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番外編 動き出す者達
迫り来る脅威
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魔王城玉座の間。魔王サタニアは玉座に座りながら、一通の手紙を睨み付けていた。
「サタニア様、どうかなさいましたか?」
「ああ、クロウト…………うん、ちょっとね……」
じっと手紙を睨み付けるサタニアを心配して、側に仕えていたクロウトが声を掛けた。
「実は……ついさっき、カルド王国から手紙が届いてね」
「カルド王国から?また、第一王女が勝手に動かした兵がこちらに向かっているのでしょうか?」
「うん……向かっているは向かっているんだけど……」
サタニアは言うのを躊躇いしばらくの間考え込むと、その重々しい口をゆっくり開いた。
「どうやら、思った以上に早く勇者達が来てしまうみたい……」
「!!……それはどの位なのでしょうか……?」
「少なくとも“一ヶ月以内”には……」
「!!急いで準備を整える様に、兵に伝えて参ります!!」
「うん、お願い……」
一ヶ月という短い期間で、勇者達を迎え撃つ準備を整えなければならない。クロウトは、足早に部屋を後にしようとする。
「あっ、そうだクロウト!!今魔王城にいる四天王に、今すぐ玉座の間に集合する様に伝えて!!」
「畏まりました!」
サタニアの言葉に返事をしたクロウトは、玉座の間を後にするのだった。
***
「ごめんね皆、急に呼び集めちゃって……」
「あら、魔王ちゃんが気にする事じゃ無いわよ」
「オレタチハ、マオウサマノハイカ……メイレイニ、シタガウノハトウゼンノコト……」
それから一時間と経たず、サタニアの下に四天王が集合した。しかし、集まったのはアルシアとゴルガの二人だけだった。エジタスならまだしも、シーラまでもがその場にいなかった。
「シーラ様は現在、近くで起きた部族同士の争いを終結させる為、お呼びする事は叶いませんでした。力不足な私をお許し下さい」
「いや、今魔王城にいる四天王だけでよかったから、クロウトは力不足なんかじゃないよ。ありがとうクロウト」
「勿体無き御言葉……」
四天王を全員集められなかった事に、責任を感じていたクロウトだったが、サタニアの言葉にホッと胸を撫で下ろす。
「それで、皆を集めた理由なんだけど…………もしかしたら一ヶ月以内に勇者達がやって来るかもしれない」
「「!!」」
当然、二人の反応は驚愕そのものだった。
「どういう事!?勇者達ならエジタスちゃんが、監視している筈でしょ!?」
「いえ、どうやらエジタス様が監視している勇者達とは違う、もう一組の勇者達の様です」
「もう一組の勇者達?」
「はい、どうやらカルド王国の第一王女がメンバーにいるらしいのです。こちらが、カルド王から送られて来た手紙でございます」
そう言うとクロウトは、アルシアにカルド王の手紙を手渡した。
「…………成る程ね。でもそうなると、問題はそのやって来るという勇者達が魔王ちゃんの脅威に成か否か……」
「その為にも、今からでも準備を整えなければいけません」
「そうね……シーラちゃんが帰って来たら、魔王城の警戒度を上げましょう…………ん、何だか外が騒がしいわね?」
サタニア達が勇者達の対策を練っていると、外の方が何やら騒がしかった。するとその時……。
「おぉー、今戻ったぞー!!」
部屋の扉が勢いよく開き、シーラが入って来た。
「あら、シーラちゃん。随分と早いわね、もう部族同士の争いは終結させたの?」
「いやー、それがさー……あ、あはははは……」
「「「「??」」」」
アルシアの問いに、シーラは頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。
「…………だ……こだ……何処だ!?何処に行った!!」
外から怒鳴り声が響き渡る。サタニア達は声の主を確かめる為に、城壁の上に出た。
「いやな……部族同士の争いを終結させようとしたらさ……」
「出てきやがれ!!ぶっ殺してやる!!」
「両方の部族を怒らせちゃった……」
「「「「…………」」」」
両部族合わせて、総勢千人。魔王城に向けて進行していた。それぞれの部族代表が先頭に立ち、声を張り上げていた。
「……いったい何をどうすれば、こんな結果を招く事が出来るのですか!?」
「そんな大した事は言ってないさ。只、“弱者同士がじゃれ合っても虚しいだけだぞ”って言っただけだ」
「「「「…………」」」」
シーラの豪快過ぎる止め方に、サタニア達は呆れて声も出なかった。
「勿論反省しているぞ」
「ならどうしてここまで連れて来たのよ。シーラちゃんなら、あんな人達余裕でしょ?」
「そうなんだけど……肝心の“槍”を部屋に忘れてしまってな」
