笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

新魔王城

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 「着きましたね…………」



 真緒達とサタニア達は、エジタスと一緒にいたいという想いから、供にエジタスが待つ魔王城へと戻って来た。



 「何だか……外側からこうやって魔王城を見つめ直すと、凄く禍々しく感じるね…………」



 「そうね……城内は、清潔感に溢れていて綺麗なんだけどね…………」



 サタニア達は、今まで自分達が当たり前の様に住んでいた魔王城を、改めて外側から真剣に見つめ直すと、その禍々しさが伝わって来た。



 「エジタスの奴を連れ戻したら、一度この魔王城を造り直して見るのも良いかもしれないな」



 「ヨリキョウコナ、マオウジョウヲツクリタイナ」



 そう言いながら、エジタスを連れ戻した後の事を考え始めるサタニア達。



 「今、そんな呑気な事を考えている場合か?」



 「師匠を連れ戻すとなると、一筋縄では行かないと思います」



 「必ずあのラクウン、ジョッカー、そしてエピロさんが、立ち塞がって来るでしょう……」



 「ぞれに、エジタスざん自身も素直に戻っで来でぐれるどは思わないだぁ…………」



 すると、そんな未来の想像を膨らませるサタニア達に対して、真緒達が現実的な言葉を口にした。



 「そうだな……誰か、あの三人について詳しい能力を知らないか?」



 「残念ながら、あの三人については全く知りません。唯一エピロさんとは“クラウドツリー”で会った事があるんですが…………そうだ!!アーメイデさんなら、何か知っているんじゃないですか?」



 「そうですね!!アーメイデさんは、エピロさんと千年近く一緒にいたんですから、何か情報を掴んでいるかも……それを共有し合えば、少しは戦いが有利に働くかもしれませんね!!」



 真緒達とサタニア達は、少しでもこれからの戦いを有利に運ぶ為に、千年近くも一緒にいたアーメイデから、エピロの情報を聞こうとした。



 「…………何も知らない」



 「「「「「「「「…………えっ?」」」」」」」」



 しかし、その口から発せられた言葉は実に予想外のものであった。



 「エピロが私に弟子入りしてから、千年近く一緒にいたけど…………全くと言っていい程に何も知らなかったわ。印象に残っているのは、あの“オラ”という独特な一人称とエルフなのに、魔法が上手く扱えないという事だけ…………まぁ、それも結局は全て私を油断させる為の演技だった訳だけどね…………」



 「そ、そんな…………」



 「情けない話よね……千年近くも一緒にいたのに、あの子の本質を見抜けなかっただなんて…………裏切りには、人一倍警戒していた筈なのに…………」



 そう言うアーメイデの表情は、何処となく悲しげであった。自身の信じてきた者達に裏切られてしまったのだから、無理もない。



  「…………それなら、そっちはどうなんだ?あのラクウンとか言う奴と、顔見知りの様な雰囲気を出していたが…………?」



 気まずい空気を打ち破るかの様に、フォルスがサタニア達に顔見知りと思えたラクウンについて、情報を聞こうとした。



 「…………ラクウンは元々、カルド王国国王に仕える執事的な存在で、いつも然りげ無い補佐役に徹していたよ…………」



 「そうね……後は誰よりも危機管理能力に優れていた所かしら、まるで一匹の獣そのものだったわ…………うーん、思い返せるのはこれ位かしらね…………」



 「となると、戦う時は危機管理能力が高いラクウンを、真っ先に片付けた方が無難かもしれないな」



 サタニア達から手に入れたラクウンの情報を元に、真緒達とサタニア達は対策を考える。



 「そう言えば、残りの一人ジョッカーについて知っている人はいる?」



 「「「「「「「「…………」」」」」」」」



 真緒が、最後の一人であるジョッカーについて情報を共有しようとするが、誰も知る者はいなかった。



 「エジタスちゃんの仲間だから恐らく、相当強いのは確かなんだけど…………」



 「正直……あいつだけは一番謎だ。唯一あるとすれば、俺達を拘束して窓から放り出したあのスキル…………“セーフティーリング”……あれ位しか情報はないな…………」



 それもその筈だ。ジョッカーを知る人物と言えば、元四天王であるヴァルベルト只一人。しかし、そのヴァルベルトも既にこの世にはいない。そうなると、ジョッカーについて知る者は存在しない事となる。



 「…………あぁー!!!そんなのここで考えても仕方ない!!後の事は取り敢えず、乗り込んでから考えれば良いだろう!?」



 「…………ふふ……そうだな。シーラの言う通り、今さら考えても仕方ない。まずは、魔王城に乗り込む事が先決だな」



 色々と考えた結果、痺れを切らしたシーラの叫びにフォルスが考える事よりも、魔王城へと乗り込む事を優先した。そしてその言葉に対して、一同が同意の意思を示す様に頷いた。



 「……皆……準備はいい?」



 「この先、どんな危険があるのか分からない。皆気を引き締めて行こう…………それじゃあ……」



 「「突撃!!!」」



 「「「「「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」」」



 真緒とサタニアの合図と共に、一斉にエジタスが待つ魔王城へと攻め込んで行く。そして、門を勢い良く開いた。するとその先には…………!!!



