ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第5章 因縁

8 傍系との話し合い3

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「い、一体全体何があったんだ!!」

グレンフォ卿が…慌てて出てきたが、次男…だけじゃなく、その周りも…皆一様にため息
つきたげな顔をして、

「グレンフォ伯父様…。近衛騎士団副団長として、忙しくされていたことはわかりますが…。
もう少し、ご自分の家の事…特に、妻の事は、目を配るべきでしたね」

「そうですよ」

「そうすれば…」

ここで少し言葉を止めたのは…。やっぱり大きくジャンプするときの…沈み込みだろう。

「ダリア夫人にグレッドが…殺されることはなかっただろうに…」

この言葉は…さすがにダリアが、

「何を言っているのですか!!」

眼をぎょろつかせ、睨むが…。

「だってそうでしょう!!」

今回ばかりは…言いたいことを言うと決めたようで、傍系も止まらない。

「騎士に戻されるくらいなら!!死を選ぶ!!日記にはハッキリ書いてあったじゃないですか!!」

「そうですよ!!治らない病気じゃなかったんでしょ!!
家に帰ってくれば…治ったかもしれないのに!!」

「ダリア夫人がいる家に、帰りたくないから、死んだんじゃないか!!
だったらダリア夫人のせいでしょう!!」

「いい加減認めたらどうですか!!」

「あそこまでハッキリ書かれていて、またわからないんですか!!」

「子供だってまだ小さくて…。心残りだっただろうに…。
自分がグレッドにどれだけ酷いことをしたのか…認めないだけでも、付き合いたくないの
わからないんですか!!」

口々に出る言葉で…ダリアは髪をかきむしりつつも、

「あれは!!イザベラが無理やり書かせたんです!!あの子は騙されたんです!!
あの子は…グレッドは騙されてあんなことを…」

「イザベラだって、悪女だって噂を流されただけで…実際被害に遭った人間はいなかったんですよ!!
そう発表されたのに、まだ言うんですか!!信じられません!!」

「本当に…もう、今後本当に、付き合いたくないです!!」

白熱してきたな~。ポップコーン持ってこようかしら…。
なんて完全な蚊帳の外にいると、

「ま、待て待て、少し落ち着け、お前たち!!」

グレダル卿が…さすがにちょっと…と、思って出てきたが…。

「この場に限っては、好きにさせてあげなさいな、アナタ…」

今まで沈黙を保っていた、エニシル夫人が御登場したよ。

「私は再三言ったじゃないですか…。
ダリア夫人の事は…一度、お義兄様もお義母様も含め…よ~く話し合ったほうが良いって。
でも…結局アナタが詫びる形で、済ませてしまうから…こんなに事が大きくなったんですよ。
みんな…ダリア夫人を嫌っている事、わかっていたでしょう。
その理由だって、私が逐一説明したじゃないですか…。
なのに…後は自分に任せなさいで…結局ダリア夫人の行動が改まらないから、こんなに事が
大きくなってしまったんです」

