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第十章 冒険編 魔王と勇者
フォルス VS シーラ(後編)
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かつてこの世界には、圧倒的な力を持つドラゴンが二頭存在していた。一頭は白銀のドラゴン、もう一頭は漆黒のドラゴン。どちらのドラゴンにも、名前は存在しない。名前を付ける事すらおこがましいとされていたのだ。この二頭のドラゴンが存在していた事で、世界の均衡は保たれていた。しかしある時、漆黒のドラゴンが行方を眩ました。世界の均衡を保っていたドラゴンの片方が突然いなくなった事で、白銀のドラゴンは世界を支配しようと動き出した。だがその野望も、初代勇者によって打ち滅ばされた。シーラは、そんな白銀のドラゴンの遠い子孫だった。
『さぁ、始めようか』
「こんなの……いったいどうしろってんだよ……」
ドラゴンと化したシーラの巨大な手が、フォルス目掛けて襲い掛かる。
「くそっ!」
フォルスはシーラの攻撃を避ける為に、空へと舞い上がった。
『無駄だ!!』
「な、何!?」
しかし、そんなフォルスの行動を予期していたのか、シーラが尻尾でフォルスを叩き付けた。
「がぁあああ!!!」
尻尾で叩き付けられたフォルスは、空中から地上へと強制的に落下した。
『諦めろ、この姿になった私は誰にも負けない。勝てる人がいるとすれば、それは魔王様だけだ』
シーラがサタニアに出会った当初、世界を支配しようとした白銀のドラゴンの子孫という事から、全ての種族から目の敵にされていた。また世界を支配しようと、企んでいるのではないかと……勿論、シーラにはそんな気は無かった。しかし、それを公言したところで誰も信じてはくれなかった。そんな中、サタニアだけがシーラの言葉を信じてくれたのだ。
“そっか、そうだよね。だってそんなにも綺麗な瞳をしているんだもん。悪い事をする筈が無いもんね”
純粋無垢。お世辞とも聞こえるサタニアの言葉に、シーラは心打たれた。自分を認めてくれるこの人に一生付いて行こう。そう決意を固めて、魔王軍に入隊した。
『魔王様の敵は私の敵。ここで確実に仕留めてやる!!』
「俺もな……マオの敵は俺の敵だ……お前が行く手を遮るのなら、ここで倒すまでだ!!」
満身創痍の体にムチを打ち、何とか立ち上がったフォルス。すると何を思ったか、弓矢を持ちながらシーラに向けて走り出した。
『血迷ったか!!空を捨てた鳥人に、勝ち目なんてありはしないよ!!』
シーラは両腕を交互に使い、走って来るフォルスを攻撃する。
「俺はな……三十年以上、地上で暮らしていたんだよ!!」
シーラの両腕を、器用に避けて行くフォルス。着いた場所は、シーラの顎の真下だった。
「狙うは“逆鱗”……いくら鱗の硬いドラゴンでも、逆鱗になら突き刺さるだろ!!」
フォルスは、かつてのドラゴンと同じ様に顎の下にある逆鱗を狙って、矢を放った。
「行けーーー!!!」
『……私を普通のドラゴンと一緒にされては困るね……』
フォルスが放った矢はシーラの逆鱗に当たったが、甲高い音を立てて弾かれてしまった。
「な、何だと!!?」
『私の鱗はね、他のドラゴンよりも数倍硬いのよ。それは弱点である逆鱗も例外では無い。大抵の武器なら、弾くのは容易だよ』
「そ、そんな…………」
絶望。希望を胸に挑んだ結果がこれだった。フォルスにとてつもない喪失感がのしかかる。
「ま、まだ……まだ負けてねぇ……」
フォルスは空へと舞い上がり、シーラ目掛けて矢を構える。
「“ウインド”」
フォルスの矢に風がまとわりつく……強い力に、カタカタと震える弓矢をしっかりと指で押さえる。
「例え……他のドラゴンよりも鱗が硬いとしても、この攻撃なら貫ける筈だ!!」
『やってみろよ?』
「!!…………貫け“ブースト”!!!」
フォルスから放たれた矢は、途中から風の力によって肉眼では捉えきれない速度となり、シーラ目掛けて飛んで行く。
『ゴォオオオオオ!!!』
しかしシーラは、飛んで来る矢に対して大きく口を開き、口から火を吐いた。肉眼で捉えられない速度となったと言っても、所詮は木で出来た矢。シーラが吐いた火によって跡形も無く、消し炭となった。
「そんな……あり得ない……こんな生物が本当に存在していいのか?」
