ひとまず一回ヤりましょう、公爵様12

木野 キノ子

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第5章 因縁

11 傍系との話し合い6

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「まあ…話もまとまってきたから、1つ…言い忘れたことを言うがね」

おお、わんこ君が何か…また、閃いたかな。

「こちらとしては…ジェルフ卿他2名の振る舞いが、馬鹿な真似だと思っていることは、分かった。
だから…ファルメニウス公爵家としては、例の温泉郷…来たいと言うなら歓迎しよう。
旅費は出さんが、門前払いもしない」

あ…皆様のお顔が、ぱあぁっと明るくなった。約一名除いて。

「ありがとうございます!!うちの子が友達から聞いて、羨ましがっちゃって!!」

「ウチも!!行きたいって騒いで、収まらなくて!!」

「うちの子も!!」

皆さま…何気にそれが目的でないかい?…と、思いたくなるなぁ。
まあ、ダリアに言いたいこと、ギリアムが殆ど言っちゃったってのもあるんやろ。

「奥様…」

ダイヤがいつの間にか私のそばに来て、耳打ち。

「そう…ね。次回に持ち越すより、決着付けちゃった方が、絶対いいわね」

「オレもそう思いますので、仕掛けます」

「いいわ。やりなさい。私とギリアムが全責任を持つわ」

私の言葉をもって…ダイヤが前に出る。

「まあ…最後になりそうなので、オレの気持ちをもう一度、皆さまに言っておきます」

凛々しいね。何だか、オババは嬉しいよ。

「オレは…今更貴族になんてなりたくないし、今の生活に満足しています。
ご当主様と奥様は…それをよく理解してくれて、オレにも仲間たちにもよくしてくれます。
だから…オレがラスタフォルス侯爵家の物を、今後も欲しがることはありません。
もちろんあなた方に、何か迷惑をかける気もありません。
ファルメニウス公爵家の…奥様の護衛騎士という、名誉ある仕事を任されましたので、
今後も自分を律して、生きていきたいと思います。
それが…オレの何よりの幸せですので!!」

だいぶん…いい笑顔で一気に述べた。

ダリアをちらりと見れば…さすがに父母の事はショックだったのか、放心状態だから
ひとまず置いとこう。

さてこれで…ターゲットは動くか…な?

私がそんな風に思っていたら…ダイヤの方に、空気が…流れた。

「うわああぁぁぁぁっ!!」

そして…肉の塊がダイヤめがけて突進したかと思うと…。
ダイヤにぶつかり、止まった。

そして…ダイヤの胸には、深々とナイフが。

「ダイヤ!!」

ハートが私を下げ、みんなが…犯人を拘束する。
それは…ジェルグだった。

「ふざけるな、この薄汚い犯罪者が!!
オマエなんぞ、泥にまみれて死ぬのがお似合いなんだ!!お似合いなんだよぉぉっ!!」

ダイヤを殺したと思ったんだろうな…。
随分と勝ち誇った顔で、叫んでいるが…

「ダイヤ。確保終了したから、もう起きていいぞ」

ギリアムが…ジェルグの体から、何やら小瓶を探り出すと、それを確保し…ダイヤに話しかける。

「了解です、ご当主様…」

ダイヤがむくりと起き上がる。

「いや~、さすがファルメニウス公爵家だ。
防具もしっかりしてて、ありがたいですよ」

「とはいえ、刺されるまでしなくてもよかったぞ。
恐らく…そのナイフ、毒が塗ってある」

「わかってます…。でも、オレが狙われることで、万が一にも奥様に何かあるといけません。
だから…確実に捕えておきたかったんです」

「まあ…キミの気持ちはありがたいが…無茶はするなよ」

「そう言ってくださる、ご当主様と奥様の為だから、やるんですよ」

ダイヤは笑っているが…とりあえず、防具を剥がす時は、細心の注意をした。
体には…傷がついてなくて、安堵…。

「なんでだ!!なんで生きてる!!なんで死なない!!」

いや…騒ぐなや。こっちは予想付けてたんだっつの。

「ラスタフォルス侯爵家のいざこざが発生して…私とフィリーは傍系の方まで、調査の手を
伸ばしたと言っただろう?
その過程で…キミが触れるだけでも危険な猛毒を、何種類か購入していることが判明してな。
イロイロ調査を重ねた結果、こういう事態になるかもと予測しただけさ」

