笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

文字の大きさ
215 / 300
過去編 二千年前

魔法使いアーメイデの誕生

しおりを挟む
 「きゃあああああ!!!」



 「た、助け…………!!」



 「死にたくねぇよ!!」



 コウスケ達が村を出て行って三日目。突如として魔族の軍勢が、この村に襲い掛かって来た。



 「いいかテメーら!!誰一人として、生きて帰すんじゃねぇぞ!!」



 「「「「おぉーー!!!」」」」



 先日の嵐の影響により、魔族を確認する為の監視台は破壊された為、魔族の軍勢の接近に気づく事が出来なかった。



 「いやだぁあああ!!」



 「助けてくれぇえええ!!」



 「皆殺しだ!!苦痛を与えて殺せ!!」



 一人、また一人と、昨日まで元気だった村人達は魔族の軍勢によって、その命を奪われて行った。



 「くそっ!!このままじゃ、あっという間に村は全滅してしまう!!」



 「三人で、出来る限り遠くまで逃げましょう!!」



 そんな中で両親は、私を連れて村から逃げ出そうとしていた。



 「パパ、ママ。安心して、あんな魔族の軍勢なんか、私の魔法で全員蹴散らしてやるわ!!」



 だけど、その時の私は逃げ出さずに村を襲っている魔族の軍勢に立ち向かおうとしていた。



 「ま、待ちなさいアーメイデ!!いくら魔法が扱える様になったからって、あの数相手に勝てる訳が無い!!」



 「そうよ!!時には、逃げる事も大切なの!!」



 「もう、そんなに心配しなくても大丈夫だって、何たって私は四種類の魔法を扱えるアーメイデ様なんだから!!」



 「「アーメイデ!!」」



 両親が必死に呼び止めるも、一切の聞く耳を持たず、私は今まさに村人の一人を殺そうとしている魔族へと駆け寄る。



 「いや……死にたくない……」



 「グフフ……泣いたって誰も助けてはくれないぞ……」



 村人はあまりの恐怖に腰を抜かして、その場から動けなくなっていた。そして私は、魔族の注意がその村人に注がれている隙を突き、真後ろから魔族目掛けて右手を突き出して魔法を唱えた。



 「“ファイア”!!」



 「ぎゃあああああ!!?」



 その瞬間、突き出した私の右手から赤々と燃え上がる火の玉が生成され、そのまま村人を殺そうとしている魔族目掛けて放たれた。そして、火の玉が命中した事で魔族の体は瞬く間に燃え上がり、何が起きたのか分からないまま、消し炭となってしまった。



 「ふふふ、楽勝楽勝!!」



 「な、何が起こった!?今、仲間があの女に焼き殺されたぞ!!」



 「恐らく、あの女は魔法使いだ!!絶対に逃がすな!!今すぐ殺すんだ!!」



 仲間の魔族が消し炭となった事で、それに気が付いた他の魔族達が、一斉に襲い掛かって来た。



 「丁度良いわ、まとめて片付けてあげる!!“ファイア”!!」



 迫り来る魔族達に対して私は、一人ずつ火の玉で消し炭にしていった。



 「テメーら、何チンタラやっている!?一斉に襲い掛かるんだよ!!」



 「「「うおぉーーー!!!」」」



 「ちょ、一斉にだなんて卑怯よ!?」



 三人同時に襲い掛かって来た魔族に対して、私は両手から火の玉を生成して放った。それにより、二人の魔族は消し炭にする事が出来た。だけど……。



 「隙あり!!」



 「し、しまっ…………!!」



 魔法を扱える様になってから三日目、さすがに多人数の相手は厳しかった。生き残った一人の魔族は、隙だらけの私目掛けて武器を振り下ろした。死んだと思った。しかし、その時起こった出来事は今でも忘れられない。



 「……パパ……?」



 「…………ぐふっ!!」



 私を庇う様に、父が魔族の攻撃を身代わりとして受けていたのだ。体から血を流し、吐血した父はゆっくりと仰向けになって倒れた。その様子を見て、私は一瞬何が起こったのか分からなかった。



