笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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第十章 冒険編 魔王と勇者

フォルス VS シーラ(前編)

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 「食らえ!!」



 フォルスは弓を構え、シーラ目掛けて矢を放った。



 「そんな気の抜けた攻撃が、私に通じるかよ!!」



 シーラは、飛んで来る矢を器用に槍で弾いた。



 「まだまだ!!」



 フォルスは、攻撃が弾かれると同時に空高く舞い上がり、弓矢を構えた。



 「へぇー、さすがは鳥人だな」



 「笑っていられるのも今の内だぞ…………“三連弓”!!」



 シーラ目掛けて、フォルスの放った矢が連続して降り注ぐ。



 「だけど、私も龍人だからね……“龍の雄叫び”」



 降り注ぐ矢に対して、シーラは鼻から大きく息を吸い込み、腹の底から雄叫びをあげた。その瞬間、降り注ぐ矢は雄叫びの衝撃波によって吹き飛ばされた。



 「龍の技を扱えるんだよ……」



 「俺の三連弓が……くそっ!」



 フォルスは急いで次の矢を放とうと、矢を弓に装填する。



 「…………!?」



 矢を弓に装填するほんの一瞬、目を離してしまった。次に弓矢を構えたその時には、そこにシーラの姿は無かった。



 「ど、何処に行った!!?」



 フォルスは辺りを捜索するが、何処を見回してもシーラの姿は確認出来なかった。



 「…………上だよ!!」



 「し、しまった!!」



 真上から声が聞こえ、フォルスは慌てて見上げるも時既に遅し。翼を広げてフォルスの真上にいたシーラが、フォルスの背中に槍を突き刺した。



 「がぁあああ!!!」



 「このままくたばりな!!」



 突き刺した勢いのまま、フォルスは床に叩き付けられた。



 「何だ、この程度かよ」



 「ぐっ…………!!」



 シーラが、フォルスの背中から槍を引き抜くと、そこから大量に出血した。



 「拍子抜けだったな」



 「…………」



 そう言うとシーラは、槍の矛先を肩に乗せて部屋の扉へと向かおうとする。



 「やっぱり、私も魔王様と一緒に勇者と戦……!!?」



 扉を開けようとした瞬間、シーラの右手の甲に一本の矢が突き刺さった。



 「な、何だと!!?」



 シーラは、驚きの表情を浮かべながら振り返ると、そこに立っていたのは弓矢を構えるフォルスがいた。



 「て、てめぇ!!」



 「……“ウィンド”」



 フォルスの矢に風がまとわりつく……。強い力に、カタカタと震える弓矢をしっかりと指で押さえる。



 「貫け!!“ブースト”!!」



 フォルスの弓から放たれた矢は、真っ直ぐとシーラ目掛けて飛んで行った。



 「そんな気の抜けた攻撃が、私に通じ…………!?」



 「加速しろ!!」



 放たれた矢は風の力によって肉眼では捉えきれない速度となり、シーラの腹部を鎧ごと貫いた。



 「なぁ!?がはぁ!!」



 腹部を貫かれた事で穴が空くが、シーラはその痛みに耐えながら立っていた。



 「凄いな……腹に穴が空いたって言うのに立っているとは……さすがは四天王……タフだな……」



 「どういう事だ……確かに致命傷だった筈だ……」



 フォルスが生きている事を疑問に思うシーラ、しかしその疑問はすぐに解決した。



 「あれは……まさか、“ポーション”?」



 フォルスの足元には、ポーションの器が三本転がっていた。



 「正直……ギリギリだった……お前が後ろを向くのがもう少し遅かったら、出血多量で死んでいただろう……」



 仲間達で分け合った三本のポーションを、全て飲み干す事で何とか一命を取り止めた。



 「(だが……これで俺が持つポーションは全て使った事になる……これからはダメージを極力受けない様にしないと…………)」



 フォルスが受け取ったポーションは、計三つ。それを全て飲み干してしまったという事は、もうフォルスには回復する手立ては残されていない。



 「まさか……ポーションごときに遅れを取るとはね……」



 「四天王と言えども、不意打ちには弱いという事だな……悪いがこの勢いのまま、決着をつけさせて貰う!!」



 そう言うとフォルスは空へと舞い上がり、シーラ目掛けて再び弓矢を構える。



 「……私も嘗められたもんだな……同じ手が二度通じるかよ!!」



 シーラは翼を大きく広げて、フォルスと同じ様に空へと舞い上がった。



 「この位置だったら、矢を放つ事が出来ないだろう!!」



 そう言うシーラがいる場所は、フォルスの場所から斜め上の場所だった。



 「くっ…………」



 フォルスの様な鳥人は基本的に、両腕の翼を羽ばたかせながら鉤爪で弓矢を器用に使っている。しかし、それは言い換えれば自身より高い位置にいる敵に対しては、弓で狙う事は出来ないという事だ。また、シーラの様な龍人は基本的に背中に生えている翼で羽ばたく為、両腕が使えるのでフォルスの様に行動が制限される事は無い。



