笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 魔王と勇者

人を呪わば穴二つ

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 「サ、サタニア様……今、何と……?」



 サタニアの言葉に、思わずクロウトは聞き返してしまった。



 「聞こえなかった?勇者を殺すんだよ。エジタスが死んだのは全て勇者のせいだ。だからエジタスの敵を打つんだ」



 「わ、分かりました……それではここにいる四天王の誰かを向かわせましょう。いくら勇者と言えども、満身創痍の体では勝つのは不可能でしょう」



 クロウトは、サタニアに若干の違和感を感じたが、気のせいだと判断して四天王の一人を向かわせ様とする。



 「いや、勇者は僕自らが片付けるよ」



 「「「「!!!」」」」



 しかし、ここで魔王であるサタニア自らが勇者である真緒を片付けると公言した。



 「な、なりません魔王様!!」



 そんな魔王の言葉にシーラが、即座に否定した。



 「魔王様自らが向かわれては、私供のメンツが立ちません!ここは、私に任せて下さい!必ずや勇者を始末して…………!!?」



 主であるサタニアを動かす訳にはいかない。部下である自分達が動くべきだと考え、シーラは自分が勇者を始末すると提案するが、それは途中で遮られてしまった。



 「……二度同じ言葉を言わせないでよ……」



 サタニアの掌から放出された魔法がシーラの頬をかすり、床に着弾したのだ。シーラの頬からは血が流れ、着弾した床は黒く変色していた。



 「ねぇ、シーラ…………僕の言う事が聞けないんだったら……ここで殺すよ?」



 「!!!」



 サタニアは魔王である為、かなりの実力があると理解はしていた。しかしそれでもまだ子供、総合的には自分が上だと思っていた。だが、この時その考えがどれだけ浅はかな物だったのか、シーラは身を持って味わった。



 「もぉー、魔王ちゃんったらせっかちねー」



 「ア、アルシアさん…………」



 サタニアの威圧に身動きが取れなかったシーラだったが、アルシアが助け船を出してくれた。



 「何……アルシアまで僕の言う事が聞けないの?」



 「いいえ、あたしは寧ろ勇者は魔王ちゃんが片付けるべきだと思っているわ」



 「アルシアさん!正気ですか!?」



 サタニアの言葉を肯定するアルシアに、シーラが問い掛ける。



 「考えても見なさい、満身創痍とは言え相手は勇者……かつて初代魔王を討ち滅ぼした存在。そんな存在と対等に渡り合えるのは、魔王ちゃん以外いないでしょ?」



 「そ、それは……そうかもしれませんが…………」



 「だけど……今すぐ勇者と戦うのは得策じゃないわ」



 「…………どう言う意味?」



 サタニアの威圧は未だに収まらない。一言でも間違えば、アルシアでさえも消し去る程の威圧だった。



 「理由は、勇者の周りにいた三人の仲間にあるわ」



 アルシアは、勇者である真緒にでは無くその周りにいたフォルス、ハナコ、リーマの三人に目をつけた。



 「今すぐ勇者を片付けようと向かえば、実質四対一の戦いになってしまうわ」



 「そんなの、まとめて僕が片付ける」



 「確かに、魔王ちゃんならそれも可能かもしれない。だけど、そうなると勇者は仲間同士で協力し合って、魔王ちゃんと真剣に勝負をしなくなる。そこで、あたし達が勇者の仲間を分散させて、勇者だけが魔王ちゃんの所まで来る様に仕向けるわ。魔王ちゃんだって、本気の勇者を片付けたいでしょ?」



