笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第二章 勇者

フォルス

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 鳥人──それは獣人の仲間で亜人の一種。持ち前の翼で空を自由に飛ぶことが出来るため、他の亜人達より機動力が頭一つ飛び出ている。そんな彼らが使う武器は主に弓矢、空からの攻撃を可能とするのに最も最適である。因みに翼の先に指があり、翼が腕の役割をしている。



 これがリーマの知っている鳥人の情報だ。しかし、知っている情報と直接見たのでは大きな違いがあった。



 「凄い……私、初めて見ました」



 「でんも、何故ごんなどころに鳥人が?オラは奴隷としてこの国にいだげど、鳥人は滅多に里から出ないごとで有名だぁ」



 「…………まぁ、色々あってな」



 深く思い詰めた表情をするフォルスにこれ以上聞くことは出来なかった。



 「……フォルスさん。すみませんでした、私が強引に止めようとしたから……」



 「いや、こちらも人の感謝を無下に扱ってしまった。これでおあいこってことにすればいい」



 「そう言って頂けるとありがたいです。…………あの、フォルスさんに折り入ってお願いがあります!」



 「なんだ?」



 「私達の仲間になってください!」



 「マオさん!?」



 「確がに、フォルスざんみだいな実力のある人に仲間になっでもらえれば心強いけど……」



 失礼すぎる。助けて貰った上に、顔まで見てしまったのに仲間へと誘おうとする。傲慢、ひどく傲慢である。



 「断る」



 当然の反応だ。しかし、真緒は諦めない。



 「お願いします!どうしてもフォルスさんが必要なんです!」



 「そもそも、仲間にと言っても何をするつもりなんだ?」



 「実は私達、いろんな場所を巡ってそこの文化に触れたり、体験したりしてこの世界の事をもっと知ろうと思っているんです」



 「成る程…………お前達も同じ理由で旅をするのか?」



 フォルスはハナコとリーマの二人に顔を向ける。



 「オラは元々奴隷だっだのをマオぢゃんが拾っで、仲間として受げ入れでぐれだ」



 「私はこの本のちぎられたページを探す為に仲間になりました。しかし、それ以前にマオさんの熱意に心打たれたのが理由です」



 「みんな…………」



 二人の言葉に胸が温かくなっていく。



 「そうか、良い仲間を持っているんだな……だが、それだと俺が入る理由はないな」



 「……っ!」



 痛いところを突かれた。今まではそれぞれに事情があり、心の隙間を埋めることで仲間になってくれていた。しかし、今回は違う。相手の情報が少なすぎる。



 「確かに……そうです。それでも、お願いします!どうか私達の仲間になってください!」



 そう言い終わると、土下座をしようとする真緒。



 「待て!」



 だが、寸前の所でフォルスが止めに入る。



 「普通なら断るべきなんだろうが、女に土下座させてしまったら男が廃る。……いいだろう、お前達の仲間になろう」



 「本当ですか!?「ただし!」」



 「条件がある……」







***







 「ここが俺の家だ」



 城下町より少し離れた場所にフォルスの家があった。



 「大きい家ですね……」



 「まるでお城みでいだぁ……」



 「凄い豪邸です……」



 三階建てで横に広く造られた家は屋敷だった。



 「こっちだ、庭で条件を言う」



 庭へと向かうフォルスと三人。



 「うわぁ、これって……」



 「凄いだなぁ~」



 「訓練所?」



 そこには様々な場所に的が置かれていた。木の上や屋根の上など至るところに配置されている。



 「さて、仲間に入るための条件だが…………俺と弓矢で的当て対決をしてもらう」



 「的当て?」



 「もう分かっていると思うが、俺は弓矢を扱うのが得意だ。そんな俺と弓矢の的当てで勝つことが出来たら仲間に加わってやろう」



 「分かりました、やります!」



 「ちょっと、マオさん」



 リーマがフォルスに聞こえないように耳打ちをする。



 「マオさんって、弓矢をやったことがあるんですか?」



 「うーんと、最後に触ったのが三年前かな……」



 「え?」



 真緒が触ったのは中学の授業の時である。



