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第4章 旅行
3 目的地に着いた~
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「さてさて…どうなりますかねぇ…」
私は移動する馬車の中で、ギリアムにポツリと話しかけた。
「どうなるも何も、事実を事実として、公表したまで。
受け止め方は人それぞれだろうし、こちらがそこまで気にすることじゃない」
ギリアムは…いたって冷静だった。
補足するが、ラスタフォルス侯爵家と傍系については…。
もちろん今回の旅行に不参加だ。
理由は…ラスタフォルス侯爵家本家は言わずもがなだし、傍系はジェルフのバカのせいとした。
それで文句を言うなら、どうぞ…と、思ったが、文句など出なかったので、こっちもスルー。
ヒルダ夫人はお歳だし、イザベラ夫人は…そもそも出ようとしないから、ファルメニウス公爵家に
引き続き匿っている。
王立騎士団の居残り組には…ダリアが何かしてくる恐れがあるから、警戒態勢を崩さないように…と、
ギリアムから重々言ってもらった。
まあ…ファルメニウス公爵家にいるんじゃ、よほどのキチガイでもない限り、何もしないだろうが。
でも昨今の行動は…キチガイとしか思わないからなぁ…。
グレンフォ卿は…ローエンじい様が暫く仕事を休めと言ったから、まあ…大丈夫だろうが。
油断は禁物だからね。
山あり谷あり…の所を、ゴトゴトと移動すること2日…。
目的地がもうすぐ、見えて来る位置になった。
ああそう、ぶっちゃけるとね。
ここって…もうずいぶん前に、例の…クレアのお茶会の際、お詫びとしてもらった土地なの。
荒地ばかりなのにいいのですか?…って、言われたけどさ。
私に言わせれば!!ここはまさに、隠れたダイヤモンド鉱山のようなものだった。
実際にダイヤモンドが産出されるわけじゃないけど…。
宝の山って意味でね。
と言うのも、私は…この地に小さいころ来て…あるものをこの土地に発見したから。
その時は…とても開発するお金なんて無かったが、すっごく鮮明に記憶に残っていた。
何故なら…日本の情緒を物凄く…思い起こさせるものがあったから。
何かと申しますと…。
私は…私とギリアムは一足先に、その地に入り…。
「準備できてる?」
「はい!!オルフィリア公爵夫人!!」
フィリアム商会のスタッフに声をかけた。
「じゃあ、まずはお着換えよ!!」
私は…お着換え部屋に入り、ギリアムと共に、お着換えする。
そして…ティタノ陛下とドライゴ陛下、ケルカロス陛下を、お迎えするため、外に出る。
その頃…3人を乗せた馬車は、山道をぽくぽくと進んでおり…。
やがて…この施設の…というか、この場所の入り口に差し掛かっていた。
その名は…。
フィリアム温泉郷!!!
だ~。
予想されてた方もいたろうが…。
この地には…豊富な温泉が湧き出ていたのだ。
動物たちが…気持ちよさそうに入ってたのを、私は薬草を取りに来た時に目撃した。
動物が入れるってことは、人間も入れるってこと!!
その時は…何故この温泉地を利用しない?
と、思ったが、切り立った山に温泉郷を作るなんざ、巨額の資金が無ければ、まず無理。
周りの貧しい村々に…その力はなかった。
それで…この土地を手に入れたと同時に、設計図を組み、ギリアムに最大限協力してもらい、
前世の知識をフル活用…。
温泉郷もどきが完成したのだ!!
遊興地でもあるが、温泉と言えば、なんと言っても湯治!!
この温泉…怪我した動物が、良く入っていたんだ。
だから…きっと効能があると判断!!
そして…温泉郷には、度々マニアのお客さんと、出向したからね。
その知識をごちゃまぜにして、今回…この温泉郷を作ったのさ!!
