笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第五章 冒険編 海の男

人魚の町

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 「ここが“水の都”ですか……」



 真緒達はジェドの案内で航海していたが、ある場所でホラ貝を吹いた途端、船が海中に沈んでいき、辿り着いた先は目的地の“水の都”であった。



 「綺麗な所だなぁ~」



 “水の都”の建物は、全てが白い岩石を加工して建てられた物であり、その歪ながらも自然に溶け込む造形は美しいの一言に尽きる。



 「そろそろ来る筈なんだけどな……あ、来た!」



 ジェドが目を凝らしていると、“水の都”の方から何かが、こちらに近づいて来る。



 「やっほー、久しぶりだねジェド!」



 「人魚だ……」



 真緒達の前にやって来たのは、上半身が人間で、下半身が魚の尾びれをした人魚であった。



 「ジェドさんが言った通りでしたね……」



 真緒達が呆気に取られていると、ジェドが人魚の前まで歩み寄る。



 「ライアさん、お久しぶりです。本日も物資の調達に参りました」



 「!!?」



 ジェドが突然丁寧語を使い出し、驚きのあまり見開いた目が閉じられない真緒達。



 「相変わらず真面目だねー、たまにはサボってもいいんじゃない?」



 「いえ、そういう訳にはいきません。私はライアさんに命を救って頂いた身、恩返しの意味もあるのです」



 「……あ、あれがあのジェドさん?」



 凄い違和感がある。背中の届かない部分が痒くなる……そんな感覚が真緒達を襲う。



 「ジェドさんは、ライアの事が好きなんだよ」



 呆然と見つめる真緒達に船員の一人が、ジェドに聞こえないように声を掛けてきた。



 「えっ!そうなんですか!?」



 「しーっ、……ライアに好かれる為にああやって、無理をして丁寧な言葉遣いをしているんだ……健気だろ?」



 「え、ええ……そうですね」



 ジェドの顔をよく見ると、耳が赤く染まっていた。



 「おーい、皆!ライアさんが町を案内してくれる事になりましたよ!」



 「本当ですか!」



 「やっだぁー、美味じい料理のお店を紹介じで貰うだぁ」



 「ハナコさん、まだ食べるつもりですか?」



 「現地の人に案内してもらえれば、安心だな」



 「人魚の町を探検しましょう~」



 ジェドのむず痒い言葉遣いに我慢しつつ、ライアに歩み寄った。



 「それじゃあ皆、私の後をついてきてね」



 ライアはそう言うと、人魚の町がある“水の都”の方へ泳いで行ってしまった。



 「は、速い!ちょっと待って!」



 「あ、マオぢゃん!置いでがないでぐれよぉー!」



 「二人供、待ってくださいよ!」



 「全く騒がしい奴等だな」



 「町探検に出発~」



 「あ、お前ら!クソッ、俺はライアさんを追いかける。ルー、船の物資を外に運んどけよ!!」



 「は、はい!」



 そして真緒達は、泳いで行くライアを走って追いかけるのであった。







***







 「本当に人魚ばかりなんですね……」



 真緒達は、ライアに人魚の町を案内して貰っている。町の中は右を見ても、左を見ても、何処を見ても、人魚が泳いでいた。



 「あら、ライアじゃない。何してるの?」



 ライアの案内を受けていると、一人の人魚が近づいてきた。



 「この人達、旅をしている人達なんだけど、せっかくだからこの町を案内しようと思ってね」



 「へぇー、じゃあまず先に、女王様に会いに行った方がいいんじゃない?」



 「あ、そうだよね。まずは女王様に会いに行かないと、皆さん行きますよ!」



 仲間の人魚の助言により、ライアは女王が住む城へと向かう事にした。



 「ここが女王様が住まうお城です」



 現在真緒達はライアの案内の下、人魚の町でも一際目立つ大きな城の前にいる。



 「これは……凄く綺麗」



 城の外装は、巨大な貝殻が覆い被さっている様な造りをしており、岩石で造ったとは思えない程のリアルさが伝わり、まさに海の中の城に相応しい。



 「さぁ、入りましょう」



 「えっ、勝手に入って大丈夫なんですか?」



 アポ無しの訪問に不安がる真緒。



 「大丈夫ですよ、女王様はこの海の事なら何でも知っているお方。私達が来る事もお見通しです」



 そう言うライアの後ろに、一人の人魚が降り立つ。



 「確かに、分かっていましたが……事前に連絡するのは基本でしょうが!!」



 ライアの頭に拳骨が叩き込まれた。あまりの痛さに、頭を両手で押さえる。



 「じょ、女王様……」



 「あなたという人はいつもそうです。何でも思いついたら即行動に移す。一度ぐらい考えてから行動してください!」



 「ご、ごめんなさい、女王様……」



 女王と呼ばれる人魚に叱れるライア。



 「あのー……」



 「申し訳ありません。お話は伺っておりますマオさん」



 「どうして私の名前を!?」



 まだ会話すらしていない筈なのに、名前を当てられて驚愕する真緒。



