ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第4章 旅行

2 グレッドの日記

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さて…早いもので、旅行へと旅立つ日と、相成った。
この日発表された…グレッド卿の日記と遺書は…全て偽名が使われた。
だがそれだとわかりづらいゆえ、ここでの記載は実名でさせて頂こう。
そして…量がかなりあるため、一部の抜粋である事、お許しください。

グレッド7歳…。
今日ようやっと、手の火傷が治った…。日記を書き始めようと思う…。
手の火傷は…皆には事故と言ってあるが、お母様のせいだ。
大切にしていた…木こりのキリアンを…こんなものを呼んでいるから、軟弱になるんだと
暖炉の中に放り捨てられた…。
ボクはただ…将来何になりたいと聞かれたから、キリアンのように、美しい彫刻で世界を
平和にできる人間になりたい…と、言っただけなのに…。
アナタはお父様と同じ、立派な騎士になって、世に尽くすのだと…。
ボクは…剣が嫌いだ…。人を傷付けたくない…。

グレッド8歳…。
今日…頑張って剣術大会に優勝した。
お父様からなんでも好きなものを買ってあげると言われたから、木こりのキリアンが欲しいと
言った…。
お父様はくれると約束したのに、プレゼントされたのは…剣術に関する本だった…。
お父様は嘘つきだ!!

グレッド9歳…。
剣術の稽古は…相変わらず嫌で嫌でたまらない。でも…やらないと怒られる…。
怖い…嫌だ…。やりたくない…。ツライ…。どうして…ボクはこんな家に生まれてきたの?
ボクが泣いていたら…ドミナ(乳母)が話を聞いてくれて…思い切って打ち明けたら、
お父様とお母様に話をしてくれるって…。嬉しかった。
でも…ドミナはすぐに家を追い出された。ドミナはボクのせいじゃないって言ったけど…。
ボクのせいだ…。ドミナを追い出したお母様が憎い。ドミナは何も悪くないのに…。
おばあ様が…自分の宝石を持たせてくれた…。ありがとうございます、おばあ様…。

グレッド10歳…。
今日…また、剣術大会で優勝した。年上の子より、才能があるとお母様は喜んでいたが、
ボクは剣術の才能なんて、欲しくなかった。そうすれば…剣なんて握らなくても許されたろうから。
お父様も喜んで…何が欲しい?と聞かれたから、彫刻道具が欲しいと言った。
どんなに頼んでも買ってもらえなかったし…。お父様は買ってくれるって言った。
でも…ボクにプレゼントされたのは、新しい剣だった…。部屋で一人で泣いた…。
お父様は噓つきだ。お父様にとって、騎士じゃない僕は、価値が無いんだ…。
でももう構わない!!僕はこの日…お母様同様、お父様も大っ嫌いになった。

グレッド11歳…。
相変わらず剣の稽古は続く…。子供の時よりも実戦に近くなってきた…。嫌だ…ツライ…。
苦しい…。死にたい…。ボクは何で生まれてきたんだろう…。苦しむため?なの…。神様…。
今日、お母様がボクの婚約者に…って、自分の騎士団で育てている子を連れてきた。
イライザ…。話してみたら、見事に騎士の話しかしなくて、ボクは今日1日でその子が嫌いになった。
一緒にいても、ちっとも楽しくない。でも…貴族の結婚なんて、そんなもんだから、一応愛想笑いした。

グレッド12歳…。
今日…グレダル叔父様が来た。ボクが…細工や彫刻が好きなんだと、ポツリと言ったのを
覚えていてくれて、その道具一式をくれた…。とても嬉しかった…。生まれてきて初めて、心から
嬉しいと思ったプレゼントだった。
でも…コッソリ隠していたのに、お母様にバレて…叔父様がすごく怒られていた…。
もう二度と来るな!!ボクに会うなって…。
どうして?叔父様はボクを喜ばせてくれたのに…。
お母様なんか大っ嫌いだ!!お母様こそ、どっかに消えちゃえばいいんだ!!

グレッド13歳…。
今日庭で、泣いている女の子を見つけた。イザベラ…イライザの妹らしい。
なんとなく気になって話を聞いてみたら…母から、あきらかに時代遅れのマダムがつけるような
アクセサリーを貰って…今度のパーティーでつけろと言われたらしい。
……なんかお母様の不興を買って、いじめられているとわかり、可哀想になった。
だから…そのアクセサリーを、ボクが加工して若い子に似合うようにしてあげたくなった。
叔父様からもらった細工道具は、体が大きくなっていたこともあり、母から死守できたから。
拙いもいい所だったけど、イザベラはとても喜んでくれて…ボクは剣術を褒められた時より、ずっと
ずっと嬉しかった。

