270 / 300
最終章 笑顔の絶えない世界
告白し続ける
しおりを挟む
「はぁ……はぁ……不味いな……片足を失ってしまった……」
アルシアは窮地に立たされていた。エジタスの攻撃に、何とか命を繋ぎ止める事が出来たが、その代償として片足を失ってしまった。
「(“衆合地獄”で回復は出来る……だが、そんな悠長な事をしている暇は無いな……取り敢えず、今は一刻も速くここから離れなければ!!)」
「何故平和を望まない……」
片足を失ってしまったアルシアは、これからの行動に思案を巡らせる。そんな中、エジタスは再び腕を巨大化させると、アルシア目掛けてその拳を叩き込んで来た。
「くそっ!!」
避けられない。そう悟ったアルシアは自身の両刀を、迫り来る拳に勢い良く突き刺した。
「がはぁ!!?」
「どうして不幸になろうとする……」
しかし、それでも拳の勢いは止まらなかった。痛みを感じていないのか、両刀が深く突き刺さったまま、拳をアルシアに叩き込んだ。拳は、全身に重く負荷を掛ける。骨が軋む。あばらの骨は何本か折れ、頭蓋骨にはひびが入った。
「あがぁ……ぐぁ……!!」
「このまま潰れろ……」
頭蓋骨に入ったひびが、更に深さを増す。このままでは、頭蓋骨は砕かれてしまう。そうなれば、最早回復する事は不可能になってしまう。だからと言って、この負荷を掛けられている中からの脱出は、非常に困難な物である。アルシアは、自身の死を覚悟した。
「スキル“ロストブレイク”!!」
「!!?」
突如、エジタスの体に強烈な一撃が叩き込まれた。強烈な一撃に怯んだエジタスは、力を一瞬だけ緩めた。
「サタニア!!」
「分かっているよ!!」
その一瞬の隙を突いてサタニアが、負荷を掛けている拳から、アルシアを引きずり出し助け出した。
「アルシア!!大丈夫!?」
「あ、あら……魔王ちゃん……無事だったのね……良かった……わ……」
「それはこっちの台詞だよ!!無事で本当に良かった…………」
サタニアは、アルシアを強く抱き締めて、無事だった事に喜びを噛み締めた。
「あのぉおおお!!お取り込み中悪いですけどぉおおお!!そろそろこちらを手伝って下さぁあああい!!!」
サタニアが喜びを噛み締めている中、真緒は一人でエジタスの相手をしていた。叩き込まれるエジタスの拳を、純白の剣で何とか押さえ込んでいた。
「あっ、ご、ごめん!!今行く!!」
「魔王ちゃん……」
真緒の手助けに行こうとするサタニアを、アルシアが呼び止める。アルシアの声に、サタニアは振り返った。
「エジタスちゃんに……あなたの愛を……全力でぶつけなさい!!」
「うん!!」
アルシアからの後押しを貰い、サタニアは真緒の元へと駆け寄る。
「スキル“ブラックアウト”!!」
「…………っ!!」
サタニアのスキルに、エジタスは超人的な跳躍でその場から離れた。それによりスキル自体は外れたが、真緒を助け出す事が出来た。
「大丈夫?」
「遅いですよ。これから愛をぶつけると言うのに、私だけでは意味が無いんですから……」
「ごめんごめん」
遅れた事を弄りながら、真緒とサタニアはエジタスに向けて武器を構えた。
「そんなに戦いが好きか……なら、望み通りに戦ってやろう……」
対してエジタスは、腕だけで無く、全身を巨大化させた。その身長は、ハナコやゴルガを凌いだ。
「あの世で後悔するがいい……」
「「!!?」」
一瞬の出来事だった。その場から離れ、距離を置いていた筈のエジタスが、瞬く間に間合いを詰めて二人の目の前に現れた。そして流れる様に、右手の拳がサタニア目掛けて叩き込まれる。
「……っ!!」
サタニアは咄嗟に、持っていたティルスレイブを盾にした。しかし叩き込まれた衝撃により、後方へと吹き飛ばされる。
「サタニア!!?」
「人の心配をしている場合か?」
