笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
22 / 300
第二章 勇者

泥棒

しおりを挟む
 「それじゃあ、私達もう行くね」



 おじさんの店の前。リーマは二人にお別れの言葉を述べていた。



 「本当に大丈夫かい?旅の準備が整うまでウチに泊まっていいんだよ」



 「そこまで甘える訳にはいかないよ。自分の世話は自分で何とかするから……心配しないで」



 「でも「母さん」……あなた」



 過剰に心配するおばさんの肩に手を添えるおじさん。



 「こいつらは自分で考えて行動を起こそうとしている。大人になろうとしているんだ、それを大人である俺たちが邪魔してどうする」



 「…………そうね、あなたの言う通り。誰でもいつかは大人になるもの、甘えてたのは私の方だったみたいね」



 「おばさん……」



 「おばさんの手料理、すんげー美味じがっだ。また、食べに来でもいいだか?」



 「ええ、美味しい料理を作って待ってるわ」



 ハナコの一言でいつもの明るさを取り戻した。



 「さようなら、おじさん、おばさん」



 「マオちゃん、あまりお金は使いすぎないようにね」



 「はい」



 三人はおじさん、おばさんに手を振りながら去っていった。



 「…………行っちゃったわね」



 「ああ、そうだな」



 三人を見送った、おじさんとおばさんは遠くを見つめるように話していた。おばさんは自分のお腹を擦る。



 「私達に子供は出来なかったけど、ここ何日かはまるで娘が三人も出来た思いだったわ」



 「けっ、あんな個性の強い娘がいたらこっちが疲れちまうよ」



 「さぁ、あの子達が帰ってきた時の為に料理の腕を上げときますか!」



 おばさんは腕捲りし、店の中へと入っていった。



 「おいおい、あんまり無茶するなよ………………頑張れよ娘達」



 おじさんは誰もいない道にぼそりと呟いた。







***



 「良かったですね。おじさんと仲直りできて」



 「本当にありがとうございます。これも全部マオさん達のお陰です」



 「ぞんなぁ、オラ達はただお金を稼いだだけだよ」



 「いえ、私一人だけでは店にすら近づけませんでした。本当に感謝してもしきれません」



 「それならそのお返しに私達との敬語のやり取りは禁止ね」



 「う……善処します」



 「善処かぁ~、出来るか出来ないかで答えてほしいな」



 「…………出来ます!」



 「やった、言質は取ったからね」



 「これでわだがまりは少なぐなるだねぇ」



 「う~、卑怯で……だよ、二人とも!」



 「「あはははは」」



 三人が楽しく会話をしていると前から来た一人の男が真緒の肩にぶつかった。



 「おっと、失礼……」



 「いえいえ、気にしないでください」



 男は去り際にニヤリと口元を歪ませるのを、リーマだけは見逃さなかった。



 「いやー、それにしても仲間集めも残すところ“あと一人”この調子ならすぐ終わるかもしれません」



 「マオさん!」



 突然リーマに呼び止められる真緒。



 「どうしたのリーマ?」



 「急に大声出じで何があっただぁ?」



 「今すぐお金を確認してください!」



 「え、何で?」



 「さっきぶつかってきた男、スリかもしれません!」



 リーマが先程の男を指差すと男は慌てて逃げ出した。



 「え、あ、ない!?ちょっと待って……」



 「泥棒ー!!!」



 「ぞんなに慌でなぐでも大丈夫だよぉ」



 こんな状況で何故か落ち着きを払っているハナコ。



 「どうしてそんなに落ち着けるんですか!?あのお金はおじさん、おばさんから貰った大切なお金なんですよ!」



 「大丈夫だっでぇ、こっぢにはマオぢゃんがいるでねぇが。マオぢゃんの身体能力なら直ぐにでも追いづくはずだぁ、ねぇマオぢゃ…………マオぢゃん!?」



 ハナコが顔を向けると真緒は地面に踞っていた。



 「ぢょっど、どうじだんだマオぢゃん?」



 「マオさん?」



 二人は真緒を心配して近くに寄ると、何かぶつぶつと独り言が聞こえてきた。



 「……私は泥棒じゃない。私は泥棒じゃない。あれは誤解なんだよ。私は泥棒じゃない。私は泥棒じゃない。あれは誤解なんだよ。私はやっていない。私はやっていない。」