 「「こ、これは…………!!」」



 真緒達とサタニア達の視界に飛び込んで来た物。それは、大きなお風呂。言わば大浴場であった。



 「ど、どうなってるの…………?」



 「し、知りませんでした……魔王城って正面から入るとお風呂に繋がっているんですね…………」



 「そんな訳があるか!!!」



 あまりにも衝撃的な光景に、思わずボケてしまったリーマ。それを的確にシーラがツッコミを入れた。



 「ど、どういう事…………?確か門を開いたら、エントランスホールに出る筈なのに…………」



 「分からないわ……取り敢えず中へと入りましょう……」



 「そ、そうだね…………」



 冷静さを保ちつつ、真緒とサタニアの二人が魔王城の門を通り、大浴場へと足を踏み入れた。







             バタン







 「「「「「「「な、何!!?」」」」」」」



 しかしその瞬間、魔王城の門が突然勢い良く閉じてしまい、真緒とサタニアの二人と切り離されてしまった。



 「おい!!どうしていきなり門が閉じたんだよ!?」



 「知らないわよ!!とにかく早く門を開けましょう!!」



 残された七人は、門が突然閉まるという出来事に混乱しながらも、慌てて真緒とサタニアに合流しようと門を勢い良く開いた。



 「「「「「「「!!?」」」」」」」



 しかし、再び門を開けるとそこは大浴場では無く、食堂に変わっていた。



 「こ、これはいったい…………!?」



 「さ、さっきまでお風呂場でしたよね!?」



 「それが今度は食堂…………くそっ!!何がどうなってやがる!!」



 「…………これってもしかして何からかの魔法なんじゃ…………」



 「ピンポーン!!正解正解大正解!!!」



 「「「「「「「!!!」」」」」」」



 門を開くとそこは大浴場。真緒とサタニアの二人が足を踏み入れた途端、門は突然閉じてしまい、再び開けるもそこは大浴場では無く食堂に変わっていた。そんなおかしな状況に一同頭を悩ませている中、アーメイデは何らかの魔法が関与しているのではないかと憶測を立てた。するとその言葉に対して、真上から聞き覚えのある声が聞こえて来た。



 「さすがはアーメイデさ~ん。伊達に二千年、魔法の研究をしていませんね~」



 「「「「「「「エジタス!!!」」」」」」」



 見上げるとそこには、エジタスが七人に向かって手を振りながら、見下ろしていた。



 「てめぇ!!魔王様を何処にやった!!?」



 「この魔王城の異様な変化は、エジタスさんの仕業なんですか!?」



 「マオぢゃんは無事なんだがぁ!!?」



 「ちょっと皆さん、一先ず落ち着いて下さい。そんな一度に話掛けられたら、説明する事が出来ないじゃないですか~」



 エジタスの言葉に、その場にいる全員が一時的に口を閉ざした。



 「一言で申し上げるのなら、お二人は無事です。恐らく今頃、迷路と化したこの新魔王城を歩き回っている事でしょう~」



 「新魔王城って……やっぱりこの異様な変化は、エジタスさんの仕業だったんですね!!」



 「はい、私の魔法“クリエイトメイズ”によって、この魔王城を難攻不落の迷宮に作り変えたのです!!この城に入れるのは一度に最大で二人まで、その二人が入ると門は自動的に閉じてしまい、次に開ける時にはまた別の部屋になっているのです」



 最大でも二人だけで行動する事となり、他の仲間達とは離れ離れになってしまう。更に城内は複雑な迷路になっている為、簡単には玉座の間に辿り着けない。これがエジタスの考えた時間稼ぎの一つである。



 「そうそう、空から飛んで窓から直接入る行為も無駄ですからね。窓から入ったとしても、そこは別の部屋になっていますよ~。それじゃあ、頑張って私の元まで辿り着いて下さいね~」



 そう言うとエジタスは、指をパチンと鳴らしてその場から姿を消した。



 「くそが!!ふざけた事をしやがって!!」



 「だが、こうなってしまっては二人一組を作らなければなるまい…………」



 「で、でも私達は全員合わせて七人……一人余ってしまいますよ……?」



 「「「「「「…………」」」」」」



 沈黙。その場にいる全員が理解していた。最大で二人、つまりこの中の誰かが一人で行動する事となる。場内では、何が仕掛けられているのか分からない。そんな危険な状況で誰が一人になるのか、七人に選択が迫られるのであった。
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