「!!!」
吹き飛ばされたサタニアの安否を心配するあまり、目の前に拳が迫っていた事に、声を掛けられるまで気付かなかった。
「スキル“乱激斬”!!」
真緒は、迫り来る拳に無数の斬激を放った。無数の斬激が拳の肉を削ぐが、蚊に刺された程度であった。
「うぉおおおおお!!!」
「無駄だ。お前の実力では、この拳を破壊する事は…………!?」
エジタスが叩き込んだ拳は、真緒による無数の斬激で少しばかり、右にずれていた。それにより、拳は真緒には当たらずに床に叩き付けられた。
「(まさか……今のスキルは、俺の拳を破壊する為では無く、拳の軌道をずらす為だったのか!?)」
「隙あり!!スキル“ロストブレイク”!!」
拳が外れた事により、隙が生まれたエジタス。そんなエジタス目掛けて、真緒が渾身の一撃を叩き込んだ。
「ぐっ!!」
しかし、エジタスはもう片方の腕で真緒の一撃を防いだ。
「残念だっ「サタニア!!今だ!!」……何だと!?」
突然真緒がその場にしゃがみ込んだ。すると、後方から吹き飛ばされたサタニアが駆け寄り、真緒の背中を土台にして空中へと飛び上がった。
「はぁあああああ!!!」
飛び上がったサタニアは、ティルスレイブを振り上げて、勢い良くエジタスの頭目掛けて振り下ろした。
「遅い!!」
「!!?」
エジタスは、サタニアに向けて口を開いた。すると舌が、まるで生き物の様に動き出し、弾丸の速さでサタニアの頭を貫いた。
「そんな……サタニア!!」
「お前達の力など、所詮この程度……勝ち目など無いんだよ!!」
その時、頭を貫かれた筈のサタニアが煙の様に消えて無くなった。
「な、何!!?」
「“ダーク・イリュージョン”」
「「!!!」」
エジタスが貫いたのは、サタニアの魔法によって生成された分身だった。本物は既に、エジタスの背後に回っていたのだ。
「し、しまった!!」
「“ブラック・ファンタジア”!!」
サタニアが魔法を唱えると、エジタスを囲う様に無数の黒い玉が生成された。黒い玉は、まるで踊っているかの様にエジタスを中心に、上下に揺れながら回り始めた。
「くそっ!!」
エジタスは、超人的な跳躍でブラック・ファンタジアから逃れようとする。しかし、ブラック・ファンタジアはエジタスを追跡する様に、同じ速度でついて来ていた。
「残念だったね。ブラック・ファンタジアからは逃れられないよ!!」
「…………っ!!」
エジタスを囲んだ無数の黒い玉が、空中で一斉に襲い掛かる。
「ぐっ……おおおおお!!!」
「まだ終わりじゃないよ!!ダーク・イリュージョンで作り出した分身は、まだ残っている!!マオ!!」
「!!……分かりました!!」
サタニアの言葉を理解した真緒は、再びその場にしゃがみ込んだ。すると、サタニアの分身である二人が、真緒の背中を土台にして飛び上がった。
「「行けぇえええええ!!!」」
空中では、未だにブラック・ファンタジアを受けて、身動きの取れないエジタス。そんなエジタスよりも高く飛び上がった分身二人は、持っていた武器を振り上げて勢いのまま、エジタス目掛けて振り下ろした。
「がはぁ!!!」
分身二人から、強烈な一撃を叩き込まれたエジタスは、そのまま床へと激突した。床はひび割れ、土煙が舞い上がる。
「決まった!!」
「分身はスキルや魔法は扱えないけど、身体能力はそのまま……つまり僕の力を二人分食らった事になる……どうなる…………」
煙が晴れると、そこにはエジタスが立っていた。しかし、体には分身二人の一撃による大きな穴が空いていた。
「これでも駄目か……」
「ですが、かなりのダメージは与える事が出来た筈です」
「はぁー、二千年間……ずっと“エジタス”が動いていたから……随分と鈍ってしまった様だ……“再生”」
「「!!!」」