グレッド14歳…。
相変わらずイザベラは、母と…姉のイライザにいじめられている。ぼろのドレスをあてがわれたり、
時代遅れ、時季外れ、デザインも年配の女性用のアクセサリーを押し付けられ、パーティーにつけて
いかなかったり、着て行かなかったりしたら、凄く責められていた…。
本当によくやる…。最近母とイライザの正体がわかってきた。
騎士道精神なんて名ばかりで、自分の気に入った者をえこひいきし、気に入らない者は姑息な手段で
貶める…悪逆非道な人間だ。
それに同調する父も使用人も…似たり寄ったり。
今日ルイスが、母とイライザに対するつっけんどんな態度を諫めてきたが、無視して部屋に戻った。
そんな事を言うくらいなら、母とイライザの悪行を諫めればいい。
ルイスも結局長いものに巻かれている、ただの卑劣漢だとわかっているから、何言っても無駄だろうが。

グレッド15歳…。
イザベラに…またボクの作ったアクセサリーを渡した。
とても…喜んでくれて、ボクも嬉しい。最近…イザベラに会う時間だけが、この世で唯一の楽しい
時間になっている。
イザベラの為だったら、イライザの気持ち悪さもどうにか我慢できる。一応イザベラの姉だから、
温情をかけてやっているが…つけあがるならどうするか考えなきゃな…。

グレッド16歳…。
成人と同時に…近衛騎士団に入団した…。すごくイヤだったけど、オレに選択肢なんて無かった。
団長のローエン閣下と婿養子になることが決まっている、エンソスがいい人間なのが、せめてもの
救いだ…。そう言えばローエン閣下が…オレが休み時間、イザベラの為にアクセサリーを作って
いたのを見て…軟弱だと言われるかと思ったが、ローエン閣下は褒めてくださった。
休み時間に何をしようが、基本自由だし、人を喜ばせたいと思って作っているなら、素晴らしいじゃ
ないかと…言ってくれた。思わず涙が出そうになった。
だって…家ではどんなに剣術でいい成績を残しても、休み時間まで母とイライザがオレの部屋に
押し掛けて…剣術の稽古をしろと、引っ張り出すから…。ここもそういうものだと思っていた…。
でも、違うみたいで心底安心した。

グレッド18歳…。
今日…またイザベラが泣いていた…。どうしたのか聞いたら…オレが作ってあげたアクセサリーを
イライザに取り上げられたと…。
怒り心頭来て問い詰めたら…母が出てきて、イライザがそんなことをするはずない…何かの間違いだ。
イザベラに騙されている…と言うから、例え嘘でもオレはイザベラを信じると言ってやった。
イライザはなぜか泣いてやがった。盗人猛々しいにも程がある。
だからイライザに泥棒女と言い続けてやったら…ようやっと盗んだアクセサリーを出しやがった。
母に突きつけたら…イザベラばかりを優先するオレが悪いと言ったから、もう何も言う気がしなく
なって、そのまま部屋に戻った。

グレッド19歳…。
婚約式が済み、イライザがうちに正式に移住してきた。
早速オレの部屋に入ろうとしやがったから、追い出してやった。
母に非難されたが、構うものか。オレはもう小さい子供じゃない。力ずくで言う事を聞かせようと
したら、反撃するまでだ。母が怪我をしようが、死のうが、本気でどうでもいいからな。
イライザは…自分に悪い所があったら直すと言ったが、母から沢山のアクセサリーを貰って
いるくせに、オレの拙いアクセサリーまで、妹から奪うような、性根の悪さが直せるとは思わなかった。
だから…無視してオレは部屋に入った。
これから毎日イライザの顔を見ると思うと、憂鬱でしょうがない。
そんな時…近衛騎士団で離宮に泊まり込みの仕事が出たから、応募して受かった。
ラスタフォルス侯爵家から出れて、せいせいした。
イライザが時折訪ねてきたみたいだが、全部無視した。
もちろん母もだ。あの2人の悪女と縁が切れたようで、とてもすがすがしい。

グレッド20歳…。
イザベラが怪我をしたと聞いて、直ぐに駆け付けた。
イライザに突き飛ばされて、調度品で目を潰してしまったと…。
原因は…オレが誕生日にあげたアクセサリー…。イライザがよこせと言って、イザベラから無理やり
もぎ取ろうと…もみ合いになっているうちに突き飛ばされたと…。
イライザ…いよいよ頭がおかしい!!あの女…しかも、ヒューバートに色目を使って、罪を帳消しに
してもらったみたいだ。
父も母も…きっと了承済みだ。そもそも母がオレを虐めたって、父は一切見て見ぬふりだった。
ルイスとヒューバートも…母に胡麻をすることしか考えていない。
本当に…しょーもない奴しか、母の周りにはいない。
当たり前か…。子供を虐待できるような女なんて、マトモな取り巻きつかないからな。
オレは…泣くイザベラに誓った。
お前を苦しめた全ての人間に…オレが復讐してやる…と。

