笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
140 / 300
番外編 動き出す者達

勇者に必要な物

しおりを挟む
 「…………えっ?」



 「どうしたんだいシーリャ?」



 「いえ……誰かに呼ばれた気がして……」



 聖一達は魔王討伐に向けて、魔王城へと旅を続けていた。そんな中、シーリャが突然振り返り誰かに呼ばれたと言い出した。



 「えー、私達以外、誰も何処にもいないよ?」



 「空耳じゃ無いの?」



 「そう……なのでしょうか……?」



 シーリャは胸に手を置きながら、思い詰めた表情を浮かべた。



 「きっと、長旅のせいで疲れが溜まっているんだよ。この先に村がある筈だから、そこでしばらく体を休めてから行くとしよう」



 「賛成ー!!」



 「私、もう足がパンパンだったよー!」



 次の村で体を休める事に、愛子と舞子の二人は喜んで賛成した。



 「ありがとうございます。聖一様…………」



 「気にしなくていいさ。困った時はお互い様だろ?」



 「はい……」



 聖一達は足早に、次の村へと向かうのであった。







***







 「着いたーー!!」



 それから数時間後、聖一達は目的の村へと到着した。



 「はぁー、疲れたー!早く体を休めたいー!」



 「そうだね、でもその前にこの村の村長に挨拶を済ませないと「旅のお方……」……はい?」



 聖一達が、村の村長に挨拶しに行こうとすると、入口の近くにいた老婆に声を掛けられた。



 「何でしょうか?」



 「あんた達、この村は初めてかい?」



 「え、ええ……まぁ……」



 「それなら、ワシが案内してやろう。ついて来なさい」



 「えっ、お、おばあさん!?」



 老婆は完全に腰が曲がっており、杖をついていた。そんな老婆に声を掛けられたかと思うと、突然村を案内してやると言い出し、さっさか歩いて行ってしまう。腰が曲がっているとは思えない速度だった。