二人は目を疑った。エジタスの体に空いた筈の穴が、見る見る内に塞がっていく。まるで、巻き戻しの映像を見せられているかの様に、とてもスムーズに塞がってしまった。
「そ、そんな……あんなに苦労してダメージを与えたのに……」
「骨肉魔法……あんな一瞬で傷を塞いでしまうだなんて……禁じられた魔法って言われるだけはあるね……」
「ほぅ、骨肉魔法の事を既に知っていたか……なら分かるだろ?お前達では、俺に勝つのは不可能なんだよ!!」
「私達は、勝つ事が目的ではありません!!」
「…………何?」
「僕達は、エジタスから返事を返して欲しいだけなんだ!!」
そう、真緒とサタニアは勝つ事が目的では無い。先程の戦闘も、エジタスを負傷させて会話のしやすい状態にしようとしただけだったのだ。
「返事……?何の返事だ?」
「そ、それは……その……こ、告白……」
「…………はぁ?」
「ほ、ほら……僕達……エジタスの事が大好きって言ったじゃないか……だからその……返事を聞かせて欲しいなって……」
真緒とサタニアは、頬をほんのり赤く染めて恥ずかしがりながらも、エジタスに告白の返事を聞いた。
「そうか、あの時の返事か。そう言えば返事がまだだったな。そうだな、色々あったが……俺はお前達の事が……大嫌いだ」
「「!!!」」
冷たい言葉。気遣いも暖かみも無い、冷めた言葉。真緒とサタニアの心に深く突き刺さる。
「この際だからハッキリ言おう。俺はお前達と初めて会った時から、大嫌いだった。まるで自分が、この世で最も不幸な存在だと言わんばかりに泣いて、泣いて、泣きじゃくって……正直、吐き気を覚えたぞ……」
「「…………」」
「お前達が、誰を好きになろうが自由だ。だが、俺は決してお前達を好きになる事は無い…………」
エジタスの言葉に、俯いてしまった真緒とサタニア。心が痛い。針で突き刺された様に、ズキズキと痛む。
「そうですか……師匠の気持ちは良く分かりました……」
「最初から分かっていた……エジタスの気持ちが、僕達に向いていない事……だから決めた……もう迷わない!!」
「(そうだ……それで良い。俺に殺意を向けろ……怒りがお前達を強くする……そして、強くなったお前達を完膚無きまでに叩き潰す。それが、俺の計画を邪魔したお前達の償いとしてやる)」
激しい戦闘が始まる。そう予感したエジタスは、拳を構えた。
「「“好き”って言って貰えるまで、何度でも告白する!!」」
「…………はぁ?」
予想外の答え。エジタスは、思わず自分の耳を疑ってしまった。
「好きな人から、嫌いって言われるのは辛いけど……」
「最後に“好き”って言って貰えるなら、苦じゃありません!!」
「ふ、ふざけるな!!」
エジタスは、真緒とサタニアの言葉に激怒した。怒りのあまり、大声を張り上げる。
「俺は大嫌いと返事をした。それなのに何故、そう言う結論になった!!?」
「理由なんて単純です……私達は、師匠の事を心から愛しているからです!!」
「例え何十、何百、何千振られても……諦めない……必ずエジタスの口から“好き”って言って貰うまで、僕達は告白し続ける!!」
「……どうして……そうなる……」
頭が痛い。自分の予想とは反した結論に、頭を抱えるエジタス。
「師匠……私は……」
「エジタス……僕は……」
「「あなたの事が大好きです!!」」
「…………もういい……」
そう言うと、巨大化していたエジタスの体は、元の大きさへと戻った。
「お前達の気持ちは、よく分かった……そんなに死に急ぎたいか……それなら、本気で相手をしてやるよ!!」
「「!!?」」
すると、エジタスの両腕が変形し始める。その形は、ある兵器にとてもよく似ていた。筒状で中は空洞、それは紛れもない“大砲”であった。
「剣VS大砲……さぁ、一方的な戦いを始めようじゃないか?」
