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番外編 動き出す者達
偽りの王
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コンコン
「入れ」
カルド王国カルド城内。カルド王が自室にて執務を行っている所、扉をノックする音が響き渡り、カルド王は入室を許可した。
「失礼します。陛下、言われた資料を持って参りました」
「ご苦労、いつもお前には助けられてばかりだな」
入って来たのはラクウンだった。その手には、いくつかの書類が握られていた。
「いえ、王あっての私ですから……」
カルド王の労いの言葉を受け取りつつ、書類の受け渡しの為に側へと寄る。
「…………それで今の所どうなっているのだ?」
カルド王は、執務を行いながらラクウンに問い掛ける。
「と、言いますと?」
「あの“バカ娘”は死んでくれたか?」
“バカ娘”それは、カルド王の娘であり今現在は聖一達と供に、魔王討伐の為に旅をしている。そんな娘に対して、カルド王は死んでくれる事を望んでいる。
「いえ、残念ながら……中々しぶとく生き残っており、このままでは少なくとも一ヶ月以内には、魔王城へと到着してしまうかもしれません」
「そうか……全く、身勝手な行動だけでは飽きたらず、生命力が“ゴキブリ”並みとは…………厄介の塊だな」
カルド王は、中々死なないシーリャに思わず呆れてしまう。
「それと…………シーリャ様の戯言を真に受けて、支援する国民が増えています」
『魔族は悪です。魔族がこの世の中に存在する限り、私達は安心して暮らす事など出来ません!!しかし、恐れる必要はございません!何故ならそんな凶悪な魔族は私達“勇者一行”が正義の名の下に、制裁を加えるからです!!私達がいる限り、魔族が……悪が……存在する事は出来ないでしょう!!』
「…………腐っても王族か……演説で国民の心を掴み取るとはな……」
「演説の上手さは、あなたに似たのですね」
「はぁー、あんな“バカ娘”に似ていると思うと頭が痛い…………」
カルド王は溜め息をつきながら、頭を抱えた。
「しかし…………少し不味いかもしれんな……一ヶ月以内には魔王城に辿り着くとなると、また魔王に迷惑を掛けてしまう事になるかもしれない……」
「念の為、魔王城に連絡しておきましょうか?」
「…………そうだな、事前に連絡を入れておけば、あちらも対処がしやすいだろう。ラクウン、すまないが連絡用の紙を持って来てくれるか?」
「畏まりました」
そう言うとラクウンは、近くの引き出しから何も書かれていない白紙の紙を取り出した。
「どうぞ」
「ありがとう……」
ラクウンから白紙の紙を手渡されると、カルド王は魔王であるサタニア宛に一ヶ月以内に“バカ娘”がそちらに姿を見せるかもしれないから、対処して欲しいとペンを走らせていく。
***
「……こんな所かな……よし、この手紙を魔王城へ渡しておいてくれ」
「畏まりました」
ラクウンは、カルド王から魔王サタニアへの手紙を受け取った。
「それにしても……執務ばかりをしていたせいか、少し疲れてしまったな…………」
「それでしたら、紅茶をご用意しましたので良ければお飲み下さい」
そう言うとラクウンは、カルド王の前に紅茶の入ったティーカップを置いた。
「おお、気が利くな。頂くとしよう」
カルド王は、ラクウンの入れた紅茶に口をつけた。
「ふぅー、それで…………これは何のつもりだ?」
「…………」
ラクウンは、カルド王の首下にナイフを押し立てていた。
「…………体が思う様に動かない……即効性の痺れ薬か……」
「はい、その通りでございます」
「……ふ……ふふ……ふふふははははははは!!」
突然何を思ったのか、カルド王は高笑いをし始めた。
「無様だな…………」
「…………」
「こんな分かりやすい罠に引っ掛かってしまうとは……歳は取りたくないな……歳を重ねる毎に感覚が鈍ってしまう……」
カルド王は、悲しそうに一点を見つめながらしみじみと呟いた。
「…………いつからなんだ?」
「…………」
「いつから、裏切ろうと考えていたんだ?」
「初めてお会いした時からでございます」
「!!…………そうか……どうやら掌で踊らされていたのは、“バカ娘”だけでは無かったのだな……」
操る側の人間だと思っていたカルド王だったが、実際には操られる側の人間だと知り、落胆する。
「だが、何故だ?何故今になって裏切ろうと思ったのだ?」
