笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

信じていれば

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 両腕を大砲に変形させたエジタスは、真緒とサタニアに、変形させた両腕を向ける。



 「た、大砲!?」



 「あ、あんなの形だけだよ!!本当に玉が出る筈が無い!!」



 出る筈が無い。例え骨肉魔法が全てを可能とする魔法だとしても、大砲の様に鉄の玉を発射出来る筈が無い。真緒とサタニアの額から、緊張の汗が流れ落ちる。



 「本当にそう思うか?」



 「「!!?」」



 すると、右腕の空洞の奥が赤く光輝き始める。そして次の瞬間、真緒とサタニア目掛けて赤く丸い物体が、勢い良く放たれた。



 「避けて!!」



 「……っ!!」



 真緒の掛け声に反応して、真緒とサタニアの二人は咄嗟に避ける。放たれた赤く丸い物体は、そのまま壁に激突してめり込んだ。



 「あ、あれって……」



 「肉の……塊!?」



 二人が振り返ると、壁には赤い血が滴る肉の塊がめり込んでいた。



 「確かに鉄の玉は発射出来ない……だが、体内の肉を凝縮させて発射すれば、鉄の玉に酷似した物……もしくはそれ以上の物にして、発射させる事が出来るのさ」



 「体内の肉を……鉄の玉の代わりにした……?」



 「本当に……全てを可能とする魔法の様だね……」



 これで実質、剣VS大砲の構図が出来上がってしまった。禁じられた魔法に対して、上手く立ち回れると感じた矢先、二人は再び窮地に立たされる結果となった。



 「それじゃあ、どんどん行くぞ!!」



 「「!!!」」



 すると右腕の奥の空洞が、再び赤く光輝き始める。そして、先程と同様に凝縮された肉の塊が発射された。



 「「…………っ!!」」



 真緒とサタニアは、迫り来る肉の塊に対してそれぞれが、左右に分かれて回避した。



 「まだだ!!」



 続けざまにエジタスは、右側に避けたサタニア目掛けて肉の塊を発射した。



 「残念だけど、もう見切ったよ!!」



 するとサタニアは、迫り来る肉の塊を容易く避けて見せた。



 「隙ありです!!」



 「…………」



 肉の塊が発射されたと同時に、左側に避けた真緒が飛び出し、エジタス目掛けて剣で斬り掛かる。するとエジタスは、左腕を迫り来る真緒に向けた。次の瞬間、左腕の空洞の奥が白く光輝き始める。そして、白く丸い物体が放たれた。



 「サタニアの言う通り、もう見切りました!!その攻撃、威力は高い様ですが今までの攻撃に比べれば、かなり遅い……簡単に避けられます!!」



 そう言うと、真緒もサタニアの時と同じ様に、迫り来る白く丸い物体を容易く避けて見せた。そして、隙の出来たエジタス目掛けて剣を振り上げる。



 「はぁあああああ!!!」



 「…………この俺が、何の対策もしてないと思っているのか?」



 「!!?」



 その時、放たれた白く丸い物体が壁にぶつかった。その瞬間、白く丸い物体は弾け飛び、いくつもの白い突起物が真緒の背中に突き刺さった。



 「マオ!!!」



 「が……ぁああ……!!?」



 「……骨肉魔法は全てを可能とする……俺が操れるのは肉だけじゃない……骨も同様に操れるのさ」



 「「骨!?」」



 エジタスの左腕から放たれた白く丸い物体は、体内の骨が凝縮された物だった。肉と違って、骨は上手く凝縮されない。それを無理矢理凝縮させて放つ。放たれた骨の塊に、外部から衝撃を与える事で、風船が破裂する様に凝縮された骨が一斉に弾け飛ぶ仕組みである。その弾け飛んだ骨の一部が、真緒の背中に刺さったのだ。



 「残念だが、骨肉魔法は無敵だ」



 「「…………」」



 威力のある肉の塊と、弾け飛ぶ骨の塊。二つの塊を自在に操る事で、エジタスは無敵になった。単に避けるだけでは、先程の様に痛手を負ってしまう。



 「“ブラックファンタジア”」



 「!!!」



 サタニアが魔法を唱えると、エジタスを囲う様に無数の黒い玉が生成された。黒い玉は、まるで踊っているかの様にエジタスを中心に、上下に揺れながら回り始めた。



 「そっちが遠距離なら、こっちも遠距離で対応するだけだ!!」



 「成る程……だが、そちらのマオ……“さん”は遠距離攻撃が扱えないと、記憶しているが?」



 「…………」



 真緒、最大の弱点。これまでの旅で、様々なスキルや魔法を扱える様になった真緒。しかし、それらはどれも近距離専用の攻撃、良くても中距離が限界であった。とても遠距離とは言い難い。



 「だとしても……僕がマオの代わりに遠距離攻撃を仕掛ける!!」



 エジタスを囲んでいた無数の黒い玉が、一斉に襲い掛かる。エジタスは避ける素振りも見せず、立ち尽くしていた。そして、無数の黒い玉がエジタスに全弾命中する。当たった衝撃で、黒い煙が立ち込める。