アルシアは窮地に立たされていた。エジタスの攻撃に、何とか命を繋ぎ止める事が出来たが、その代償として片足を失ってしまった。
「(“衆合地獄”で回復は出来る……だが、そんな悠長な事をしている暇は無いな……取り敢えず、今は一刻も速くここから離れなければ!!)」
「何故平和を望まない……」
片足を失ってしまったアルシアは、これからの行動に思案を巡らせる。そんな中、エジタスは再び腕を巨大化させると、アルシア目掛けてその拳を叩き込んで来た。
「くそっ!!」
避けられない。そう悟ったアルシアは自身の両刀を、迫り来る拳に勢い良く突き刺した。
「がはぁ!!?」
「どうして不幸になろうとする……」
しかし、それでも拳の勢いは止まらなかった。痛みを感じていないのか、両刀が深く突き刺さったまま、拳をアルシアに叩き込んだ。拳は、全身に重く負荷を掛ける。骨が軋む。あばらの骨は何本か折れ、頭蓋骨にはひびが入った。
「あがぁ……ぐぁ……!!」
「このまま潰れろ……」
頭蓋骨に入ったひびが、更に深さを増す。このままでは、頭蓋骨は砕かれてしまう。そうなれば、最早回復する事は不可能になってしまう。だからと言って、この負荷を掛けられている中からの脱出は、非常に困難な物である。アルシアは、自身の死を覚悟した。
「スキル“ロストブレイク”!!」
「!!?」
突如、エジタスの体に強烈な一撃が叩き込まれた。強烈な一撃に怯んだエジタスは、力を一瞬だけ緩めた。
「サタニア!!」
「分かっているよ!!」
その一瞬の隙を突いてサタニアが、負荷を掛けている拳から、アルシアを引きずり出し助け出した。
「アルシア!!大丈夫!?」
「あ、あら……魔王ちゃん……無事だったのね……良かった……わ……」
「それはこっちの台詞だよ!!無事で本当に良かった…………」
サタニアは、アルシアを強く抱き締めて、無事だった事に喜びを噛み締めた。
「あのぉおおお!!お取り込み中悪いですけどぉおおお!!そろそろこちらを手伝って下さぁあああい!!!」
サタニアが喜びを噛み締めている中、真緒は一人でエジタスの相手をしていた。叩き込まれるエジタスの拳を、純白の剣で何とか押さえ込んでいた。
「あっ、ご、ごめん!!今行く!!」
「魔王ちゃん……」
真緒の手助けに行こうとするサタニアを、アルシアが呼び止める。アルシアの声に、サタニアは振り返った。
「エジタスちゃんに……あなたの愛を……全力でぶつけなさい!!」
「うん!!」
アルシアからの後押しを貰い、サタニアは真緒の元へと駆け寄る。
「スキル“ブラックアウト”!!」
「…………っ!!」
サタニアのスキルに、エジタスは超人的な跳躍でその場から離れた。それによりスキル自体は外れたが、真緒を助け出す事が出来た。
「大丈夫?」
「遅いですよ。これから愛をぶつけると言うのに、私だけでは意味が無いんですから……」
「ごめんごめん」
遅れた事を弄りながら、真緒とサタニアはエジタスに向けて武器を構えた。
「そんなに戦いが好きか……なら、望み通りに戦ってやろう……」
対してエジタスは、腕だけで無く、全身を巨大化させた。その身長は、ハナコやゴルガを凌いだ。
「あの世で後悔するがいい……」
「「!!?」」
一瞬の出来事だった。その場から離れ、距離を置いていた筈のエジタスが、瞬く間に間合いを詰めて二人の目の前に現れた。そして流れる様に、右手の拳がサタニア目掛けて叩き込まれる。
「……っ!!」
サタニアは咄嗟に、持っていたティルスレイブを盾にした。しかし叩き込まれた衝撃により、後方へと吹き飛ばされる。
「サタニア!!?」
「人の心配をしている場合か?」
「!!!」
吹き飛ばされたサタニアの安否を心配するあまり、目の前に拳が迫っていた事に、声を掛けられるまで気付かなかった。
