笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
21 / 300
第二章 勇者

リーマ

しおりを挟む
 「仲間集めですか?」



 真緒とハナコは草原でリーマという魔法使いの少女に出会い、供に旅する仲間になった。しかし、すぐに出掛けようと催促するリーマに対して真緒はまだ行けないと言う。ハナコを含めた二人は何故行けないのかその理由を聞いた。



 「うん、師匠に卒業試験として仲間を三人集めて来るように言われているの。私師匠に認めてもらいたい。だからまだ旅に出掛けることは出来ない。ごめんね、話すのが遅れちゃって……」



 「何言っでるだ。マオちゃんがオラ達を仲間に誘ってぐれたんだぁ、マオちゃんの意見を尊重ずるのも仲間の務めなんだよぉ」



 「ハナコさんの言う通りですよ。そういう理由であれば、いつまでも待ちますよ」



 嬉しい。仲間達の優しさが伝わってくる。



 「ありがとう二人とも、実はそんな二人に頼みたいことがあるの」



 「何だ?何でも言っでぐれぇ」



 「私に出来ることであれば大丈夫ですよ」



 「…………お願い、お金貸して!」



 「「えっ!?」」



 あまりに予想外の頼みに戸惑いを隠すことの出来ないハナコとリーマの二人。



 「マ、マオぢゃん……いっだいどういうごとだぁ?」



 「マオさん、ちゃんと理由を聞かせてください」



 「そうだよね……実は、もうほとんどお金が残っていないんです!」



 そう言った真緒から差し出された手には銅貨が三枚しかなかった。



 「え、ごれだけ…………」



 「いったい、何に使ったんですか?」



 「それは、その…………」



 真緒はチラチラとハナコの方を見る。



 「もじがじで、オラ!?」



 「あ、うん。ここに来る前に食事したでしょ」



 「そういえば…………」



 ハナコはその時の事を思い出した。







 うわぁ~ごんなに沢山、本当にいいんだがぁ?



 うん、これはハナちゃんが仲間になった記念だから遠慮せずに食べてね。



 そんじゃあ、お言葉に甘えていだだきまーず!



 ガツガツ、ムシャムシャ、ングング。



 美味しそうに食べるね。見てるこっちも気持ちがいい食べっぷりだよ。



 ングング……オラ、食べるのが好ぎなんだ。食べている時が一番幸せだわぁ。



 そんなに慌てて食べなくても料理は逃げはしないよ。すみませーん、おかわりお願いしまーす。



 はーい、今伺いまーす。







***



 ふぅー食っだ、食っだ。



 まさか、全部完食しちゃうだなんてね……。あ、先に外で待ってて。



 分がっだぁ。



 お会計お願いします。



 はい、合計で銀貨十九枚、銅貨が九千九百九十七枚のお会計でございます。



 えっ、あ、これで足りますか?



