笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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番外編 魔王城のとある一日

大掃除

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 「待てーーー!!!」



 現在エジタスは全速力で逃げ、後ろからシーラが鬼の形相で追いかけている。



 「エジタス、絶対に許さないからな!!」



 「そんな怒らないで下さい、あんまり怒るとシワが増えちゃいますよ~」



 「鱗にシワが出来るかー!!」



 逆鱗に触れてしまったのか、シーラの走る速度がさらに上がった。しかし、それを見たエジタスも同じ様に速度を上げる。



 「いや~、まさかここまで怒らせてしまうとは思っても見ませんでしたよ…………」



 それは約三時間前の事、サタニアが大掃除をしようと言い始めたのが、切っ掛けだった。







***







 魔王城玉座の間。クロウトを含め、四天王全員が魔王であるサタニアの前に、集められた。



 「皆、今日は良く集まってくれたね」



 「魔王様、本日はどの様なご用件でしょうか?」



 「うん、実はこれから“大掃除”をしようと思うんだ」



 「「「「大掃除?」」」」



 「私がご説明します」



 集められた四人は、何故大掃除をするのか理解が追い付かない為、クロウトが代表して説明する事になった。



 「前日サタニア様が廊下を歩いていた所、黒光りする“あの”虫を発見したのでございます!」



 「「「「!!!!」」」」



 四人の間で衝撃が走る。誰もが驚愕の色を隠せないでいた。



 「それは一大事ね!!早速駆除しに出掛けましょう!」



 「狩りの時間だ…………」



 「ハカイシテヤル……」



 「奴を一匹見たら、百匹はいると思えと言いますからね~」



 四天王総出で駆除しようとする奴の名は…………“G”、ある者は、この名前を聞いただけで震えが止まらなくなる。またある者は、恐怖で眠れぬ生活を送る事になる。それほどまでに恐ろしい相手なのだ。



 「取り敢えずは、まずこの玉座の間から掃除して行くよ!!」



 「「「「「おおーーー!!」」」」」



 こうして、サタニア率いるG討伐隊及び、大掃除隊が結成された。



 「うーん、改めて見ると結構汚れていたんだね。こう言う隅っことか……」



 しばらく掃除をしていたサタニア達は、玉座の間だけでどれ位汚れていたのか染々と実感していた。



 「本当ですね、普段は玉座と歩いて来るカーペットしか掃除しないので、部屋の隅は気にした事が無かったです……」



 「でも、もう大丈夫よ。これからは、隅にも配慮して掃除すれば、いいんだから」



 そう言ったアルシアの言葉通り、この日以降玉座の間は、念入りに掃除される様になった。



 「そうだね…………よし、こんな物かな。次は皆の部屋を掃除したいんだけど、良いかな?」



 「「…………」」



 サタニアがそれぞれの部屋を掃除したいと申し出る。すると四天王の内、シーラとゴルガの二人が暗い表情を見せる。



 「それなら、あたしの部屋からお願い出来るかしら?」



 そんな中で、アルシアが明るく楽しそうに手を挙げた。



 「うん、勿論良いよ。早速アルシアの部屋に行こう」



 そんな会話をした後、サタニア達はアルシアの部屋へと歩いて行く。その後ろをシーラとゴルガの二人は悲しそうな背中をしながら、ついて行くのであった。







***







 「さぁ、着いたわ。ここがあたしの部屋よ!」



 サタニア達は、アルシアの部屋の前に到着した。



 「そう言えば、アルシアの部屋に入るの初めてだ」



 「そうね、基本的にそれぞれの部屋の様子を、確かめようとはしないし…………」



 個人のプライバシーという事で、個人の部屋は各々が管理している。



 「何だか緊張するな……」



 「あら、そんな気を張らなくても大丈夫よ。もっと肩の力を抜いて入って」



 「それじゃあ、失礼します」



 サタニア達が部屋の扉を開け中に入ると、最初に目に飛び込んで来たのはとても整えられた空間だった。数個の本棚にびっしりと種類事に収められている本。窓には綺麗な白いレースのカーテンが飾られ、実務を行う為であろう机と椅子が置いてあり、その向かい側には天蓋付きの大きなベッドが置かれていた。