 リーマの泥棒という言葉に条件反射を示してしまった真緒。こうなってはしばらく使い物にならない。



 「マオさん!正気に戻ってください!」



 「マオぢゃん!」



 「私はやっていない。私は泥棒じゃない。あれは誤解なんだよ。」



 「へへ、あいつら何チンタラしてるんだ?これなら余裕で逃げ切れるな。楽勝、楽勝」



 こうして話している間にも男はどんどん離れていく。



 「ああっ、ごのままじゃあ逃げられぢまう!」



 「そんな!?お願い!誰か、そいつを捕まえてー!!」



 しかし、悲しい事にこの時間帯は丁度人通りがない。さらにこれは偶然ではなく、通りに誰もいなくなる時間帯を男は予め調べて、その時に犯行を重ねていたのだ。



 「へへ、あばよ」



 「ああそんな……おじさん、おばさん、ごめんなさい…………」



 もうダメだ。そう思って諦めかけたその時、三人の側にローブを着て顔を隠し、体格的に男と判別できる人が現れた。



 「あなたは…………」



 「…………下がっていろ」



 一言そう言うと、懐から弓矢を取り出し逃げる男に向け、矢をセットして弦を引く。



 「スキル“ロックオン”」



 この瞬間、逃げる男にターゲットマーカーが表示される。



 「スキル“急所感知”」



 さらにスキルを掛けると、ターゲットマーカーは男の左足に移動する。そして…………。



 「…………」



 無言のまま矢を放つと飛んでいった矢は、物理法則を無視して逃げる男の左足に見事命中した。



 「ぎゃあああ!?い、痛い……何でよりにもよって、兵士の頃に受けた左足の古傷に…………」



 矢が刺さっている左足を押さえながら男が悶えていると、ローブを着た男がゆっくりと近づいてきた。



 「こいつは返してもらうぜ」



 そう言うと、男の懐からお金が入ってる革袋を取り返した。



 「ほらこれだろ、お前らの取られた物は…………」



 そしてその革袋を、やっと正気に戻った真緒に放る。



 「あ、はい、そうです」



 「「…………」」



 いきなりの出来事に、驚きを隠せない真緒と声すらあげられない二人。



 「じゃあな」



 「ちょっと待ってください!名前をお聞かせください。助けて頂いたお礼がしたいんです」



 その場を立ち去ろうとするローブを着た男に思わず声を掛けた真緒。



 「……“フォルス”だ。お礼は結構、大したことはしていない」



 「いえ、私達のお金を取り返してくれたんです。お礼をしないと気がすみません」



 「そうだよぉ、助げで貰っだんだからお礼ずるのが当然なんだぁ」



 「その通り、お願いします。私達にお礼をさせてください」



 三人はフォルスに近づく。



 「いや、ホントにいいんだ。これ以上俺に関わらないでくれ……」



 「でも……」



 真緒が止めようとローブに手を伸ばすと……。



 「いいって、言ってるだろ!」



 「きゃあ!?」



 フォルスは真緒の手を払い除ける。しかし、勢いよく払い除けたせいで、フードが外れてしまった。



 「えっ、嘘!?」



 「まざが!?」



 「あなたは!?」



 その顔は人間ではなかった。羽で埋め尽くされて、鋭い目付きに最も特徴的なのはクチバシがあったことだ。ハナコのような部分的な熊要素があるのとは違い、全てが鳥の要素で構築されたその姿はまさに“鳥人”だった。



 「だから関わるなと言ったのに……」



 「ごめんなさい、少し驚いてしまって……」



 「いいんだ、もう慣れた」



 「あの、差し出がましいのは承知ですが、“鑑定”してもよろしいですか?」



 「ここまで見られてしまったんだ。全部見せよう」



 まさか、許諾が取れてしまうとは……。ゆっくりと深呼吸をして調べ始める。



 「スキル“鑑定”」







フォルス Lv28

種族 鳥人

年齢 35

性別 男

職業 アーチャー



HP 200/200

MP 160/160



STR 60

DEX 250

VIT 100

AGI 130

INT 80

MND 140

LUK 120



スキル

ロックオン 急所感知



魔法

風属性魔法



称号

なし
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...