笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第六章 冒険編 出来損ないの小鳥

族長

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 「ほぅ……お主達が旅の者か……」



 族長の家へと案内されたリーマ達の目の前には、ペング程ではないが中々の巨体の鳥人が椅子に座って、リーマ達を出迎えた。



 「はい、リーマと申します」



 「オラはハナコっで言いまず」



 「ど~も初めまして“道楽の道化師”エジタスと申しま~す」



 族長は三人の名前を聞き終わると、少し微笑みながら口を開いた。



 「ほぅ、では今宿屋で休んでいるあの子が、“マオ”というお主達のリーダーなのだな?」



 「「「!!」」」



 あり得無い。リーマ達は、耳を疑った。この里に来て確かに自己紹介はしたが、真緒の名前は一切伝えていなかった。それなのに、族長は真緒の名前だけでなく、パーティーのリーダーである事も言い当てたのだ。この瞬間、リーマ達の警戒レベルが上がった。



 「ほほ、そう身構えるな。名前を知っていたのは、ある人からお主達の事を聞いていたからだ」



 「ある人…………?」



 「覚えておるかな?水の都で人魚の長を勤めている……」



 「もしかして、人魚の女王様の事ですか!?」



 人魚の長と言われて頭に思い浮かんだのは、水の都でお世話になったあの、女王様であった。



 「その通り、彼女とはこの“風の王冠”の繋がりで、古くからの友人でな……彼女の持つ“海の目”を通して、お主達の話を事前に聞いていたのだ」



 族長は自身の羽毛を掻き分けながら、“風の王冠”を取り出した。風の王冠は、王冠の形を保ちつつその模様は絶え間無く、風の様にそよ吹いていた。



 「それが風の王冠ですか?」



 「ああ、人魚の長が持っている水の王冠もそうだが……この風の王冠は、風を統べる力を持ち、大気を操るという噂だ」



 スケールが違う。水の王冠の時もそうだったが、王冠の持つ力はこの世界を、支配出来るのではないかと思わせる。



 「それは素晴らしい~!……あの~、宜しければ触らせて頂けませんか?私、古代の代物に目がないんですよ~」



 風の王冠に興味が湧いたエジタスは、手に取って見てみたいと懇願する。



 「ああ、別に構わんよ」



 そう言うと族長は、風の王冠をエジタスに手渡した。



 「あら~、随分とあっさり渡しますね~。私がこの風の王冠を使って悪用するかもしれないのに……」



 「ほほ、その心配は無いさ。何故ならワシも一度使おうと、試みたことがある。じゃが、結果は言わずもがな……反応すら示さなかった。それに、人魚の長がお主達を認めているんだ、そんな者達が悪用などする筈が無い」



 「成る程~、それは何とも寛大な心をお持ちですね~……もっと、疑うという事を多用するのをオススメしますよ」



 そう言うと、風の王冠を族長へと返した。しかしエジタスの言葉は、とても不気味に聞こえた。



 「ほほ、それを言われるとぐうの音も出ない」



          ぐぅ~



 族長が言った途端、部屋の中で大きなお腹の音が鳴り響いた。



 「あ、ぐうの音は出なかったけど、ハナコさんのぐぅの音は出ましたね」



 「もぅー、リーマぢゃん!恥ずがじいがら止めでおぐれよー」



 リーマの指摘に、顔を真っ赤にするハナコ。



 「ほほ、お腹が空いたのじゃな。さぁさぁ、ワシの事はもういいから早く宿屋に行って、食事を済ませると良い。お主達も出来るだけ長く、マオの側にいたいだろ?」



 「そうですね。では、お言葉に甘えて……皆さん、行きましょう」



 「宿屋まで案内してあげるよ」



 リーマ達はククの案内の下、族長の家を後にした。



 「………………あ、しまった!あの子達の前に、“四人”の人間が宿屋に向かった事を伝え忘れてしまった!……まぁ、いいか。どの道、宿屋で会う事になるだろう」







***







 「族長は……昔はあんなに、おおらかな人ではなかったんだ」



 「えっ……?」



 宿屋に向かう途中、ククが突然話始めた



 「掟や誇りに厳しい人だった。特に誇りに関しては、人一倍厳しかった……それこそ、誇りを傷付ける者には仲間であろうと、重い処罰を下す程……」



 「そんな風には見えませんでしたけど…………」



 だが確かに、リーマは不思議に思っていた。誇り高い鳥人が、余所者を……ましてや種族の違う者達を里に招き入れるなど、通常では考えられなかった。



 「しかしある時、この里に何らかの事件が起こった。あたしは丁度その時、ヘルマウンテンの偵察に行っていたから分からないが、それを境に族長はあのような性格になったんだ」