 「アナタ!!」



 血相を変えて、大声を出しながら倒れた父に駆け寄る。



 「パパ……パパ……どうして……どうして…………?」



 「嫌よ、嫌よ!!アナタお願い!!死なないで!!」



 「…………げろ……」



 「「!!!」」



 血まみれになった父は、虫の息になりながらも私達に、最後の力を振り絞って声を掛けて来た。



 「逃げろ……逃げるんだ……お前達……二人だけでも……生き残るんだ!!」



 「そんな!?パパを置いてなんか行けないよ!!」



 「…………」



 「頼む…………」



 すると母は、私の手を無理矢理引っ張ってその場から駆け出した。



 「行け…………行けぇえええええええええええええええ!!!!!」



 「ママ!!?待って、まだパパが…………!!」



 母は何も言わずに、泣きながら私の手を引っ張り只ひたすらに走っていた。そんな母の様子に、私は何も言う事が出来なかった。



 「…………生きるんだぞ……」



 「逃がすな!!追いかけるんだ!!」



 「!!…………テメー……!!」



 生き残った魔族の一人が、命令通りアーメイデ達を追い掛け様とするが、その足をアーメイデの父親が掴んでいた。



 「追わせは……しない……!!」



 「この……死に損ないが!!!」



 魔族は、足を掴むアーメイデの父親目掛けて、武器を振り下ろした。







***







 「はぁ……はぁ……はぁ……」



 「ママ……パパ……大丈夫だよね……」



 私は母に手を引っ張られながら、只ひたすらに走り続けていた。そんな中で私は、母に父の安否を確かめた。



 「…………」



 「ねぇ!!」



 「!!!」



 母の無言に対して、私が強く声を掛けたその瞬間、村の方から飛んで来た一本の矢が母の右の太股に突き刺さった。



 「あ……ああ……!!!」



 「ママ!!?」



 母はそのあまりの痛みから、その場に倒れてしまった。矢が突き刺さった太股からは、大量の血が流れて出ていた。



 「そんな……だ、大丈夫……こんな傷……魔法で直ぐに…………!!」



 その時、私は自身が犯してしまった過ちに漸く気がついた。



 「私…………回復魔法……扱えない…………」



 その時私の脳裏では、あの時のコウスケとのやり取りを思い出していた。







 “それじゃあまず、回復魔法について…………”



 “えー、嫌よ。回復魔法なんて地味で目立たないじゃない”



 “いやでも、回復魔法は本当に重要で…………”



 “そんなのより、もっと分かりやすい魔法を教わりたいのよ。コウスケが昨日、暖炉に火を点けた時みたいな”







 「…………」



 何故、あの時素直に回復魔法について教えて貰わなかった…………何故、回復魔法を地味で目立たないなんて言った…………回復魔法こそ最も役に立つ魔法なのに、何故それに気づかなかった…………。



 「アーメイデ……逃げなさい……」



 「!!…………そんな……嫌だ……嫌だよ!!」



 母を置いて行ける訳が無かった。私の目から、いつの間にか大粒の涙が止めどなく流れていた。



 「我が儘言わないで……お願い……私達の分まで……生きて……」



 「嫌だ!!嫌だ!!嫌だ!!パパとママと一緒にいられないのなら、私も一緒に死ぬ!!」



            パン!!!



 「えっ…………!?」



 その時、乾いた音が響き渡った。母が私の頬をひっぱたいたのだ。私の頬は次第に赤く腫れ上がり、痛みが伝わって来た。



 「マ、ママ…………?」



 「この馬鹿娘が!!ママの言う事が聞けないの!!?早く行かないと、次はもっと強くひっぱたくからね!!!」



 「!!!」



 母の顔はまるで鬼の様な形相、とても恐ろしいものだった。そんな母の顔に恐怖を感じた私は、思わずその場から逃げ出してしまった。



 「…………ごめんね……ごめんね……アーメイデ……ごめんね……悪いママでごめんね…………」



 アーメイデの母親は、自分の娘をひっぱたいた手を握り締め、アーメイデ本人に聞こえない様、泣きながらずっと謝り続けた。それから数分後、追い掛けて来た魔族達の武器がアーメイデの母親目掛けて振り下ろされた。