 「まぁ、何とかなるって」



 「その自信はどこから来るんですか!?」



 「それじゃあ、ルールを説明する。今から一つの的にそれぞれ三回ずつ狙って、当たるまでにかかった回数で勝敗を決める。スキル等の使用は禁止だ」



 「あの……」



 「なんだ?」



 「お互い三回とも外した場合はどうなるんですか?」



 一つの疑問を述べる真緒。



 「その場合は、仕切り直して始めからだ」



 「成る程、分かりました。私の方は準備万端です。いつでも始めて大丈夫ですよ」



 真緒はフォルスから手渡された弓矢を装備する。



 「今回狙う的は、あれだ」



 フォルスが指差す方向、距離にすると約五十メートル先に他のと比べて異様に小さい的が置かれていた。



 「小さい…………」



 「悪いが先攻はもらうぞ」



 誰も反論しない。どちらが有利なのか分からないため、頷くしかなかった。



 フォルスはゆっくりと弓を構える。……静寂がその場を支配する。そして小さな的めがけて放った。



 「…………やはり、ロックオンがないと不便だな」



 矢は小さな的の手前の位置に刺さっていた。



 「危ながっだなぁ~」



 「見てるこっちもひやひやしますよ」



 二発目。今度は先程よりも放つ間隔を狭めて放った。そして…………見事命中した。



 「え……」



 「確かにロックオンがないと不便ではあるが、この程度の距離なら当てるのは簡単だ」



 「ぞんな…………ごんなあっざりど」



 「マオさんが勝つには最初の一発目で的に命中させなければなりません……」



 しかし、真緒が弓矢を触るのは三年ぶり。状況は極めて絶望的だった。



 「…………」



 真緒は一言も喋らず、ただじっと的を見つめる。そしてゆっくりと弓を構える。



 「ほぉう……」



 真緒の綺麗なフォームにフォルスは感心していた。そして、ここで信じられないことが起きる。



 「マオぢゃん!?何じでるだ!」



 「マオさん!?」



 真緒は的を狙わず空に方向を変え、迷わず矢を放った。その光景を見たフォルスは落胆した。



 「勝負を諦めたか」



 「いえ、それは違います」



 放たれた矢は空彼方へと飛んでいき、重力に従って放物線上に落下していく。



 「私は諦めたりしない。どんな逆境に立たされようと私は常に前を向いて歩いていく。勝つために必要なのは才能でも技術でもない。……心です」



 放物線上に落下していく矢はそのまま小さな的に命中した。



 「な、なんだと…………」



 「わぁー!!マオぢゃん凄いだぁー!!!」



 「マオさん!!凄すぎます!!!」



 二人は嬉しさのあまり、真緒に抱きついた。



 「ちょ、ちょっと二人とも……苦しいよ」



 嫌がる真緒の言葉とは裏腹にとても笑顔だった。



 「まさか、計算したのか……どの場所に矢を放てば的へ目掛けて落下するのか?」



 異常なまでのステータスと、キラーフットとの戦闘で真緒の思考回路は常人の域を軽く越えていた。だからこそこのような事が出来たのだ。しかし、それを知る者は誰もいない。



 「ちょっと、二人とも一旦離れて…………さぁフォルスさん。約束ですよ私達の仲間になってください」



 「…………悪いがそれは出来ない」



 予想外の返答に戸惑う三人。



 「どうしてですか!?」



 「フォルスざん、ぢゃんど説明してぐれ!」



 「私達を騙したんですか!?」



 「違う!そうじゃない!」



 「じゃあ、どう言うことなんですか?」



 「それは…………」



 何かを隠そうとするフォルスに疑惑の目を向ける。



 「フォルスさん、あなた本当に鳥人何ですか?」



 「………!?」



 リーマの言葉に反応を示したフォルス。



 「鳥人は誇り高い一族と聞いています。“大空を舞う”その姿はまさしく、天空の支配者と言われています。そんな一族のあなたが何で?」



 「俺は…………飛べないんだよ」



 「「「え……」」」



 フォルスの衝撃の事実に言葉を失う三人。



 「生まれた時からそうだった。里に住む他の子供は皆、空を飛んでいたのに俺だけ地面を歩いていた。そしてついに俺が飛べないことが里の皆にバレてしまった。その事から俺は里を追放され、行くあてもなく彷徨さまよい、丁度十五年前にこの国に辿り着いて、廃墟だったこの屋敷に住み着いてるって訳さ」



