笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第五章 冒険編 海の男

思い出話

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 「それで、目的地は何処にするんだ?」



 真緒達がジェドから一時的に借りる事になった船で、出港してから約十分。ジェドが真緒に目的地を聞いてきた。



 「えっと、聞いたことはあると思うんだけど…………“水の都”」



 「何!?“水の都”ってあの伝説の場所の事か?」



 「はい……やっぱり可笑しいですよね。笑ってくれても構いません」



 伝説とされている“水の都”が目的地だと聞いて笑われるのを覚悟していた真緒だったが、話す事にした。



 「別に笑わねぇよ」



 「えっ?」



 「それよりも、何で“水の都”に行きたいんだ?」



 「私達は、世界中を旅してそこの文化に触れたり体験しているんです」



 「成る程、“水の都”は興味本意で行きたいって訳か……」



 「そう言う事になりますね……」



 真緒の言葉を聞いてからジェドはしばらくの間、顎に拳を当て考える。



 「……まぁ、お前達になら教えても大丈夫だろう……ああ、悪いな。少し考え事をしていた」



 「大丈夫です、気にしてません」



 「そうか、よし!お前達に朗報だ!」



 「「「「「「?」」」」」」



 ジェドは手下の海賊達を背に仁王立ちをする。



 「実は俺達、定期的に“水の都”を物資の調達場所として訪れているんだ!」



 「え…………」



 「「「「ええーーー!!!」」」」



 衝撃の事実に真緒達は、思わず大声を上げてしまった。まさかこんなにも近くに“水の都”の場所を知っている人がいるとは考えもしなかった真緒は、ジェドに質問した。



 「いったいどういう事ですか!?」



 「本当に全くの偶然だった……あの日は激しい嵐の日だったんだ」







***







 「船長!!これ以上の航海は危険です!一度引き返しましょう!」



 「馬鹿野郎!ここで退いたら海の男の名が廃るってもんよ、全速前進!ヤローども、何があっても止まるんじゃねぇぞ!!」



 「「「「「ウッス!!!」」」」」



 ジェド海賊団はこの日、かつてないほどの危機的状況に陥っていた。天候が荒れに荒れ、凄まじい風の猛攻に船が大きく左右に傾く。その際に甲板に押し寄せる水の量は尋常ではない。



 「(……とは言ったものの……これは不味いな……)」



 ジェドは気づいていた。嵐の影響で何度も大量の水に船が叩きつけられて、船の底に亀裂が生じ水が入り込んでいる事に……。



 「(このままじゃこの船は沈没する!)」



 ジェドは船が沈没するのを黙って見るしかない、そう諦めかけていたその時……。



 「な、何だ……!あれは、光?」



 地平線の遥か彼方に、眩い一本の光が海の底から突き出ていた。



 「何故こんな嵐の中で光が?いや、今はそんな事どうでもいい!ヤローども、あの光に向かって突き進め!!」



 諦めかけていた思いが再び甦った。他に頼る物も無く、まさに最後の希望であった。



 「クッ……さっきよりも激しくなった気がする」



 海から突き出る一筋の光を目指して、突き進んでいたジェド海賊団だったが、近づいていくに連れ嵐の激しさが増してくる。



 「船長!!駄目だ!舵が効かない!」



 「何だと!?」



 手下の一人が必死に舵を切ろうとするが、荒れ狂う波と暴風のせいで舵はビクともしない。



 「…… ここまでか……」



 そして、ジェド海賊団は光に辿り着く前に、激しい嵐によって沈没させられてしまった。



 「(ここは……何処だ?……俺達は確か、嵐に巻き込まれて死んだ筈だ)」



 ジェドが目を覚ますとそこは、全くの無音の場所にいた。辺り一面青一色で、見上げるとそこには……。



 「これは……海なのか?」



 まるで青空の様に水面が広がっていた。そこから先に見えるのは、先程までいた激しい嵐の光景であった。



 「あの……」



 ジェドが呆気に取られていると、全く聞き覚えの無い美しい声が聞こえてきた。



 「誰だ!」



 「ヒィ!……あの、あなた達は何者何ですか?」



 ジェドが声のする方へと顔を向けると、そこには岩影からひょっこりと顔を出してこちらを伺う綺麗な女性がいた。



 「う、美しい……」



 「えっ?」



 「あ、いや、な、何でもない。俺達は…………商人だ!海専門の商人で、船に積んである物資を売り買いしているんだ」



 「…………本当ですか?」



 「ああ本当だとも」



 咄嗟に嘘をついてしまった。それは、海賊という稼業が世の中で、どれだけ嫌われているか知っていた為、本当の事を言って、警戒されるのは得策ではないと判断したのだ。



 「なーんだ、よかったー!てっきり悪い人達かと思ったんだけど、商人さんなら安全だよね」



 岩影に隠れていた女性がジェドの前に姿を表した。しかし、それは普通の人とは明らかに違っていた。



 「…………人魚?」



 そう、上半身は人間の体をしているが、下半身は魚の尾びれその物が付いていた。



 「私ライア、よろしくね」



 「あ、ああ俺はジェドだ」



 二人は握手を交わしながら、自己紹介を済ませた。







***







 「そうして、俺達は人魚のライアと知り合ってその後、人魚の町に行く事になったんだが……ん、どうした?」



 ジェドが自慢げに昔話を語っていると、真緒達は冷たい目線で睨んでくる。



 「嘘……ついたんですか?」



 「酷いなぁー」



 「最低です」



 「外道が」



 「悲しいですね~」



 「いやいやいや、驚く所そこかよ!もっとあるだろ!例えば、嵐の中でどうして生きていたのか、とか。人魚が実在していたのか、とか。もっも驚くべきポイントがあるだろ!?」



 ジェドはまさか、嘘をついた所を指摘されるとは夢にも思っていなかった。



 「確かにそうかも知れませんが、嘘をつくのは最低です」



 「いやだからあの時は仕方なくてな……「ジェドさん!!」」



 ジェドが弁解を求めようとしたその時、手下の一人が大きな声を張り上げて呼びに来た。



 「どうした?」



 「前方に海賊船が一隻、こちらに近づいてきます」



 「何!?それで旗は?」



 「無印!何も書かれていません!」



 「マジかよ!“孤独船”だと!?全員、今すぐ持ち場に着け!全速力で逃げるぞ!!」



 「「「「「おおーー!!!」」」」」



 ジェドは怯えた表情をしながら、手下達に指示を出した。



 「あ、あのいったいどうしたんですか?」



 「来たんだよ……誰も乗っていない筈なのに船が独りでに動き回る……この海のゴーストシップ、“孤独船”!!」
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