笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第六章 冒険編 出来損ないの小鳥

ドラゴンの秘密

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 「フォルスさんが戻って来てくれて、本当に嬉しいです!」



 「ドラゴンに勝でだのは、フォルスざんのお陰だぁ!」



 「いや、俺だけの力じゃ無い。パーティー全員の力だ」



 ドラゴンとの戦いに勝利を収めた真緒達は、喜びに浸っていた。



 「…………フォルスさん」



 「リーマ…………」



 その中でリーマだけが、気まずそうにフォルスに声を掛ける。しかし、ケンカ別れした手前、何と声を掛ければ良いのか分からなかった。自分が最初にやるべき事は、謝罪だと思ったリーマは口を開いた。



 「ごめんなさい!!」 「すまなかった!!」



 「「…………えっ?」」



 リーマの謝罪とほぼ同じタイミングで、フォルスも謝罪をして来た。



 「何で、フォルスさんが謝るのですか…………?」



 「それはこっちの台詞だ…………」



 「私は、フォルスさんの事も考えずに“最低です”なんて言葉を言ってしまったので…………」



 「それを言うなら、自分の我が儘で仲間を傷つけたから…………」



 お互いが謝った為に、何とも微妙な空気が流れる。そんなやり取りを見ていた真緒は、思わず笑い出してしまう。



 「…………ぷっ、あははは!!」



 「マオさん!?」



 「マオ!!」



 「だ、だって何だかコントを見てるようで面白くてつい…………でも、嬉しいよ」



 ある程度笑った真緒は、優しい暖かい目でリーマとフォルスを見る。



 「またこのメンバーで笑い合う事が出来て、本当に嬉しい」



 「マオさん……」



 「マオ……」



 「そうだ!ずっと聞きたかったんですけど、フォルスさんは何故ここに、私達がいるって分かったのですか?」



 真緒は疑問に思っていた事を、フォルスに聞いた。



 「ああ、それは…………」



 フォルスはチラリとエジタスの方を見るが、すぐに目線を戻した。



 「マオ達と別れた後、どうしても気になって遠くからずっと見ていたんだ。そしたらどうだ、マオ達がヘルマウンテンに登って行くじゃないか、俺はその後を追いかけて行くと、さっきのドラゴンとの戦いに出くわした。という訳だ」



 「そうだったんですか……」



 フォルスは、エジタスとの出来事を敢えて言わなかった。何故だか分からないが、言ってはいけない気がしたのだ。



 「それにしても、私達があのドラゴンを倒せるなんて夢の様です!」



 「本当だなぁ!オラ達ごんなに強ぐなっでいるだなんて、気づがながっだよぉ!」



 「それだけ、私達が成長したという事ですよ!」



 女子三人が、強大な力を持つドラゴンを倒した事に花を咲かせていると、その間にフォルスがエジタスに近づき、3人に気づかれない様に小声で話し掛ける。



 「エジタスさん、ありがとうございます」



 「…………何がですか~?」



 フォルスによる、突然のお礼に困惑するエジタス。



 「あの時、言ってくれた意味が分かりました。……過去を引きずるな、大事なのは今、未来に向かって歩く事の出来ない奴は戻って来なくてもいい。俺はもう過去を引きずりません……今いる大切な仲間達を守って行きたいと思います」



 「…………そう言う意味じゃ無いんですけどね~」



 フォルスの導き出した答えに対して、エジタスのボソリと呟いた返答は、フォルスの耳には届かなかった。



 「それよりも、そろそろ武器を構えた方が良いですよ~」



 「えっ、どうしてですか?」



 「だって…………」



 この時、ドラゴンが埋もれている瓦礫が少し動いた。



 「国を一つ揺るがす程のドラゴンが、あの程度で倒される筈がありませんよ……」



 エジタスがそう言った次の瞬間、強い地響きが真緒達に伝わり、埋もれていたドラゴンが瓦礫を吹き飛ばし、出て来た。



 「そ、そんな…………」



 「倒じだど思っだのに……」



 「あれだけの攻撃を受けてもまだ立ち上がるなんて……」



 「グオオオオオ!!!」



 しかしその直後、ドラゴンが奇妙な行動を取り始める。真緒達が驚く中、ドラゴンは俯せになりながら睨む事しか、して来なかった。



 「なぁ…………変じゃないか?」



 「何がですか?」



 フォルスは真緒達に、自身が薄々感じていた疑問を話始める。



 「ドラゴンってのは本来、広い場所で戦うのを好むんだ、巨体な奴は特に。しかし、あのドラゴンは違う……こんな狭い場所で戦うなんて可笑しい」



 「狭い場所が好きなんじゃないですか?」



 「それはあるかもしれない…………だが、変なのはまだある。あのドラゴン、さっきから一歩も動いていない……」



 「「「!!!」」」



 三人は急いでドラゴンの方を確認すると、確かにヘルストーンのある位置から一歩も動いていなかった。



 「あのドラゴンは、尻尾やブレス、咆哮だけで俺達と戦っていた。空も飛ぼうとせず、巨大な足で踏み潰そうともせず、まるで足下にある、命よりも大切な物を守ろうとするかの様に…………」



