笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第六章 冒険編 出来損ないの小鳥

真緒パーティー VS ドラゴン(後編)

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 今現在、真緒達の目の前に、ケンカ別れしてパーティーから脱退した筈のフォルスが立っていた。



 「フォルスさん、どうして…………」



 「取りあえずその話は後だ。まずはこのドラゴンを倒すぞ。さっさと抜け出したらどうだ?」



 「そうですね…………うーん!よいしょ!!」



 フォルスの言い分にも一理あると判断した真緒は、急いでめり込んだ壁から抜け出した。



 「でも、これだけは言わせて下さい」



 「何だ?」



 「お帰りなさい、フォルスさん!」



 「!!……ああ、ただいま!!!」



 その言葉と同じタイミングで、ハナコ、リーマ、エジタスが集合した。



 「フォルスざん!!」



 「来てくれたんですね!」



 「…………」



 「詳しい話は後で、まずはこのドラゴンを皆で倒そう!私は引き続き、空中からドラゴンを狙うから、皆は地上からお願い!!」



 「「「了解!!!」」」



 真緒の号令により、三人は地上からドラゴンへと攻撃を仕掛ける。因みにエジタスは緊急回避要員の役割も含め、遠くから様子を伺っている。



 「グオオオオオ!!!」



 ドラゴンは、向かって来る真緒達に対してどちらを狙えば良いか迷いを見せるが、多人数で攻めるフォルス達の方が危険だと考え、狙いを定める。そして鼻から大きく息を吸い込んだ。



 「ブレスが来るぞ!気をつけろ!!」



 「同じ攻撃が二度と通じる事はありませんよ、ハナコさん!!」



 「うおおおお!!スキル“熊の一撃”」



 リーマの合図で、ハナコはドラゴンのお腹にスキルを叩き込んだ。



 「グ、グボハァァ!!」



 お腹に強烈な一撃を貰ったドラゴンは、吸い込んでいた息を途中で吐き出してしまう。



 「やった!!」



 「作戦成功だぁ!」



 「やるな、二人供!」



 見事、作戦が成功したリーマとハナコは喜びを分かち合い、それを見て感心するフォルス。



 「ハアァ、ハアァ、ハアァ…………グオオオオオ!!」



 苦しそうに息を切らすドラゴンは、雄叫びを上げながら尻尾を振り回して来た。



 「危ない!!ジャンプするんだ!」



 フォルス達は、飛んでくる尻尾にタイミングを合わせ、回避した。



 「こっちを向きなさい!!」



 その隙を突いて、真緒が空中から切りつける。しかし、刃は鱗によって弾かれてしまう。



 「か、硬い…………!!スキル無しだと傷すらも付けられないの!?」



 本来、ドラゴンの鱗はとてつもなく硬く、大砲の玉ですら簡単に弾いてしまう。先程まで真緒達の攻撃が効いていたのは、強力なスキルの賜物である。



 「う~ん…………マオさん達では、ドラゴンを倒すのはまだ早かったですかね~?」



 戦いの様子を伺っていたエジタスが呑気な事を呟いていると、ドラゴンは尻尾の動きを止め、口から大きく息を吸い込み始めた。



 「またブレスを吐ぐづもりがぁ!?」



 「無駄ですよ!またハナコさんの一撃で防いで見せます!!」



 「いや待て!あいつさっき、“鼻から”では無く、“口から”息を吸わなかったか?…………まさか!!」



 フォルスの予感通り、ドラゴンは上を向きながらスキル“破壊の咆哮”を繰り出した。ブレス時より溜めが短く、真緒達に向けられていなかった為、油断してしまった。鼓膜が破れてしまうのではないかと思う程の爆音が、響き渡った。