 「…………」



 周囲に緊張が走る。下手を打てば、アルシアの命はここで消えて無くなってしまう。



 「…………分かった……そうするよ……」



 「「「「!!!」」」」



 全員が安堵した。何とか、自分達も関わる事の出来る形を作れた。



 「それじゃあ早速、勇者達を分散させるわね。いくわよ、ゴルガちゃん、シーラちゃん」



 「マカセロ…………」



 「あ、ああ…………」



 そう言うとアルシアは、ゴルガとシーラを連れて玉座の間を後にした。



 「あ、あの……ありがとうございますアルシアさん」



 「いいのよ、気にしないで。今の魔王ちゃんを刺激しない方が良いわ。あたし達は勇者の仲間を分散させる事に集中しましょう」



 「はい!」







***







 「マ、マオ……いったいどうしたんだ?」



 「マオぢゃん…………」



 「マオさん…………」



 時を同じくして、三人も真緒の言葉に耳を疑っていた。



 「リーマ……ポーションを頂戴」



 「えっ……?」



 「早く!!!」



 「は、はい!!」



 真緒の怒鳴り声に、リーマは慌ててポーションを真緒に手渡した。



 「…………」



 真緒は、手渡されたポーションを一気に飲み干した。すると瞬く間に、傷ついた体が回復した。



 「ポーションは、残り何本だ?」



 「えっと……九本です」



 「四人で分けるとすると…………」



 「私はいらない。三本ずつ、三人で分けといて」



 「しょ、正気なのか!?」



 残りのポーションをどう分けようか悩んでいると、真緒は自分の分はいらないと公言する。



 「私は魔王を殺しに行く」



 「待て。先走る気持ちも分かるが、ここは一旦出直して作戦を練ってからの方が良い」



 「そんな……そんな悠長な事、やってられないんですよ!!魔王のせいで師匠が死んでしまったんですよ!!私は、師匠の敵を打たなければならないんです!!」



 そう言いながら、真緒が一人で先に進もうとするとフォルスが立ち塞がる。



 「フォルスさん……どういうつもりですか?」



 「今のお前は憎しみに囚われている。そんな、冷静な判断も出来ないお前を行かせる訳には行かない」



 「マオぢゃん、考え直じでぐれだぁ」



 「マオさん、辛いのは分かりますが……ここは一旦出直しましょう……」



 「そっか……皆私の邪魔をするんだ…………」



 すると突然真緒の姿が消え、フォルスの背後に現れた。



 「な、何!?」



 「ごれっで……まざが……転移魔法!?」



 「ち、違います!魔法を唱えている仕草はありませんでした!恐らく身体的能力が高い為、肉眼では捉えられ無かったんだと思います!!」



 「ここまで……成長していたのか……」



 憎しみは人を強くする。魔王に対する憎しみが、真緒を肉体的にも精神的にも強くしたのだ。



 「次私の邪魔をしたら……殺しますよ?」



 「「「!!!」」」



 それは真緒とは思えない発言だった。いつもの優しく暖かみのある言葉とは正反対、冷たく優しさの欠片も無い言葉だった。



 「皆、ごめん」



 「ま、待つんだマオ!!」



 フォルスが呼び掛けるも真緒の耳には届いておらず、そのまま部屋を飛び出してしまった。



 「くそっ!!急いで追いかけるぞ!!」



 「わ、分がっだだぁ!!」



 「は、はい!!」



 その後を三人は、急いで追い掛けて行く。







***







 「マオ!!止まるんだ!!」



 「マオぢゃん!!」



 「止まって下さい!!」



 魔王城の廊下。三人が止まる様に呼び掛けるも、一向に止まろうとしない真緒。



 「しかし……ここが噂の魔王城か……イメージと全然違うな……」



 「凄ぐ綺麗だぁ……」



 「あっ!!真緒さんが部屋に入りましたよ!!」



 魔王城の内装に驚いていると、真緒が一番奥の部屋に入って行った。



 「俺達も入るぞ!!」



 「「はい!!」」



 三人が真緒の後に続き、部屋の中へと入った。中はエジタスと戦った部屋と同じ様に何も置かれていない広い空間だった。三人が入ると同時に、真緒はその部屋から出ようとしていた。