「スキル“乱激斬”!!」
真緒は、迫り来る拳に無数の斬激を放った。無数の斬激が拳の肉を削ぐが、蚊に刺された程度であった。
「うぉおおおおお!!!」
「無駄だ。お前の実力では、この拳を破壊する事は…………!?」
エジタスが叩き込んだ拳は、真緒による無数の斬激で少しばかり、右にずれていた。それにより、拳は真緒には当たらずに床に叩き付けられた。
「(まさか……今のスキルは、俺の拳を破壊する為では無く、拳の軌道をずらす為だったのか!?)」
「隙あり!!スキル“ロストブレイク”!!」
拳が外れた事により、隙が生まれたエジタス。そんなエジタス目掛けて、真緒が渾身の一撃を叩き込んだ。
「ぐっ!!」
しかし、エジタスはもう片方の腕で真緒の一撃を防いだ。
「残念だっ「サタニア!!今だ!!」……何だと!?」
突然真緒がその場にしゃがみ込んだ。すると、後方から吹き飛ばされたサタニアが駆け寄り、真緒の背中を土台にして空中へと飛び上がった。
「はぁあああああ!!!」
飛び上がったサタニアは、ティルスレイブを振り上げて、勢い良くエジタスの頭目掛けて振り下ろした。
「遅い!!」
「!!?」
エジタスは、サタニアに向けて口を開いた。すると舌が、まるで生き物の様に動き出し、弾丸の速さでサタニアの頭を貫いた。
「そんな……サタニア!!」
「お前達の力など、所詮この程度……勝ち目など無いんだよ!!」
その時、頭を貫かれた筈のサタニアが煙の様に消えて無くなった。
「な、何!!?」
「“ダーク・イリュージョン”」
「「!!!」」
エジタスが貫いたのは、サタニアの魔法によって生成された分身だった。本物は既に、エジタスの背後に回っていたのだ。
「し、しまった!!」
「“ブラック・ファンタジア”!!」
サタニアが魔法を唱えると、エジタスを囲う様に無数の黒い玉が生成された。黒い玉は、まるで踊っているかの様にエジタスを中心に、上下に揺れながら回り始めた。
「くそっ!!」
エジタスは、超人的な跳躍でブラック・ファンタジアから逃れようとする。しかし、ブラック・ファンタジアはエジタスを追跡する様に、同じ速度でついて来ていた。
「残念だったね。ブラック・ファンタジアからは逃れられないよ!!」
「…………っ!!」
エジタスを囲んだ無数の黒い玉が、空中で一斉に襲い掛かる。
「ぐっ……おおおおお!!!」
「まだ終わりじゃないよ!!ダーク・イリュージョンで作り出した分身は、まだ残っている!!マオ!!」
「!!……分かりました!!」
サタニアの言葉を理解した真緒は、再びその場にしゃがみ込んだ。すると、サタニアの分身である二人が、真緒の背中を土台にして飛び上がった。
「「行けぇえええええ!!!」」
空中では、未だにブラック・ファンタジアを受けて、身動きの取れないエジタス。そんなエジタスよりも高く飛び上がった分身二人は、持っていた武器を振り上げて勢いのまま、エジタス目掛けて振り下ろした。
「がはぁ!!!」
分身二人から、強烈な一撃を叩き込まれたエジタスは、そのまま床へと激突した。床はひび割れ、土煙が舞い上がる。
「決まった!!」
「分身はスキルや魔法は扱えないけど、身体能力はそのまま……つまり僕の力を二人分食らった事になる……どうなる…………」
煙が晴れると、そこにはエジタスが立っていた。しかし、体には分身二人の一撃による大きな穴が空いていた。
「これでも駄目か……」
「ですが、かなりのダメージは与える事が出来た筈です」
「はぁー、二千年間……ずっと“エジタス”が動いていたから……随分と鈍ってしまった様だ……“再生”」
「「!!!」」
二人は目を疑った。エジタスの体に空いた筈の穴が、見る見る内に塞がっていく。まるで、巻き戻しの映像を見せられているかの様に、とてもスムーズに塞がってしまった。