 「いったい……何があったのでしょうか?」



 「さぁな、でも聞いた話によると……族長が部屋で一人、『ワシは……族長失格だ』と言っていたのを聞いた奴がいたらしい。本当かどうかは知らないがな」



 「そうなんですか…………」



 モヤモヤする。関係無い筈なのに、何か引っ掛かる様な感じがして、気持ち悪くなってきた。



 「おっと、無駄話が過ぎちまったね。着いたよ、ここがこの里の目玉……温泉に入れる宿屋さ」



 宿屋は至って普通の外観であった。しかし、その隣には高い塀が三つ均等に建てられていた。



 「高い塀ですね……」



 「そりゃあそうさ、温泉は男女に分かれて入るからね。覗きが出来ないように、最善を尽くした結果がこれなのさ。さぁ、入ろう」



 リーマ達は、高い塀を見つめながら宿屋へと入っていった。



 「いらっしゃいませー。あら、ククちゃんじゃない!珍しいわね……ククちゃんが宿屋に来るなんて?」



 宿屋に入ると、あの巨体のペングとほぼ同等の、大きな鳥人が出迎えた。



 「おばさん、今日はあたしが案内役なの……ビントの奴が押し付けて来たんだ」



 「あらあら、またビント君と揉めたの?夫婦喧嘩は犬も食わないとは、良く言った物ねぇ……」



 「お、おばさん!?あ、あたしとビントはそんなんじゃないから!!」



 「あら、照れなくたって良いのよ!里の皆も思ってるわ、あの二人はお似合いの夫婦だなって!」



 おばさんの予想だにしない言葉に、ククの薄い青色の羽が薄いピンクに染まっていく。



 「あの~……」



 「あ、ごめんなさいねぇ~。ついつい話し込んじゃうのよね……。あなた達が宿屋に泊まりに来た人達かい?」



 「はい、そうです」



 「この人は、あのペングのお母さんなんだ」



 「えっ!そうだったんですか!?」



 「似てないだろう?ほとんど旦那に似ているから、本当に息子かどうか疑っちゃう時があるんだよねぇ……」



 「いや……えっと……」



 確実にあなたの息子です。寧ろ、あなたの息子以外あり得ません。そう……言ってやりたかったが、言うのは無粋であると判断した。



 「それじゃあ、おばさん。後はよろしくお願いします」



 「はいよ、任せておきな。あんたはビントくんの所に行ってやりな」



 「はぁ!?何であいつの名前が出てくるんだよ!!とにかく、頼んだからね!」



 そう言うと、ククは薄いピンクの羽のまま、宿屋を出ていった。



 「本当にお似合いの夫婦だねぇ……さて、部屋まで案内するよ。そこにあんた達の仲間もいるよ。ついさっき目を覚ました所だよ」



 「本当ですか!!?」



 宿屋のおばさんの言葉にリーマ達は、喜びに満ち溢れる。



 「ええ、ついておいで」



 ドスンドスンと、足音を鳴らしながら歩くおばさんの後を付いて行く。



 「ここだよ」



 すると、一つの部屋の前まで辿り着いた。リーマ達はゆっくりとその扉を開ける……。



 「あ、皆!ごめんね迷惑掛けちゃって……」



 「マオさん!!!」



 「マオぢゃん!!!」



 そこには、目を覚まし元気な真緒の姿があった。その姿を見たリーマとハナコは、真緒に抱き付いた。



 「ちょっと、二人供苦しいよ……」



 「どれだけ心配したと思っているんですか!!でも……目が覚めて本当に良かったです!」



 「皆……ありがとう」



 真緒は、抱き付く二人を強く抱き返す。



 「師匠……」



 扉の前に立っていたエジタスに、顔を向ける真緒。



 「マオさん、おはようごさいま~す!」



 「はい、おはようごさいます!!」



 そして真緒は元気良く朝の挨拶を言うのであった。
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