 「待つんだマオ!!」



 三人が、真緒の後を追い掛け様とすると突如、壁を突き破って巨大なゴーレムが行く手を拒んだ。



 「な、何だ!!?」



 「オ、オラよりも大ぎいだぁ!!」



 「こんな巨大なゴーレム、見た事がありません!!」



 「オレハ、マオウグンシテンノウガヒトリ、ゴルガ…………ココカラサキハイカセナイ」



 魔王軍四天王の一人、破壊兵器ゴルガが三人の前に立ち塞がった。



 「くそっ!!こっちは急いでいるのに…………」



 「…………フォルスさん、ハナコさん、先に行って下さい……このゴーレムは私が相手をします……」



 「リーマ、本気なのか?」



 「…………行って下さい」



 「…………分かった、ハナコ行くぞ!」



 「わ、分がっだだぁ!」



 リーマの言葉を信じて、フォルスとハナコは真緒の後を追い掛ける。



 「イカセナイ!!」



 「“ウォーターキャノン”!!」



 「!!?」



 ゴルガが、先に行こうするフォルスとハナコに手を掛けようとすると、リーマの魔法に邪魔された。



 「あなたの相手は私ですよ!!」



 「マオウサマノタメ、キサマヲハイジョスル!!」



 魔法使いリーマ VS 破壊兵器ゴルガ







***







 「くそっ!見失ってしまった!!」



 真緒を追い掛けて来たフォルスとハナコだったが、途中で見失ってしまった。



 「マオぢゃん、早ずぎるだよぉ……」



 「取り敢えず……手当たり次第に部屋を捜すぞ」



 「分がっだだぁ!」



 フォルスとハナコは、手当たり次第に部屋を探し回った。その中で一番奥の部屋に入ると、そこには一人の人物が立っていた。



 「やっと来たな……」



 「お、お前は……!!」



 それはフォルス達が一度会った事のある唯一の四天王、シーラだった。



 「あんた達が来るのを待っていたよ。勇者なら、この先に行ったよ」



 「マオが!?」



 それを聞いたフォルスとハナコは、真緒の後を追い掛け様とするがシーラに止められてしまった。



 「おっと待った!この先を通りたければ、どちらか一人私と戦って貰おうか?」



 「な、何だと…………分かった。俺が戦う」



 「フォルスざん!?」



 フォルスは少し考えると自分が戦うと言い、ハナコの背中を押して先に行かせようとする。



 「ここは俺に任せて、先に行け。お前の鼻ならマオの臭いを辿って追い掛けられるだろう」



 「フォルスざん…………分がっだだぁ!!オラ、必ずマオぢゃんを連れで戻っで来るだぁ!!」



 そう言うとハナコは、真緒の後を追い掛けて行くのだった。



 「何だ、てっきり行く手を遮ると思ったんだが、あっさり通してくれるんだな……」



 「あたしは約束を守るからね。それじゃあ始めようか、実はさっきからあんたと戦いたくてウズウズしていたんだ!!」



 「そうか、それは悪かったな。思う存分、戦おうじゃないか!!」



 空の支配者フォルス VS 黒白のシーラ







***







 「マオぢゃん……何処に行っだだぁ……?」



 真緒の後を追い掛けて来たハナコだったが、未だに見つける事が出来ずにいた。



 「ぞうだ……臭い……フォルスざんに言われだ通り、臭いを辿れば…………」



 ハナコは鼻をひくひくと動かして、周囲の臭いを確かめる。



 「…………あっぢだぁ!!」



 真緒の臭いを嗅ぎ取ったのか、ハナコは臭いのする部屋の中へと入った。



 「随分と早かったわね」



 「!?」



 そこにいたのは、オネェ言葉を使う性別不明のアルシアだった。



 「だ、誰だぁ?」



 「あら、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。あたしは魔王軍四天王が一人、両刀のアルシアよ。よろしくね」



 「四天王!!」



 四天王と聞いて、ハナコは咄嗟に身構える。



 「あらあら、そんなに怖がらないで、あなたが捜している勇者ならこの先に行ったわよ」



 「本当だがぁ!?」



 それを聞いたハナコは、急いで真緒の後を追い掛け様とするがアルシアが立ち塞がった。



 「だけどその前に、あたしと戦って貰うわよ」



 「!!!」



 立ち塞がるアルシアに、ハナコは再び身構える。



 「うふふ、その気持ちの切り替えの早さ嫌いじゃないわよ。さぁ、始めましょうか!!」



 「オラは、マオぢゃんを連れ戻ざないどいげないんだぁ!!」



 武闘家ハナコ VS 両刀のアルシア
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