見事に功を奏したのか…物珍しいようで、窓から身を乗り出す王様たち…。
そして私とギリアムは…王侯貴族…それも上位の人間用の建物で、粛々とお出迎え。
「ティタノ陛下…。ドライゴ陛下…。ケルカロス陛下…。
フィリアム温泉郷の宿泊施設…桃源郷へようこそおいでくださいました」
私は、日本古来からの正装、留袖でお出迎え。ギリアムはもちろん、紋付袴。
どうせ温泉郷を作るなら!!従業員の衣装は着物にしたい!!
その強い意志をもとに、莫大な金を使う事…ギリアムが許可してくれたからね!!
実現しました!!見事…場違いにして、日本に異世界転生したような…見事な温泉郷が!!
着物の柄は…再現できる限り、和柄にしたよ。
3人の王様の目は…見たことも聞いたこともない衣装と、やっぱり物珍しいと判断された模様に
釘付けになった。
「これは…また…。突飛なもんを、考え出したのぉ~」
考え出したって言われると、剣山がイテー。
着物も温泉郷も…私が考えたもんじゃねぇ。
でも…そう言う事にしておこう…うん。
「お気に召しまして、幸いに存じます」
私が深々と頭を下げると、
「衣装もそうじゃが…。この建物…いや、街並みの建築様式も…。
他に類を見ないものじゃ…。
一体どんな頭をしとったら、思いつけるのか、ぜひ聞かせて欲しいもんじゃ」
ドライゴ陛下も…思わずキョロキョロしている。
まあ…ギリアムにも言われたよ。
見たことも聞いたこともないって。ひとまず…オッケー!!
「それについては…フィリーが原案を出しまして、私が…建築技法の粋を凝らして、
図面に落としました。私とフィリーの合作と思っていただけると、幸いです」
……ギリアムが作ったことに、してくれんか?
これ以上…多彩な能力持ちって思われると、ちょっと…面倒くさい…。
そもそも現代日本の温泉郷は…私が作ってないし…。
「おうおう、そうなのか!!それじゃ早速!!街を案内せい!!」
「ティタノ陛下…それにつきましては…」
私は合図をして…スッと予定表を皆様にお配りする。
「実は…明日街を上げて、お三方の歓迎会をする予定でございます。
その時に…諸々見て頂ければと、思います。
本日はこの施設内の随所にちりばめた…様々な趣向を、夜の宴会まで、お楽しみいただこうと
思っておりますが…。いかがでしょうか?」
すると…まあ、3人とも顔を見合わせつつ、
「ふむ…。確かにこの施設内も、かなり…目新しいものばかりのようじゃからな…。
その予定に…従うとするか…」
「じゃな…」
「うむ…」
とりあえず…合意してくれて良かった。
ここで…説明はギリアムにバトンタッチ。
絶対ギリアムの方が、こういう事は上手いから。
私は…何か補足があれば、入れる事になっている。
まず第一に向かったのは…もちろん大浴場。
お三方の部屋には、もちろん個別の露天風呂がついているが、この大浴場には…目玉があるから。
純和風の大浴場を、物珍しげに見ては、様々な所を触っている。
「よくこれほどの山の中に…湯を沸かす施設を作ったもんじゃな。
水の確保もさることながら、燃料とて…」
ドライゴ陛下のお言葉に、
「いえ…。そういったモノは一切かかっておりません。
この湯は…温泉と名付けましたが、湧き出した時から…すでにこの温度なのです。
ですから、燃料は一切必要ありません」
ここの温泉は、源泉かけ流しでオッケーなのよ。
年間通して約41度という、扱いやすさ。偶然だけど、助かるぅ~。
「なんと…」
温泉に手を入れて、確認しているお三方。
かなり驚いてるなぁ…。温泉って…ここだけに湧いているワケじゃ、ないだろうになぁ…。
