笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

フォルスとシーラ

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 「サァ、サッサトハクンダ!!」



 「ぐぇ……く、苦しい…………!!」



 リーマとゴルガの二人組は、見事元魔王軍所属小人のチーに勝利を収めた。そんな中、ゴルガは右手で小人のチーを締め上げていた。



 「オレタチヲ、コノヘヤカラダスンダ!!」



 「あなたを倒したのにも関わらず、部屋の扉が開かないんですよ」



 小人のチーを倒し、先へと進もうとしたリーマとゴルガだが、扉は相変わらず開かないままであった。



 「キサマ……ウソヲツイタナ!!?」



 「がぁ……!!う、嘘なんかついていねぇよ!!」



 ゴルガの右手に掴まれ、締め上げられる小人のチー。次第に掴む力は強くなり、呼吸が苦しくなる中で何とか声を振り絞った。



 「じゃあどうして、扉は開かないんですか!!」



 「ク……クカカ、最初に言っただろう……“そんな事をしても扉は開かない”って……」



 それは、小人のチーがリーマとゴルガの二人に、初めに放った言葉であった。



 「ドウイウイミダ!!?」



 「ぐっ……!!話す!!話すから、そんなに強く握り締めないでくれ!!」



 既に戦闘する意欲は無く、全てを話そうとするチーを見て、ゴルガは少しだけ掴む力を弱めた。



 「はぁ……はぁ……いいかい、エジタス様の魔法“クリエイトメイズ”は、只部屋をランダムにして、迷路の様に作り替えるだけじゃない。その部屋の設備本来の使い方まで、作り替えてしまうのさ…………つまり、当たり前だと思っている事が当たり前じゃ無くなっているのさ」



 「「!!!」」



 チーの言葉に、リーマとゴルガは驚きの表情を隠せなかった。そして、お互いに部屋の扉を見つめる。



 「それに俺は一言も、倒したら部屋が開くだなんて言って無いぜ?」



 確かに、ゴルガがチーを倒せば出られるのかと問い掛けた時、チーは何も言わずに笑っていただけだった。その笑みをリーマとゴルガの二人が、勝手に勘違いしてしまったのだ。



 「それってまさか…………」



 リーマは疑いながらも、部屋の扉に手を掛ける。



 「押したり引いたりの二種類だけが、扉の開け方じゃないだろ?」



 そして、ゆっくりと扉を“横”に引っ張った。すると嘘の様に扉は、意図も簡単に開いた。



 「クカカ!!君達、本当に単細胞だね!!ちょっと頭を柔らかくすれば、すぐに分かるだろ!?そんな頭の悪い君達がエジタス様の計画を止められる訳が……「フン!!!」……げぴっ!!?」



 面白おかしく、チーが笑っているとそれに苛ついたゴルガが、チーを勢い良く壁に投げつけた。壁に勢い良く叩きつけられたチーは、その衝撃からあっさりと気絶してしまった。



 「……マッタク……ペラペラト、ヨクシャベル…………」



 「ふふ……ちょっと、スッキリしました…………急ぎましょう」



 「アァ……」



 リーマとゴルガの二人組は、そのまま部屋を後にして先へと進むのであった。







***







 「お、おばちゃん…………?」



 一方こちらはフォルスとシーラの二人組、二人は食堂に足を踏み入れていた。そんな中、シーラが食堂を管理しているおばちゃんに声を掛けようと、台所を覗いた。するとそこには、目を疑う光景があった。



 「アグ……ムゴ……クチャクチャ…………」



 それは咀嚼音。台所の物陰で、何者かが背を向けながら、音を立てて食料を食べていた。



 「…………」



 シーラは、その後ろ姿に見覚えがあった。食料を口に入れる時に使う太い腕、見ただけでも相当長い期間で、鍛え上げられている事が分かる。また、大きく広い背中は、全ての物を背負い込めるのではないかと思わせる。そんな惚れ惚れする巨体を持ち合わせていながら、その者はエプロンを着用していた。



 「(見間違える筈が無い…………あの人は…………食堂の“おばちゃん”だ)」



 しかし、どうも様子がおかしかった。こんな台所の物陰で、一心不乱に食料を食べているだなんて、完全に常軌を逸していた。



 「…………お、おばちゃん?」



 そんなおばちゃんにシーラは、恐る恐る声を掛けた。



 「…………誰ダい……?」



 「!!!」



 シーラの声に反応して、おばちゃんが振り返った。しかしそれは、シーラにとって衝撃的だった。



 「食事の邪魔ヲする奴は……何処の誰ダい!!?」



 血走った目、口からは泡が溢れ出ており、体の筋肉は膨張していた。何処からどう見ても普通では無かった。



 「おば……ちゃん……」



 そのあまりの異常さに、シーラは言葉を失ってしまった。



 「食事の邪魔ヲ……するんじゃ……ない!!」



 「!!!」



 すると、食堂のおばちゃんがこちらに気がついたのか、ゆっくりと立ち上がり、そして次の瞬間おばちゃんの拳がフォルスとシーラに襲い掛かった。



 「あ、危なかった……」



 「な、何だ!?何が起こった!?」



 台所を覗いていたのは、シーラだけだった為、フォルスはいまいち状況を理解出来ていなかった。



 「しょ、食事の……じゃ、邪魔ヲする奴は…………殺ス!!」



 「シーラ!?あれが、食堂のおばちゃんなのか…………?」



 「あ、あぁ、その筈なんだけど……どうも様子がおかしい……」



 いつものおばちゃんでは無い。まるで自分の意思では無いかの様に、同じ言葉を繰り返していた。



 「もしかしたら…………操られているのかもしれないな」



 「何だと、いったい誰に……!?」



 二人には心当たりがあった。脳への伝達信号を自在に操れ、洗脳に近い事が出来る存在、雷魔法を扱えるエピロだったら操る事が出来るだろう。



 「食事……邪魔……殺ス!!!」



 「どうやら、まともに会話は出来そうに無いな。一旦、気を失って貰おうか……“三連弓”」



 そう言うとフォルスは、弓を構えて食堂のおばちゃん目掛けて、連続で三本の矢を放った。



 「止めろ!!おばちゃんを甘く見るな!!」



 「えっ?」



 「…………スキル“無双乱激”」



 その瞬間、放たれた三本の矢に対して食堂のおばちゃんの拳が、前動作無しに叩き込まれた。すると拳から放たれた衝撃波から、三本の矢は原型が残らない程に消えて無くなり、その直線上にいたフォルスは勢い良く吹き飛ばされた。



 「ぐわぁあああ!!?」



 「フォルス!!」



 食堂のテーブルや椅子を巻き込みながら、壁にぶつかった事で漸く止まった。



 「大丈夫か?」



 「あ、あぁ……何とかな……しかし、何だあの威力は……」



 放たれた矢ならともかく、その直線上にいた自身までもが、壁まで吹き飛ばされるとは夢にも思わなかった。



 「おばちゃんの実力なら当然だよ…………何たって、“四天王”着任確実と言われていた人なんだから……」



 「四天王だって!?……だが、言われていた……とは?」



 「二代目魔王様の時代、その当時おばちゃんはその圧倒的強さから、四天王入りは確実だろうと言われていた……だけど、おばちゃんは何故か四天王に着任するのを拒否した」



 「何で…………?」



 「分からない。真相を知るのは、亡くなってしまった二代目魔王とその本人だけさ…………」



 食堂のおばちゃんに隠された、意外な事実。二人は、目の前にいるおばちゃんから感じる凄まじい威圧に、少しだけ恐怖を覚えるのであった。
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