笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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番外編 一方その頃

聖一 VS 騎士団長 マカセ

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 「悪いが、武器を構えていなくても手加減はしないからな!」



 マカセは丸腰の聖一に向かって襲い掛かる。



 「ああ、すまない。勘違いしているようだけど、別に武器を使わないとは言っていないよ……“剣を抜く必要は無い”と言ったのさ」



 迫り来るマカセに対して、聖一は両手を広げる。



 「少し実験に付き合ってもらうよ。“ファイア”、“ウォーター”」



 聖一が唱えると右手に炎、左手に水が生成された。



 「な、何!!?」



 マカセは目を疑う光景に動きを止めてしまった。



 「同時念唱だと……」



 魔法は本来一種類しか唱えられない。それは脳への伝達信号であり、炎なら炎、水なら水、という様に一度脳にこれから唱える魔法の種類を認識させる為だ。二つの種類を同時に唱えるという事は、聖一は一度に二つの伝達信号を脳に送っている事になる。



 簡単に説明すると、料理をしながら読書をしているのだ。人間は二つの物事を同時に行うことは出来ない。必ず、どちらか一方が疎かになってしまうのだ。それを両立させている聖一はある意味人間を超越した存在だ。



 「それから……よいしょっと!」



 「何だあれは!?」



 聖一はさらにそこから、二つの魔法それぞれを凝縮して形にしていく。



 「お、出来た。やっぱり思った通り、魔法はイメージが大切なんだな」



 「あれは……剣なのか?」



 それは紛れもない剣の形をしていた。炎と水、それぞれがしっかりと形を保っている。



 「魔法を応用すればこんな事も出来るんだな。名付けるとすれば、フレイムショーテルとアクアグラディウス……かな。まぁ、形だけ見た安直なネーミングだけどね」



 ショーテルの形をした炎の剣、フレイムショーテル。グラディウスの形をした水の剣、アクアグラディウス。二つの剣を造り上げた。



 「あ……あ……あ……」



 突然の出来事に、開いた口が塞がらないマカセに聖一が声を掛ける。



 「ね、だから言ったでしょ?剣を抜く必要は無いんだよ。それは魔法で造っちゃおうと思ったから……」



 聖一は二つの剣を、まるで長年の相棒の様に上へと放り投げ、ジャグリングをして見事両手に収める。



 「それじゃあ、決闘の再開と行こうか」



 「……クソッ!魔法が使いこなせるからって調子に乗るなよ!!」



 余裕の表情を浮かべている聖一に、怒りを露にし襲い掛かった。



 「フン!」



 「惜しい惜しい」



 マカセの攻撃を難なく避ける聖一。



 「クソが!!」



 マカセは右、左、右、左と交互に剣を振り回す。



 「…………」



 しかし、聖一はそれを冷静に対処していく。



 「……ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」



 振り回しすぎた影響により、肩で息をするマカセ。そんな姿を見た聖一は一言述べる。



 「なかなか良いダンスでしたよ」



 プチン、それはまるで何かの糸が切れたような音だった。



 「こんのクソガキがーーー!!テメーみたいな何の努力もしていない奴が俺は一番嫌いなんだよ!!」



 切れたのはマカセの堪忍袋の緒であった。怒鳴り散らされていても、平然とした顔で見てくる聖一。



 「俺はな、これでもこの国の兵士達をまとめ上げる騎士団長なんだよ!!ここまで登り詰めるのに相当の時間と労力を費やした!テメーとは踏んできた場数が違うんだよ!!スキル“スラッシュインパクト”!!!」