グレッド21歳…。
イザベラの復習をすると誓って、オレは…着々と準備をしている。
その間もイライザは…オレを何とか落とそうと、これ見よがしに娼婦のような姿をしてオレに
すり寄ってくる。みっともないし、気持ち悪い。吐き気がする。
ラスタフォルス侯爵夫人の座は、魅力的かもしれんが、よくもまあ、性根の悪さを隠しもせずに、
オレをバカ扱いして、誘惑してくるもんだ。低能女!!
それとも男とヤる事しか、考えてないのか?本当にしょーもないバカ女だ、イライザは。
股を開きさえすれば、誰でも自分の味方になると思ってるんだろうな。全く…。
もちろん部屋なんかに一度も入れないし、誕生日は仕事だと言って無視した。
随分としおらしく振舞っているが、オレはイライザの正体がわかっているから、見向きもしない。
母にはイライザを大切にしろと言われたが、睨み返して部屋に戻った。
オレをずっと虐待し続けたテメェの言う事なんざ、誰が聞くか馬鹿野郎。
父が…結婚式を延期するか?なんて、いかにもオレの事を心配するように、言ってきたから反吐が
出た。
アンタは…オレの望みなんて、一度も聞いてくれたことないじゃないか。
今更いい人ぶるな!!気色悪い!!大っ嫌いだテメェなんざ!!
今まで母やイライザ…使用人に虐待されていたオレの事を、見向きもしなかったクセに!!

グレッド22歳…。
やった!!ついにやった!!やってやった!!
結婚式当日に!!イザベラを連れて逃げてやった!!
父母とイライザの悔しがる顔が見れないのが、すっげー残念だ!!
ただ…おばあ様や叔父様には…申し訳ない事をしたな…。
わざわざ時間をかけてきてくれただろうに…。周りから色々言われないか…それだけが心配だ。
特に母は…きっと自分の悪い所を認めずに、叔父や祖母のせいにするだろう。
反省などとは無縁で、この世で自分が一番偉くて、正しいと思っている傲慢な悪女。
イライザだって…周りに当たり散らして、イザベラを悪く罵っているだろう。
自分たちが反省しない、醜い人間だと知らない…今思うと、哀れだな。

グレッド23歳…。
イザベラとの間に…男の子が生まれた。名前は…もちろんキリアンだ。
とてもかわいい。愛する人との間に生まれた、愛しい我が子…。
この子がオレのような思いをしないように、守っていこうと誓った。
本当に幸せだ…。ラスタフォルス侯爵家とイライザなんて、捨てて正解だった。
飛び入りで入った工房の大将が、オレの作品を褒めてくれて、仕事を回してくれるようになった。
イザベラにうまいものでも買っていこう…。キリアンの為にも…。

グレッド24歳…。
有難い事に、キリアンはすくすくと成長して、最近はよく歩くようになった。
とても可愛い。よく…親になると親の気持ちがわかる…なんて、世間じゃ言われているけれど…。
オレは子供が出来て、愛すれば愛するほど、分からなくなった。
どうして父母は…周りは…、オレにあんなひどい事が出来たんだろう?
オレは…何度も泣いて嫌だと叫んだのに…。
オレが情けないからだと…甘えたれだと言い、オレに剣を握らせた母…。
あの人には、本当に人の心があったのだろうか…?

グレッド25歳…。
最近少し…体の調子がおかしい…。
ようやっとやりたい仕事が出来るようになったから、根を詰めすぎたかな…。
イザベラやキリアンに、早く楽をさせてやりたくて…。

グレッド26歳…。
オレは…本格的に病気になったようだ…。医者が言うには、治らない病気じゃない…。
でも、莫大な金がかかるって…。オレは…協会の神父様に、自分の正体全てを打ち明けた。
当然神父様は家に帰ることを薦めたが、それは出来ないと言った。
帰れば…また父母はオレを騎士に戻すだろう…。イライザとの結婚だって、強引にさせるだろう。
そして…イザベラは良くて修道院行き…悪ければ事故に見せかけて殺される。
母は…イザベラがオレをたぶらかしたと、周りに吹聴しているようだから、余計だ。
そして…母は今度こそ、自分の息のかかったイライザを、オレの嫁にして…イザベラを追い出し…
キリアンを殺すかもしれない。
イライザは…母の手先になって、子供を殺すぐらい、なんとも思わない悪女だ。
それどころか…キリアンを人質に取って、自分との子供を作ること…きっと強要してくるはずだ。
どう間違っても…愛するイザベラとキリアンは、幸せにはなれない。
オレは神父様に遺書と日記を託し…キリアンとイザベラをよくよくお願いした。
ローエン閣下とツァリオ閣下に場違いなお願いするのは…非常に気が引けるが、他に当てがない以上、
しょうがない…。
ローエン閣下…ツァリオ閣下…。
オレの事を許して下さらなくていいです…。
でも…なにとぞ…何卒、幼いキリアンと、何も悪くないイザベラには…一抹の温情を賜りたく…
切に切に…お願いいたします…。