「私が仕える“真の王”のご命令だからです」
「“真の王”?……成る程、お前は既に仕えている身であったのか……その王は、私よりも有能なのか?」
「はい、足下にも及びません」
「ははは!!そうハッキリ言われると傷付いてしまうではないか」
悲しさを紛らわす為、笑い飛ばすカルド王。
「まさかと思うが、このカルド王国に仕える様に命じたのは……」
「我が王です」
「……恐ろしいな…………それが本当なら、お前の王はいったい何歳なのだ?」
「さぁ、私にも分かりかねます。何せ、幼少の頃からお仕えしているので…………」
何ともあり得ない会話である。仮にもこれから殺されると知っての会話を、ここまで落ち着いて話し合うのは異常であった。
「聞かせてくれ……私が死んだ後、この国はどうなる?」
「ご安心を後釜は既に準備しております」
「ほぉー、それは手際が良いな。それはいったい誰だ?」
「第二王女の“リリヤ”様でございます」
「おぉー、“リリヤ”か。それなら安心だな、“バカ娘”と違ってあの子は素直で優しい心を持っている。きっと国民からも愛されるであろう……」
第二王女リリヤ。第一王女のシーリャとは違い、自分よりも他人の事を優先とする心の清らかな王女である。
「それではそろそろ、殺らせて貰ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだな…………只一つだけ、私の最後の願いを聞いてくれないか?」
「何でしょうか?」
「私を殺した後、機会があればあの“バカ娘”を始末してくれないか?」
カルド王の心残り、それは唯一の汚点とも言える娘シーリャの殺害である。
「私とあなたの仲です。その最後の願い、喜んでお受け致しましょう」
「そうか、そう言ってくれるとありがたい…………“バカ娘”の死に様を拝めないのが非常に残念だが仕方がない……」
カルド王は、ゆっくりと目を瞑り娘シーリャの事を思いながら優しい口調で喋り始めた。
「“シーリャ”親子二人で地獄に行こうじゃないか。私は父親として、案内人として、先に地獄で娘のお前を待っているぞ」
それがカルド王の最後の言葉となった。首と胴体は別れを告げて、頭が床に落ち、被っていた王冠が音を立てながらコロコロと転がった。
「さようなら……偽りの王よ……あなたの事は嫌いでは無かったですよ……」
ラクウンは血で汚れたナイフを持っていた白い布で拭き取り、懐へと仕舞い込んだ。
「さて……次の計画の準備をしなければ……全ては我が王の為に……」
そう言い残すと、ラクウンは部屋を後にした。この日、二人の人間がカルド城からいなくなった。一人は死体となって発見され、一人は姿形も見当たらなかった。カルド王国はたった一日で、最も貴重な存在を二人も失ったのだった。
「入れ」
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「失礼します。陛下、言われた資料を持って参りました」
「ご苦労、いつもお前には助けられてばかりだな」
入って来たのはラクウンだった。その手には、いくつかの書類が握られていた。
「いえ、王あっての私ですから……」
カルド王の労いの言葉を受け取りつつ、書類の受け渡しの為に側へと寄る。
「…………それで今の所どうなっているのだ?」
カルド王は、執務を行いながらラクウンに問い掛ける。
「と、言いますと?」
「あの“バカ娘”は死んでくれたか?」
“バカ娘”それは、カルド王の娘であり今現在は聖一達と供に、魔王討伐の為に旅をしている。そんな娘に対して、カルド王は死んでくれる事を望んでいる。
「いえ、残念ながら……中々しぶとく生き残っており、このままでは少なくとも一ヶ月以内には、魔王城へと到着してしまうかもしれません」
「そうか……全く、身勝手な行動だけでは飽きたらず、生命力が“ゴキブリ”並みとは…………厄介の塊だな」
カルド王は、中々死なないシーリャに思わず呆れてしまう。
「それと…………シーリャ様の戯言を真に受けて、支援する国民が増えています」
『魔族は悪です。魔族がこの世の中に存在する限り、私達は安心して暮らす事など出来ません!!しかし、恐れる必要はございません!何故ならそんな凶悪な魔族は私達“勇者一行”が正義の名の下に、制裁を加えるからです!!私達がいる限り、魔族が……悪が……存在する事は出来ないでしょう!!』
「…………腐っても王族か……演説で国民の心を掴み取るとはな……」
「演説の上手さは、あなたに似たのですね」
