笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第一章 魔王

ゴルガ

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 ど~も皆さん。道楽の道化師エジタスです。先日は私の歓迎会が開かれ、無事正式に四天王に就任することが出来ました。本日はクロウトさんに魔王城の案内をしていただいています。



 「ここが食堂になります」



 そこはいくつもの細長いテーブルが並べられ、それぞれに椅子が置かれていた。奥では滅茶苦茶ゴツい緑色の肌をした魔族、オークが料理鍋をかき混ぜ食事の準備をしていた。



 「彼方にいるのは料理長です。他の方々からは“おばちゃん”食堂のおばちゃんと呼ばれています」



 「へぇ~……おばちゃ~ん!」



 エジタスが大きな声で呼ぶとそれに気づいたのかニッコリと笑い、手を振ってくれた。



 「お優しい方のようですね」



 「当然です。皆の“おばちゃん”ですので。さあ、次の場所をご案内します」



***



 魔王城中庭。花と木々に囲まれ、鳥や蝶、はたまた小動物まで暮らしている。さらに中央には噴水が置かれていた。何度か忘れそうになるがここは魔王城である。そんな中庭にクロウトとエジタスがいた。



 「これである程度の場所はご案内できました。何か質問等はございますでしょうか?」



 「いいえ、とても丁寧な説明で分かりやすかったですよ~」



 「ありがとうございます。それではこれで私は失礼します。定例会議や緊急時などになりましたらお呼び出しするのでそれまでご自由に」



 一礼するとクロウトはその場を去っていった。



 「さ~てこれからどうしましょうかね~」



 そう呟きながら中庭を歩いてるとその場に相応しくない巨大な岩があった。



 「もしやあれは……」



 巨大な岩の下まで走って近づく。すると、それは岩ではなく見覚えのある人物だった。



 「やっぱり、ゴルガさんでしたか~」



 ゴーレムであるゴルガはじっと動かず座っている。岩と勘違いした鳥や小動物達が、休憩場所として集まっていた。



 「…………エジタスカ」



 目は付いていないため、どうやって見ているのか分からないが、振り向いた首の位置からこちらを見ているのは確実だ。



 「ど~もゴルガさん。こんなところで何しているんですか?」



 「マオウサマノシジヲ、マッテイル」



 「サタニアさんのですか?」



 「マオウサマガヒツヨウトシテイルトキ、ソクザニウゴケルヨウニシテイル」



 「あ~……ですが、ここで何もせずじっとするのは暇じゃありませんか?」



 「モンダイナイ……」



 ゴルガは本物の岩のようにピクリとも動かない。



 「…………そ~れコチョコチョコチョ」



 「………………」



 脇腹を擽るも感覚がないのかまったく反応を示さない。



 「…………!」



 何か閃いたのか何処かへ走り去っていくエジタス。



 しばらくするとゴムボールを片手に戻ってきた。



 「クロウトさんから借りてきました。ゴルガさんキャッチボールをしましょう」



 「コトワル」



 「魔王様の為だとしてもですか?」



 「ナニ!」



 今まで動かなかったゴルガが大きく体を動かし、大きな声を発した。そのせいで、側にいた鳥や小動物は一目散に逃げていった。



 「いいですか、キャッチボールをあまく見てはいけません。これが、もしボールではなく砲丸だったらどうでしょう?」



 「…………」



 「大砲が壊れ、飛ばすためのものが無くなった時、その砲丸を飛ばせるのは自分の手だけです」



 「ダガ、ホウガンナンテオモイモノダレモモテナイ」



 「そこでゴルガさんの出番ですよ」



 「?」



 いまいち理解ができないゴルガにエジタスが説明する。



 「ゴルガさん、あなたはゴーレムです。ゴーレムは他の魔族よりも力があります。砲丸なんて軽く投げられるでしょう」



 「ナルホド、タシカニ……」



 「ですが……それをいきなりぶっつけ本番でできる保証は何処にもありません。そこで、まずはこのゴムボールで練習しようという訳です」



 「ソウイウコトカ、ヨシサッソクヤロウ」



 そう言うとエジタスと距離を取り始める。歩く度にドシンドシンという地響きがする。



 「ではいきますよ~それ~」



 エジタスがボールを投げると放物線を描くようにゴルガに向かって飛んでいく。



 取ろうと手を伸ばすが指が太すぎるためうまく掴むことが出来ず、ボールを落としてしまう。



 「ウオ、オ、オ…………ム、ムズカシイナ……」



 「ゴルガさ~ん、大丈夫ですよ。ゴルガさんは取る方ではなく投げる方なのでキャッチ出来なくても問題ありません」



 「ソウカ、ナラヨカッタ」



 「早くこっちにも投げてくださいよ~」



 「ヨ、ヨシデハイクゾ…………フン!!!」



        ブォン!!