 「へぇー、凄い整えられているんだね」



 「埃も全く被っていませんよ」



 クロウトが本棚の横を指で拭くが、汚れの類いは付かなかった。



 「当たり前よ、毎日掃除をしているんだから」



 「ま、毎日!?」



 「凄いマメな人ですね~」



 「スケルトンの特権ね」



 疲労を感じる事の無いスケルトンであるアルシアは、胸を張って自慢する。



 「…………でも、これだと掃除出来ないな……」



 「はっ!確かに……盲点だったわ。今度からは、なるべく掃除しない様にするわ!」



 「いや…………それはそれで違う気がするけど……」



 アルシアの少しずれた答えに、サタニアは困惑した。



 「それでは次は、ゴルガ様の部屋を掃除しましょう」



 「!!」



 クロウトの言葉に、ゴルガは体を震わせた。



 「じゃあゴルガ、一緒に行こう!」



 「…………ハ、ハイ」



 サタニアに手を引かれ、ゴルガの部屋まで歩いて行く。



 「ここが、ゴルガの部屋だね」



 ゴルガの部屋の扉は、他の四天王と比べて格段に大きい。ゴルガの巨体に合わせるとなると、当然の事なのだろう。



 「…………」



 「何だか元気無いね?大丈夫?」



 「ハイ、モンダイアリマセン」



 ずっと暗い表情を見せるゴルガに、心配したサタニアだったが、本人が大丈夫なら問題無いと判断した。



 「それでは開けますね」



 クロウトが先行して大きな扉を開ける。するとそこには…………。



 「こ、これは!!」



 部屋の中は滅茶苦茶に散乱しており、ほとんどの家具が壊されていて、床や壁には拳の跡が残されていた。



 「あ……あ……あ……」



 「ク、クロウト……」



 信じられない物を見てしまった。そんな表情を浮かべるクロウト。



 「スマナイ、タンレンノレンシュウヲシタラ、コウナッテシマッタ」



 「…………何やっているんですかーーー!!!!いつも言っていますよね!?鍛練は特別鍛練場で行って下さいって!!これで、何回目だと思っているんですか!!?」



 「ホントウニ、スマナイ!!」



 クロウトの怒鳴り声は、魔王城全体に響き渡った。ゴルガは、只ひたすらに土下座して謝罪した。



 「ふー、ふー、ふー!」



 「まあ、まあ、クロウトちゃん落ち着いて」



 「そ、そうだよ。部屋はまた直せばいいんだから」



 興奮するクロウトを、何とか押さえ込むアルシアとサタニア。



 「これ以上この部屋にいるのは不味いかもしれない。次はシーラの部屋に行こう!」



 「!!!」



 サタニアの言葉に、シーラの全身が震えた。



 「ま、待って下さい魔王様!!」



 「うん?どうしたのシーラ?」



 「さ、先にエジタスの部屋を掃除しませんか?……ほ、ほらこいつ何か隠してるかもしれません!」



 「失礼な言い草ですね~」



 シーラは、自分の部屋よりも先にエジタスの部屋を掃除して欲しいと要求した。



 「うーん、それなんだけど意味無いと思うよ?」



 「ど、どうしてですか!?」



 「だって、エジタスはつい最近四天王になったばかりだし、今は勇者の監視をしているから部屋には何にも手を加えられてないよ?」



 「いや~、家具を買いに行く暇も無いですからね~」



 「そ、そ、それじゃあさエジタス……」



 「ん、何ですかサタニアさん?」



 「こ、今度一緒に家具を買いに行かない?ほ、ほらエジタスはこの魔王城の周辺の事、よく知らないと思うから案内も兼ねてね!?」



 頬を赤く染めながら、必死に約束を取り付けようと試みるサタニア。



 「本当ですか~、それは是非お願いします!」



 「ほ、ほんと!?じゃあ、約束だからね…………やった!」