 「先程、ライアも言っていましたが、私はこの海の事を全て知っています。それは、私のスキルに関係しているのです」



 「スキルですか?」



 「私のスキルは“海の目”と言い、こうして両目を手で覆い隠す事で海の現状が頭に写し出されるのです」



 女王はそれぞれ左右の目を、両手で覆い隠す仕草を見せた。



 「凄い!そんなスキルがあるんですか!?」



 「はい、ですのでマオさん達が何の理由で、この町に来たのかも知っています……その上でお願いしたい事があるのです!」



 突然、女王の顔が険しくなった。



 「何かあったんですか?」



 「実は……一族の秘宝“水の王冠”が盗まれてしまったのです」



 「水の王冠?」



 「水の王冠は、水を統べる力を持ちます。その力は天候すらも操り、大陸の全てを海の下に沈める事が出来ます」



 「そんな、凄い物があるんですか!?」



 「だが、そんな力があるとしたら簡単に世界を支配できるのではないか?」



 最もな疑問を投げ掛けるフォルス。



 「それは無理なのです。なぜなら、水の王冠と同等の力を持つ、“火の王冠”、“風の王冠”、“土の王冠”、“光の王冠”、“闇の王冠”があります。それらがある限り、世界を支配する事は不可能なのです」



 「そんなに種類があるのか……」



 「でもそれが盗まれだっで、いっだい誰に盗まれだんだぁ?」



 「海賊です」



 「!!」



 真緒達は即座にジェドを睨み付ける。しかしジェドは勢いよく手と首を横に振り、否定する。



 「その海賊の名は、チャーリー海賊団といい、私達が寝静まった深夜に盗み出したのです」



 ホッ、と一安心するジェド。



 「つまりお願いというのは、そのチャーリー海賊団から水の王冠を取り返して欲しいという事ですね」



 「あ、いえ、海賊団からは取り返しました」



 「へぇ……?」



 予想外の返答に呆けた声が漏れる。



 「自慢ではありませんが、私の軍の兵士は強者揃いなので、すぐに捕らえる事には成功しました」



 「では……なんで……?」



 「その捕らえた時、場所は海の真ん中でした。甲板の上で取り返した直後、それは現れました。皆さんの目の前にも現れた、あの“孤独船”です」



 「“孤独船”だと!?」



 一番反応を見せたのはジェドだった。



 「船はあっという間に“孤独船”に沈没させられました……その際、海賊と一緒にいた私の兵士は亡くなってしまいました。つまり……現在、水の王冠があるのは、“孤独船”の内部なのです。マオさん達にお願いしたいのは、その“孤独船”から水の王冠を取り戻してほしいのです!どうか……どうか……お願いします!!」



 女王は頭を深く下げてお願いする。その姿を見た真緒達とジェドは目を合わせ、頷く。



 「……まさか、あの船と決着をつける時が来るとはな……」



 「女王様、そのお願い……慎んでお受け致します。皆で絶対、水の王冠を取り戻しましょう!!」



 「「「「「おおーー!!!」」」」」



 「ありがとうございます!しかし、今日はもう遅いです。出発は明日からの方がいいと思いますので、この町一番の宿屋にご案内させて頂きます。勿論、お代は結構です」



 女王はお礼を述べると、タダで宿屋に泊めると約束し、城の外へと出て案内をする。



 「本当ですか、ありがとうございます」



 真緒達は女王の後をついていく中、一人残る者がいた。誰であろう、そうエジタスである。



 「…………」



 エジタスは無言のまま、パチン、と指を鳴らすとその場から姿を消した。







***







 「到着~」



 エジタスは今現在、“孤独船”の甲板にいた。一度見た為、転移で一瞬にして来る事が出来る。



 「さて~、水の王冠は~……ん?」



 エジタスが捜索していると、突如“黒い塊”が飛んできた。



 「おっと」



 それを難なく避けたエジタスは、船の内部へと足を運ぶ。



 「…………成る程、これが“孤独船”の正体ですか」



 エジタスはこの時、“孤独船”の正体を確認した。



 「そして、これが水の王冠ですね……」



 足元に落ちていた王冠を拾い上げる。それは水晶の様な輝きを放ち、だが同時に海の様な力強さも感じさせる。とても不思議な感覚のする代物だった。



 「今のマオさん達では、この水の王冠を取り戻すのは、厳しいかもしれませんね~」



 エジタスは、水の王冠を指でくるくると回し始める。



 「私がこのまま持ち帰ったら、マオさん達の成長の妨げになってしまう。さて、どうしましょうかね~…………あ、そうだ!良いこと思い付きました!」



 そう言うとエジタスは、近くにあった白骨化した死体に赤いコートと真っ赤な帽子を被せる。



 「んふふふ、これでよし!あとは水の王冠を“あそこ”に置いてくるだけですね~」



 しばらくしてエジタスは再び甲板に出てきた。



 「面白くなってきましたね~。さぁ!準備は整いました!!“再会”といきましょう。んふふふふふふ…………」



 パチン、と指を慣らすと一瞬で姿が消えた。もう“孤独船”からはエジタスの笑い声が響く事は無い。
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