『あぁ、存在していいんだよ。世の中には私以上の生き物が沢山いるんだからな。ここで言えるのは只一つ、私はお前にとって相性最悪な存在って事だけだ』
そう言うとシーラは巨大な手で、無慈悲な現実に苦しんでいるフォルスを叩き落とした。
「がはぁ!!?」
床に叩き付けられたフォルス。その威力は、床にひびが入った事で見て取れた。
『終わりだ。せめてもの情けだ、苦しまずに殺してやるよ…………』
「…………」
するとフォルスは、シーラの攻撃よりも早く空へと舞い上がった。
『諦めが悪い男だね……無駄だってのが分からないのか?』
「…………だ」
『ん?』
「……嫌だ……嫌だ……死にたくない……死にたくない!!死にたくないよー!!!」
フォルスは精神が錯乱してしまったのか、奇声を発しながら矢をめちゃくちゃに放ちまくる。
「あああああ!!!」
『生にしがみつくとは……哀れな男だね…………』
しかし狙って放っていない為か、フォルスの矢は一本もシーラに当たる事無く、床に突き刺さりひびが入る。
「あああああ!!!…………あ、あれ?も、もう矢が……矢が無い!?」
『馬鹿な男だね……残りの矢の本数を考えてから放つのが、アーチャーとしての常識だろ…………しかし、まさか全部外すとは……精神が錯乱するとここまで性能が落ちるだなんて、情けないね』
「あ……ああ……」
『興が醒めた…………死ね』
シーラは、精神が錯乱したフォルスに巨大な腕を容赦なく叩き付けた。
「がっ…………!!!」
勢い良く床に叩き付けられたフォルス。その威力は、床にひびが入った事で見て取れた。
『お前の負けだ…………』
「…………あぁ、そうだな。だが、只負ける訳にはいかない……」
『お、お前!?精神が錯乱した筈じゃ…………』
フォルスがいつも通りの口調に戻り、シーラが戸惑いの表情を浮かべていたその時、床全体に大きくひびが入った。
『!!!』
「へ……へへ……上手くいったぜ……」
『ま、まさかお前……最初からこれを狙って、わざと錯乱した振りを…………!!?』
「そんなデカイ図体で、部屋の中を暴れ回るのはアホだぜ?」
床のひびは、次第に大きくなっていく。フォルスが矢で付けたひび、シーラが暴れて付けたひび。今までの攻撃が床に蓄積され、床全体が支えられなくなってしまった。
『き、貴様ーーー!!!』
「……俺は負けるが、お前も負けるんだ……道連れだよ……」
そして床は脆く崩れ去り、フォルスとシーラは下へと落下していく。
「悪いなマオ…………そっちに向かうのは……しばらく時間が掛かりそうだ…………」
そう呟きながら、フォルスはシーラと供に落下していくのだった。
空の支配者フォルス VS 黒白のシーラ
引き分け
『さぁ、始めようか』
「こんなの……いったいどうしろってんだよ……」
ドラゴンと化したシーラの巨大な手が、フォルス目掛けて襲い掛かる。
「くそっ!」
フォルスはシーラの攻撃を避ける為に、空へと舞い上がった。
『無駄だ!!』
「な、何!?」
しかし、そんなフォルスの行動を予期していたのか、シーラが尻尾でフォルスを叩き付けた。
「がぁあああ!!!」
尻尾で叩き付けられたフォルスは、空中から地上へと強制的に落下した。
『諦めろ、この姿になった私は誰にも負けない。勝てる人がいるとすれば、それは魔王様だけだ』
シーラがサタニアに出会った当初、世界を支配しようとした白銀のドラゴンの子孫という事から、全ての種族から目の敵にされていた。また世界を支配しようと、企んでいるのではないかと……勿論、シーラにはそんな気は無かった。しかし、それを公言したところで誰も信じてはくれなかった。そんな中、サタニアだけがシーラの言葉を信じてくれたのだ。
“そっか、そうだよね。だってそんなにも綺麗な瞳をしているんだもん。悪い事をする筈が無いもんね”
純粋無垢。お世辞とも聞こえるサタニアの言葉に、シーラは心打たれた。自分を認めてくれるこの人に一生付いて行こう。そう決意を固めて、魔王軍に入隊した。
『魔王様の敵は私の敵。ここで確実に仕留めてやる!!』
「俺もな……マオの敵は俺の敵だ……お前が行く手を遮るのなら、ここで倒すまでだ!!」
満身創痍の体にムチを打ち、何とか立ち上がったフォルス。すると何を思ったか、弓矢を持ちながらシーラに向けて走り出した。
『血迷ったか!!空を捨てた鳥人に、勝ち目なんてありはしないよ!!』
シーラは両腕を交互に使い、走って来るフォルスを攻撃する。
「俺はな……三十年以上、地上で暮らしていたんだよ!!」