かなり強めに…グレダル卿を叱責している。

「お母様は、何も仰らないのですか?
一番…言いたいことがあると思っていたのですが…」

子供たちが不思議そうにしているから、

「あら、今更言う必要がなくなったからですよ。だって…」

ギリアムに目線を向け、

「裁判の時に…私が長年言いたかったことは、ギリアム公爵閣下が残らず言ってくださいました
からね。かなり強く…叱責する形でね」

礼の形を取る。

「……当たり前のことを言ったにすぎんが?」

素っ気ないねギリアム。

「それでも…私は嬉しかったです」

そう言うってことは…この人も相当溜まってたんだなぁ…。

「まあ…そうですね…。
その節は、本当にありがとうございました、ギリアム公爵閣下」

「私も…随分とスッキリしましたよ」

「本当ですよ、全く…」

「ありがとうございました!!本当に感謝しています!!」

なんか…他の人たちも続いているよ…。
とはいえ…こうなる前に、対策取れんかったんか?
ダリアは…決して悪辣な人間じゃ無かったハズなのになぁ…。

「ちょっと待ってくれ!!だから何が原因で、そんな事になったんだ!!!」

知らぬはグレンフォ卿ばかり…か。

「まず私は…初対面の時にすでに、仲良くできないと思っていましたがね」

エニシル夫人が、代表のように出てきて、

「一番最初にお会いしたのは…私が夫と一緒になってすぐの、建国記念パーティーでした。
その時…やはり結婚したばかりの、ダリア夫人がいらしてたんですけどね。
私は…一応、公式の場ですし、礼儀として、自ら挨拶に行きましたがね…。
その時この人、なんて言ったと思います?」

……今でさえこれじゃあ…若いころなんざ、失言の嵐だったろうなぁ…。
しかも…本人無自覚って言う、一番タチの悪い…。

「早速ご挨拶にいらしてくださるとは、殊勝な心掛けですね。
これから一丸となって、ラスタフォルス侯爵家を盛り立てて行きましょう!!
私は騎士の仕事が忙しく、社交界にあまり出ないと思いますから、その分アナタがサポート
してください。働きには期待していますよ」

……………………………。

うっわ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~。
マジか――――――――――――――――――――――っ!!

私は…思わずポーカーフェイスが吹っ飛んで、眉毛がハの字になっちまった。

それを見たエニシル夫人が、

「オルフィリア公爵夫人は…だからこそ凄いと思うんですよ」

はい?急にわたくし?

「オルフィリア公爵夫人は、ギリアム公爵閣下の婚約者として発表された前も後も…一度も
王立騎士団のご婦人方に、自ら連絡をしなかったと伺っております。
防波堤の役目をしろだの、自分の手下になれだの…ギリアム公爵閣下の威光を使えばいくらでも
言えたでしょうに…」

「ああむしろ…それだったら私がやろうとして、フィリーに断固拒否された。
一度でもやったら…婚約破棄して出て行くと。
しかも…フィリーの都合だから、金などいらない。身一つで出ていくかわりに、追うなと」

ギリアム…。別に今言わんでもいいだろうが…それ…。

「いや…。私の防波堤になるために、その人たちは生きているワケじゃ無いでしょう?
手下になるために、存在しているわけでもない。
何かをしろというなら、せめて…褒賞は支払うべきだし、それを提示したって…断る権利は
相手に与えるべきです…。
アナタが言ったら、みんな断るすべが、なくなっちゃうじゃないですか…」

てかさ!!雇用と非雇用の関係だと仮定すりゃ、そうだろうが!!
当たり前の事なのに…皆様の目が、感嘆に満ちている…。

「なら…オルフィリア公爵夫人がダリア夫人の立場なら、初対面のおばあ様に、なんと言いました?」

「ぜひ聞かせていただきたいです!!」

「勉強のために、お願いいたします!!」

うおぅ!!孫世代がいつの間にやら、わらわらと…。
しゃーねぇな、もう…。まあ、自分の練習だと思うか…。

「……正解はないと思っておりますが、私なら…と言う事で、お答えいたします」

私は…少し目をつぶって、考えを整理し…。
うし…。これだな…うん。
再び目を開くと…。

「お初にお目にかかります、エニシル夫人…。
両家の話し合いの上、決まったことですが、結果としてアナタの家との盟約を破ることになって
しまった事は、ラスタフォルス侯爵夫人として、大変申し訳なく思っております。
しかし…私も、縁あって夫と一緒になりましたゆえ、頑張って家を盛り立てて行こうと思います。
騎士の仕事に熱を入れておりまして、社交界の事は…まだまだ不慣れゆえ、お義母様に習っている
最中でございます。
よろしければ…今度、グレダル卿を伴って、家に遊びにいらしていただけませんか?
そこで…アナタが見聞きした社交界の話など…お聞かせいただけると、嬉しいです」

