笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

実験体M-001

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 「スキル“インパクト・ベア”!!!」



 ハナコとアルシアの二人組は部屋の鍵を入手する為に、エジタスの用意した“実験体”と称する黒いスライム状の物体と戦っていた。ハナコは両腕を引くと、“実験体”目掛けてスキルを叩き込んだ。



 「どうだぁ!?」



 スキルを叩き込まれた“実験体”は吹き飛び、壁に勢い良く激突した。しかし、何事も無かったかの様に“実験体”は床に降り、再びハナコとアルシアの元に近づいて来た。



 「ぜ、全然効いでいないだぁ!!?」



 「次はあたしの番よ!!スキル“黒縄地獄”!!」



 自身の一撃が、全く効いていない事に狼狽えていると、アルシアが腰に携えている両刀を引き抜き、近づいて来る“実験体”目掛けてスキルを放った。すると“実験体”の影が独りでに動き始め、“実験体”の動きを拘束した。



 「これで一歩も動けないでしょう…………悪いけど、一気に勝負をつけさせて貰うわ……スキル“衆合地獄”!!」



 そう言うとアルシアは、身動きが取れなくなった“実験体”に、持っていた片方の刀を突き刺した。



 「…………“爆散”!!!」



 その瞬間、“実験体”の体は爆発を起こして、四方八方に飛び散った。



 「ア、アルシアざん……今のは何だぁ!?」



 「“衆合地獄”突き刺した対象の血液を沸騰させ、強制的に爆発を引き起こす。対象を確実に葬り去りたい、そんな時に使うスキルだよ」



 あの黒い物体に、血液が流れているのだろうかと疑問に感じたが、アルシアの圧倒的実力にそれ処では無かった。



 「さてと……エジタスちゃん!!あなたの“実験体”は倒したわよ!!約束通りあたし達をここから出して頂戴!!」



 エジタスが用意した“実験体”を葬ったアルシアは、約束通り部屋の鍵を貰う為に声を張り上げながら、エジタスに呼び掛けた。しかし、返事は返って来なかった。



 「返っで来ないだなぁ…………?」



 「どういう事かしら?……まさか、エジタスの奴……嘘をついたのか!?」



 エジタスの返事が無い事に一抹の不安を抱くハナコと、怒りから男言葉になるアルシアを他所にその背後では、爆発して飛び散った筈の“実験体”が一ヶ所に集まり、元の形へと戻り始めていた。



 「ア、アルシアざん、落ぢ着いでぐれだぁ!?ぎっど、エジタスざんもごんなに早ぐ倒ずどは思っでいながっだがら、混乱じでいるんだど思うだよぉ!?」



 「…………ごめんなさい、ちょっと興奮していたみたい……取り敢えず、エジタスちゃんからの連絡が無い以上、ここから脱出する方法を考えましょう」



 ハナコの言葉で、落ち着きを取り戻したアルシアは、エジタスの連絡が来ない可能性を示唆し、別の脱出方法を考え始める。そんな二人の背後に“実験体”が元の形を取り戻し、近づいて来た。しかし二人は気づかない。