「…………」
「槍が無くても勝てるけど……やっぱり使い慣れた武器で戦いたいって思って…………いや、本当にすまない!!」
そう言いながら、シーラはサタニア達に深々と頭を下げた。
「はぁー、こうなっては仕方ないわね。いいわ今回は私が人肌脱いで「待ってアルシア」……えっ?」
アルシアがシーラの尻拭いをしようとするが、サタニアに遮られてしまう。
「ここは“僕”に殺らせて貰えないかな?」
「「「「!!!」」」」
「いけません!サタニア様自らが戦地に赴かれるなんて、配下として見過ごせません!」
突如、自分に殺らせて欲しいと言い出したサタニア。当然の如く、クロウトは否定した。
「丁度、勇者達に向けての“準備運動”をしたかった所なんだ。だから寧ろ、シーラには感謝しているよ」
「ですよね!!実はそうじゃ無いかと思って、わざと連れて来たんだよな!」
「シーラさん…………」
「…………ごめんなさい」
調子に乗ったシーラを睨み付けるクロウト。シーラは申し訳無さそうに、尻尾を垂れ下げる。
「クロウト………」
サタニアは、クロウトの目をじっと見つめる。
「…………はぁ、分かりました。但し!決して無理は為さらないで下さい!いいですね!?」
「うん!ありがとうクロウト!!それじゃあ、行ってきます!!」
サタニアがクロウトにお礼を述べると、千人の部族達が待つ外へと飛び降りた。
「よっと!」
「何だ!ガキじゃないか!?」
「おい!お前!!何者だ!?」
無知とは何と恐ろしい事だろうか。今自分達の目の前にいる子供がまさか、魔王であるなどと分かる筈が無い。それぞれの部族の代表は、サタニアにタメ口で問い掛ける。
「うーん、“君達を殺す者”かな?」
「……っ!!構う事はねぇ!!殺せ!」
「ガキだからって容赦するんじゃねぇぞ!!」
「「「「「おおーーー!!」」」」」
代表の言葉を合図に、一斉に部族達がサタニアに襲い掛かる。
「ねぇ、クロウトちゃん」
「何でしょうか?」
部族達がサタニアに襲い掛かる光景を見ながら、アルシアがクロウトに声を掛ける。
「何分、耐えると思う?」
「…………三分でしょうか」
「あら、過小評価してる?」
「いえ、さすがに千人もいるのでそれなりに掛かるのでは無いかと……」
「ふふふ、まだまだ甘いわね……」
丁度その時、部族達がサタニアに持っていた武器を突き刺そうとする瞬間だった。
「魔王ちゃんに数なんか、関係無いわよ…………」
「“ブラックバースト”」
サタニアが放ったこの魔法が、部族達にとっての地獄の幕開けだった。
「サタニア様、どうかなさいましたか?」
「ああ、クロウト…………うん、ちょっとね……」
じっと手紙を睨み付けるサタニアを心配して、側に仕えていたクロウトが声を掛けた。
「実は……ついさっき、カルド王国から手紙が届いてね」
「カルド王国から?また、第一王女が勝手に動かした兵がこちらに向かっているのでしょうか?」
「うん……向かっているは向かっているんだけど……」
サタニアは言うのを躊躇いしばらくの間考え込むと、その重々しい口をゆっくり開いた。
「どうやら、思った以上に早く勇者達が来てしまうみたい……」
「!!……それはどの位なのでしょうか……?」
「少なくとも“一ヶ月以内”には……」
「!!急いで準備を整える様に、兵に伝えて参ります!!」
「うん、お願い……」
一ヶ月という短い期間で、勇者達を迎え撃つ準備を整えなければならない。クロウトは、足早に部屋を後にしようとする。
「あっ、そうだクロウト!!今魔王城にいる四天王に、今すぐ玉座の間に集合する様に伝えて!!」
「畏まりました!」
サタニアの言葉に返事をしたクロウトは、玉座の間を後にするのだった。
***
「ごめんね皆、急に呼び集めちゃって……」
「あら、魔王ちゃんが気にする事じゃ無いわよ」
「オレタチハ、マオウサマノハイカ……メイレイニ、シタガウノハトウゼンノコト……」
それから一時間と経たず、サタニアの下に四天王が集合した。しかし、集まったのはアルシアとゴルガの二人だけだった。エジタスならまだしも、シーラまでもがその場にいなかった。
「シーラ様は現在、近くで起きた部族同士の争いを終結させる為、お呼びする事は叶いませんでした。力不足な私をお許し下さい」
「いや、今魔王城にいる四天王だけでよかったから、クロウトは力不足なんかじゃないよ。ありがとうクロウト」
「勿体無き御言葉……」
四天王を全員集められなかった事に、責任を感じていたクロウトだったが、サタニアの言葉にホッと胸を撫で下ろす。
「それで、皆を集めた理由なんだけど…………もしかしたら一ヶ月以内に勇者達がやって来るかもしれない」
「「!!」」
当然、二人の反応は驚愕そのものだった。
「どういう事!?勇者達ならエジタスちゃんが、監視している筈でしょ!?」