 「どうなった!?」



 「…………!!サタニア!!避けて!!」



 「!!?」



 黒い煙が立ち込める中、突如煙の中から巨大な肉の塊が飛んで来た。



 「げぼっ!!!」



 「サタニア!!」



 反応が遅れ、飛んで来た肉の塊をまともに食らってしまったサタニア。勢いのまま、肉の塊と供に壁に激突した。



 「ど、ど……うして……?」



 「遠距離攻撃……確かに良い手だ……特に“ブラックファンタジア”の様な、回避が不可能な魔法は有効だ。だがな……さっきも言った通り……」



 立ち込めていた黒い煙が、徐々に晴れていく。それによって、エジタスの状態も明らかとなる。



 「……俺が何の対策もしていないと思っているのか?」



 「「!!!」」



 エジタスの全身は、白い鎧に覆われていた。白い鎧、それは紛れもない骨だった。骨を鎧の様に着込んでいた。それにより、エジタスは全く傷を負っていなかった。



 「骨自体に痛覚は存在しない……痛みを感じる骨膜さえ取り除いてしまえば、それなりの鎧に早変わり……という訳だ」



 一説によれば、骨は強化プラスチックに匹敵すると言われている。また、普通の鎧と違って非常に軽い。結果エジタスは、軽くて硬い鎧を身に付けているという事となる。



 「そんな……遠距離でも……駄目だなんて……」



 「くそっ!!」



 真緒は歯を食い縛り、持っていた純白の剣を握り直すと、一心不乱にエジタス目掛けて走り出した。



 「だ、駄目だマオ……闇雲に行っちゃ……」



 「そう言う事だ……好奇心は猫を殺す……いくら俺が変わっているからって、やたらめったら攻撃を仕掛けるのは、得策とは言えないぞ?」



 そう言いながらエジタスは、右腕、左腕の両方を、迫り来る真緒に向ける。すると、右腕の空洞と左腕の空洞のそれぞれが赤、白と光輝き始める。そして次の瞬間、右腕からは肉の塊、左腕からは骨の塊が発射される。



 「当たっても傷を負う。避けても傷を負う。どっちに転んでも、俺の勝利は確実だ!!」



 「本当にそうかな?」



 「「「!!?」」」



 三人とは別の声が聞こえる。声のした方向に目線を向けると、そこにはハナコ、リーマ、フォルスの三人が立っていた。



 「み、皆!!?」



 「マオぢゃん!!助太刀に来だだよぉ!!」



 「その二つの玉は俺達に任せて、お前は前だけ見てろ!!」



 「皆……ありがとう!!」



 真緒は、助太刀に来てくれた三人を信頼して、迫り来る肉の塊と骨の塊をそれぞれ避けた。真緒を通り過ぎた二つの玉はハナコ、リーマ、フォルスの元へと飛んで行く。



 「行くだよぉ!!スキル“鋼鉄化”!!」



 「“ウォーターボール”!!」



 すると、ハナコは全身を鋼鉄に変化させて、迫り来る肉の塊を受け止めた。対してリーマは、巨大な水の塊を生成して迫り来る骨の塊を、優しく包み受け止めた。



 「ごの位の攻撃だっだら、オラでも受げ止められるだぁ」



 「衝撃を与えると弾けてしまう……それなら、衝撃を与えずに受け止めてしまえば、問題ありませんね」



 ハナコとリーマは、余裕の笑みを見せながら二つの玉を持ち上げる。



 「う、受け止めただと……下手を打てば自身が死ぬかもしれないのに……何故、そんな博打みたいな真似が出来るんだ…………?」



 「信じているからです」



 「…………何だと?」



 気が付くと、真緒が近くまで迫って来ていた。



 「友達を……仲間を……信じているからこそ、体を張って動く事が出来る……信じていれば、いつか必ず願いは叶う!!私が……私が必ず師匠を止めて見せます!!」



 そう言うと真緒は、走りながら跳び上がり、エジタス目掛けて剣を振り上げる。



 「…………」



 エジタスは理解出来なかった。信頼、それはエジタスに欠落している感情の一つだった。最も信じていた家族に裏切られたエジタスにとって、信頼という言葉は未知の言語に等しい。またエジタスは真緒の言葉、その中のある言葉に激しい怒りを覚えた。



 “信じていれば、いつか必ず願いは叶う!!”



 「ふ……ふ……ふざけるなぁああああああああああああああああ!!!」



 「!!?」



 その瞬間、エジタスは真緒に向けて大きく胸を張った。すると、胸の中心が盛り上がり大砲の様な形状に変形した。第三の大砲である。



 「(“信じていれば、いつか必ず願いは叶う!!”だと!!?それじゃあ、ババァの……誰よりも世界の平和を信じていたババァの……いつか必ず笑顔の絶えない世界が訪れると信じていたババァの願いは……何故叶わなかったぁああああああああああああああああ!!!)」



 胸に出来た大砲の空洞の奥が、黒く光輝き始める。その輝きは、今までの輝きと比べ物にならなかった。



 「肉と骨を掛け合わせたミックスだ!!この玉は、正真正銘誰にも受け止められ無いぞ!!」



 「マオぢゃん!!」



 「マオさん!!」



 「!!!」



 空中を跳んでしまった真緒には、避ける術が無い。手詰まり。真緒は死を覚悟した。



 「おいおい、諦めるのは早過ぎるんじゃないか?」



 「フォ、フォルスさん!?」



 その時、空中に飛び上がっていたフォルスが、エジタスの胸に出来た大砲目掛けて矢を放った。放たれた矢は、大砲から玉が発射される直前に、空洞の中へと入り込んだ。



 「ぐっ!!?」



 エジタスは、フォルスの矢が大砲の中に入り込んだのを確認すると、慌てて発射を中止した。今、玉を発射してしまえば暴発する危険性がある。ハナコやリーマの様に、博打みたいな真似は出来なかった。



 「今だ!!叩き込め!!」



 「し、しまった!!!」



 「はぁあああああ!!!スキル“ロストブレイク”!!」



 発射を中止した事で、隙が生まれた。真緒は勢い良く、エジタスの頭目掛けて渾身のスキルを叩き込むのであった。
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