笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 魔王と勇者

ハナコ VS アルシア(前編)

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 「だぁああああ!!!」



 ハナコは現在、四天王の一人であるアルシアと戦いを繰り広げていた。



 「あら、上手よー。あなた、中々に素早いわね」



 しかし、アルシア本人はハナコを赤子の様に扱っていた。



 「ごれで、どうだぁあああ!!!」



 ハナコは自身の爪を突き出し、アルシアに攻撃を仕掛ける。



 「おっとっと……今のは危なかったわ」



 そう言うアルシアだが、実際は余裕でハナコの攻撃を回避していた。



 「ぞれなら……ごうだぁあああ!!!」



 すると今度は、両腕を交互に突き出して張り手の要領で、アルシアに攻撃を仕掛ける。



 「こ、これは……凄いわね……」



 そう言うアルシアだが、またしても余裕でハナコの攻撃を回避していた。するとハナコは、途中で攻撃するのを止めた。



 「あら、どうしたの?諦めちゃったの?」



 突然攻撃を止めたハナコにアルシアが問い掛けると、ハナコは俯きながら大声をあげた。



 「…………いい加減にずるだぁ!!」



 「??」



 「ざっぎがら、攻撃ぜずに避げるばかり……もっど真面目に戦うだぁ!!」



 ハナコは我慢なら無かった。先程から発せられる、アルシアのわざとらしい言葉。こちらから攻撃を仕掛けているのに、全くと言っていい程反撃して来ない。そんなアルシアのふざけた行動に、ハナコは我慢なら無かったのだ。



 「私は至って真面目よ?」



 「なら、どうじで攻撃じで来ないだぁ!!?」



 「そうねぇ…………」



 ハナコの叫びに、アルシアはしばらく黙り込む。そして、ゆっくりと口を開いた。



 「あるとすれば……“強者は弱者を相手にしない”……と、言った所かしら?」



 「!!!」



 強者理論。強者だからこそ認められる絶対的な理論。ハナコはアルシアの言葉に戸惑いの表情を浮かべる。



 「正直ね……あたし自身、あなた達とは戦いたくないのよ」



 「ど、どう言う事だぁ……?」



 予想だにしないアルシアの言葉に、ハナコは理解を追い付かせるのがやっとだった。



 「エジタスちゃんから、あなた達の話は聞いていたわ。エジタスちゃんったら、楽しそうにあなた達の事を話すんですもの……あなた達が悪い子達では無いとすぐに分かったわ……でも、結果エジタスちゃんは自爆。魔王ちゃん含めて、あたし達は深い悲しみに包まれたわ」



 「ぞれは、オラ達も同じ気持ちだぁ…………」



 「そうよね……それは同じ気持ちだった。人は失って初めて、その大切さに気づく……よく出来た言葉よね……魔王ちゃんは、そんな悲しみを怒りに変える事で行動している……でも、少なくともあたしは違う。エジタスちゃんは四天王として、職務を全うして亡くなった。だから、あなた達が原因でエジタスちゃんが死んだとは思っていないわ……」



 「なら……どうじで……オラど戦うだぁ……?」



 サタニアはともかく、アルシア自体は真緒達に対して、そこまで怒りを感じていなかった。それなのに、何故こうして戦っているのか、ハナコは理解できなかった。



 「…………言うなれば、やるせない気持ちがあるから……かしらね?」



 「やるぜない……気持ぢ……?」



 「エジタスちゃんが死んだのは、あなた達のせいでは無い……だけどそれで“はい、そうですか”って割り切れる程、あたしの心は強くないの……だからそんな思いを払拭する意味も含めて、あなたと戦うのかもしれないわね……」



 「…………」



 アルシアの言い分にも一理ある。一見すると、真緒を追い掛ける為に戦っているハナコ達だが、もしかしたら心の何処かでアルシアと同じ様に、やるせない気持ちがあるのかもしれない。



 「そう言う訳でね。あたしは、あなたを本気で倒す気は無い…………!!?」



 「スキル“インパクト・ベア”!!!」



 アルシアがハナコと、本気で戦う気は無い事を言おうとすると、ハナコがアルシアとの間合いを一瞬で詰めて、隙だらけのアルシア目掛けてスキルを放った。



 「うごっ…………!!!」



 強烈な一撃をまともに受けてしまったアルシアは、勢い良く吹き飛ばされた。



 「……ど、どうして……今の話を聞いて尚、戦い続けようとするの……?」



 しかし、アルシアは痛がる様子も見せず普通に立ち上がった。どちらかと言うと痛さよりも話を聞いて尚、戦おうとするハナコに対する疑問の方が大きかった。



 「オラ……難じい事はよぐ分がらないだぁ……でも、やるぜない気持ぢをぞう簡単に割り切るのは…………只の逃げだぁ!!」



 「いや……だからね、こうしてあなたと戦う事でやるせない気持ちを少しでも和らげようと…………」



 「ぞれなら、全力で戦っで欲じいだぁ!!!」



 言葉が足りなかったのかと思い、アルシアが分かりやすく説明しようとするが、ハナコが言葉を遮る。



 「オラが……オラが弱いがら、遠慮じでいるんだがぁ!?…………オラを……ぞんなやるぜない気持ぢの捌げ口に、じないで欲じいだぁ!!」



 ハナコは半端なのが嫌いだった。アルシアの様に、本当は戦いたくは無いけれど自身の気持ちを抑える為に、殺さない程度に戦うのが心底嫌いだった。



 「…………あたしはいつの間にか、性別だけじゃなく……心まで女々しくなってしまったんだね……長く生きるのも考えものだね……エジタスちゃんと出会って、笑う回数が増えたけど……同時に自身の気持ちを圧し殺していたのかもしれない…………」



 アルシアはハナコの言葉によって、心まで女々しくなっていたのだと気づかされた。



 「ありがとう……あんたのお陰で大切な事を思い出せたよ……やるせない気持ちがあるなら、それを全力でぶつけないとね…………それじゃあ、あんたの望み通り……本気で相手させて貰うよ…………」



 「!!?」



 空気が変わった。比喩表現では無い。本当に空気が変わったのだ。先程よりも熱く、喉に張り付く様なとても嫌な空気に変わった。



 「ご、ごれが……四天王の力…………!?」



 ハナコが驚いていると、今の今まで目の前にいたアルシアの姿が消え、一瞬でハナコの背後に現れた。



 「無駄話をしている場合か?」



 「がぁあああ!!?」



 何が起こったのか、訳が分からなかった。アルシアが背後に現れたと気が付いた瞬間、ハナコの体が一瞬で傷だらけにされていた。



 「“お前”が“俺”を本気にさせてくれた…………感謝の意を込めて、完膚無きまでに叩きのめしてやるよ」



 「!!!」



 そこには“修羅”がいた。二本の刀を握り締め、その口から発せられる言葉の一言、一言には濃厚な殺意が込められていた。ハナコの背筋に冷たい何かが駆け抜ける。



 「後悔しても……もう遅いぜ?」



 「後悔なんがじない……ごれはオラが自分で望んだ事…………今度ごぞ、全力の勝負が出来るだぁ!!!」



 目覚めさせてはいけない者を、目覚めさてしまった。しかし、そこに後悔など無かった。気合いを入れ直したハナコは、アルシアと全力の戦いを繰り広げる事となった。
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