あんまり…馴染みが無いのかしら…。
「後は…この大浴場の目玉として、前方をご覧ください!!!」
ギリアムの言葉で大浴場の外を見れば…そこは山なのだが、中腹…ちょうど、大浴場の眼の前に、
温泉のような湯溜まりが出来ており、そこに…動物が気持ちよさそうにつかっていた。
「ほぉぉっ!!動物が湯に入っとる!!」
思わず乗り出すくらい…珍しいものだったよう…。
「そもそも…この温泉を発見したのは、動物たちなのです」
「なに?」
「動物が…湯につかって、傷を癒している所を、山に薬草を取りに来たフィリーが、偶然にも
発見しまして…。
そしてこの温泉郷は出来上がったのです。
だから…あそこは、その最初の功労者たる動物たちの湯として、解放しております。
今は…猿と鹿ですが、たまに…クマなども来ますよ。
小動物も…来ることも確認されております。
その時々で…様々な動物が、湯につかるさまを見て頂こうと、この形にしました。
世にも珍しいと、スタッフも驚いておりましたので、せっかくなら見て頂こうと思いましてね」
ギリアム…やっぱ口上が上手いね。
「なるほど…。飼いならされた動物ではなく、野生の動物が、思い思いに来ておる訳か…。
こりゃ確かに、面白いわ!!」
動物園はこの世界にもあるけど、そういうのとは、一線を画すからね。
まあこの大浴場を皮切りに…それぞれの個室についている露天風呂をご説明。
もちろん…形が同じものなんて、1つとして作らなかったから、好評だった。
お部屋は…色々迷ったが、完全和式、和洋折衷、洋室…中華式…なんてのまで作った。
畳が…めっちゃ珍しかったようで、その場でごろ寝したり、触って確認したりしてたな。
山間のこの地方は…まだ、夜間と明け方は寒い事もあるから、掘りごたつも作ったのさ。
それも説明した。やっぱり…珍しかったみたい。
まあ…私もこの世界で、こたつと畳を見たことはなかったからね。
この施設…桃源郷は、展望台もあって、街を大パノラマで一望できるようになっている。
そこにもご案内し、地図を配って、大まかな地区をご説明。
そんな事をしていたら…あっという間に、夕食のお時間だ。
ちなみにお三方以外の…他の来賓の皆様は、他のスタッフが同じような施設のご説明をした。
そして…宴会場は、もちろん総畳張り。そして…窓の代わりに障子。
だが…やっぱり座布団はこの世界じゃ馴染みが無いから、机と椅子にした。
完全に和の世界は…親しい人たちに見て貰って、意見を聞きたいところだからね。
しかし…提灯やぼんぼり、飾りつけや描かれた絵も、全て和風のため、かなり奇異に見えただろう。
この…明らかに、この世界では馴染みのない空間に…。
お客たちは…その摩訶不思議な空間に、しばし見とれていたが…。
「おい、ギリアム公爵よ」
真っ先に口を開いたのは…ティタノ陛下だった。
「これもオルフィリア公爵夫人の、発案か?」
「その通りでございます…。」
ギリアムの短い言葉に…何を思ったのか、再度巨大な和の空間を見回すと…。
「何と言うか…。
きらびやかさとは縁遠く見えるのに…何故かとても洗練された気を感じる。
飾りなどない…、いや、飾る必要のないくらい、シンプルに完成されている…そんな趣だ」
ティタノ陛下が…珍しく見入っていた。
「ゆえに素直に思う…。美しいと…」
ポツリと言った言葉は…その静謐な空間を…埋めるように、どこまでも伸びる。
それが…そこにいた人々全ての耳に、届いたようだ。
「このようなものを考え出せるなど…本当に、どんな頭の中をしているのかのぉ…。
いい意味でじゃぞ?」
「ありがとうございます」
ギリアムは…もちろんそれがわかっていて、素直にお礼を言う。