 「こ……これは……!!」



 「耳が痛いだよぉ……」



 「鼓膜が破けそうです……」



 「しっかりと耳を押さえるんだ!!」



 真緒達は両耳を手で塞ぎ、必死に堪え忍ぶ。だがそんな最中、頭上の方で亀裂が入った。



 「そんな!?皆、上に注意して!!」



 音が少し収まり、真緒の声が聞こえたフォルス達は急いで見上げると、破壊の咆哮の影響で天井にひびが入り、今にも崩れそうであった。



 「もしも……もう一度咆哮を繰り出されたら…………」



 「押し潰されてしまう!!」



 そんな、恐ろしい想像をしている矢先にドラゴンは、再び口から大きく息を吸い込み始める。



 「止めるんだ!!」



 フォルスの叫びに真緒達は形振り構わず、攻撃を仕掛けて行く。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 「スキル“熊の一撃”!!」



 「“ウォーターキャノン”!!」



 「スキル“ロックオン”、スキル“急所感知”!!」



 「……グオ……グオオオオオ……!!」



 真緒達の猛攻に思わず咆哮を中断してしまったドラゴン。



 「あ、危なかった…………」



 「油断も隙もありません……」



 「そうだな…………ん、どうしたんだ?」



 安堵している真緒達だったが、突然ドラゴンが身動きをしなくなった。ピタリと時間が静止した様に。…………嵐の前の静けさと言うやつなのだろうか、激しい動きを見た後では信じられない光景であった。すると、ドラゴンから何かが取れて落ちて来た。



 「あれは…………鱗?」



 リーマが落ちた物に目を凝らすと、それは鱗であった。しかも、他の鱗とは違う反対の形をした鱗。その鱗を見た途端、フォルスの全身に寒気が駆け抜けた。



 「まさか…………マオ!!急いであいつを鑑定してみてくれ!」



 「は、はい!!スキル“鑑定”」



 フォルスに急がされ、真緒はピクリとも動かないドラゴンに鑑定を掛ける。すると…………。







スキル 逆鱗

 自身の鱗である逆鱗に攻撃が加えられた場合のみ、発動可能。



能力 一定時間、相手に与えるダメージ量が通常の五倍になる。しかし、自身の受けるダメージ量も五倍になる。







 「ま、不味いですよ!!どうやらドラゴンの攻撃力が、実質五倍になった様です!」



 「な、何!?只でさえ攻撃力が高いのに、五倍だなんて…………もし今、奴がブレスを吐いたら俺達は即死する!!」



 悪い出来事というのは、連続して起こる物なのだろう。フォルスの心配が現実となる。ドラゴンは、鼻から大きく息を吸い込み始めた。



 「クソッ!言った側からこれか!!全速力で後ろに下がれ!!」



 フォルスの言葉に従い、ハナコとリーマはブレスが届かない射程範囲外まで、走り出す。その直後にドラゴンのブレスが吐き出される。そして不運にも、フォルスの尾羽の先に少し当たってしまう。



 「ぐああああ!!!」



 「フォルスさん!!!」



 真緒がフォルスの安否を心配し、側に飛んで行く。



 「大丈夫ですか!?」



 「ああ、何とかな…………だが、少しかすっただけなのにこのダメージ、想像以上だ……」



 「フォルスさん、ポーションです」



 傷ついているフォルスに、リーマがポーションを手渡した。



 「すまない…………それで、これからどうする……マオ、空中から攻撃を仕掛けられるか?」



 「すみません、虚空の力はもう時間切れの様です」



 ドラゴンとの戦いが始まって既に、十分が経過していた。虚空の力は一日十分しか持たない。



 「そうか…………」



 「いったいどうすれば、倒せるのでしょうか…………」



 落ち込むフォルスを余所に、真緒はドラゴンを見つめていた。その時、真緒の頭に小さな石粒が落ちて来た。



 「これって…………そっか、ドラゴンの咆哮で天井にひびが入っているからそれで…………そうだ!その手がありました!!」



 「どうした!?」



 「マオぢゃん?」



 「マオさん?」



 落ちて来た石粒を拾い上げ、天井を見つめて突然大声を上げた真緒に、全員驚いた。



 「もしかしたら倒せるかもしれない!!」



 「どういう事だ?」



 「皆、耳を貸して…………」



 真緒は仲間達に、考え出した作戦の内容を伝えた。



 「そんな作戦、認められるか!!下手したら全員死ぬぞ!」



 フォルスは、真緒の作戦に反対する声を上げる。



 「でも、与えられるダメージも五倍になっている今じゃないと、勝ち目は無い!!」



 「しかし…………」



 「オラは、賛成だぁ!!」



 「ハナコ!!」



 「私も賛成です!」



 「リーマまで!!」



 フォルスが悩んでいると、ハナコとリーマが賛成の意思を見せた。



 「フォルスさん、一か八かやってみましょう。私達なら出来ますよ!今まで、無茶ばかりして来たじゃないですか!!」



 「…………そうだな、今の俺達ならきっとやれる。マオ、その作戦乗ったぞ!!」



 「フォルスさん…………ありがとうございます!!」



 フォルスの了解を得た真緒は、ドラゴンの方に向き直した。



 「では師匠、もしもの時はお願いします」



 「頑張って来て下さいね~」



 「よし、作戦開始!!」



 真緒が合図を出すと、一斉に走り出した。フォルスとリーマがドラゴンに攻撃を仕掛ける。



 「おい、こっちだ!!スキル“ロックオン”、スキル“急所感知”」



 「“ウォーターキャノン”」



 一本の矢と、水の塊がドラゴンに命中する。



 「グオオオオオ!!!」



 ドラゴンは雄叫びを上げ、鼻から大きく息を吸い込み始める。



 「来た!ブレスだ!!マオ、準備は出来てるか!?」



 「はい!準備万端です!!」



 フォルスの目線の先には剣を構える真緒と、その両足を掴むハナコがいた。



 「ハナちゃん!お願い!!」



 「行ぐだよ!…………うおりゃー!!」



 ハナコは、ハンマー投げの要領で真緒を天井目掛けて投げ飛ばした。



 「はぁあああ!!スキル“ロストブレイク”」



 ブレスは、咆哮とは違い溜めの時間が長い。その一瞬の隙を突き、真緒はひびの入った天井にスキルを叩き込んだ。すると、見事に天井は崩れ落ちる。



 「グ……グ……オオオオオ!!!」



 崩れ落ちて来る天井はドラゴンに直撃し、埋もれてしまった。



 「やった!…………うわぁあああ!!」



 「マオぢゃん!」



 「マオさん!」



 「マオ!」



 真緒は、崩れた天井と共に落下していく。



 「マオさん、素晴らしいご活躍でしたよ~」



 「師匠!!」



 真緒と同じ様にハナコに投げ飛ばして貰ったエジタスが、真緒の肩を掴み指を鳴らした。すると途端に二人の姿が消え、ハナコ達の下へと転移した。



 「マオぢゃん、無事で良がっだぁ!」



 「流石ですマオさん!」



 「全く、とんでもない事を考えたもんだ。まさか、ドラゴンが入れた天井のひびを逆に利用するなんて……」



 「ダメージ量が五倍になっている今なら、ドラゴンも無傷ではすまないと思ったんです」



 真緒の考えた作戦は、遠距離のフォルスとリーマがドラゴンの注意を反らし、溜めの長いブレスのタイミングを見計らい、力のあるハナコが真緒をひびの入っている天井まで投げ飛ばし、天井に攻撃を加えわざと崩れさせる物だった。



 「俺達も埋もれてしまうかもしれないのに、よくやるよ」



 「でも、結果的に成功しました。これも皆が協力してくれたお陰です!!」



 「ははは、そう言われるとやってみて良かったな。何にせよ、この戦い俺達の…………」



 「「「「「勝ちだーーー!!!」」」」」



 こうして、真緒達は見事ドラゴンとの戦いに勝利を収めるのであった。
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