ギリアムは…事務的やね、ホント。

「ジェルフだけじゃなく、オマエまで何やっとるんじゃぁ―――――――――――っ!!」

さすがに温厚なグレダル卿でも…激怒して当たり前の物件だな。うん。

「まあ…落ち着いてくださいと言うのは、無理だと思いますが、彼がこの行動に至った
理由は、今からご説明いたしますよ…」

涼しい顔しつつ、

「まず…最初に言っておくが、私はダリア夫人を擁護するつもりは、全くない。
だが…先ほど、グレダル卿の子供たちに…臣下の礼を取れと言ってきたのには、隠蔽されたある事件が
関与しているんだ」

「い、隠蔽された事件?」

皆さま、狐につままれて…と言うより、噛みつかれてるわ。

「グレッド卿は…待ちに待って生まれた子供だから、7歳になるまで家の中で、一切お披露目されな
かった。これは…親戚に対してもそうだった。
だが…5歳の時に、このジェルグ卿を伴って、乳母…名をシェイリ、が尋ねてきたのさ」

「はあぁ?聞いておりません!!」

グレダル卿がバッとエニシル夫人を見たが…彼女も困惑したように首を振る。

「そうだろうな…。
当時…ちょうどエニシル夫人は末子を出産間近で…おまけに逆子だから難産になると医者に言われて
皆…そちらにかまけてしまい、子供の世話は、乳母に任せきりだっただろう?
そして…使用人も少なくなって、人目があまりなくなった。
その隙を狙って…コッソリ屋敷を出たのさ」

「な、なぜそのような?」

「ダリア夫人への嫌がらせ…だろうな」

「!!?」

「ど、どういう事ですか!!」

グレンフォ卿もさすがに声を上げた。

「彼女はね…昔っからグレダル卿にお熱だったのさ。
だが、グレンフォ卿がダリア夫人と結婚したことで、グレダル卿はエニシル夫人と結婚した。
彼女は…このことをずっと恨みに思っていた…一方的にね」

グレダル卿は…彼女の事を、全く相手にしてなかったらしいから、ホントに迷惑な逆恨みだ。
これに関してだけは…。

「それで…一計を案じたのさ。当時…ジェルグ卿の剣の腕は、かなり水準が高かった。
だから…密かにダリア夫人に連絡を取り、ジェルグ卿が…グレッド卿の騎士になりたがって
いるから、一度…会わせてはもらえないか…とね」

これ…警戒せずに会わせたダリアも、悪いと思うけどね…。

「グレンフォ卿に相談すればいいのに、ダリア夫人はすっかり信じ込んで、会わせたようだ。
そこで…手合わせしようという話になってな。
シェイリは…手加減すると言っていたようだが、当然ジェルグ卿は何も聞かされておらず…。
結果かなりの強い力で、グレッド卿に対してしまったらしい。
歳の差が5歳もあれば、子供の内はかなり…体格にも力にも差が出る。
結果殆ど、反撃できないまま、負けたそうだ。
で…折り悪く…グレッド卿はこの時まだ、騎士になりたくないと散々言っていたから…。
この時も泣きながら、そう言ったらしくてな…」

「それを聞いたジェルグが…よせばいいのに、よけーな事を、ダリア夫人に言ってしまってな。
まあ…それもシェイリが仕込んだようだが…」

以下、ジェルグが言った事。

あはは、ダリア義伯母様。
たった一人の後継者がこんなに弱っちい上、騎士になりたくないなんて、
ラスタフォルス侯爵家も終わってますね。ひとえに、義伯母様の教育の悪さですね。
もう、ラスタフォルス侯爵家から出て行ったほうが、いいんじゃないですか?
跡継ぎだったら心配いりませんよ。
オレが国一番の騎士になって、しっかりとラスタフォルス侯爵家を継ぎますから。
義伯母様だって、盟約を破って、ズルしてラスタフォルス侯爵家に入ったんだから、
文句ないですよね。
常々…立派な騎士が、ラスタフォルス侯爵家を継ぐべきって言ってるんですから。