 「それっていったい…………」



 真緒達が、ドラゴンの真下にある場所に目を凝らして見ていると、ドラゴンが俯せになったお陰か、その隙間からヘルストーンとは別のある物が見えた。それは…………。



 「卵…………?」



 白くて丸い形をした小さな卵が、ヘルストーンに寄り添う様にあった。



 「そうか……ヘルストーンは活動エネルギーの塊、山を動かす程の熱量は卵を温めるのには最適なんだ!」



 「つまり、あのドラゴンは卵を温めようとしている訳ですか?」



 「ああ、しかもそれだけじゃない!恐らくこの行動は、周期的に行われていた!」



 「どういう事ですか!?」



 今回だけの特別なケースでは無く、何百年も繰り返し行われていると、フォルスは推察した。



 「この洞窟の入り口を見ただろ?あれはどう見ても、人工的に作られた穴だ。ここまで掘り進めるのには、何百年も掛かる。つまりこの洞窟はあのドラゴンの先祖が作り出した、卵を温める為の空間なんだ!!」



 「そんな!?でも、里の上昇気流が止まってしまったのは、あのドラゴンが蓋をしてるせいなんですよね!?」



 「それは間違い無いだろう……だが、それは一時的な物だったんだ」



 「えっ…………?」



 次々と明かされていく、ヘルマウンテンとドラゴンの秘密。そして遂に、フォルスはとんでもない答えに辿り着いてしまった。



 「俺達の里がここに移住して来たのが三十五年前、もしもその時、丁度ドラゴンの卵の孵化が終わった時期だとしたら?」



 「…………待っていたら、自動的に上昇気流は元に戻っていた?」



 「その通りだ…………」



 辿り着いてしまった答えに真緒達は、意気消沈してしまう。



 「つまり、私達がした事は無意味だった…………という事ですか?」



 「それどころか、卵を温めるのを邪魔しに来たという事になる」



 「そんな、急いで里の皆さんにこの事を伝えましょう!!」



 「うわぁー、マジで薄暗いじゃんここ……」



 真緒達が里に真実を伝える為に戻ろうとすると、聞き覚えのある声が聞こえて来た。



 「愛子…………」



 「あ、真緒!!あんたこんな所で何を…………って、何あのでっかい化け物は!?」



 「愛子、私知ってるよ。あれはドラゴンって言う生き物だよ!」



 「へぇー、あれがファンタジーでよく見るドラゴンねぇー!」



 真緒を見つけた愛子だったが、その先にいるドラゴンに驚きの表情と、初めて見るドラゴンに興奮していた。



 「セイイチ様、恐らくあのドラゴンの真下にあるのがヘルストーンだと思われます」



 「そうか、つまりあのドラゴンが蓋をしているせいで、熱がその場に留まり里の方まで流れないという事だね」



 「じゃあ、あのドラゴンを殺せば任務完了って訳ね!」



 「ちょ、ちょっと待って!!」



 シーリャの情報と聖一の解析力により、一瞬で里に上昇気流が発生しない原因を突き止めてしまった。さらに、愛子の即座に殺そうとする行動力に、真緒は素早く止めに入った。



 「何、邪魔するつもり?」



 「そ、そうじゃないよ!まずは話を聞いて!!あのドラゴンは、自分の卵を温めているだけなんだよ!しかもそれは一時的な物で、少し待てば里に上昇気流が戻る筈だから、お願い!そっとしておいてあげて!!」



 「…………でもさー、そんなまどろっこしい事しなくても、今ここで殺せば済む話じゃない?」



 真緒の必死な説明も虚しく、攻撃的な意見を返す愛子。



 「聖一さんは、どう思いますか?殺した方が手っ取り早いですよね?」



 「聖一さん…………」



 愛子と真緒、二人の女子に答えを求められている聖一は、指に顎を乗せ考える。そして真緒の顔を見てニヤリと笑みを見せると、口を開いた。



 「そうだね、殺した方が里の問題も早く解決して、里の人達も喜ぶだろうね」



 「「「「!!!!」」」」



 聖一の無慈悲な言葉に、エジタスを除いた真緒達四人は、武器を構えた。



 「真緒…………やっぱり私達の邪魔するつもりだったんだ」



 「無闇に殺して欲しく無いだけだよ!!新たな命が誕生するかもしれないのに、それを奪う事は絶対にさせない!!」



 他の三人も真緒の言葉に頷く。



 「それならどうだろう?折角武器を構えた男女が四人いるんだ。一対一の決闘方式にしないかい?」



 「それいいですねー!おい真緒、私と戦いな!!」



 「あ、すまない。真緒さんとは僕が戦うから、愛子は他の人担当でもいいかな?」



 「えっ、あ、はい……」



 宿命の対決と言わんばかりに張り切っていた愛子だが、聖一の言葉に渋々場を譲った。



 「それでは私は、そちらの鳥人の方とお相手させて頂きます。あちらで戦いましょう」



 「分かった…………」



 シーリャはフォルスを相手に指名して、他の人達の邪魔にならない様にその場から離れて行った。



 「じゃあ、私はそこの熊さんと戦おうかなー」



 「いいだよぉ…………」



 舞子はハナコを指名して、シーリャ達とは別の場所に歩いて行った。



 「えー、私余りもんか……まぁ、いいや。さっさと移動しな」



 「分かりました…………」



 愛子は残ったリーマと一緒に、先程の二人とは別の場所に歩いて行った。



 「…………じゃあ、そろそろ僕達も始めようか」



 「はい…………」



 聖一と真緒は、その場で戦おうとしていた。



 「えー、では僭越ながら私が開始の合図を送らせて頂きます。よろしいですか~?」



 「構わないですよ」



 「お願いします……」



 いつの間にか進行役に収まっていたエジタスが、右手を高く上げる。そして…………。



 「それでは、戦闘開始!!!」



 右手を勢いよく振り下ろし、合図を送る。こうして戦いの火蓋は切られた。
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