笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

フォルス&シーラ VS ラクウン(前編)

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 「な、何だ……この部屋……?」



 フォルスに、自身の趣味である魔王サタニアのぬいぐるみ作りをバレない様に、一人でクローゼットを開けたシーラだったが、そこにぬいぐるみは存在せず、見た事の無い広大な白い部屋へと繋がっていた。



 「シーラ、どうし……な、何だこの部屋は!?」



 シーラの気の抜けた声に、フォルスが後ろから声を掛けてくる。その際にフォルスも、この広大な白い部屋を初めて目の当たりにした。



 「クローゼットの中に……部屋……?シーラ、これが世に言う隠し部屋……という訳でも無さそうだな……」



 「あぁ、私も長い事この魔王城に住んでいるけど……こんな真っ白な部屋……初めて見た……」



 長い事、魔王城で働いて来た四天王シーラだが、こんな広大な白い部屋は初めて見たという。その驚いた様子から、嘘はついていないとフォルスも納得していた。



 「でもまさか、クローゼットの扉までも迷宮として、扱われているとはな……」



 「いったい……この部屋は何なんだ…………?」



 「それは勿論、あなた方の死に場所ですよ。こんな真っ白な部屋に、あなた方の墓が立てられるなら、それこそ本望だと思いますよ?」



 「「!!?」」



 フォルスとシーラは、クローゼットから広大な白い部屋へと、足を踏み入れた。その瞬間、何処からともなく自分達では無い声が響き渡った。フォルスとシーラの二人は、声のした方向へと顔を向ける。



 「お、お前は…………!!」



 「久し振りだな…………“ラクウン”」



 「別れてからまだ、一時間十三分しか経っていません。その事から、久し振りという言葉は適切ではありません」



 そこにいたのは、エジタスの仲間の一人である“ラクウン”だった。その容姿は初老男性で、凛々しい顔立ちのいつも通りの容姿であった。そんなラクウンは、非常に落ち着いた態度で、シーラの発言に訂正を入れて来た。



 「相変わらず……細かいな……私にとって、一時間以上の経過は久し振りのカウントになるんだよ」



 「成る程………つまりシーラさんは、別れてから一時間以上経過した後、再開するとなると、既にかなりの年月が経った様に感じている……という訳なのですね?」



 「かぁー、そう言う頭の固い所も、相変わらずだな!!少しは冗談っていうのを理解しろよ!!」



 「すみません、こればかりは私の性格なので、直す事は不可能なのです」



 「だから……はぁー、もういいよ……これ以上話していても、時間の無駄だな」



 こうしたラクウンの、物事を何でも真面目に捉えてしまう性格が、シーラは大嫌いだった。どんな冗談でも真面目に捉えてしまう為、下手に話す事が出来ない。



 「シーラ……ずっと気になっていたんだが……お前は、あの男の事を知っているのか?」



 「…………あいつの名前はラクウン、元カルド王国国王の側近で、私達四天王と初めて出会ったのは、カルド王国国王と魔王であるサタニア様が、内密な人間と魔族の停戦協定を結んだ時だった。だがまさか、主君のカルド王を裏切るとは考えもしなかったよ」



 「裏切った訳ではありません。元々、私の主君はカルド王では無く、我が王であるエジタス様なのです」



 ラクウンは目を瞑りながら両手を広げ、天を仰ぐかの様にエジタスの事を、“我が王”と公言した。



 「エジタス……あいつの事を王と呼ぶなんて……ラクウン、お前はどうかしているよ」



 「……なんですって?」



 「あいつは王の器じゃない。魔王様を騙し討ちして、只の卑怯者だ」



 シーラは、ラクウンがエジタスの事を我が王と称するのが、気に食わなかった。同じ四天王として信じてきたのに、エジタスは魔王サタニアを裏切った。そんなエジタスを王と称えるのは、シーラにとって何よりも気に食わなかった。



