は無い。あてにすんなよ。
文句だったら、あんなしょーもない犯罪者男を家に入れて、お前らを産んだ、あの女に言え。
オレは知らん」

「ま、待ってください!!そんなつもりは…」

グレリオが反論しようとしたが、ダイヤの殺すような目つきで押し黙る。

「そのつもりは無い…。それをオレに信じて欲しいなら…」

ダイヤのこめかみに、青筋が立っている。

「傍系からのいじめに、少しくらい自分で対応しろや!!」

グレリオの顔が…一瞬で蒼白になった。

「ファルメニウス公爵家でのいざこざを聞いたけどよ…。
お前ら、情けないと思わないのかよ?自分でさぁ…。
ご当主様も言ってたけど、それで何をサポートする気だったんだ?
オレも…お前らがただの寄生虫にしか見えん!!
寄生虫は寄生虫らしく、宿主になってくれる、奇特な奴を探せ!!
オレは絶対に御免だ!!」

少し前まで…食うや食わずの生活をしてたんだからなぁ…。

「オレはさ…。弱いうちは強い奴の庇護を受けるのは、別にいいと思っているんだ。
誰しもそうだしな。
けどよ…せめてそうするなら、寄生先の都合は、最大限尊重するべきだと思うぜ。
まあ…オレはもう、お前らとは金輪際関わりたくないから、無駄だがな…」

「ラ、ラスタフォルス侯爵家の全てを、差し出すつもりでいたんです!!
その上でサポートは、しっかりと…」

あ…ダイヤ、めっちゃ盛大なため息ついてる…。

「まず!!」

ついでに怒ったっぽい…。

「オレは…ラスタフォルス侯爵家なんざ、欲しくない!!もっと言えばどうでもいい!!
お前が言っているのは、オレにいらないゴミを渡して、自分を守ってくれって、言っている
ようなもんだぞ?ふざけんのも大概にしろや」

「だいたい!!テメェが何の役に立つってんだ、いったい!!」

「慈善事業に精を出すでもない、何かを研究して、世の中に還元しようとするでもない。
暇さえありゃあ、盛り場に行って、酒と女に溺れるだけ。
オレは…お前の調査をしてみて、お前が顔だけじゃなく、性格まであの男にそっくりだなって
思ったもんだ、まったく…」

「あの男もまさにお前と一緒だったよ。
ちょうどいい寄生先が見つかると、そこに入り込んで居座るだけで何もしない。
強いモノにはへーこらして、弱い奴には威張り散らして、暴力を振るう」

ダイヤは…眉間に思いっきり皺よってる…。
思い出したくもないんだろうなぁ…。
対するグレリオは…下を向いてしまって、表情は見えない。

「いい事を教えてやるよ。あの男は階段から転げ落ちた時…気を失っただけで生きていたのさ。
でも…誰もそばに寄ろうとしない、様子を見もしないで通り過ぎた。
季節は冬だったから…結局一晩ほっとかれて、凍死したのさ。
思わず笑っちまったよ。まあ、アイツにゃお似合いの末路だからな」

今度は…愉快そうに笑ってら…。
血のつながりうんぬんより、虐待されてたからなぁ…。

「ま、オレに言えることは…せいぜい父親の末路を教訓にして、今からでもがんばれ…かな。
あとは知ったこっちゃねぇや」

「ボクだって…」

グレリオの声は…ひときわ小さかったが、その悲痛さが耳に響いた。

「ボクだって、頑張ったんだ!!剣術だって勉強だって!!
でも…ちっともうまくならなかった!!上に行けなかった!!
何をやってもダメな奴だ!!そう言われて…言われ続けて…」

涙でぐしゃぐしゃになった顔は…殴られて腫れているせいか、余計に悲壮感が漂っている。

「あのよ…」

ちょっと呆れた声を出すダイヤ。

「悪口言う奴なんざ、お前がいかに成功しても言うぜ。
ご当主様がいい例じゃねぇか」

そうね…。未だに陰口…絶えないもん。もちろん私もね。

「オレだってそうさ。
今でこそ…奥様に拾われ、ご当主様に認められて、それなりの生活してるがよ。
昔は…どんだけ頑張っても、安く買いたたかれて、実力を示しても過小評価ばかりされた。
世の中にゃぁ、そんな奴らの方が多いんだよ!!残念ながらな!!」

「けどよ!!オレに言わせりゃ、お前らは幸せだよな!!
オレはよ!!いくら馬鹿にされようが、蔑まれようが、けがや病気をしてたって!!
外出て働かなきゃ、飯が食えなかったんだ!!
死ぬしかなかったんだ!!
閉じこもって遊んでばかりいて…食うものにも着る物にも困らず、雨風しのげる家もある!!
その状態でこれ以上、わがまま言うんなら、本当に容赦しねぇ――――――――――――――っ!!」