「いえ、どうやらエジタス様が監視している勇者達とは違う、もう一組の勇者達の様です」
「もう一組の勇者達?」
「はい、どうやらカルド王国の第一王女がメンバーにいるらしいのです。こちらが、カルド王から送られて来た手紙でございます」
そう言うとクロウトは、アルシアにカルド王の手紙を手渡した。
「…………成る程ね。でもそうなると、問題はそのやって来るという勇者達が魔王ちゃんの脅威に成か否か……」
「その為にも、今からでも準備を整えなければいけません」
「そうね……シーラちゃんが帰って来たら、魔王城の警戒度を上げましょう…………ん、何だか外が騒がしいわね?」
サタニア達が勇者達の対策を練っていると、外の方が何やら騒がしかった。するとその時……。
「おぉー、今戻ったぞー!!」
部屋の扉が勢いよく開き、シーラが入って来た。
「あら、シーラちゃん。随分と早いわね、もう部族同士の争いは終結させたの?」
「いやー、それがさー……あ、あはははは……」
「「「「??」」」」
アルシアの問いに、シーラは頭を掻きながら苦笑いを浮かべた。
「…………だ……こだ……何処だ!?何処に行った!!」
外から怒鳴り声が響き渡る。サタニア達は声の主を確かめる為に、城壁の上に出た。
「いやな……部族同士の争いを終結させようとしたらさ……」
「出てきやがれ!!ぶっ殺してやる!!」
「両方の部族を怒らせちゃった……」
「「「「…………」」」」
両部族合わせて、総勢千人。魔王城に向けて進行していた。それぞれの部族代表が先頭に立ち、声を張り上げていた。
「……いったい何をどうすれば、こんな結果を招く事が出来るのですか!?」
「そんな大した事は言ってないさ。只、“弱者同士がじゃれ合っても虚しいだけだぞ”って言っただけだ」
「「「「…………」」」」
シーラの豪快過ぎる止め方に、サタニア達は呆れて声も出なかった。
「勿論反省しているぞ」
「ならどうしてここまで連れて来たのよ。シーラちゃんなら、あんな人達余裕でしょ?」
「そうなんだけど……肝心の“槍”を部屋に忘れてしまってな」
「…………」
「槍が無くても勝てるけど……やっぱり使い慣れた武器で戦いたいって思って…………いや、本当にすまない!!」
そう言いながら、シーラはサタニア達に深々と頭を下げた。
「はぁー、こうなっては仕方ないわね。いいわ今回は私が人肌脱いで「待ってアルシア」……えっ?」
アルシアがシーラの尻拭いをしようとするが、サタニアに遮られてしまう。
「ここは“僕”に殺らせて貰えないかな?」
「「「「!!!」」」」
「いけません!サタニア様自らが戦地に赴かれるなんて、配下として見過ごせません!」
突如、自分に殺らせて欲しいと言い出したサタニア。当然の如く、クロウトは否定した。
「丁度、勇者達に向けての“準備運動”をしたかった所なんだ。だから寧ろ、シーラには感謝しているよ」
「ですよね!!実はそうじゃ無いかと思って、わざと連れて来たんだよな!」
「シーラさん…………」
「…………ごめんなさい」
調子に乗ったシーラを睨み付けるクロウト。シーラは申し訳無さそうに、尻尾を垂れ下げる。
「クロウト………」
サタニアは、クロウトの目をじっと見つめる。
「…………はぁ、分かりました。但し!決して無理は為さらないで下さい!いいですね!?」
「うん!ありがとうクロウト!!それじゃあ、行ってきます!!」
サタニアがクロウトにお礼を述べると、千人の部族達が待つ外へと飛び降りた。
「よっと!」
「何だ!ガキじゃないか!?」
「おい!お前!!何者だ!?」
無知とは何と恐ろしい事だろうか。今自分達の目の前にいる子供がまさか、魔王であるなどと分かる筈が無い。それぞれの部族の代表は、サタニアにタメ口で問い掛ける。
「うーん、“君達を殺す者”かな?」
「……っ!!構う事はねぇ!!殺せ!」
「ガキだからって容赦するんじゃねぇぞ!!」
「「「「「おおーーー!!」」」」」
代表の言葉を合図に、一斉に部族達がサタニアに襲い掛かる。
「ねぇ、クロウトちゃん」
「何でしょうか?」
部族達がサタニアに襲い掛かる光景を見ながら、アルシアがクロウトに声を掛ける。
「何分、耐えると思う?」
「…………三分でしょうか」
「あら、過小評価してる?」
「いえ、さすがに千人もいるのでそれなりに掛かるのでは無いかと……」
「ふふふ、まだまだ甘いわね……」
丁度その時、部族達がサタニアに持っていた武器を突き刺そうとする瞬間だった。
「魔王ちゃんに数なんか、関係無いわよ…………」
「“ブラックバースト”」
サタニアが放ったこの魔法が、部族達にとっての地獄の幕開けだった。
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