さてさてそれでは…ここからさらに、日本人の真骨頂をお見せいたしましょうかねぇ…。
私は…心の中で、舌なめずりをした。
私は移動する馬車の中で、ギリアムにポツリと話しかけた。
「どうなるも何も、事実を事実として、公表したまで。
受け止め方は人それぞれだろうし、こちらがそこまで気にすることじゃない」
ギリアムは…いたって冷静だった。
補足するが、ラスタフォルス侯爵家と傍系については…。
もちろん今回の旅行に不参加だ。
理由は…ラスタフォルス侯爵家本家は言わずもがなだし、傍系はジェルフのバカのせいとした。
それで文句を言うなら、どうぞ…と、思ったが、文句など出なかったので、こっちもスルー。
ヒルダ夫人はお歳だし、イザベラ夫人は…そもそも出ようとしないから、ファルメニウス公爵家に
引き続き匿っている。
王立騎士団の居残り組には…ダリアが何かしてくる恐れがあるから、警戒態勢を崩さないように…と、
ギリアムから重々言ってもらった。
まあ…ファルメニウス公爵家にいるんじゃ、よほどのキチガイでもない限り、何もしないだろうが。
でも昨今の行動は…キチガイとしか思わないからなぁ…。
グレンフォ卿は…ローエンじい様が暫く仕事を休めと言ったから、まあ…大丈夫だろうが。
油断は禁物だからね。
山あり谷あり…の所を、ゴトゴトと移動すること2日…。
目的地がもうすぐ、見えて来る位置になった。
ああそう、ぶっちゃけるとね。
ここって…もうずいぶん前に、例の…クレアのお茶会の際、お詫びとしてもらった土地なの。
荒地ばかりなのにいいのですか?…って、言われたけどさ。
私に言わせれば!!ここはまさに、隠れたダイヤモンド鉱山のようなものだった。
実際にダイヤモンドが産出されるわけじゃないけど…。
宝の山って意味でね。
と言うのも、私は…この地に小さいころ来て…あるものをこの土地に発見したから。
その時は…とても開発するお金なんて無かったが、すっごく鮮明に記憶に残っていた。
何故なら…日本の情緒を物凄く…思い起こさせるものがあったから。
何かと申しますと…。
私は…私とギリアムは一足先に、その地に入り…。
「準備できてる?」
「はい!!オルフィリア公爵夫人!!」
フィリアム商会のスタッフに声をかけた。
「じゃあ、まずはお着換えよ!!」
私は…お着換え部屋に入り、ギリアムと共に、お着換えする。
そして…ティタノ陛下とドライゴ陛下、ケルカロス陛下を、お迎えするため、外に出る。
その頃…3人を乗せた馬車は、山道をぽくぽくと進んでおり…。
やがて…この施設の…というか、この場所の入り口に差し掛かっていた。
その名は…。
フィリアム温泉郷!!!
だ~。
予想されてた方もいたろうが…。
この地には…豊富な温泉が湧き出ていたのだ。
動物たちが…気持ちよさそうに入ってたのを、私は薬草を取りに来た時に目撃した。
動物が入れるってことは、人間も入れるってこと!!
その時は…何故この温泉地を利用しない?
と、思ったが、切り立った山に温泉郷を作るなんざ、巨額の資金が無ければ、まず無理。
周りの貧しい村々に…その力はなかった。
それで…この土地を手に入れたと同時に、設計図を組み、ギリアムに最大限協力してもらい、
前世の知識をフル活用…。
温泉郷もどきが完成したのだ!!
遊興地でもあるが、温泉と言えば、なんと言っても湯治!!
この温泉…怪我した動物が、良く入っていたんだ。
だから…きっと効能があると判断!!
そして…温泉郷には、度々マニアのお客さんと、出向したからね。
その知識をごちゃまぜにして、今回…この温泉郷を作ったのさ!!
見事に功を奏したのか…物珍しいようで、窓から身を乗り出す王様たち…。
そして私とギリアムは…王侯貴族…それも上位の人間用の建物で、粛々とお出迎え。
「ティタノ陛下…。ドライゴ陛下…。ケルカロス陛下…。
フィリアム温泉郷の宿泊施設…桃源郷へようこそおいでくださいました」
私は、日本古来からの正装、留袖でお出迎え。ギリアムはもちろん、紋付袴。
どうせ温泉郷を作るなら!!従業員の衣装は着物にしたい!!
その強い意志をもとに、莫大な金を使う事…ギリアムが許可してくれたからね!!
実現しました!!見事…場違いにして、日本に異世界転生したような…見事な温泉郷が!!
着物の柄は…再現できる限り、和柄にしたよ。
3人の王様の目は…見たことも聞いたこともない衣装と、やっぱり物珍しいと判断された模様に
釘付けになった。
「これは…また…。突飛なもんを、考え出したのぉ~」
考え出したって言われると、剣山がイテー。
着物も温泉郷も…私が考えたもんじゃねぇ。
でも…そう言う事にしておこう…うん。
「お気に召しまして、幸いに存じます」
私が深々と頭を下げると、
「衣装もそうじゃが…。この建物…いや、街並みの建築様式も…。
他に類を見ないものじゃ…。
一体どんな頭をしとったら、思いつけるのか、ぜひ聞かせて欲しいもんじゃ」
ドライゴ陛下も…思わずキョロキョロしている。
まあ…ギリアムにも言われたよ。
見たことも聞いたこともないって。ひとまず…オッケー!!
「それについては…フィリーが原案を出しまして、私が…建築技法の粋を凝らして、
図面に落としました。私とフィリーの合作と思っていただけると、幸いです」
……ギリアムが作ったことに、してくれんか?
これ以上…多彩な能力持ちって思われると、ちょっと…面倒くさい…。
そもそも現代日本の温泉郷は…私が作ってないし…。
「おうおう、そうなのか!!それじゃ早速!!街を案内せい!!」
「ティタノ陛下…それにつきましては…」
私は合図をして…スッと予定表を皆様にお配りする。
「実は…明日街を上げて、お三方の歓迎会をする予定でございます。
その時に…諸々見て頂ければと、思います。
本日はこの施設内の随所にちりばめた…様々な趣向を、夜の宴会まで、お楽しみいただこうと
思っておりますが…。いかがでしょうか?」
すると…まあ、3人とも顔を見合わせつつ、
「ふむ…。確かにこの施設内も、かなり…目新しいものばかりのようじゃからな…。
その予定に…従うとするか…」
「じゃな…」
「うむ…」
とりあえず…合意してくれて良かった。
ここで…説明はギリアムにバトンタッチ。
絶対ギリアムの方が、こういう事は上手いから。
私は…何か補足があれば、入れる事になっている。
まず第一に向かったのは…もちろん大浴場。
お三方の部屋には、もちろん個別の露天風呂がついているが、この大浴場には…目玉があるから。
純和風の大浴場を、物珍しげに見ては、様々な所を触っている。
「よくこれほどの山の中に…湯を沸かす施設を作ったもんじゃな。
水の確保もさることながら、燃料とて…」
ドライゴ陛下のお言葉に、
「いえ…。そういったモノは一切かかっておりません。
この湯は…温泉と名付けましたが、湧き出した時から…すでにこの温度なのです。
ですから、燃料は一切必要ありません」
ここの温泉は、源泉かけ流しでオッケーなのよ。
年間通して約41度という、扱いやすさ。偶然だけど、助かるぅ~。
「なんと…」
温泉に手を入れて、確認しているお三方。
かなり驚いてるなぁ…。温泉って…ここだけに湧いているワケじゃ、ないだろうになぁ…。
あんまり…馴染みが無いのかしら…。
「後は…この大浴場の目玉として、前方をご覧ください!!!」
ギリアムの言葉で大浴場の外を見れば…そこは山なのだが、中腹…ちょうど、大浴場の眼の前に、
温泉のような湯溜まりが出来ており、そこに…動物が気持ちよさそうにつかっていた。
「ほぉぉっ!!動物が湯に入っとる!!」
思わず乗り出すくらい…珍しいものだったよう…。
「そもそも…この温泉を発見したのは、動物たちなのです」
「なに?」
「動物が…湯につかって、傷を癒している所を、山に薬草を取りに来たフィリーが、偶然にも
発見しまして…。
そしてこの温泉郷は出来上がったのです。
だから…あそこは、その最初の功労者たる動物たちの湯として、解放しております。
今は…猿と鹿ですが、たまに…クマなども来ますよ。
小動物も…来ることも確認されております。
その時々で…様々な動物が、湯につかるさまを見て頂こうと、この形にしました。
世にも珍しいと、スタッフも驚いておりましたので、せっかくなら見て頂こうと思いましてね」
ギリアム…やっぱ口上が上手いね。
「なるほど…。飼いならされた動物ではなく、野生の動物が、思い思いに来ておる訳か…。
こりゃ確かに、面白いわ!!」
動物園はこの世界にもあるけど、そういうのとは、一線を画すからね。
まあこの大浴場を皮切りに…それぞれの個室についている露天風呂をご説明。
もちろん…形が同じものなんて、1つとして作らなかったから、好評だった。
お部屋は…色々迷ったが、完全和式、和洋折衷、洋室…中華式…なんてのまで作った。
畳が…めっちゃ珍しかったようで、その場でごろ寝したり、触って確認したりしてたな。
山間のこの地方は…まだ、夜間と明け方は寒い事もあるから、掘りごたつも作ったのさ。
それも説明した。やっぱり…珍しかったみたい。
まあ…私もこの世界で、こたつと畳を見たことはなかったからね。
この施設…桃源郷は、展望台もあって、街を大パノラマで一望できるようになっている。
そこにもご案内し、地図を配って、大まかな地区をご説明。
そんな事をしていたら…あっという間に、夕食のお時間だ。
ちなみにお三方以外の…他の来賓の皆様は、他のスタッフが同じような施設のご説明をした。
そして…宴会場は、もちろん総畳張り。そして…窓の代わりに障子。
だが…やっぱり座布団はこの世界じゃ馴染みが無いから、机と椅子にした。
完全に和の世界は…親しい人たちに見て貰って、意見を聞きたいところだからね。
しかし…提灯やぼんぼり、飾りつけや描かれた絵も、全て和風のため、かなり奇異に見えただろう。
この…明らかに、この世界では馴染みのない空間に…。
お客たちは…その摩訶不思議な空間に、しばし見とれていたが…。
「おい、ギリアム公爵よ」
真っ先に口を開いたのは…ティタノ陛下だった。
「これもオルフィリア公爵夫人の、発案か?」
「その通りでございます…。」
ギリアムの短い言葉に…何を思ったのか、再度巨大な和の空間を見回すと…。
「何と言うか…。
きらびやかさとは縁遠く見えるのに…何故かとても洗練された気を感じる。
飾りなどない…、いや、飾る必要のないくらい、シンプルに完成されている…そんな趣だ」
ティタノ陛下が…珍しく見入っていた。
「ゆえに素直に思う…。美しいと…」
ポツリと言った言葉は…その静謐な空間を…埋めるように、どこまでも伸びる。
それが…そこにいた人々全ての耳に、届いたようだ。
「このようなものを考え出せるなど…本当に、どんな頭の中をしているのかのぉ…。
いい意味でじゃぞ?」
「ありがとうございます」
ギリアムは…もちろんそれがわかっていて、素直にお礼を言う。
さてさてそれでは…ここからさらに、日本人の真骨頂をお見せいたしましょうかねぇ…。
私は…心の中で、舌なめずりをした。
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