シーラの両腕を、器用に避けて行くフォルス。着いた場所は、シーラの顎の真下だった。
「狙うは“逆鱗”……いくら鱗の硬いドラゴンでも、逆鱗になら突き刺さるだろ!!」
フォルスは、かつてのドラゴンと同じ様に顎の下にある逆鱗を狙って、矢を放った。
「行けーーー!!!」
『……私を普通のドラゴンと一緒にされては困るね……』
フォルスが放った矢はシーラの逆鱗に当たったが、甲高い音を立てて弾かれてしまった。
「な、何だと!!?」
『私の鱗はね、他のドラゴンよりも数倍硬いのよ。それは弱点である逆鱗も例外では無い。大抵の武器なら、弾くのは容易だよ』
「そ、そんな…………」
絶望。希望を胸に挑んだ結果がこれだった。フォルスにとてつもない喪失感がのしかかる。
「ま、まだ……まだ負けてねぇ……」
フォルスは空へと舞い上がり、シーラ目掛けて矢を構える。
「“ウインド”」
フォルスの矢に風がまとわりつく……強い力に、カタカタと震える弓矢をしっかりと指で押さえる。
「例え……他のドラゴンよりも鱗が硬いとしても、この攻撃なら貫ける筈だ!!」
『やってみろよ?』
「!!…………貫け“ブースト”!!!」
フォルスから放たれた矢は、途中から風の力によって肉眼では捉えきれない速度となり、シーラ目掛けて飛んで行く。
『ゴォオオオオオ!!!』
しかしシーラは、飛んで来る矢に対して大きく口を開き、口から火を吐いた。肉眼で捉えられない速度となったと言っても、所詮は木で出来た矢。シーラが吐いた火によって跡形も無く、消し炭となった。
「そんな……あり得ない……こんな生物が本当に存在していいのか?」
『あぁ、存在していいんだよ。世の中には私以上の生き物が沢山いるんだからな。ここで言えるのは只一つ、私はお前にとって相性最悪な存在って事だけだ』
そう言うとシーラは巨大な手で、無慈悲な現実に苦しんでいるフォルスを叩き落とした。
「がはぁ!!?」
床に叩き付けられたフォルス。その威力は、床にひびが入った事で見て取れた。
『終わりだ。せめてもの情けだ、苦しまずに殺してやるよ…………』
「…………」
するとフォルスは、シーラの攻撃よりも早く空へと舞い上がった。
『諦めが悪い男だね……無駄だってのが分からないのか?』
「…………だ」
『ん?』
「……嫌だ……嫌だ……死にたくない……死にたくない!!死にたくないよー!!!」
フォルスは精神が錯乱してしまったのか、奇声を発しながら矢をめちゃくちゃに放ちまくる。
「あああああ!!!」
『生にしがみつくとは……哀れな男だね…………』
しかし狙って放っていない為か、フォルスの矢は一本もシーラに当たる事無く、床に突き刺さりひびが入る。
「あああああ!!!…………あ、あれ?も、もう矢が……矢が無い!?」
『馬鹿な男だね……残りの矢の本数を考えてから放つのが、アーチャーとしての常識だろ…………しかし、まさか全部外すとは……精神が錯乱するとここまで性能が落ちるだなんて、情けないね』
「あ……ああ……」
『興が醒めた…………死ね』
シーラは、精神が錯乱したフォルスに巨大な腕を容赦なく叩き付けた。
「がっ…………!!!」
勢い良く床に叩き付けられたフォルス。その威力は、床にひびが入った事で見て取れた。
『お前の負けだ…………』
「…………あぁ、そうだな。だが、只負ける訳にはいかない……」
『お、お前!?精神が錯乱した筈じゃ…………』
フォルスがいつも通りの口調に戻り、シーラが戸惑いの表情を浮かべていたその時、床全体に大きくひびが入った。
『!!!』
「へ……へへ……上手くいったぜ……」
『ま、まさかお前……最初からこれを狙って、わざと錯乱した振りを…………!!?』
「そんなデカイ図体で、部屋の中を暴れ回るのはアホだぜ?」
床のひびは、次第に大きくなっていく。フォルスが矢で付けたひび、シーラが暴れて付けたひび。今までの攻撃が床に蓄積され、床全体が支えられなくなってしまった。
『き、貴様ーーー!!!』
「……俺は負けるが、お前も負けるんだ……道連れだよ……」
そして床は脆く崩れ去り、フォルスとシーラは下へと落下していく。
「悪いなマオ…………そっちに向かうのは……しばらく時間が掛かりそうだ…………」
そう呟きながら、フォルスはシーラと供に落下していくのだった。
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