***







 「う……うう……!!」



 私は泣きながら、無我夢中で走っていた。母に頬をひっぱたかれたから泣いているのでは無い。自身のあまりの愚かさに涙が止まらないのだ。



 「魔法なんか……教えて貰わなければよかった…………」



 何が四種類の魔法を扱えるだ。何が才能の塊だ。その慢心が私を付け上がらせて、この最悪な結末を招いた。あの時、両親の言う通り逃げ出していれば、こんな事にはならなかった。



 「パパ……ママ……ごめんなさい……ごめんなさい……」



 その時だった。またしても村の方から矢が飛んで来て、母と同じ様に右の太股に突き刺さった。



 「ああああ!!!」



 痛い。痛い。太股が焼ける様に痛い。私はそのあまりの痛さから、その場に倒れてしまった。



 「…………回復魔法が扱えたら…………」



 ここに来て、再び私は回復魔法を教えて貰わなかった事を後悔した。



 「へへへ……やっと追い付いたぜ…………」



 痛みに耐えていると、魔族達に追い付かれてしまった。



 「こ、来ないで!!“ファイア”!!」



 私は、魔族達目掛けて魔法を唱えて撃退しようとした。



 「おっと、危ない危ない…………盾を用意していて助かったぜ……」



 「そんな…………」



 私が放った渾身の魔法は、魔族の一人が用意した盾であっさりと防がれてしまった。



 「さぁーて、今度はこっちの番だぜ……」



 「手こずらせやがって…………」



 「嫌……嫌……来ないで……」



 魔族の一人が私の目の前まで来ると、持っていた武器を振り上げた。



 「先にあの世でお前の両親も待ってる。だから安心して死ぬんだな」



 「パパ……ママ……」



 その時私は、既にこの世を去ってしまった両親の顔を思い浮かべた。そして無慈悲にも振り上げられた武器は、そのまま私目掛けて勢い良く振り下ろされた。



 「パパ……ママ……いやぁああああああああああああああああああああああああ!!!」



 「な、何だこれは!!?」



 その時の事は、よく覚えていないのだけれど私は悲鳴を発した瞬間、私の体から鋭く尖った結晶体が生成され、武器を振り下ろした魔族の首に突き刺さったらしい。



 「がぁあああ!!!」



 鋭く尖った結晶体が突き刺さった魔族は、そのまま絶命した。



 「あっ…………」



 そして私は、そのまま気を失ってしまった。



















































 「な、何だったんだ今のは!?」



 「わ、分からねぇ!!でも取り敢えず、今の内にこの危険な女を片付けてやる!!」



 突然、仲間が謎の魔法によって殺され戸惑いを見せるが、目的遂行の為に魔族がアーメイデに近づき、持っていた武器を振り上げる。



 「死ねぇええええ!!!」



 そしてそのまま勢い良く、アーメイデ目掛けて武器を振り下ろした。



 「な、何!?」



 しかしその武器は、突然目の前に現れた男に片手で受け止められてしまった。



 「お、お前いったい何…………!!」



 武器を振り下ろした魔族は、驚く暇も無く首を切り落とされた。



 「う、嘘だろ……剣筋が見えなかった…………」



 その男こそ、エジタスの転移によって現れたコウスケだった。しかし、今のコウスケはいつもと違う雰囲気だった。



 「に、逃げ…………あれ?」



 命の危険を感じた魔族は、急いでその場から逃げ出そうとするが、足を踏み出した途端に首から頭が落ちてしまった。



 「いつの……間…………に……」



 既に殺されているとも気付いていなかった。魔族はそのまま息を引き取った。



 「…………」



 「いつもながら、恐ろしい腕前ですね~。それで、どうしますか?」



 「……連れて帰ります……」



 「…………分かりました」



 そう言うとコウスケは、気を失ったアーメイデを抱き抱えて、エジタスと供にその場から転移した。そしてこの日、アーメイデの住んでいた村は全滅し、地図から抹消される事となった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...