 「そんな私、そんなつもりで……」



 「いいんだ、分かってる。……俺が仲間にならない理由はそこにある。飛べない鳥人がいたらお前達の足手まといになってしまう。俺は出来損ないなんだよ」



 「……フォルスさん」



 「だから悪いがこの話は無かったことにしてくれ」



 そう言うとフォルスは屋敷の方へと歩いていくが、真緒が呼び止める。



 「フォルスさん、どこに行くんですか?約束ですよ私達の仲間になってください」



 「さっきも言っただろう、俺は出来損ないの鳥人なんだ……」



 「そんなの関係ありません!私がフォルスさんを仲間にと思ったのは、あなたが私のお金を泥棒から取り返してくれたその優しい心に対してです」



 「…………」



 「それに出来損ないなのはフォルスさんだけじゃありませんよ。私だって未だに“泥棒”って言われると過去のトラウマが甦ってしまうんですから」



 「そんだそんだ、オラなんで食べ過ぎで仲間のお金を金欠まで追い込んだがらなぁ」



 「私なんて感情の起伏をコントロール出来ず、何度周りの物を破壊したか……」



 「フォルスさん、あなた出来損ないかもしれません。しかしそれはあなただけに限ったことじゃない。出来損ない同士が協力し合えば駄目な部分もカバー出来る筈です」



 「…………」



 「フォルスさん、どうか私達の仲間になってください」



 「ははは…………何年ぶりだろうな涙なんて流したのは」



 フォルスの目から涙が零れ落ちた。



 「……こんな出来損ないの俺でも受け入れてくれるのか?」



 「当たり前じゃないですか!私達は出来損ないのパーティーです!」



 「おいおい、それはパーティーとして成立するのか?…………よろしくな」



 「はい!」



 「やっだぁ新しい仲間だ。オラはハナコっで言うんだ、よろしぐ」



 「私はリーマです。よろしくお願いしますね、フォルスさん」



 「そして私が真緒です。よろしくお願いします!」



 「フォルスだ。俺に出来ることであれば何でも協力しよう」



 こうして仲間集め最後の一人、フォルスが仲間になった。



 「よーし、これで師匠に会いに行けるぞ!」



 「師匠?」



 「ああ、フォルスさんにはまだ話していませんでしたね。実は……」







***







 「成る程、それであんなに仲間集めに固着していたのか」



 「で、でもフォルスさんを仲間にしたのは純粋な気持ちで……」



 「そのぐらい分かってる。マオがそこまで計算高いとは思っていない」



 「そうですか、よかった」



 「オラ、マオぢゃんの師匠に会って見だがっだんだぁ、楽しみ」



 「師匠、喜んでくれるかな?」









 その当の本人はというと、ずっと真緒達の行動を見ていた。しかし、その場にいる訳ではない。今もずっと宿屋で親指と人差し指で輪っかを作り、それを覗いていた。“千里眼”と呼ばれるそれは、エジタスの空間魔法の応用によって作り出されている。輪っかの部分に対象となる空間を作り、それを覗き込むことによって離れた景色や人を見ることが出来る魔法だ。



 「まったく~マオさんったら、何年掛かってもいいと言いましたが…………まさか、一週間あまりで終わってしまうとは……。しかも、どれも色物ばかりじゃありませんか。実はマオさんにはそういう、何かを引き寄せる力があるのかもしれませんね~」



 エジタスは“千里眼”を解くと宿屋を後にする。



 「さてと、では頑張った弟子を師匠が迎えに行きましょうかね」
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