 「うーん、鍵が無いならオラのスキルで扉を壊ずのはどうだがぁ?」



 「物理的に開けるのね……確かに良い手かもしれないけど、そう簡単に上手く行くかしら?」



 “実験体”は、体の一部を伸ばしてハナコに狙いを定める。そして、勢い良くハナコ目掛けて突き刺して来た。



 「ハナコちゃん、危ない!!!」



 「えっ!?どわぁ!!!」



 寸前の所で、“実験体”の存在に気がついたアルシアは、ハナコを突き飛ばして自身が身代わりとなった。



 「ぐはぁ!!!」



 「アルシアざん!!!」



 “実験体”が伸ばした体の一部は、先程のスライムの様な柔らかさは無く、まるで尖った針の様な形状に変化してアルシアの体に突き刺さった。



 「か、体を吹き飛ばした筈なのに…………何て生命力なの……!!?」



 「アルシアざんを離ずだぁ!!スキル“鋼鉄化(腕)”!!!」



 突然の出来事に、反応が遅れてしまったハナコだったが、直ぐ様右腕を鋼鉄に変化させて“実験体”に殴り掛かる。



 「!!ぞ、ぞんな…………!?」



 しかし、ハナコの鋼鉄と化した拳は“実験体”の柔らかい体によって、受け止められてしまった。



 「拳が駄目なら!!スキル“鋼鉄化”!!!」



 今度は右腕だけでは無く、全身を鋼鉄に変化させた。



 「だぁああああ!!!」



 ハナコは、力任せに“実験体”へ体当たりした。するとその衝撃で、アルシアに突き刺さった“実験体”の体の一部は抜け、そのまま遠くへと吹き飛んだ。



 「アルシアざん!!大丈夫だがぁ!!?」



 「え、えぇ……そこまでのダメージは負っていな…………!!こ、これはまさか…………!!?」



 “実験体”を遠くへと吹き飛ばしたハナコは、慌ててアルシアの安否を心配した。しかし、思っていた程傷を負っていなかった事に不思議に思うアルシアだったが、その瞬間顔色が変わった。



 「ど、どうじだだぁ!?」



 「“MP”が……吸いとられている…………!!」



 「!!!」



 ハナコとアルシアは、吹き飛ばした“実験体”の方に目線を向ける。すると、吹き飛ばされた“実験体”は先程よりも一回り大きくなっていた。



 「ま、まざが……あれっで…………」



 「異常な程の生命力、魔力を吸いとる能力。姿こそ違えど、間違いない……あの“実験体”の正体は…………」



 二人は“実験体”の正体に、心当たりがあった。ハナコの場合は直接出会った事があり、アルシアの場合はエジタスの口から聞いていた。魔力を食料とする最恐最悪の生物。それは…………。



 「「“魔食”…………!!!」」







***







 新魔王城玉座の間。エジタスは“千里眼”を使って、ハナコとアルシアの様子を伺っていた。



 「“実験体M-001”二千年前、私と初代勇者であるコウスケさんとアーメイデさんの三人で、何とか封印する事が出来た“魔食”。その時私は、封印する瞬間にこっそりと魔食の体の一部を削ぎ取り、密かに培養していました。長い年月の中で実験と失敗を繰り返し、姿こそどろどろに溶けて変化してしまいましたが、何とか私の命令に忠実な“実験体兵士”を作り上げる事に成功しました。そして…………ハナコさんとアルシアさん、最初の相手としては中々良いですね~」



 「全くその通りです。“実験体M-001”が今回の戦いに勝利を収める事が出来れば、エジタス様の戦力は確実に上がる事となるでしょう」



 「あの魔食を、俺達の一般兵士に採用するとは、さすがは我が神です!!」



 エジタスが、自身の作り上げた魔食について語っていると、それに答えるかの様にラクウンとジョッカーが、エジタスを褒め称える。



 「マオさん達が戦った魔食は、二千年の時が経った事で、すっかり干からびてしまっていましたが、今回の“実験体M-001”は言わば幼体であり成長過程の魔食、空気中の魔力がある限り倒すのは不可能ですよ~」



 「彼女達は知る事となるでしょう。今自分達が、どれだけ無理難題な戦いを挑んでいるのか…………」



 「これもまた運命…………我が神に逆らった愚かさを悔いながら、朽ち果てるがいい…………」



 二千年前の悪夢が、エジタスの手によって姿を変えて、現在に蘇った。果たしてハナコとアルシアは、不死身の魔食に対して勝つ事が出来るのだろうか。





















































 「…………あの……ラクウンさん、ジョッカーさん…………いくらエピロさんの洗脳を待っている間暇だからって、いちいち私の“独り言”に反応しなくてもいいですからね…………?」



 「「…………」」



 三人の間に、微妙な空気が流れるのであった。
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