 突然空気を切り裂くような音が鳴り響く。いったい何が起こったのか分からなかったエジタスだが、横をみるとはっきりした。地面にボールがめり込み、小さなクレーターが出来上がっていた。もし当たっていたらどうなっていたのだろう……想像するのも恐ろしい。



 「ンー、ナゲルノモムズカシイノダナ。コントロールガウマクイカナイ」



 「い、いや~で、でも威力は十分ありますし大丈夫なんじゃないですかね~」



 震えが止まらない。手と足が痙攣するのを止められない。



 「コンナノデハ、マオウサマノキタイニ、オコタエスルコトハデキナイ!」



 「ですから、威力の方は「エジタスセンセイ!」……へ?」



 先生と呼ばれ戸惑うエジタス。



 「モウイチド、オネガイシマス」



 「あ、はい……」



 エジタスはもうこれ以上考えるのを止めた。



***



 「センセイ、ホンジツハゴシドウシテイタダキ、アリガトウゴザイマス」



 魔王城中庭。そこはかつて美しい花や木々に囲まれ、鳥や蝶、小動物達が暮らす場所だったが、今ではいくつものクレーターに囲まれ、鳥や蝶、小動物達の姿はない。



 「い、いえ、お、お役に立ててう、嬉しいです……」



 特にエジタスの周りは酷かった。エジタスの立っている地面以外全て、削り取られており谷のような状態だった。



 「マタアシタモ、ゴシドウヨロシクオネガイシマス」



 ペコリと頭を下げるゴルガ。



 「い、いやそれは出来ませんね」



 「!、ナゼデショウカ……」



 気持ちを落ち着かせるため息を整えるエジタス。



 「いいですか、確かに練習すれば上手くなるでしょう。しかしそればかりではいけません。実際に戦うことで真の意味で上手くなったと言えるのです」



 「ナルホド!レンシュウバカリデハイケナイ。ジッサイニタタカウコト……センセイ、アリガトウゴザイマス」



 「いえいえ、分かっていただけて何よりです」



 その後、近くの村がクレーターだらけになったとかならなかったとか。



 「エジタス様、サタニア様がお呼び……キャーーー!!」



 中庭に入ってきたクロウトが、今までに聞いたことが無いほどの悲鳴をあげた。



 「クロウト、ドウシタンダ?」



 「クロウトさん?」



 「あ、あなた達…………何をしてくれてんですかーーー!!!」



 クロウトの怒鳴り声が響き渡る。



 「ここはサタニア様が大事にしている庭なんですよ!それをこんなにして……何考えてるんですか!」



 「スマナイ……オレノセイナンダ」



 「え?」



 まさかの言葉に驚きを隠せないエジタス。



 「どういうことでしょうか?」



 「オレハイツモ、マオウサマノシジヲマツトキ、タダジットシテイルダケダ。ソンナオレヲミカネテ、センセイ……エジタスハ、オレトイッショニ、キャッチボールヲシテクレタ」



 「ゴルガさん……」



 「ダカラ、ワルイノハウケタオレニアル。オコルナラオレヲオコッテクレ」



 「ダメですよゴルガさ~ん」



 「?」



 「本当に叱られるのは誘った私なのですから」



 「チガウ!ワルイノハオレ!」



 「い~え、私です」



 「オレ!」



 「私です!」



 「オレ!」



 「私です!」



 「お二人とも落ち着いてください!」



 二人の口論にクロウトが止めに入る。



 「安心してください。そんなことしませんよ」



 「え?」「エ?」



 「両方叱りますから!!!」



 その後二人は二時間叱られ、さらに中庭の修復作業をやらされることになった。



 「ウーム、ナカナカウマクササラナイ」



 「ゴルガ様!さっきも言いましたよね!苗木は刺すのではなく土を掛けて植えるんです!」



 「腕がパンパンですよ~」



 「エジタス様!サボらないでください!」



 「ひぇ~……」



 エジタスとゴルガが必死に修復作業をしていると……。



 「それとエジタスさん」



 「はい?」



 「サタニア様がエジタス様を呼んでいますので修復が終わり次第来てください」



 「ああ、わかりました」



 「ほら、手を動かしてください」



 「ひぇ~……」



 エジタスとゴルガの修復作業はしばらく続いた。
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