「はぁー、あんな“バカ娘”に似ていると思うと頭が痛い…………」
カルド王は溜め息をつきながら、頭を抱えた。
「しかし…………少し不味いかもしれんな……一ヶ月以内には魔王城に辿り着くとなると、また魔王に迷惑を掛けてしまう事になるかもしれない……」
「念の為、魔王城に連絡しておきましょうか?」
「…………そうだな、事前に連絡を入れておけば、あちらも対処がしやすいだろう。ラクウン、すまないが連絡用の紙を持って来てくれるか?」
「畏まりました」
そう言うとラクウンは、近くの引き出しから何も書かれていない白紙の紙を取り出した。
「どうぞ」
「ありがとう……」
ラクウンから白紙の紙を手渡されると、カルド王は魔王であるサタニア宛に一ヶ月以内に“バカ娘”がそちらに姿を見せるかもしれないから、対処して欲しいとペンを走らせていく。
***
「……こんな所かな……よし、この手紙を魔王城へ渡しておいてくれ」
「畏まりました」
ラクウンは、カルド王から魔王サタニアへの手紙を受け取った。
「それにしても……執務ばかりをしていたせいか、少し疲れてしまったな…………」
「それでしたら、紅茶をご用意しましたので良ければお飲み下さい」
そう言うとラクウンは、カルド王の前に紅茶の入ったティーカップを置いた。
「おお、気が利くな。頂くとしよう」
カルド王は、ラクウンの入れた紅茶に口をつけた。
「ふぅー、それで…………これは何のつもりだ?」
「…………」
ラクウンは、カルド王の首下にナイフを押し立てていた。
「…………体が思う様に動かない……即効性の痺れ薬か……」
「はい、その通りでございます」
「……ふ……ふふ……ふふふははははははは!!」
突然何を思ったのか、カルド王は高笑いをし始めた。
「無様だな…………」
「…………」
「こんな分かりやすい罠に引っ掛かってしまうとは……歳は取りたくないな……歳を重ねる毎に感覚が鈍ってしまう……」
カルド王は、悲しそうに一点を見つめながらしみじみと呟いた。
「…………いつからなんだ?」
「…………」
「いつから、裏切ろうと考えていたんだ?」
「初めてお会いした時からでございます」
「!!…………そうか……どうやら掌で踊らされていたのは、“バカ娘”だけでは無かったのだな……」
操る側の人間だと思っていたカルド王だったが、実際には操られる側の人間だと知り、落胆する。
「だが、何故だ?何故今になって裏切ろうと思ったのだ?」
「私が仕える“真の王”のご命令だからです」
「“真の王”?……成る程、お前は既に仕えている身であったのか……その王は、私よりも有能なのか?」
「はい、足下にも及びません」
「ははは!!そうハッキリ言われると傷付いてしまうではないか」
悲しさを紛らわす為、笑い飛ばすカルド王。
「まさかと思うが、このカルド王国に仕える様に命じたのは……」
「我が王です」
「……恐ろしいな…………それが本当なら、お前の王はいったい何歳なのだ?」
「さぁ、私にも分かりかねます。何せ、幼少の頃からお仕えしているので…………」
何ともあり得ない会話である。仮にもこれから殺されると知っての会話を、ここまで落ち着いて話し合うのは異常であった。
「聞かせてくれ……私が死んだ後、この国はどうなる?」
「ご安心を後釜は既に準備しております」
「ほぉー、それは手際が良いな。それはいったい誰だ?」
「第二王女の“リリヤ”様でございます」
「おぉー、“リリヤ”か。それなら安心だな、“バカ娘”と違ってあの子は素直で優しい心を持っている。きっと国民からも愛されるであろう……」
第二王女リリヤ。第一王女のシーリャとは違い、自分よりも他人の事を優先とする心の清らかな王女である。
「それではそろそろ、殺らせて貰ってもよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだな…………只一つだけ、私の最後の願いを聞いてくれないか?」
「何でしょうか?」
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カルド王の心残り、それは唯一の汚点とも言える娘シーリャの殺害である。
「私とあなたの仲です。その最後の願い、喜んでお受け致しましょう」
「そうか、そう言ってくれるとありがたい…………“バカ娘”の死に様を拝めないのが非常に残念だが仕方がない……」
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