 「ほら、早くついて来なさい」



 「ど、どうしようか?」



 あまりの突然な出来事に、さすがの聖一も動揺を隠せなかった。



 「あんな人放っておこうよ!」



 「そうだよ、私達には関係無いよ」



 「私達には魔王討伐という使命がありますし、ここで無駄な時間を費やす事は出来ません」



 おばあさんについて行くかどうかを問い掛けると、愛子、舞子、シーリャの三人はついて行かないと言った。



 「関係無いかもしれないけど、勇者として放っておく事は出来ないよ」



 そう言うと聖一は、老婆の後を追い掛けて行く。



 「せ、聖一さん!ちょっと待って下さいよ!」



 「ちょっ、愛子!置いてかないで!」



 「お二人とも!私も行きます!」



 先に行ってしまった聖一を、急いで追い掛ける三人。







***







 「さて、ここがこの村で一番の有名場所だよ」



 聖一達は老婆の案内の下、村の中央にそびえ立つ巨大な木の前に来ていた。



 「ひゃー、おっきいー!」



 「こんな大きい木、初めて見た!」



 「おばあさん、この木はいったい何なのですか?」



 「これは“クラウドツリー”と言って、世界で一番高い木だと言われているんだよ」



 “クラウドツリー”そのあまりに大きな木は雲を突き抜け、肉眼では頂上を確認出来ない。



 「クラウドツリーが突き抜けている雲はその頂上を常に隠し、薄くなった事は無いらしいです」



 「「へぇー」」



 「お嬢さん、詳しいですね」



 愛子と舞子が、シーリャの話を聞いていると老婆が、声を掛けて来た。



 「はい、これでも私カルド王国の第一王女ですから、世界の事を知るのは当然です」



 「成る程……カルド王の娘さんだったか……」



 「父上を知っているのですか?」



 「当たり前だろ。世界一の大国と呼ばれるカルド王国の王様を、知らない訳無いじゃないか」



 「さすが父上です!こんな辺境の村にまで、その名が知られているだなんて!!」



 自分の父親の名前が、知られている事に誇らしく感じるシーリャ。



 「という事は……他の三人は異世界から来た“勇者”さんかい?」



 「はい!そぉーでーす!!」



 「びっくりした?」



 「自己紹介が遅れて申し訳ありません。僕は“如月聖一”と言います」



 聖一は老婆に対して、胸に手を置きお辞儀をした。



 「“笹沼愛子”でーす!」



 「“石田舞子”でーす!」



 「カルド王国第一王女“シーリャ・アストラス・カルド”と申します」



 聖一に続く様に、愛子、舞子、そしてシーリャがそれぞれ自己紹介を済ませた。



 「それなら、勇者のあんた達に聞きたい事があったんだ」



 「何でしょうか?」



 「…………あんた達、“勇者に必要な物”って何だと思う?」



 「「「「“勇者に必要な物”?」」」」



 聖一達が勇者一行だと分かると、老婆は突然質問をして来た。



 「そうさ、あんた達はこの村に来るまで様々な事を見て、感じて来た筈だ。それを踏まえて聞きたい……あんた達が思う“勇者に必要な物”は何だい?」



 老婆の問い掛けに、しばらく考え込む聖一達。最初に答えを出したのは……。



 「はぁーい!やっぱり“力”だと思うんだよねー!」



 愛子だった。愛子は手を大きく上げて答えた。



 「ほぅ……力か、それは何故だ?」



 「だって、勇者は魔族や魔物を倒すのが役目でしょ?それだったら力は絶対必要だと思うんだよね」



 「成る程…………他は、誰かいるか?」



 「はい!私は“知性”だと思います!」



 次に答えたのは舞子だった。愛子同様、大きく手を上げて答えるのであった。



 「何故?」



 「やっぱり勇者には、仲間をまとめあげる為にある程度の知性が無いと、致命的かなって……」



 「成る程…………他は、誰かいるか?」



 「“勇気”ではないでしょうか?」



 次に答えたのはシーリャだった。前の二人とは違い、落ち着いた雰囲気で答えるのであった。



 「ほぅ……何故だ?」



 「勇者は多くの敵と戦う事となります。困難にも立ち向かわなくてはいけません。そしてそれらに立ち向かう為には、勇気が無くてはいけないと思いました。それに、“勇気ある者”で勇者とも言いますので……」



 「成る程…………さて、残るはお前さんだけだが……お前さんは何だと思う?“勇者に必要な物”は?」



 最後に残ったのは、聖一だけだった。聖一は他の三人とは違って、ゆっくりと時間を掛けて考えていた。



 「…………“完璧”だと思います」



 「ほぅ……何故そう思った?」



 時間を掛けて出した聖一の答え。老婆は、鋭い眼差しで理由を聞いた。



 「勇者とは……言わば“象徴”です。勇者という存在があるから、人々は安心して暮らせる。伝説でも物語でも、信じる事で人は希望を持って生きていける。それが形ある物なら尚更です。だからこそ、勇者は完璧である必要があるのです」



 「さすが聖一さん!」



 「カッコいい!」



 「聖一様素晴らしいです!私達とは、考え方が違いますね!」



 聖一の回答に、歓喜する三人。すると老婆はゆっくりと目を閉じた。



 「成る程ね……あんた達の考えはよく分かったよ。これはそのお礼だ」



 そう言うと老婆は、聖一達に小さな袋を手渡した。中には白銀が十枚入っていた。



 「い、いいんですか!?こんな貴重な物を頂いてしまって!」



 「ああ、ワシには必要の無い物だからね…………それじゃあ、ワシはそろそろ行くとするよ。腰が痛くてね……」



 そう言うと老婆は、何処かへと去ってしまった。



 「あっ、おばあさん!」



 「やりましたね聖一さん!!」



 「質問に答えただけで、こんな大金を貰えるだなんて聖一さんは凄いです!!」



 「これも、聖一様が答えを導き出したお陰です」



 「いや、あれが正解かどうかも分からないし……」



 聖一が老婆を呼び止め様とするが、愛子、舞子、シーリャの三人が近づいて来た為、見失ってしまった。



 「…………まぁ、受け取った物は仕方ない。大事に使わせて貰うとしよう……えっと取り敢えず気を取り直して、この村の村長に挨拶しに行こうか?」



 「「「はーい!!」」」



 こうして聖一達は、村の村長に挨拶しに向かうのであった。











































 「はぁー…………」



 聖一達と別れた老婆は、深い溜め息をついていた。



 「勇者達でも駄目だったか……いつになったら現れるのだろうか……ワシの求める“答え”を持つ者は……」



 そう呟きながら、老婆はふわりと浮かび上がりクラウドツリーへと登って行くのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...