笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第七章 冒険編 極寒の楽園

救いの手

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 『以上が、私の身の上になります』



 「成る程な、あの氷像や吹雪はあんたが俺達を、招き入れる為の物だったんだな」



 スゥーの過去話を聞き終えた真緒達は、二つの感情が飛び交っていた。



 「スゥーさんの気持ち、凄く分かります。私も大切な人から託された物を奪われたら悲しいです……でもだからと言って、招き入れた旅人を失敗する度に氷付けにするのは間違っています!!」



 悲しみと怒り、大切な物と人達を奪われた事に同情するが、それを取り返す為に招き入れた人を試して失敗したら氷付けにするのには、怒りを覚える。



 『分かっています。罪は償うつもりです。但し、炎の王冠が手元に戻って来たらの話ですがね……』



 「そんな!!今すぐ、氷付けにした人達を解放してあげて下さい!」



 『残念ですが、それは無理です。私は凍らせる事は出来ても溶かす事は出来ません。溶かすには炎の王冠の力を使うしか方法が無いのです』



 「人質という訳か……」



 「そんなの……あんまりです」



 スゥーの残酷な言葉に、真緒達は退くに退けぬ状況になってしまった。



 『この様な手段を使い、申し訳ありません…………私にはもう時間が無いのです……』



 「それってどう言う事ですか?」



 『…………』



 スゥーは右手を挙げ、じっと見つめると静かに口を開いた。



 『先程の身の上話でも申しましたが、私の力は日に日に強くなっています。それは肌が冷たくなる一方、心までもが五十年前と同じ様に冷たくなっているのです……』



 「「「「「!!!」」」」」



 ぎゅっ、と手を胸に抑え苦しそうな表情を浮かべるスゥー。



 『怖い……またあの時みたいに、人間を氷付けにして喜ぶ自分になってしまうのではないか……そう思うと、怖くて怖くて!!』



 「スゥーさん…………」



 過去の自分に戻る事を恐れて、泣き崩れる。



 『お願いします!!どうか、どうかこの町をお救い下さい!』



 「「「「…………」」」」



 「お断りします!!」



 真緒達が顔を見合せ悩んでいると、リーマが断る声を叫んだ。



 「スゥーさんの事は同情します。でもそれは私達には関係の無い話です!」



 「リーマ、何もそこまで言わなくても……」



 「マオさんは黙っていて下さい。大体、自分の蒔いた種を誰かに助けて貰おうだなんて、図々しいにも程があります!『私が出たら外の世界が凍ってしまう?』町の人達を助ける為なら、世界位敵に回せばいいじゃないですか!?そんな覚悟も無いのに身勝手な事を言わないで下さい!!」



 はぁ、はぁ、と一気に喋った為息を切らしてしまったリーマ。ここまで熱くなったリーマを真緒達は見た事が無い。恐らく、過去の役立たずだった頃の自分と重ね合わせてしまっているのかもしれない。



 「…………で、でも可哀想だよぉー」



 「私達はお助け隊では無いんですよ!」



 仲間にすら怒りを向けるリーマの気迫は、凄まじい物である。



 「さぁ、もう行きましょう!私達には行かなくてはならない場所があるんですから!!」



 そう言うと、出口へと歩き出してしまうリーマ。



 「あ、ちょっ、リーマ!……はぁー、ごめんなさいスゥーさん。私の仲間が失礼な態度を取ってしまって……」



 言いたい事だけ言って、去ろうとするリーマに代わって真緒が謝罪する。



 『いいえ、リーマさんの言う通りです……自分の危機感が無かったせいで、この様な出来事を引き起こしたのですから、自分自身の手で解決しなければいけなかったのです……私は怯えてただけなのかもしれません。町の皆の為と言いながら、心の何処かで自分に被害が及ばない様にしていたのかもしれません。その事をリーマさんに気付かされ、漸く覚悟を決められました。ありがとうございます!!』



 「「「「…………」」」」



 まさか、謝罪をしたら感謝されてしまうとは夢にも思っていなかった。



 『……あ、そうでした。今更ですが、助けて頂いた時のお礼を忘れていました』



 思い出したスゥーは、懐から一枚の紙切れを取り出した。



 「そ、それって……」



 『町長が生前に託したのは炎の王冠だけではありません。この“アーメイデの魔導書”の引きちぎられたページもなのです。このページを助けて頂いた時のお礼に差し上げ様と考えていましたが、もうその必要もありませんね。これからは、私一人の力で何とか頑張ってみようかと思います!!』



 そう言うと、ページを懐へ収めてしまう。



 「リーマ!!“アーメイデの魔導書”の引きちぎられたページだってー!!」



 急いでリーマを引き止める為に、大声で叫ぶ真緒。



 「何やっているんですか皆さん!!早く炎の王冠を取り返しに行きますよ!私達は、困っている人がいたら助けるお助け隊なんですから!!」



 「「「「…………だぁああーー!」」」」



 リーマの心変わりの早さが、尋常では無かった。あまりの変わり様に思わずずっこける真緒達。



 「げ、現金な奴だな…………」



 「まぁ、リーマらしいけどね……」



 「ぞうだなぁ、ぞれでごぞリーマぢゃんだぁ」



 「良いですね~、良い性格です!」



 『あ、あの……大丈夫ですか?』



 突然ずっこけた真緒達を、心配するスゥー。



 「スゥーさん、安心して下さい。私達が必ず炎の王冠を取り戻して見せます!」



 『本当ですか!?ありがとうございます!!』



 スゥーは、頼みを引き受けてくれた真緒達に、深々と頭を下げてお礼を述べる。



 「だが、取り戻すのはいいがその“ケイ”って男は何処にいるんだ?」



 「あー、それは…………」



 肝心の居場所を知らない真緒達は、頭を悩ませる。



 『その点はご安心を……実は、気絶する前にそれらしい言葉を耳にしました。“ダイヤモンドレイク”恐らくそこに、いるものだと思います』



 「“ダイヤモンドレイク”か……」



 「フォルスさん、何か知っているんですか?」



 それらしい素振りを見せたフォルスに、真緒が聞いて来た。



 「ああ、ここから数十キロ離れた場所にある世界最大の湖の事だ」



 「湖ですか…………これはまた一筋縄では行きそうにありませんね」



 「でも、オラ達に乗り越えられない壁は無い!ぞうだよねぇ?」



 「勿論だよ。じゃあ皆、“ダイヤモンドレイク”に行って炎の王冠を取り戻すよ!!」



 「「「「「おおーーー!!」」」」」



 『皆様、ご武運をお祈りしております……』



 スゥーの祈りと共に、気合い十分な真緒達は“ダイヤモンドレイク”に向けて出発するのであった。







***







 「それにしても、また王冠関連の話が出て来るなんて……」



 「そうだなぁ、もしかしたらマオ自体が、王冠を引き寄せているのかもしれないな」



 「あははは、そんな訳ありませんよ!」



 「そうだよな!あははは!」



 「「「「あはははは」」」」



 「…………」



 四人が笑っている中、一人だけ無言で真緒を見続けていた。
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