笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
64 / 300
第六章 冒険編 出来損ないの小鳥

鳥人の里

しおりを挟む
 「さぁ、遠慮せずに入ってくれ」



 「その前に、マオさんは何処ですか!?」



 リーマ達が見上げて探してみても、真緒を掴んでいた鳥人は見当たらなかった。



 「安心しろ、ちゃんと宿屋まで運んでくれている。後で案内してやるよ。ついでに仲間の目が覚めるまで側にいてやると良い。勿論、金は取らない」



 「分かりました…………」



 本当は今すぐにでも行きたい。だが、その前にフォルスの故郷であるこの里を見て廻り、真緒に伝えようと考えた。



 「じゃあ、改めて入ってくれ」



 「はい……」



 リーマ達が里に足を踏み入れると、それに気が付いた数人の鳥人達が、飛んで来た。



 「ビント、こいつらが例の客人かい?」



 薄い青色の羽をした雌の鳥人が話し掛けてきた。



 「ああ、そうだ。案内を頼むぞ、俺は見張りの仕事に戻る」



 そう言うとビントは、空へと舞い上がり、高台の一つに降り立った。



 「あ、おい!勝手に決めるな……はぁー、仕方ないな」



 ビントの急なお願いに溜め息を漏らすと、リーマ達の方に目を向ける。



 「あんた達の話は聞いてるよ。ここからは、あたしがこの里を案内してやるから付いて来な。あたしの名前はククだ、よろしくな」



 「は、はい、よろしくお願いします」



 ククから差し出された手を、リーマは握り返す。



 「それじゃあ先ずは、族長の所に行って挨拶しようと思うんだけど……何か聞きたい事はあるか?」



 「あの……いいですか?」



 ククの言葉に手を挙げるリーマ。



 「いいわよ、何でも聞きなさい」



 「何故、鳥人の皆さんはヘルマウンテンの麓何かに住んでいるのですか?……その……失礼極まりないとは思うのですが、こんな暑い場所に住んで…………焼鳥…………にはならないんですか?」



 「……ぷっ、あははははは!!!」



 リーマの質問に突然笑い始めるクク。あまりに可笑しかったのか、目から涙が出ていた。



 「あーはー、まさか……そんな事を聞いてくる奴がいるなんてね……それにしても……“焼鳥”って……あははは!!」



 再び笑い始めるクク。リーマ達はその光景を呆然と眺めていた。



 「その話をすると長いから、向かいながら話そうか」



 そう言うとククは歩き出した。その後をついていくリーマ達を確認しながら、話始めた。



 「結論から言っちゃうとね、ここは鳥人が空を飛ぶのに最適な場所なんだよ」



 「どういう事ですか?」



 「ここはヘルマウンテンの麓だけあって、凄く暑いでしょ?」



 「はい、凄く蒸し暑いです」



 汗こそは掻いて無いものの、じわじわと肌を焼かれている様な感覚がする。



 「それは、気温が高いって事なんだけど、それによってここ一帯では常に上昇気流が発生しているのさ!」



 そう言うと、ククは助走も付けずに羽を広げながらその場で膝を曲げ、勢いよくジャンプした。すると、強い熱風と共に空高く舞い上がった。



 「す、凄い…………」



 「ガッゴいいだなぁ……」



 「あそこまでの高さに一瞬で辿り着くとは、流石ですね~」



 上昇気流が発生しているのを、実際に証明してくれたおかげで、三人により明確に伝わった。



 「分かったかい?あたし達鳥人が、気温の高いヘルマウンテンの麓に好んで生活するのは、飛ぶのに最適な場所だからさ」



 ククは説明し終わると、地面に降り立った。



 「そんな理由があったんですか…………」



 「あと、ここでは温泉に入れるのよ」



 「温泉があるんですか!?」



 温泉というワードを聞いたリーマは、目を輝かせていた。



 「ああ、地下から湧き出る温泉を、適温まで冷ましたのをこの里では、入る事が出来るんだ。あんた達の仲間が運ばれた宿屋こそが、その温泉が整備されている唯一の場所なんだよ」