「そ、そんな……あんなに苦労してダメージを与えたのに……」
「骨肉魔法……あんな一瞬で傷を塞いでしまうだなんて……禁じられた魔法って言われるだけはあるね……」
「ほぅ、骨肉魔法の事を既に知っていたか……なら分かるだろ?お前達では、俺に勝つのは不可能なんだよ!!」
「私達は、勝つ事が目的ではありません!!」
「…………何?」
「僕達は、エジタスから返事を返して欲しいだけなんだ!!」
そう、真緒とサタニアは勝つ事が目的では無い。先程の戦闘も、エジタスを負傷させて会話のしやすい状態にしようとしただけだったのだ。
「返事……?何の返事だ?」
「そ、それは……その……こ、告白……」
「…………はぁ?」
「ほ、ほら……僕達……エジタスの事が大好きって言ったじゃないか……だからその……返事を聞かせて欲しいなって……」
真緒とサタニアは、頬をほんのり赤く染めて恥ずかしがりながらも、エジタスに告白の返事を聞いた。
「そうか、あの時の返事か。そう言えば返事がまだだったな。そうだな、色々あったが……俺はお前達の事が……大嫌いだ」
「「!!!」」
冷たい言葉。気遣いも暖かみも無い、冷めた言葉。真緒とサタニアの心に深く突き刺さる。
「この際だからハッキリ言おう。俺はお前達と初めて会った時から、大嫌いだった。まるで自分が、この世で最も不幸な存在だと言わんばかりに泣いて、泣いて、泣きじゃくって……正直、吐き気を覚えたぞ……」
「「…………」」
「お前達が、誰を好きになろうが自由だ。だが、俺は決してお前達を好きになる事は無い…………」
エジタスの言葉に、俯いてしまった真緒とサタニア。心が痛い。針で突き刺された様に、ズキズキと痛む。
「そうですか……師匠の気持ちは良く分かりました……」
「最初から分かっていた……エジタスの気持ちが、僕達に向いていない事……だから決めた……もう迷わない!!」
「(そうだ……それで良い。俺に殺意を向けろ……怒りがお前達を強くする……そして、強くなったお前達を完膚無きまでに叩き潰す。それが、俺の計画を邪魔したお前達の償いとしてやる)」
激しい戦闘が始まる。そう予感したエジタスは、拳を構えた。
「「“好き”って言って貰えるまで、何度でも告白する!!」」
「…………はぁ?」
予想外の答え。エジタスは、思わず自分の耳を疑ってしまった。
「好きな人から、嫌いって言われるのは辛いけど……」
「最後に“好き”って言って貰えるなら、苦じゃありません!!」
「ふ、ふざけるな!!」
エジタスは、真緒とサタニアの言葉に激怒した。怒りのあまり、大声を張り上げる。
「俺は大嫌いと返事をした。それなのに何故、そう言う結論になった!!?」
「理由なんて単純です……私達は、師匠の事を心から愛しているからです!!」
「例え何十、何百、何千振られても……諦めない……必ずエジタスの口から“好き”って言って貰うまで、僕達は告白し続ける!!」
「……どうして……そうなる……」
頭が痛い。自分の予想とは反した結論に、頭を抱えるエジタス。
「師匠……私は……」
「エジタス……僕は……」
「「あなたの事が大好きです!!」」
「…………もういい……」
そう言うと、巨大化していたエジタスの体は、元の大きさへと戻った。
「お前達の気持ちは、よく分かった……そんなに死に急ぎたいか……それなら、本気で相手をしてやるよ!!」
「「!!?」」
すると、エジタスの両腕が変形し始める。その形は、ある兵器にとてもよく似ていた。筒状で中は空洞、それは紛れもない“大砲”であった。
「剣VS大砲……さぁ、一方的な戦いを始めようじゃないか?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる