笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト

目覚めた化け物

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 「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」



 大きな古時計の破壊に成功した真緒達だったが、その結果化け物を目覚めさせてしまった。



 「ヴァルベルトさん!聞いて下さい!!あそこにいたエルさんは、偽物で只の人形なんです!!」



 「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」



 真緒が必死に説明しようとするが、ヴァルベルトは怒りのあまり聞く耳を持とうとしなかった。



 「無理だ真緒!話を聞いてくれる状態じゃない!!」



 「でも…………!!」



 「殺してやる……貴様ら全員殺してやる……!手始めに、エルを殺した張本人である貴様から殺してやる!!」



 「リーマ!!!」



 ヴァルベルトが最初の標的に選んだのは、エルが死ぬ原因となったリーマだった。リーマは未だ、その場から動く事すら出来ずに気絶していた。



 「運の良い奴だ……痛みすら感じる事無く、死ねるのだからな!!」



 ヴァルベルトは、持っていた深紅の槍を振り上げて気絶しているリーマに向かって振り下ろした。



 「…………っ!!」



 「貴様は……!!?」



 深紅の槍がリーマに当たる直前、真緒はリーマと槍の間に割って入り、剣で防いだ。



 「マオ!!」



 「マオさん!大丈夫ですか~!?」



 「ぐっ…………リーマは殺らせない!!!」



 「小娘が……!!」



 するとヴァルベルトは深紅の槍を振り下ろすのを止め、後方へと跳び持っていた剣で手首を傷付ける。当然、傷口から止めどなく血が溢れ出た。



 「そんなに死に急ぎたいのなら、望み通り殺してやる!!」



 ヴァルベルトは、溢れ出る血を空中に飛び散らさせた。



 「後悔しながら死ぬがいい……“ブラッディーレイン”」



 「「「!!!」」」



 空中に飛び散った血は鋭く尖り始め、まるで針の様に形を変えた。その無数の血の針は、真緒とリーマ目掛けて降り注いだ。



 「マオ!!リーマ!!」



 「ほほ~、あんな事まで出来るのですね~?」



 エジタスが呑気な事を言う中、フォルスは二人の安否を心配する。



 「うっ……くっ…………」



 「くくく……あははは!!」



 降り注いだ血の針は、真緒の全身を貫いていた。唯一の救いは、血の針が全体的に細かった為即死は免れた。しかし、貫かれた事により身体中に小さな穴が空いていた。



 「まさか、仲間を身を呈して守るとは…………とんだ愚か者だな!!」



 そう、真緒は避ける事が出来た。しかし避けなかった、それは万が一真緒がその場から避けてしまえば、後ろで気絶しているリーマは確実に死んでしまうからだ。



 「仲間という幻想的な者に囚われるとは、哀れなものだな!!」



 「哀れ……?仲間を守る事が哀れだって言いたいんですか!!?」



 仲間を侮辱された事に、真緒は声を荒げる。



 「そうだろ?血が繋がっている訳でも、愛している訳でも無い。言わば只の友人!!気が合うというだけの者を貴様は自身の命を掛けて守ろうとしている!そんな奴を哀れと言わず、何と言うのだ!!?」



 「(う~ん、どうやら彼とはとても分かり合えそうですね~)」



 エジタスは、ヴァルベルトの言葉に同調する。



 「そもそも、仲間とはいったいなんだ!?友人でも、恋人でも、家族でも無い!!そんなどれでも無い曖昧な仲間という定義に、意味などありはしない!!」



 「………………確かに、仲間と言うのはとても曖昧なものかもしれません……友人の様に、気が合う訳でも無く、家族の様に繋がりがある訳でも無く、恋人の様に愛し合っている訳でもありません……ですが、仲間と言うのは友人よりもお互いを信頼しており、家族とは違う特別な繋がりを持ち、恋人以上に大切に思いやる…………仲間とは、意味は多少違えども他には負けない強い繋がりを言うのだと、私は思います!!」



 仲間。それは友人、家族、恋人、そのどれにも当てはまらないが、どれにでも当てはまる無限の可能性を秘めた存在。そして真緒にとっての仲間とは、自分の命を投げ売ってでも助けたい存在なのだ。



 「だから私は!そんな大切な仲間のリーマを身を呈しても、守り抜いて見せる!!例えどんなに哀れだと言われても!!!」



 「ぐぅぅ…………!!小娘が……生意気に我に意見するなーーー!!!」



 「!!!」



 真っ直ぐで純粋な意見を出されたヴァルベルトは、怒りの感情を露にして持っていた深紅の槍で真緒に止めを刺そうとする。



 「…………ぐはっ!!?」



 しかし、ヴァルベルトの手から深紅の槍が転がり落ちてしまった。その手には、一本の矢が突き刺さっていたのだ。



 「フォルスさん!!」



 「き、貴様…………!!」



 「怒りで周りが見えていなかった様だな、隙だらけだったぞ?」



 真緒を助ける為、フォルスがヴァルベルトに向けて矢を放っていた。



 「いや~、こうもフォルスさんの矢が当たる所を見ると……元四天王はハリボテの様ですね?」



 「!!…………ふふふ……あはははははは!!!」



 「「「!!?」」」



 エジタスの煽りに、突然笑い始めたヴァルベルト。その異様な光景に戸惑いを隠せない真緒達。



 「よく笑う人ですね~…………」



 「ははは……いや、すまない。自分自身があまりにも情けないと思ってしまってね…………こんな調子ではエルの仇は取れない!!」



 その瞬間、ヴァルベルトの背中から蝙蝠の翼が生えて来た。



 「もう貴様らに、手加減などしない!全身全霊で貴様らを排除してくれる!!」



 そう言うとヴァルベルトは、天井ギリギリまで飛び上がった。



 「と、飛んだ…………」



 「まさか、あいつまで空を飛べるだなんて…………」



 「あら~、更に怒らせようと思いましたが……もしかして、余計な事をしてしまった感じですかね~?」



 エジタスの煽りが、ヴァルベルトに本来の冷静さを取り戻させた。



 「さぁ、見るがいい!!これが“狂乱の王子ヴァルベルト”と呼ばれた男の真の力だ!!!」



 するとヴァルベルトは、持っていた剣で自身の体を切り裂いた。



 「な、何を!!?」



 「ぐっ……!!!」



 体から血が吹き出し、やがてそれは球体へと変化しヴァルベルトを包み込んだ。そして球体は次第に小さくなっていき、ヴァルベルトの身体に定着し始めた。それはまるで真っ赤に光輝く“鎧”の様だった。



 「“深紅の鎧”…………さて、始めようか……本当の戦いを……」



 真っ赤な鎧に身を包んだヴァルベルトは、静かに不気味な笑みを浮かべるのであった。
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