 「それは、是非とも入ってみたいですね!!」



 これは、急いで真緒の下まで行かなくてはいけない。温泉が、リーマ達の想いを更に強くした。



 「楽しみにしてるといいよ……さぁ、着いたよ。ここが、族長の家だ」



 「へぇー、中々お洒落な住まいですね」



 温泉の話をしていたら、あっという間に目的地まで辿り着いた。族長の家は他の住居より横幅が広く、家と言うよりも屋敷と言った感じであった。



 「では、入ろうか……」



 「あ、はい」



 ククが扉を開け、三人を中へと招き入れた。



 「うわぁ~、中もお洒落ですね」



 族長の家は支える柱などを含め、ほぼ全ての内装が木の素材で、建てられていた。



 「族長は、この奥にいらっしゃるけど、失礼の無い様にお願いするよ」



 ククは、族長に迷惑を掛けないで欲しいと懇願していると、一つの人影が迫る。



 「くくさん、くくさんやい」



 そこには、嗄れた声でククを呼び止める鳥人がいた。羽のほとんどが抜け落ちて、腰は曲がっており、目は完全に閉じているのか、まるで生まれたての小鳥みたいに非常に細目である。



 「トハさん、どうしましたか?」



 「わしの飯はまだかの?」



 「さっき食べたばかりでしょ?」



 「ああ……そうか……」



 そう言うと“トハ”と呼ばれる鳥人は、何処かへと歩き始めた。



 「では、改めまして行きましょ「くくさん、くくさん」…………なんですか?」



 族長に会いに行こうとすると、三歩程歩いた先から再び、トハに声を掛けられるクク。



 「わしの飯はまだかの?」



 「だから、さっき食べたでしょ?」



 「……ああ……そうか……そうだったねぇ……」



 そう言うと再び、歩き始める。



 「時間を掛けてしまったね。それじゃあ、そろそろ族長に「くくさん、くくさん」………………なんですか!」



 族長に会いに行こうとすると、また、三歩程歩いた先から三度、トハに声を掛けられるクク。



 「わしの飯は「さっき食べたって言ってるでしょ!!」……ああ……そうか……そうだったねぇ……悪かったねぇ、何度も聞いてしまって……」



 「あ……いえ、あたしも強く言い過ぎました……ごめんなさい」



 トハの三度の質問につい、強い口調で言ってしまったククは、頭を下げて謝った。



 「くくさんが、気にする事では無いよ。忘れっぽいわしのせいなんだから……それより、何処かに行くつもりだったんだろう?早く行きなさい」



 「ありがとうございます……皆、行きましょう」



 ククが、トハの言葉に甘えてリーマ達をその場から連れ出した。去り際にリーマ達が見たのは、優しい暖かい微笑みを浮かべながら、こちらに手を振るトハであった。



 「急に歩かせてしまってごめんね」



 トハの姿が見えなくなると立ち止まり、リーマ達に謝罪した。



 「私達は別に気にしていませんが……あの方はいったい、誰なのですか?」



 当然の疑問を投げ掛けるリーマに、ククは静かに答え始めた。



 「あの人はトハさんと言って、この里一番の御高齢の方で、あらゆる知識が詰め込まれていて、その昔神の頭脳を持つ女、トハと呼ばれていたらしく、族長が唯一頭が上がらない人なのです」



 「そんなに……凄い人何ですか?」



 「ぞうは見えながっだげどなぁー」



 「優しそうな人なのは、間違いないと思いますよ~」



 先程の出来事しか見た事の無いリーマ達は、とても信じられずにいた。



 「トハさんは……その御高齢から、歳を重ねる毎に脳が衰え、今では三歩歩くだけで忘れてしまう程になってしまったんだ」



 「……すみません、私達何の事情も知らないのに勝手な事を言ってしまって…………」



 「いや、こればかりは仕方の無い事だと思うよ。年齢には誰も逆らえないんだから……」



 「…………」



 「…………」



 気まずい空気が流れる。どちらが悪い訳では無いのだが、それでも罪悪感は拭えなかった。そんな沈黙を破ったのは、ククであった。



 「あーあー、止め止め!こんな暗い雰囲気で族長に会ったら、叱られてしまうよ。さぁ、元気出して行くよ」



 「そうですね!いつまでも暗い顔をしてたら、マオさんに叱られますよね」



 それぞれが己の心を奮い立たせ、元気を出した。



 「それじゃあ、改めて族長に会いに行くよ!」



 「「「おおーー!!!」」」



 こうして、ククとリーマ達は族長に会う為に歩き始めた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

処理中です...