うおぉ!!グレダル長女とグレダル次女に、拍手されたよ…。

「ほぼ満点ですねぇ…」

ヒルダ夫人が出てきて、ニコニコしながら私を見ていたが、

「グレンフォ!!」

不意に…息子にすっごく厳しい目を向け、

「私は…そもそもアナタに、結婚前に…散々言いましたよね。
ダリアが…ラスタフォルス侯爵夫人をするためには、寝る間も惜しむような、厳しい修練が必要です。
だから…結婚の条件として、一人前になるまで、騎士の仕事は休止するように言いなさいと。
そして…アナタ達の結婚は、上手くまとまったとはいえ、盟約家との約束を破ったことには違いない。
つまりマイナススタートなんです。
社交界で…その事は常にネタにされるでしょうし、口汚い者たちへの絶好の材料を最初から与えて
しまう。それでも…結婚したいというなら、最初にしっかりと、盟約家に詫びを入れる事!!
そして醜聞には、夫婦で一丸となって、対処するように!!
それでも上手くいかなければ、場合によって…アナタも近衛騎士団に出る事…休止せねばならなくなる
かもしれませんよ…と」

やっぱり…しっかりと言い聞かせてたんだな…。
ヒルダ夫人程の人なら、ダリアと少し接すれば…ラスタフォルス侯爵夫人が務まるかどうか、わかるだ
ろうからなぁ…。

「それなのにアナタときたら!!1つも約束を守らないダリアを、責めるどころか野放しにした!!
だからと言って、アナタが近衛騎士団を休止してフォローするでもない!!
今回の結果は…ダリアも勿論ですが、アナタにも十二分に責任があります!!」

「何を言っているのですか、お義母様!!
夫の仕事は、そんなに簡単に投げ出していいものではありません!!
私の仕事とて…同じです!!ラスタフォルス侯爵家は騎士の家系です!!
騎士をすることこそ、家の本分ではありませんか!!」

……ダリアよぉ。確かにもっともらしい言い方だが…。

「残念ながら、それは半分正解ですが、半分間違っています」

ちょっと…武の総本山である、ファルメニウス公爵夫人の立場から、言いたくなった。
ダリアは…涙だらけの顔で私を睨んでいるが…知らんよ、もう…。

「騎士家系であるのは、まず…グレンフォ卿だけでしょう?
ダリア夫人のご実家は、騎士家系というよりむしろ、文の領分の家系です」

ツァリオ閣下がアイリン夫人と初めて会ったのだって…文の家同士が集う集会だったんだよ。

「だから…いくらダリア夫人が騎士家系を歌った所で…アナタは違うでしょ…という心の声は
大抵の人が持ちます。そこをわかっていらっしゃいましたか?」

絶対に…わかってなかったろうけどね。

「そして…上位の夫人程、社交界での地位の獲得は重要になります。
社交界での仕事が…本当に多いからです。
下の者が粉をかけられたら、自分にまったく関係がなくとも、間に入ることはほぼ義務です。
それをしない…もしくはできないとなれば、夫婦共々爪弾きに会う事は、せめて覚悟するべきです。
これは…騎士の仕事が崇高なものかどうかとは、全くの別物です」

「そして…残念ですが、この国での女性騎士の立場は非常に弱い。
そして…グレンフォ卿が国に担う重責を考えれば、アナタが…騎士を休止して全力でサポート
すべきとなってしまうのが、今の世の中です。
これは…アナタ一人が頑張った所で、どうしようもない事…。
その事、しっかりと認識すべきでした」

妻は夫を支えるべき…と、社会構造がそうなってたら、崩すには…大多数の力がいる。
それでも…一度根付いたモノは、簡単には取り除けないと思ったほうがいいくらいなんだからな。

「……アンタはやってるじゃない」

ダリアの声は、ぼそぼそしてよく聞こえん。

「アンタは社交界に殆ど出ずに!!商会の仕事ばかり、やってるじゃない!!
そのアンタに言われたくないわよ!!」

もう…敬語どこ行った?だが、まあいい。
ギリアムが無礼講を許すって、言ったからね…。
私も言いたいことは言わせてもらおう。
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