 そう言うと、マカセの剣が光輝き始め、その剣を聖一に目掛けて切り付ける。



 「な……んだと……」



 しかし、当たらなかった。聖一の左手に装備していた“アクアグラディウス”の刃の部分が円形状の盾に変化し、マカセの渾身の一撃を防いだ。



 「ある話で、水は大砲の玉の勢いすらも吸収してしまうと言われている。そんな大砲の玉よりも劣る威力であれば、防ぐのは容易だよ」



 「……剣が盾に変わるなんて……」



 「うん、何となくイメージしたら行けるかなって思ってね。名前はシンプルにアクアシールドにでもしておこうかな」



 「次元が違いすぎる……」



 マカセはこのスキルに絶対の自信があった。今までこのスキルに何度命を救われた事か分からない。そんなスキルを意図も簡単に防がれてしまい、マカセの心に亀裂が入る。



 「それに昔からよく言うでしょ?この世はいつも不平等だ……って」



 聖一がマカセに歩み寄ると同時に、右手の“フレイムショーテル”が輝き始める。



 「避ける事をおすすめするよ。スキル“ワイルドスラッシュ”」



 徐々にその輝きは強さを増していき、最大値まで達したその時、マカセに目掛けてスキルを放った。



 「ひぃぃ!」



 マカセは恐怖で叫び声を上げながら、目を瞑ってしまった。



 「…………」



 だが、いつまでたっても痛みが来ることは無かった。マカセは恐る恐る目を開けると……。



 「あ……あ……ああ……おれの剣が……!?」



 マカセの剣は先端部分が溶けて無くなっていた。



 「よし、これなら実践でも使えそうだな。実験に付き合ってくれてありがとう。あと条件の通り、これ以上僕達に関わるのは止めてもらうからね」



 実験。その言葉を聞いたマカセの心は完全に壊れてしまった。



 「俺の……俺の剣が……」



 ショックが大きかったのか、マカセは溶けた剣を見つめ、同じ言葉を繰り返していた。



 「あら、お二人供。何をしているのですか?」



 「ああ、シーリャ」



 「!!」



 決闘が終わると、シーリャが二人の存在に気付き近づいて来た。



 「お二人はここで何をしていたのですか?」



 決闘を見ていなかったシーリャにとって当然の疑問だ。すると、マカセが口を開いた。



 「……じ、実は……“聖一様”に模擬試合をお願いして今しがたまで戦っていたのです」



 「まぁ、本当ですか!それでどちらが勝ったのですか?」



 両手を合わせ、嬉しそうに聞いてくるシーリャ。



 「……それは勿論“聖一様”です。私は手も足も出ませんでした。流石、異世界から来た勇者と言った所でしょうか……」



 「やはりそうですよね!素晴らしいです聖一様。我が国の騎士団長に勝ってしまわれるなんて!」



 シーリャは笑みを浮かべながら、聖一に歩み寄る。



 「いや、そんな“大した事”はしてないよ」



 「!!」



 「謙遜などしなくても、よろしいのですよ?」



 「そ、それではシーリャ様。わ、私はこの辺で失礼させて頂きます。仕事に戻らねばなりませんので……」



 何とか声が震えるのを抑える事が出来たマカセは、シーリャの返事を聞く前にその場を離れた。頬から涙が流れ落ちるのを見られたくなかったのだ。



 「マカセったら、相変わらず仕事人間なのですね」



 「それで、どうしてシーリャがここに?」



 「ああ、そうでした。聖一様、実は先程アイコ様とマイコ様にも聞いたのですが……そろそろ魔王討伐に向かって頂けますか?」



 「そうだね、丁度実力も分かった所だからね。……それで、いつ出発した方がいいかな?」



 「明日にでも出発して頂けますでしょうか?」



 「明日かい!?……うん、いいよ」



 シーリャの急なお願いだったが、そのぐらいなら問題ないと判断して了承した。



 「本当ですか!ありがとうございます!!」



 「だけどその前にもう一度、国王に会いたいんだけど何処にいるか分かるかな?」



 「父上ですか?それでしたら、今は他国との会合の準備で自室にいると思います」



 「そうか、ありがとう。早速訪ねてみるよ」



 聖一はカルド王の居場所を聞くと、その場所へと向かおうとする。



 「聖一様!」



 シーリャが呼び止める。



 「何だい?」



 「父上に何の用事なのですか?」



 「いやちょっと、話をするだけだよ」



 そう言うと聖一はカルド王の自室へと向かった。
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