笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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番外編 一方その頃

騎士団長

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 カルド城内特別訓練場。聖一達がこの世界に来てから、シーリャがカルド王に無断で造らせた特別な訓練場で、一般兵士の訓練場よりも器材が充実しており、待遇の差は歴然であった。そのため、聖一達は他の兵士達から良く思われていなかった。そんな訓練場で二人の男が今まさに戦闘を勃発しかけている。



 「いいか、私が勝ったら今後一切シーリャ様に近づくんじゃないぞ!」



 「ああ、分かった。その代わり僕が勝ったら、これ以上僕達に関わるのは止めてもらうよ」



 二人の男、一人は聖一と分かるがもう一人の男には見覚えがない。見覚えがない男は頑丈そうな鎧を着ているが、聖一の方はこの世界の一般的な服装で、鎧などの防具を一切身に付けていなかった。



 「よかろう、決闘で交わした条件は負けた方が必ず叶えるのがルールだからな」



 「それならよかった……じゃあ、始めようか?」



 「ああ、その生意気な鼻をへし折ってやる!」



 遂に二人の男の戦闘が始まってしまった。何故、こんな事になってしまったかと言うと、それは一時間前に遡る……。







***







 カルド王との謁見を終わらせ、一度自室へと戻る道中で一人の男性と出会った。



 「これは、シーリャ様。いつもながらお美しいお姿で、感銘の極みでございます」



 「ありがとうございます。マカセもお勤めご苦労様です」



 マカセと呼ばれるこの男性の容姿は平均的で、良くも悪くもないといった感じなのだが、国王と大臣を見た後では若干悪く見えてしまう。



 「いえいえ、シーリャ様あっての私ですから、そのお姿を拝見できるだけで疲労も吹き飛びます」



 「あら、そう言って頂けるとこちらも悪い気はしませんね」



 二人が楽しそうに会話をしていると、聖一が声を掛けてくる。



 「シーリャ、この人は?」



 「貴様!呼び捨てにするとは何事だ!シーリャ様と呼べ!」



 聖一の呼び捨てが気にくわないマカセは怒鳴り散らした。



 「マカセ、いいのです。私がそう呼んで欲しいと頼んだのです」



 「シーリャ様!こいつは異世界から転移してきた者ですが、呼び捨てにしていい身分ではありません!」



 「身分など関係ありません!私がそう呼んで欲しいから、呼んで貰っているのです!」



 「……分かりました」



 シーリャの言葉を聞いたマカセは、渋々ながら引き下がった。



 「申し訳ありませんでした聖一様。彼はマカセといって、この国の騎士団長の一人なのです」



 「それは是非挨拶しないといけないね、あのもう聞いているかも知れないけど、この度異世界から転移してきた如月 聖一です」



 「笹沼 愛子でーす」



 「石田 舞子でーす」



 聖一達が自己紹介を終えると、マカセは聖一を睨み付けながら吐き捨てるように言う。



 「私は貴様を絶対に認めないからな!」



 そう言い残すとマカセは足早にその場を去って行った。



 「何あれ感じ悪ーい……」



 「ねぇー」



 「本当に申し訳ありません。マカセには後でよく言って聞かせますので……」



 「いや、彼の反応は正しいよ。いきなり現れた見も知らぬ男に、自身の敬愛する人を呼び捨てにされるんだから、怒るのは当然の事さ。謝るのは寧ろ僕の方だと思うよ」



 「聖一様……」



 「聖一さん、優しいー!」



 「顔だけじゃなく、心までイケメンよねー」



 聖一のマカセに対するフォローが、聖一の評価を著しく上昇させた。



 「それじゃあ、自室へ戻ろうか」



 「はーい」



 再び聖一達は自室へと歩き始める。







***







 「ふぅー、国王への謁見緊張したな」



 聖一は自室に戻るとベッドに倒れこみ、独り言を漏らす。



 「それにしても、この世界に来てから驚かされる事ばかりだな……魔法という存在と亜人、魔族の二つの種族。僕達の元いた世界とは偉い違いだな…………科学ではなく、魔法が発展した世界か……」



 聖一がこの世界について考えていると……。





 コンコン、と部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。



 「ん?……はい、どちら様ですか?」



 聖一が部屋の扉を開けると……。



 「あなたは……」



 そこにいたのは、先程言い合いになり、気まずいまま別れてしまった、マカセだった。



 「いったいどうしたの?」



 「……貴様に話がある。ここでは何だ、何処か広い場所に移ろう」



 「それだったら、ここから少し歩いた所にある訓練場へ行こうか」



 「ああ、貴様達の為だけに造られたあの、訓練場か……。いいだろうそこで話をしよう」



 マカセは嫌みったらしく言うと、特別訓練場へ歩き出し、聖一もその後をついていく。



 「あのー、それで僕に何の用かな?」



 自室から少し歩いたこの特別訓練場に着くと、マカセに話の内容を聞いた。



 「話というのは他でもない。……これ以上シーリャ様に近づくのは止めて貰おうか」



 「どういう意味かな?」



 「貴様も分かっているだろう、シーリャ様は将来この国を支えてくださる大事な御方、貴様のような奴にシーリャ様を汚される訳にはいかないのだ!」



 マカセは恐ろしい剣幕で聖一を怒鳴り付ける。



 「……そうか、ならこういう相手を思い通りにしたい時には、昔ながらの方法で解決しようじゃないか」



 「昔ながらの方法?」



 その剣幕に対して表情一つ変えない聖一はマカセに、自分の言う事を聞かせたい時に便利な方法を教える。



 「決闘だよ」



 聖一は少し口角を上げて、笑って見せた。その笑みは実に不気味なのだが、人間味にも溢れていた。



 「成る程……そちらの世界でも多少なりの心得はあるようだな」



 「まぁね、人が人を傷付ける。そんな世界だからね」



 何を思ったのか、聖一は少し悲しそうな表情を浮かべた。



 「あまりこちらの世界と変わらないのだな」



 そんな呑気な事を言いながらマカセは、静かに腰に装備していた剣を引き抜き、その矛先を聖一に向ける。



 「さあ、貴様も剣を抜け……」



 「要らないさ」



 「何!?」



 予想外の返答にマカセは驚きの声を上げた。



 「君程度の相手に、剣を抜く必要は無い」



 聖一は腰に差してある一般的な剣を外し、そこら辺に放り投げた。



 「ふざけているのか……剣がなくては戦う事が出来ないだろう!」



 「剣なら今も持っているさ、“心”という剣をね」



 マカセの怒りを軽く受け流した聖一は、少し臭い台詞を述べる。



 「……そうか、よく分かった。貴様のような大バカ男は初めてだ。」



 「…………」



 聖一とマカセは互いに距離を取る。それぞれが真剣な表情になった。



 「いいか、私が勝ったら今後一切シーリャ様に近づくんじゃないぞ!」



 「ああ、分かった。その代わり僕が勝ったら、これ以上僕達に関わるのは止めてもらうよ」



 二人の男、聖一とマカセ。マカセは頑丈そうな鎧を着ているが、聖一の方はこの世界の一般的な服装で、鎧などの防具を一切身に付けていなかった。



 「よかろう、決闘で交わした条件は負けた方が必ず叶えるのがルールだからな」



 「それならよかったよ……じゃあ、始めようか?」



 「ああ、その生意気な鼻をへし折ってやる!」



 こうして、二人の男の戦闘が始まった。
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