あーあ、馬鹿だねぇ…。
ダイヤの経緯わかってたら、アンタみたいなのに同情するわけないって、気づかないかなぁ…普通。

「ご当主様!!」

「なんだ?」

「こいつ等の父親の罪も、公表してください!!どーせ傍系がそのうち発表するだろうし!!
これ以上こんな利己的な理由で、纏わりつかれんの嫌です!!」

「……それもそうだな」

ギリアムの言葉は、短いが重みを含む。

「お、お待ちください!!ギリアム公爵閣下!!
ダリナとグレリオは、父親と面識が一切ないのです!!
父親の罪まで背負えと言うのは…」

グレンフォ卿がさすがに出てきたか…。
血のつながりが無いとわかっても、今まで愛情をかけて…育ててきたわけだからな…。

「別に罪を背負えなどと、言っていないさ。
この男が犯したのは、しょーもない軽犯罪ばかりだ。
ただ…回数を重ねすぎたせいで、倒れていても誰にも見向きもされないくらいになっていただけ。
ダイヤも言っていたが、吹き飛ばせばいい。そんなもの」

「だいたいな…。こちらは今まで、十分譲歩した。
それはひとえに…グレンフォ卿…アナタが真面目に武の一角を担い、頑張ってきてくれたと思えば
こそだ。
だが…それを周りは全く分からず、不意にした…。
それだけの事だ…」

ギリアムの言葉はまだまだ続く。
話そうと思ったら、いくらでも話題を作れる人だからなぁ…。
私は…ギリアムの完璧理論を横で聞きつつ、はたと気づく。
何だか…私に視線が…。

集中してない?

…と。

で、ちょっと目だけで周りを見れば…。
ツァリオ閣下と、近衛騎士団から来た皆様が…私を見てる…。

……ギリアムを止めろってか?

まあ確かに…この完璧超人は、下手に反論しようとすると、すんげぇ勢いで被せてくる
からね…。

私は…少しだけ考えた。
ダリアは間違いなく、前世の実親とおんなじタイプで、グレッド卿に同じことをした。
そして懲りずに…認めずに、ダイヤにまで同じことをしようとした…。

悪人だろうが、善人だろうが、この構図が出来上がった以上、私は甘い顔はしたくない。
容赦も勿論したくない。
だから…ギリアムの言を止める気は無かった。

このまま…日記と遺書を公開すりゃ、ダリアのしたことは、白日の下にさらされる。
その後…本人が生きようが死のうが、本当にどうでもいいとも思っている。

けど…ね。

私の前世の実親は、いわば勝ち逃げしたんだ。
私に対して、酷いことをしていたという、自覚などないまま逝った。
ある意味それは…幸せだっただろう。
自分たちの理想を…私に押し付けるだけ押し付けて、私に反撃の暇を与える事なく…。

私は…それが…未だに、許せない―――――――――――――。

「ギリアム…少々落ち着いてくださいな」

私は…にこやかなポーカーフェイスと共に、ギリアムに声をかけた。
それで…ようやっとギリアムの口撃が止んだ。

「ダイヤも…。明らかに冷静さを欠いているわ。皆の所に戻って、少し頭を冷やしなさい」

私の言葉で…やっぱりお辞儀をして、後ろに下がる。

ああ…。
皆様の目線に、感嘆が含まれとる…。
そんなに止めずらいんかい?このわんこ。

「あのですね…グレンフォ卿…。この際言わせていただきますが!!」

私は…改めて、

「本当の意味で…傍系と話をした方がいい!!
グレダル卿だけでなく…その直系の子供たちが、本当の所どう思っているのか。
ダリア夫人…ハッキリ言って、傍系にかなり嫌われてます。
それも…割と性格のいい人にです!!
その理由を…しっかりと追求することを、お勧めしますよ。
ダリア夫人を信じるのはもちろん自由ですが…事が事になった以上、類は傍系にも及びます。
その事でやんや言ってこられても…こちらは困りますので」

「フィリーの言う通りだ!!」

ギリアムも…前に出てくれた。

「わかりました…。
双方の意見を…しっかりと聞こうと思います…」

もう本当に…可哀想なくらい、神妙になっちまった。
この人は…本当に何も悪くないんだが…。
でも…これだけの長い年月、気づかなかった事は…また事実だからな…。

ダリアは地面と同化したまま、微動だにしないから…もうほっとこう。
自分が隠してきた事実が…隠しきれなくなった、完全な自業自得なんだからな。

グレッドの日記を…処分したのは、高い確率でアンタだろう?
日記の内容を知っていたと仮定すれば、アンタの行動すべてに、つじつまが合うんだ。

おそらくアンタは…グレッド卿での失敗を、ダイヤで何とかやり直したいんだ。

……馬鹿だねぇ。そして、救いようがない。
ダイヤがアンタに…仮に感謝したところで、グレッド卿にしたことが、消えるわけじゃないんだよ。
それがわかってない時点で…私が温情をかける範囲からは外れる!!

確かに日記の内容は、アンタにしてみれば…存在自体を消しちまいたいもんだっただろう。

けどさ…。

グレッド卿がアンタの被害に遭った事は、紛れもない事実。
そこの事をなかったことにする気なら、私は容赦しない。

アンタが例え…聖人でもな。

私は…心の目をぎらつかせつつ、突っ伏したダリアを…見つめていた。
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