 「黙りなさい。我が王の侮辱は私が許しません!!」



 「「!!!」」



 凄まじい威圧感。シーラに、自身が仕えるエジタスを侮辱された途端、ラクウンからこれまでに味わった事が無い程の、威圧を直接肌に感じ取った。



 「それ以上、我が王を侮辱して見なさい……骨の髄まで消し炭にしますよ…………」



 「へっ、良い目してんじゃねぇか……頭の固いお前でも、そんな目が出来るんだな……」



 ラクウンの目、それは殺意を抱いた目。自身の敬愛する人物を侮辱された事によりラクウンは、フォルスとシーラの二人に殺意の目を向けていた。



 「そうでなくちゃ、面白くない!!」



 「ま、待てシーラ!!一人で行動するな!!」



 フォルスの言葉を無視し、シーラは黒い槍を片手に、ラクウンへと駆け寄る。



 「ラクウン、お前の実力……確かめさせて貰うぜ!!」



 目にも止まらぬ速さで近づいたシーラは、自身の槍をラクウン目掛けて突き出した。



 「…………それは、こちらの台詞ですよ…………」



 「…………えっ?」



 シーラが槍を突き出したその瞬間、ラクウンは一瞬でシーラの懐に入り込み、腹部に強烈な拳を叩き込んだ。そのあまりの速さに、シーラは自身が殴られた事に気が付くまで数秒掛かった。



 「…………がはぁ!!?」



 「シーラ!!何だ……何が起こったんだ!?」



 フォルスとの戦いで鎧を失っていたシーラは、まともにラクウンの拳を食らってしまった。その場に倒れ、思わず殴られた腹部を押さえる。遠くから見ていたフォルスには、何が起こったのか全く理解出来なかった。



 「ふぐっ……うぐっ…………!!」



 「この程度ですか?魔王軍四天王と言っても、大した事はありませんね…………」



 ラクウンは、腹部を押さえ痛みに耐えるシーラを見下ろしながら、呆れた表情で呟いた。



 「な、嘗めるな!!スキル“黄竜”!!」



 “黄竜”それは、中国の伝承五行思想に現れる黄色の竜。シーラの職業であるドラゴンスレイヤーのスキルの中でも出が早く、とても使いやすいスキル。その場に倒れながらも、スキルで光輝く槍をラクウン目掛けて突き刺す。



 「別に嘗めていませんよ。充分に警戒した上で言っているのです」



 「ぐぼっ!!」



 だがしかし、突き刺す前にラクウンの右足が倒れているシーラを蹴り飛ばした。



 「シーラ!!大丈夫か!?」



 蹴り飛ばされたシーラを、フォルスが受け止め安否を確かめる。



 「今度は俺が行く!!スキル“ロックオン”」



 フォルスの久し振りのスキル。ラクウンの体に、ターゲットマーカーが表示される。



 「これで絶対に外さない……更に、スキル“急所感知”」



 すると、ラクウンに表示されたターゲットマーカーは、ラクウンの左胸に移動した。



 「食らえ!!」



 フォルスは弓を構え、ラクウン目掛けて矢を放った。



 「…………我が王が言った通りですね……あなたの攻撃は一番分かりやすい……」



 「な、何!?」



 放たれた矢は、真っ直ぐとラクウンの左胸目掛けて飛んで行った。しかし、当たる直前にラクウンが片手で、飛んで来た矢をキャッチした。



 「お返ししますよ」



 そう言うとラクウンは、キャッチした矢の向きを変えて、フォルス目掛けて投げ返した。その速さは弓で放った時よりも速く、フォルスの左胸に突き刺さった。



 「ぐぁああああ!!!」



 「フォルス!!」



 フォルスは悶え苦しみながら、左胸に刺さった矢を抜き取る。



 「さて、次はどちらの方が私と戦って下さるのですか?勿論、両方でも構いませんよ?」



 「はぁ……はぁ……まさか……ここまで差があるとは……」



 「くそっ!!強すぎる……!!」



 手も足も出ない。圧倒的な実力差の前に、フォルスとシーラは窮地に立たされるのであった。
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