 「それに私は、まだ実力の半分も出していないんだぜ?」



 「な、何!?」



 シーラの発言にフォルスが驚いていると、シーラが槍を構えた。



 「見せてやるよ……私の力の一端を!!」



 するとシーラは翼を小さく畳み、まるで弾丸の様にフォルスに突っ込んで来た。次第にシーラの槍から青いオーラが湧き始めた。



 「こ、これは!!?」



 「スキル“ワイバーン”」



 “ワイバーン”それは、一般的に前肢と翼が一体化したタイプのものを指す。概して、コウモリのような皮膜の翼に、鏃のように尖った尾をもつとされる。シーラのスキルは、そんなワイバーンに酷似しているという事から、その名が付けられた。一方でワイバーンという見た事の無いスキルに、気を取られていたフォルスはまともに食らってしまった。



 「がぁあああ!!!」



 「へぇー、あの攻撃を食らっても飛び続けるとは……精神力は中々の様だな」



 身体中がボロボロで、飛べているのが不思議な位だった。



 「(……一発……一発食らっただけで、この威力……これが魔王軍四天王…………)」



 シーラの職業がドラゴンスレイヤーである事と、シーラ自身が龍人である事が相まって、その一撃はとても強力な物となっている。



 「(だが……ここで諦める訳にはいかない……一刻も早く、マオを追いかけないと……)」



 気合いを入れ直し、フォルスは再びシーラ目掛けて弓矢を構えた。



 「まだ諦めないか……なら、次の一撃で息の根を止めてやるよ!!」



 シーラは再び、フォルスよりも高く飛び上がり槍を構えた。



 「じゃあな!!スキル“ワイバーン”!!!」



 シーラは翼を小さく畳み、まるで弾丸の様にフォルスに突っ込む。次第にシーラの槍から青いオーラが湧き始めた。



 「…………」



 その瞬間、フォルスは羽ばたくのを止めた。



 「何!!?」



 羽ばたくのを止めたフォルスは、地上に向かって急降下する。そして、急降下した事でフォルスの位置が変わり、シーラのスキルは当たらず真上を通り過ぎる。



 「以前の俺だったら、空中でまともに動けず……意図も簡単に殺られていただろう……だが、今の俺は違う!!」



 「!!!」



 フォルスは、急降下しながら仰向けになり真上を通り過ぎるシーラ目掛けて、弓矢を構える。



 「俺は空を自由に飛び回れる様になった!!“ウインド”!!」



 「ま、まずい!!!」



 フォルスの矢に風がまとわりつく……。強い力に、カタカタと震える弓矢をしっかりと指で押さえる。



 「俺は……“空の支配者”だ!!!」



 放たれた矢は途中から、風の力によって肉眼では捉えきれない速度となり、再びシーラを鎧ごと貫いた。



 「ぐぁあああ!!!」



 シーラはあまりの痛みにバランスを失い、地上に落下した。



 「ぐっ…………!!」



 そしてフォルスもまた、仰向けのまま地上に落下した。



 「「はぁ……はぁ……」」



 フォルスとシーラ。お互いが息を切らしながらも、ゆっくりと立ち上がった。



 「……は……はは……今のは効いただろ?」



 「クソが……まさか私がここまで追い詰められるだなんて……」



 シーラは、フォルスに撃ち抜かれた箇所を押さえる。



 「…………面白い……お前には私の全力をぶつけたくなった!!」



 「……そいつは……光栄だね……」



 「見せてやるよ……私の……“真の姿”を!!!」



 そう言うとシーラは、槍を捨てて四つん這いになる。



 「“龍覚醒”」



 その瞬間、シーラの体がまるで心臓の様に大きく脈打った。その振動は次第に大きくなる。



 「グ……ググ……グググ……!!!」



 一番大きく脈打った瞬間、シーラの鎧が砕けた。



 「な、何だ!?」



 シーラの体は膨張しており、どんどん大きくなっていった。体から始まり、手、足、尻尾、顔と体全体が巨大化していく。



 「おいおい……嘘だろ…………」



 その姿にフォルスは、見覚えがあった。それはかつて、自身の里で出会ったドラゴンそのものだった。いや、そのものというのは語弊があった。姿こそあの時のドラゴンに似ているが、鱗は白く大きさは数十倍もあった。そして何より、あのドラゴンの時とは比べ物にならない程の威圧感をシーラから感じた。



 『さぁ……始めようか』



 再びドラゴンと戦う事になったフォルス。しかしあの時と違って、たった一人である。
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