以上…。
あ…。
グレダル卿、エニシル夫人、他五人の兄弟と孫たちの眉毛が…ひしゃげた…。

「まあ…これをマトモに言ってしまったものだからな。
ダリア夫人が激高して…持っていた剣で…ああ、鞘から抜いたりはしなかったが、
思いっきり叩いてしまってな。
それは…ジェルグ卿の肩口あたりにヒットして…その一撃が、ジェルグ卿の騎士生命を
終わらせたのさ。ああ、ダリア夫人とシェイリの2名という事は、付け加えておく」

「な、何を言っているんだ!!シェイリは関係ないだろう!!
シェイリは…その後も殴りかかろうとするダリア夫人から、必死に私を庇って…。
医者の所に連れて行ってくれたんだ」

「いいや、シェイリがキミを連れて行ったのは、医者でも何でもないごろつきの所さ。
そこで…金を渡して適当に処置したんだ。
だから…キミの腕は酷く化膿して、熱を出しただろう?
それを…ちょうどエニシル夫人を診察に来ていた医師が、キミの唸り声が明らかに
おかしいと…部屋に入って、発見したんだ。
手早く処置したから命は助かったが、腕の方は…戻せないと言ったそうだ。
ちなみに、受傷後適切に処理すれば、まだよかったかもとも言っていたそうだ」

「だ、誰から聞いたんですか、そんな事…」

グレダル卿が青い顔して、ギリアムに聞くから、

「ん?シェイリ本人さ。
シェイリは…このお屋敷で盗みを働いて消えただろう?」

「え?当時のあれ…シェイリですか?」

グレダル卿たちが、すっごい驚いてる。

「ああ。それで味を占めて…。貴族のお屋敷に入り込むたび、盗みを重ねに重ねて、
とうとうお縄になったのさ。
かなりの余罪が出てきたから、まだ服役中だ。
かなりの歳で体が辛いと言っていると聞いたから、いい部屋に移してやるから、当時やった罪を
話せと言ったら…」

さすがにギリアムの眉毛が片方くねる。

「ダリア夫人との関係性の切れ端でも出ればと思ったが、まさかこんなものが出て来るとはな。
調査員も勿論だが、私もさすがに驚いた」

うん。私も驚いた。

「ついでに気を良くしたのか、もう時効だと思っているのか…。
聞いてもいない事まで、良く喋ってくれたよ。
シェイリはキミのことを殺す気だったんだぞ」

「なっ!!」

ジェルグの顔が…別な意味で驚愕する。

「その方が、より…ダリア夫人を追い詰めやすいからさ。
キミが怪我を隠して、平気なふりして帰って来たから気づかなかった。
自分がもっと気を付けて見ていれば…と、全ての罪をダリア夫人になすりつけるつもりだった
そうだぞ」

「だいたい…キミの世話は自分がしっかりするからと、怪我をしたキミに他の人間を
近づけなかった事だけでも、確信犯だよ。
高熱を出して唸っているのに、医者を呼ぼうともしなかったんだから。
彼女は…君が思っているような、いい人間じゃない。
自分が得する事しか頭にない、卑劣な犯罪者さ」

「う、嘘だ、嘘だ、嘘だぁぁぁぁ――――――――――――――――――っ!!」

捕えられた時より、よっぽど暴れようとしてるけど…がっちり羽交い締めにされているから、
びくともしない。

「いつもいつもいつも!!弟と比べられてバカにされてる私を!!
励ましてくれて、寄り添ってくれたのは、シェイリだけなんだ!!
だけなんだぁッ!!」

後で知ったけど…年子の次男と比べて…剣術以外の成績は、全部次男の方が良かったんだってさ。
だから…余計剣術にのめり込んだらしい。

「それについても言っていたぞ。
兄弟の中で…キミが一番単純で扱いやすく、騙されやすかったからだそうだ。
子供だったからしょうがないだろうがな」

まあね…シェッツ程極端じゃないが…子供の時…特に辛い時に一緒にいてくれた人って…神に等しい
存在になっちまうからな…。

……ギリアムにとっての私も、これか?

そんな事をふっと思いながら、私は…まだまだ続く、ギリアムの口上を聞くことにした。
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