 小さくガッツポーズを取るサタニア。そして、それを微笑ましく見るアルシアに妬ましく見るクロウト。



 「そう言う訳でシーラの部屋を…………あれ、シーラは?」



 「そうえば見当たりませんね……?」



 エジタスを買い物に誘うのに夢中になっていて、シーラがいなくなっている事に気がつかなかった五人。



 「もしかして、何かを隠していたのはシーラさんの方だったりして~」



 「「「「!!!!」」」」



 エジタスの何気ない一言に、全員が反応を示した。



 「た、確かにそうかもしれない」



 「だから先にエジタス様の部屋を掃除する様に言ったのですね!」



 「シーラちゃんの隠し事…………気になるわね!」



 「よーし、シーラの部屋に突撃!」



 サタニアの言葉を合図に、全員が一斉にシーラの部屋に突撃した。



 「…………よ、よしここに隠して置けば大丈夫な筈……「突撃ー!」……ヤバい来た!!」



 シーラがクローゼットに何かを隠していると、扉の向こうからサタニアの声が聞こえて慌てて、部屋を掃除する。



 「シーラ、いるー?」



 「はい、どうかなさいましたか魔王様」



 先程の慌てぶりとは裏腹に平常心で、扉をノックするサタニアを迎え入れる。



 「何か隠し事…………わぁー、凄く綺麗な部屋だ!」



 シーラの秘密を聞き出そうとするサタニアは、その綺麗に整えられた部屋に感動した。



 「魔王様を汚い部屋に入れてはいけないと思い、先に部屋に戻り掃除をしていたのです」



 「なんだ、そうだったんだー」



 「うーん、怪しいですね~」



 「そんな事ございませんよ、エジタスさん」



 いつもは呼び捨てだったシーラの言動に違和感を覚えたエジタスは、疑いの目を向ける。



 「私の見た所、その後ろのクローゼットが怪しいと睨みます!!」



 ビクン!と、シーラの体が大きく震え、全身から汗が滲み出て来た。



 「な、何を仰るのですかエジタスさん。何も疚しい事はありませんよ……」



 「…………ゴルガさん」



 「ハイ、センセイ」



 そう言うとゴルガは、シーラの体を持ち上げた。



 「!!ゴルガ、テメー離しやがれ!」



 「さぁ~て、クローゼットの中には何が入っているのでしょうね~?」



 「止めろーー!!!」



 「オーーープン!!」



 エジタスが勢いよくクローゼットを開けると、中から大量のぬいぐるみが出てきた。



 「これって…………ぬいぐるみ?」



 「あ、サタニア様見てくださいこのぬいぐるみ、サタニア様そっくりですよ!!」



 「えっ、本当!?」



 ぬいぐるみをよく観察すると、サタニアに瓜二つの等身大サイズをクロウトが発見した。



 「あらー、シーラちゃんって意外に手先が器用なのね」



 「…………」



 突然シーラが無言になり、それを見かねたゴルガは、シーラをゆっくりと下ろし手を離した。



 「…………エージータースー!!!」



 「…………いや~、シーラさんの隠し事、とても可愛らしいですね~…………さいなら!!」



 命の危機を感じたエジタスは、全速力で部屋から飛び出した。



 「待てーーー!ぶっ殺してやるーー!!」



 それを追いかけてシーラも、部屋から飛び出して行った。



 「…………大掃除は、また今度にしよっか……」



 「「「はい…………」」」



 その光景を呆然と眺めるサタニア達は、大掃除を後日へと変更する事にした。



 「待てーーー!」



 「誰か助けて下さーーーい!!」



 こうして、エジタスはシーラに追いかけられる事になってしまった。因みに余談だが、この騒動により“G”は窓から逃げてしまった。しかし、それを知る者は誰もいなかったという…………。
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