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第九章 冒険編 雲の木の待ち人
修行~真緒の場合~
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「さて、最後の修行の相手はマオだね」
「はい、よろしくお願いします」
リーマ、フォルス、ハナコと続き最後の修行の相手は真緒だった。
「あんたの職業は言わずと知れた…………」
「勇者です…………ですけど、私は自分を勇者と思った事は一度もありません」
真緒は、あくまで自身を勇者と認めようとはしていなかった。それは謙遜、自分程度の存在が勇者という輝いた存在の筈が無いと、過小評価してしまっているのだ。
「あんたが何と言おうと職業は“勇者”、これは変える事の出来ない事実だよ」
「そう……ですね……」
いくら真緒が勇者では無いと公言しても、職業の名称は“勇者”と表記されてしまっている。
「まぁ、そんな話はどうでもいいんだ。今するべき事、それはあんたが魔王と渡り合える程度の実力に鍛え上げる事だよ」
「…………本当に魔王と渡り合える程度に、成長しなければいけませんか?やっぱり話し合いで解決すれば……」
「甘ったれた事を言ってんじゃないわよ」
ここまで来て、未だに弱気な発言をする真緒にアーメイデが強めな口調で声を掛ける。
「相手は魔王なのよ?他所から来た、それもかつて魔族を一度滅ぼした勇者とまともに会話をする訳が無いでしょ?」
「…………」
アーメイデに正論を叩き付けられて、黙り混んでしまう真緒。
「……あんたが、争いを好まないのは知っているよ。だけどね……世の中には、話し合いではどうにもならない事があるんだよ」
「分かっています……分かっていますけど……でも…………」
「…………」
真緒はどうしても、争いで物事を解決する行為を頑なに拒んだ。
「まぁ……今はそんな事より、あんたの修行の方が大切だからね。考え方については、また今度にしようか……」
「すみません…………」
真緒とアーメイデは気持ちを切り替えて、修行を再開する。
「さて……修行についてだけど……正直に言って、あんたのポテンシャルは他の三人とは比べ物にならない位に高いね。肉体的な運動神経や技のバリエーションも申し分無い」
「ありがとうございます」
突然ベタ褒めするアーメイデに、真緒は照れながらもお礼を述べた。
「只、ステータスの数値はまだまだ低いけど……これは他の三人と平行して上げて行けば、問題無いと思うよ。問題があるとすれば…………」
アーメイデは、少し言葉を溜めながら真緒に向けて話した。
「“心”かね……」
「“心”ですか…………?」
真緒は胸に手を当てながら、アーメイデの話に耳を傾ける。
「あんたはね……優し過ぎるんだよ……」
「はぁ…………?」
優しい事の何がいけないのか、いまいち理解出来ていない真緒。
「あんたはいつも敵味方関係無く、困っている人や助けを求めている人に対して、形振り構わず助けてしまっている」
「いけない事でしょうか?」
「いや、そんな事は無い。人助けは良い事だ…………でもね、それは自分の命を顧みず助ける程の事なのかい?」
「…………」
アーメイデが言う真緒が持つ唯一の欠点。それは、人助けに対して自分の命を危険に晒している事である。
「この前の魔食が良い例だ。村人達が危ないから倒しに行ったけど、結果的に仲間の一人が死にそうになった」
「!!ハナちゃん…………」
「人助けは立派だけどね……それで命を落としたら元も子も無いだろ……」
真緒は困っている人がいたら、放っておけない性格である。それはかつての情けなかった自分自身と重ね合わせてしまっているせいなのかもしれない。しかしその人助けで、自分や大切な仲間が命を落としてしまったら本末転倒だ。
「あんたに今必要なのは……“残忍性”」
「それはつまり……困っている人を見かけても見捨てろって事ですか?」
「あぁ、簡単に言えばそうだね。あっちこっちで人助けしてたら、体がいくつあっても足りないよ。人は時に、苦渋の決断を下さなければいけないのさ…………」
「…………でも……そうだとしても私は……」
真緒にとって、人助けという行為は言わば自身の存在意義を確かめる為の物だった。昔の自分に戻らない様に、積極的に助ける事で私には存在すべき理由があると、心を安心させているのだ。しかしその事に真緒は気づいておらず、無意識にやっている。
「…………はぁー、それなら仕方ないね……あんたには手っ取り早いテストを受けて貰う」
「テスト…………?」
突然テストを受けて貰うと言われた真緒は首を傾げた。
「実はね、魔食が倒された事によって未知の病気が村で発生しているんだ」
「えぇ!?ほ、本当ですか!?」
「あぁ、だが幸いにも感染者は一人だけだ」
それを聞いて真緒はホッとしていた。感染という事は、まだ誰も死者は出ていないという事だ。
「だが、それもいつ他の村人に感染するか分からない。そこで、悲しい事だけどその人には村の為に死んで貰う事が決定しているの」
「…………えっ?」
真緒は一瞬耳を疑った。村を救う為に、村人一人を犠牲にすると言い出した。
「村長も了承済みよ」
「そ、そんな……治療する方法は無いんですか!?」
「残念だけど、さっきも言った通り魔食が倒された事によって生まれた、未知の病気……治療法は一切無いんだ」
真緒が村人達を助ける為に魔食を倒したにも関わらず、結果的に村人一人を苦しめる事になってしまった。
「で、でも……それをどうして今更私に教えたんですか?」
「簡単さ。その感染した村人をあんたが殺すんだよ」
「…………えっ?」
またしても真緒は耳を疑った。アーメイデは、村を救う為に感染した村人を殺すのを真緒に殺らせると言うのだ。
「どうして…………」
「さっきも言っただろう。あんたには残忍性が足りないって……丁度良かったよ。これで感染した村人も勇者の役に立てるんだから、本望だろうね」
「本気で言っているんですか……本気でそんな事の為に、村人一人の命を弄ぶつもりですか…………?」
真緒は信じられなかった。今まで自分達の為に修行をつけてくれたアーメイデが、こんなにも恐ろしい事を口にするだなんて、とても信じられなかった。
「弄ぶだなんて人聞きが悪い。有効活用すると言って欲しいね。村人一人を殺す事で村は救われ、あんたの成長も促せる。こう言うのを“一石二鳥”って言うんだろ?」
「アーメイデさん……あなたは人として最低です……」
「そうかもしれない……だけど綺麗事を言っていられる程、世の中は甘くないんだよ」
真緒は俯き、両手に握り拳を作って怒りと悲しみに身を震わせていた。
「それで……どうするんだい?殺るのか、殺らないのか?」
「…………殺りたくありません……」
「…………そうかい、それなら仕方ない。それじゃあ予定通り、私が殺りに行くとするよ…………」
そう言いながらアーメイデは、村の方へと向かおうとする。
「…………何のつもりだい?」
しかし、その行く道を真緒がアーメイデに向かって剣を構えて、立ち塞がった。
「行かせません……!!」
「何バカな事をしているんだい。早く行かないと、取り返しがつかないんだよ」
「村人は殺させません……!!」
真緒は涙を流しながら、アーメイデに剣を構える。感情的になっている為か、呼吸が荒くなる。
「それはつまり……村を全滅させるって事かい?」
「違います!!村も全滅させません!!」
「寝ぼけた事を言ってんじゃないわよ。選択肢は二つ“感染した村人を殺して村を救う”か、“感染した村人を殺さず、村を全滅させる”この二つのどちらかしか選べないんだよ」
「私なら……両方救います!!」
「はぁ…………?」
アーメイデは、真緒が何を言っているのか訳が分からなかった。
「感染した村人には悪いですけど、感染が村に広がらない様に何処かへと隔離して、その間に治療法を見つけ出します!!」
「何を言うかと思えば……言っただろう、未知の病気なんだよ。そう簡単に見つかる訳が無いだろう」
「そうだとしても……私は誰かを犠牲にしてまで、誰かを救いたくはありません!!」
この言葉で真緒は、かつての自分を思い出していた。母親が命を落としてまで、娘である自分を救おうとした。しかしそれは心に大きな傷を残す結果となってしまった。そんな悲劇は二度と起こしたく無いと願う真緒は、アーメイデを必死に止めようとする。
「村人一人と、村人全員……どちらを助けるべきか明白だろう?」
「数なんか関係ありません!!私は両方救いたいだけです!!」
「我が儘だね……私としては、ここであんたを殺して先に進んだっていいんだよ。四天王調査なんて、他の奴に頼めばいいしね…………」
この瞬間、アーメイデの体から殺気が漏れ出る。その殺気は今までに出会った敵とは比べ物にならない程、背筋の凍る殺気だった。
「…………それでも!私は退きません!!私は自分自身の考えを貫き通します!!」
「そうかい…………それじゃあ……仕方ないね……」
アーメイデは真緒に向かって手を伸ばした。ゆっくりとした動き、あくびが出てしまう程遅い。しかし、恐怖が止まらなかった。ガクガクと足が震えだし、呼吸も段々と早さを増す。真緒は迫り来る痛みに耐える様に、深く目を瞑った。そして…………。
「……合格だよ…………」
「…………へっ?」
アーメイデは優しく真緒の頭を撫でた。先程の恐怖から想像もつかない程、優しく頭を撫でられた。
「こ、これって…………」
「言っただろう。手っ取り早いテストを受けて貰うって……今のやり取りがテストだったんだよ」
「ど、どういう事ですか!?」
「そもそも、村では未知の病気なんか発生していないんだよ。皆元気に働いているだろうさ」
「えっ…………えぇ!!?」
全く状況が飲み込めない真緒に、アーメイデが分かりやすく説明し始める。
「今回の修行で、真緒に知って欲しかったのは“自分の意思を貫く”事なんだよ」
「えっ……残忍性じゃないんですか?」
「当たり前だろ。残忍性なんて、修行でどうこう出来る物じゃないよ」
「そ、そんな…………」
真緒は腰が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。
「あんたは困っている、助けて欲しいと言われると何とか助け出そうと行動するけど、それは言い換えれば自分の意思では行動していない。助けて欲しいと言われたからその人を助けるんじゃ無くて、しっかりと自分の目で見て考えて自分の意思で行動して欲しかったんだよ」
八方美人。周りの人の言う事ばかりを叶えていたら、それは最早自分の意思では無く頼んだ人の意思とほぼ同じ事になってしまう。アーメイデは、そんな真緒を見かねて今回の出来事を仕掛けたのだ。
「それならそうと言って下さいよ…………」
「何を言っているんだい。私から言われて行動していたら、その時点で自分の意思で行動していないじゃないか。今回の修行は、自分で気づくか気づかないかが重要だったんだよ」
「そうですけど…………はぁー、何か……酷く老けた気がします……」
真緒は自分の頬を両手で撫でながら、溜め息を漏らした。
「まぁ、とにかく……修行は見事合格だよ。これからもビシバシ行くから覚悟しておくんだよ」
「ひぇー…………」
真緒は見事合格を果たしたが、これからの修行に怯えるのだった。
「はい、よろしくお願いします」
リーマ、フォルス、ハナコと続き最後の修行の相手は真緒だった。
「あんたの職業は言わずと知れた…………」
「勇者です…………ですけど、私は自分を勇者と思った事は一度もありません」
真緒は、あくまで自身を勇者と認めようとはしていなかった。それは謙遜、自分程度の存在が勇者という輝いた存在の筈が無いと、過小評価してしまっているのだ。
「あんたが何と言おうと職業は“勇者”、これは変える事の出来ない事実だよ」
「そう……ですね……」
いくら真緒が勇者では無いと公言しても、職業の名称は“勇者”と表記されてしまっている。
「まぁ、そんな話はどうでもいいんだ。今するべき事、それはあんたが魔王と渡り合える程度の実力に鍛え上げる事だよ」
「…………本当に魔王と渡り合える程度に、成長しなければいけませんか?やっぱり話し合いで解決すれば……」
「甘ったれた事を言ってんじゃないわよ」
ここまで来て、未だに弱気な発言をする真緒にアーメイデが強めな口調で声を掛ける。
「相手は魔王なのよ?他所から来た、それもかつて魔族を一度滅ぼした勇者とまともに会話をする訳が無いでしょ?」
「…………」
アーメイデに正論を叩き付けられて、黙り混んでしまう真緒。
「……あんたが、争いを好まないのは知っているよ。だけどね……世の中には、話し合いではどうにもならない事があるんだよ」
「分かっています……分かっていますけど……でも…………」
「…………」
真緒はどうしても、争いで物事を解決する行為を頑なに拒んだ。
「まぁ……今はそんな事より、あんたの修行の方が大切だからね。考え方については、また今度にしようか……」
「すみません…………」
真緒とアーメイデは気持ちを切り替えて、修行を再開する。
「さて……修行についてだけど……正直に言って、あんたのポテンシャルは他の三人とは比べ物にならない位に高いね。肉体的な運動神経や技のバリエーションも申し分無い」
「ありがとうございます」
突然ベタ褒めするアーメイデに、真緒は照れながらもお礼を述べた。
「只、ステータスの数値はまだまだ低いけど……これは他の三人と平行して上げて行けば、問題無いと思うよ。問題があるとすれば…………」
アーメイデは、少し言葉を溜めながら真緒に向けて話した。
「“心”かね……」
「“心”ですか…………?」
真緒は胸に手を当てながら、アーメイデの話に耳を傾ける。
「あんたはね……優し過ぎるんだよ……」
「はぁ…………?」
優しい事の何がいけないのか、いまいち理解出来ていない真緒。
「あんたはいつも敵味方関係無く、困っている人や助けを求めている人に対して、形振り構わず助けてしまっている」
「いけない事でしょうか?」
「いや、そんな事は無い。人助けは良い事だ…………でもね、それは自分の命を顧みず助ける程の事なのかい?」
「…………」
アーメイデが言う真緒が持つ唯一の欠点。それは、人助けに対して自分の命を危険に晒している事である。
「この前の魔食が良い例だ。村人達が危ないから倒しに行ったけど、結果的に仲間の一人が死にそうになった」
「!!ハナちゃん…………」
「人助けは立派だけどね……それで命を落としたら元も子も無いだろ……」
真緒は困っている人がいたら、放っておけない性格である。それはかつての情けなかった自分自身と重ね合わせてしまっているせいなのかもしれない。しかしその人助けで、自分や大切な仲間が命を落としてしまったら本末転倒だ。
「あんたに今必要なのは……“残忍性”」
「それはつまり……困っている人を見かけても見捨てろって事ですか?」
「あぁ、簡単に言えばそうだね。あっちこっちで人助けしてたら、体がいくつあっても足りないよ。人は時に、苦渋の決断を下さなければいけないのさ…………」
「…………でも……そうだとしても私は……」
真緒にとって、人助けという行為は言わば自身の存在意義を確かめる為の物だった。昔の自分に戻らない様に、積極的に助ける事で私には存在すべき理由があると、心を安心させているのだ。しかしその事に真緒は気づいておらず、無意識にやっている。
「…………はぁー、それなら仕方ないね……あんたには手っ取り早いテストを受けて貰う」
「テスト…………?」
突然テストを受けて貰うと言われた真緒は首を傾げた。
「実はね、魔食が倒された事によって未知の病気が村で発生しているんだ」
「えぇ!?ほ、本当ですか!?」
「あぁ、だが幸いにも感染者は一人だけだ」
それを聞いて真緒はホッとしていた。感染という事は、まだ誰も死者は出ていないという事だ。
「だが、それもいつ他の村人に感染するか分からない。そこで、悲しい事だけどその人には村の為に死んで貰う事が決定しているの」
「…………えっ?」
真緒は一瞬耳を疑った。村を救う為に、村人一人を犠牲にすると言い出した。
「村長も了承済みよ」
「そ、そんな……治療する方法は無いんですか!?」
「残念だけど、さっきも言った通り魔食が倒された事によって生まれた、未知の病気……治療法は一切無いんだ」
真緒が村人達を助ける為に魔食を倒したにも関わらず、結果的に村人一人を苦しめる事になってしまった。
「で、でも……それをどうして今更私に教えたんですか?」
「簡単さ。その感染した村人をあんたが殺すんだよ」
「…………えっ?」
またしても真緒は耳を疑った。アーメイデは、村を救う為に感染した村人を殺すのを真緒に殺らせると言うのだ。
「どうして…………」
「さっきも言っただろう。あんたには残忍性が足りないって……丁度良かったよ。これで感染した村人も勇者の役に立てるんだから、本望だろうね」
「本気で言っているんですか……本気でそんな事の為に、村人一人の命を弄ぶつもりですか…………?」
真緒は信じられなかった。今まで自分達の為に修行をつけてくれたアーメイデが、こんなにも恐ろしい事を口にするだなんて、とても信じられなかった。
「弄ぶだなんて人聞きが悪い。有効活用すると言って欲しいね。村人一人を殺す事で村は救われ、あんたの成長も促せる。こう言うのを“一石二鳥”って言うんだろ?」
「アーメイデさん……あなたは人として最低です……」
「そうかもしれない……だけど綺麗事を言っていられる程、世の中は甘くないんだよ」
真緒は俯き、両手に握り拳を作って怒りと悲しみに身を震わせていた。
「それで……どうするんだい?殺るのか、殺らないのか?」
「…………殺りたくありません……」
「…………そうかい、それなら仕方ない。それじゃあ予定通り、私が殺りに行くとするよ…………」
そう言いながらアーメイデは、村の方へと向かおうとする。
「…………何のつもりだい?」
しかし、その行く道を真緒がアーメイデに向かって剣を構えて、立ち塞がった。
「行かせません……!!」
「何バカな事をしているんだい。早く行かないと、取り返しがつかないんだよ」
「村人は殺させません……!!」
真緒は涙を流しながら、アーメイデに剣を構える。感情的になっている為か、呼吸が荒くなる。
「それはつまり……村を全滅させるって事かい?」
「違います!!村も全滅させません!!」
「寝ぼけた事を言ってんじゃないわよ。選択肢は二つ“感染した村人を殺して村を救う”か、“感染した村人を殺さず、村を全滅させる”この二つのどちらかしか選べないんだよ」
「私なら……両方救います!!」
「はぁ…………?」
アーメイデは、真緒が何を言っているのか訳が分からなかった。
「感染した村人には悪いですけど、感染が村に広がらない様に何処かへと隔離して、その間に治療法を見つけ出します!!」
「何を言うかと思えば……言っただろう、未知の病気なんだよ。そう簡単に見つかる訳が無いだろう」
「そうだとしても……私は誰かを犠牲にしてまで、誰かを救いたくはありません!!」
この言葉で真緒は、かつての自分を思い出していた。母親が命を落としてまで、娘である自分を救おうとした。しかしそれは心に大きな傷を残す結果となってしまった。そんな悲劇は二度と起こしたく無いと願う真緒は、アーメイデを必死に止めようとする。
「村人一人と、村人全員……どちらを助けるべきか明白だろう?」
「数なんか関係ありません!!私は両方救いたいだけです!!」
「我が儘だね……私としては、ここであんたを殺して先に進んだっていいんだよ。四天王調査なんて、他の奴に頼めばいいしね…………」
この瞬間、アーメイデの体から殺気が漏れ出る。その殺気は今までに出会った敵とは比べ物にならない程、背筋の凍る殺気だった。
「…………それでも!私は退きません!!私は自分自身の考えを貫き通します!!」
「そうかい…………それじゃあ……仕方ないね……」
アーメイデは真緒に向かって手を伸ばした。ゆっくりとした動き、あくびが出てしまう程遅い。しかし、恐怖が止まらなかった。ガクガクと足が震えだし、呼吸も段々と早さを増す。真緒は迫り来る痛みに耐える様に、深く目を瞑った。そして…………。
「……合格だよ…………」
「…………へっ?」
アーメイデは優しく真緒の頭を撫でた。先程の恐怖から想像もつかない程、優しく頭を撫でられた。
「こ、これって…………」
「言っただろう。手っ取り早いテストを受けて貰うって……今のやり取りがテストだったんだよ」
「ど、どういう事ですか!?」
「そもそも、村では未知の病気なんか発生していないんだよ。皆元気に働いているだろうさ」
「えっ…………えぇ!!?」
全く状況が飲み込めない真緒に、アーメイデが分かりやすく説明し始める。
「今回の修行で、真緒に知って欲しかったのは“自分の意思を貫く”事なんだよ」
「えっ……残忍性じゃないんですか?」
「当たり前だろ。残忍性なんて、修行でどうこう出来る物じゃないよ」
「そ、そんな…………」
真緒は腰が抜けたのか、その場に座り込んでしまった。
「あんたは困っている、助けて欲しいと言われると何とか助け出そうと行動するけど、それは言い換えれば自分の意思では行動していない。助けて欲しいと言われたからその人を助けるんじゃ無くて、しっかりと自分の目で見て考えて自分の意思で行動して欲しかったんだよ」
八方美人。周りの人の言う事ばかりを叶えていたら、それは最早自分の意思では無く頼んだ人の意思とほぼ同じ事になってしまう。アーメイデは、そんな真緒を見かねて今回の出来事を仕掛けたのだ。
「それならそうと言って下さいよ…………」
「何を言っているんだい。私から言われて行動していたら、その時点で自分の意思で行動していないじゃないか。今回の修行は、自分で気づくか気づかないかが重要だったんだよ」
「そうですけど…………はぁー、何か……酷く老けた気がします……」
真緒は自分の頬を両手で撫でながら、溜め息を漏らした。
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