……オレはどうやら、そろそろこの世を去らねばならないようだ。
すまないイザベラ…そしてキリアン…。
もう少しお前たちと一緒にいたかった。
そして…キリアン…お前に自由に…自分のしたいことをさせてやりたかった。
全てはオレの不甲斐なさ…。
オレを好きになってくれなんて言わない…。
でも…どうか自分の生きたい道を、諦めないでくれ…。

最後にオレを最後まで虐待して…認めもしなかった者達よ…。
お前たちに残す言葉など、何もない。
オレを人生から最初に排除したのは、お前たちなんだから。

どうか…どうか、お願いだ…。
神でも悪魔でも、誰でもいい…。
キリアンとイザベラを…オレの愛する者たちを、傷付ける者から…2人を守ってくれ…。
その為なら…オレは二度と、生まれ変われなくたって構わない。
そもそも…人間なんてこりごりだ。
生まれ変わるなら…親が子を産み捨てるのが当然の…そんな生き物になりたい。
だってそうしたら…親の愛など、最初から期待しなくて、いいんだから。

ああでも…。
叔父様…オレのせいで、散々母に怒られて…それでもオレに優しくしてくださり、ありがとうござい
ました。
おばあ様…あの家でオレの逃げ場になってくれて、ありがとうございました。
オレが居なくなった後、母がきっと、酷いことを沢山言ったのでしょうね。
あんな母の元に生まれて来るなら、生まれてきたくなどなかった…。

何故神様は…もっと優しい母の元に、オレを生まれさせてくれなかったのだろう。
別に…贅沢させてくれなくたっていい。貧乏ならオレが働く。
地位が低くてもいいから…オレの気持ちを理解してくれる、優しい母の元に…。

ああ…もう手が…あまりうまく動かない…。
キリアン…イザベラ…例え死んでも…お前たちを心から…愛しているよ…。

ここで日記は終わっている。

キリアンへの遺書…。
キリアン…お前とイザベラを残して、先に行くオレを許してくれなんて言わない。
お前が…独り立ち出来るまで、いてやれなかったんだから。
お前が夢中になれることを見つけて…幸せに生きてくれているなら、オレはそれ以上望むものはない。
父さんは…お前とイザベラがいてくれて、十分幸せな人生だったから。
ただ…お前の人生に、陰りを及ぼすであろう人間についてだけは、忠告せずにいられない。
ラスタフォルス侯爵家…その中にいる人間達を、絶対に信用しちゃいけない。
父さんの血を引くのは、お前だけだから…きっともっともらしい甘い言葉で、お前をラスタフォルス
侯爵家に、入れようとしてくるだろう…。
でも…中に入ったが最後、そこは牢獄よりひどい場所だと思ってくれ。
お前の意思など何も聞かず、お前に剣の道を…騎士の道を押し付けるだろう。
全てが自分たちのいいように…お前を操ろうとする人間しか、あそこにはいない。
母はきっと…お前の全てをコントロールしたがる!!絶対に逃れてくれ!!
父は…そこまでじゃないが、基本母の言いなりだ。母がお前を虐待したとて、見て見ぬふりをするだろう。
あとイライザは…絶対に近づいちゃいけない。母さんの目を潰したのは、イライザだ。
なのに…反省もせず、いけしゃあしゃあと男を誘惑する、最低な悪女。
特に…イライザとデキていると思しきなのは、執事のルイスと、弁護士のヒューバート…。
この2人は、オレが何度、イザベラをイライザがいじめている事実を突きつけても…イライザの
肩を持った。
噂によると、イライザはまだ独身らしい。オレを思っている…なんて、きれいごとを抜かして
いるのを知って、最後の最後まで、オレを不快にしかしない女だと思った。
2人とも口が上手いから…言葉を絶対に信用するな!!お前の事なんか、少しも思っちゃいない。
オレに対してだって、そうだった…。母のご機嫌を取るためなら、子供を虐待しても何とも思わない。
あの家で…信用できるのは、お前の大おばあ様だけだ!!
そして…グレダル叔父様…その人たちの話しは聞いてもいい…。
でも、ラスタフォルス侯爵家の人間には、絶対に耳を貸すな!!
キリアン…お前の幸せを願っている…。
お前が…父さんと同じ苦しみを…味合わないように…それだけを切に願う…。
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