 え~はい、銀貨二十枚お預かり致しましたので、お釣りが銅貨三枚でごさいます。またのご来店心よりお待ちしております。



 ど、どうしよう…………。







 「ぞんなまざが…………」



 ハナコは一連の出来事を思い出してショックを受けていた。



 「成る程、それでお金がないと……マオさん、こうなったら方法は一つです」



 「な、何?」



 真緒とリーマの間に緊張が走る。



 「働きましょう!!」







***



 「マオぢゃん、ごめんな。オラのせいでごんなごとになっちゃっで……」



 「ううん、ハナちゃんのせいじゃないよ。満足するまで食べていいよと見栄を張った私が悪いんだよ」



 二人はリーマの後について城下町を歩く形になった。



 「ここです」



 リーマがある一つの店の前で止まった。



 「ここは?」



 「私が先程、クビになった店です。もしかしたら、働かせてくれるかもしれません」



 そう言い終わると、扉をノックする。すると勢いよく駆けてくる足音が聞こえて、すぐ扉が開く。



 そこには、少し老けた感じの中年の男の人が立っていた。男はリーマをじっと見つめる。



 「…………何だ、お前か。何しに来た?」



 「おじさん、さっきはごめんなさい。実は、友達がどうしてもお金が必要で、ここで働かせて頂けませんか?」



 「友達?」



 おじさんは心底驚いた表情をしながら、真緒とハナコの顔を見る。



 「お願いします」



 「お、お願いじまずだぁ」



 「…………入れ」



 おじさんは扉を全開にして招き入れる。



 「ありがとう、おじさん!」



 「だが、これが最後のチャンスだからな。分かったな!」



 「はい!」



 三人が店の中に入るとそこは、多種多様な瓶に中身が緑や青色の液体が入っていた。



 「このお店って……」



 「“ポーション”だよ。回復職の奴がいない時や、急な回復を迫られた時なんかに非常に役に立つ代物だ」



 因みに緑がHP、青がMPの回復が出来る。



 「おい、母さん。母さん」



 「どうしましたか。あら、リーマちゃん帰って来てくれたんだね」



 奥の方から少しふくよかな女性が現れた。



 「おばさん、またお世話になります」



 「こっちは大歓迎だよ。この人なんか自分から追い出した癖に心配で探しに行こうとしてたんだから」



 「え?」



 「で、デタラメ言ってんじゃねぇ!」



 おじさんは耳を真っ赤にしながら奥の方へと姿を消した。



 「おじさん…………」



 「許してあげてね」



 おばさんが声を掛けてきた。



 「あの人、加減ってものを知らないからいつも全力で取り組んで空回りしちゃうんだよ」



 おばさんが話してくれたおじさんの意外な性格。リーマの中で“何か”が渦巻く。しばらくするとおじさんがやって来た。



 「ほら、これがこの店の制服だ。金が欲しけりゃ死ぬ気で働きな」



 「「「よろしくお願いします!」」」



 三人は頭を下げた。







***



 「違う違う、何度言わせりゃ気が済むんだ!」



 叱る



 「そうじゃねぇだろ!ポーションは瓶ごとに並べるんだろ!?」



 叱る



 「だから、さっきも言っただろ!ポーションの調合は一定のリズムでかき混ぜるんだよ!」



 叱りまくる



 「はぁ、はぁ、働くって大変なんだね」



 「リーマぢゃんがいづもごんなごとしてたかと思うとオラ、尊敬しちまうだなぁ」



 「おい!無駄口叩いてねぇで手を動かせ手を!」



 「「はい!」」



 再び、仕事に戻る二人。その時……。



       パリン!

 「きゃあ!」



 リーマがポーションを割ってしまった。



 「おい、どうした?」



 「ああごめんなさい。すぐ片付けます」



 リーマが割れた破片を拾おうとすると……。



 「触んじゃねぇ!」



 おじさんの怒鳴り声が響いた。



 「割れた破片を素手で触る馬鹿がどこにいる!おい母さん、母さん」



 「はいはい、分かっていますよ。箒と塵取り持ってきましたよ」



 おばさんは慣れた手つきで破片を片付けていく。



 「ここはもういい。あっちでポーションの整理でもしてこい!」



 「はい…………」



 落ち込みながら向かうリーマ。



 「おい!」



 おじさんの呼ぶ声にリーマが振り返ると。



 「怪我はしてないか」



 「え、は、はい」



 「ならいい。ささっと仕事しろ」



 おじさんが怪我の心配をしてくれたことで、またリーマの中で“何か”が渦巻く。







***



 「今日はよく働いた。ご苦労だった」



 仕事終了。外はすっかり夜になっていた。



 「ほら、これが今日働いた給料だ。受けとれ」



 おじさんは三人それぞれに革袋を渡した。



 「こ、こんなにいいんですか?」



 「オラ、こげな大金貰っだの初めてだぁ」



 真緒とハナコの袋には銀貨が五百枚入っていた。そして、リーマの方には……。



 「え……」



 困惑。中身を確認してリーマは目を疑った。袋の中には金貨一枚と銀貨五百枚が入っていた。



 「おじさん、これ……」



 「聞いたぞ、お前旅に出るんだって?」



 「どうしてそれを?」



 「商売してると耳が良くなってきやがる。そこの二人が楽しみだ、楽しみだって話していたのを聞いていたんだよ」



 「おじさん、でも……」



 「受け取ってやんな」



 おばさんが奥から出てきて言う。



 「この人は不器用なんだよ、別れの言葉もまともに言えないほどにね。そのお金はこの人の思いの丈なんだよ」



 「余計なこと言ってんじゃねぇよ!バカ野郎!」



 「おじさん……ありがとう!」



 リーマは嬉しさのあまり、おじさんに抱きつく。



 「こら、離れろ。服がシワになるだろうが……」



 そう言いながらおじさんはリーマの頭を撫でていた。この時リーマは分かった。自分の中で渦巻く“何か”それは、“喜び”。今までずっとおじさんに見捨てられていると思っていたが、そうじゃなかった。その事がリーマの中で複雑に入り交じっていた。



 「はいはい、皆今日はもう遅いからウチに泊まりなさい。美味しい夕食もあるからね」



 「やっだー、ご飯だ、ご飯だ!」



 「お世話になります」



 おばさんと二人は店の奥へと入っていった。



 「…………ほら、俺達も行くぞ」



 「うん……」



 リーマとおじさんも寄り添いながら奥へと入った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...