笑顔の絶えない世界~道楽の道化師の軌跡~

マーキ・ヘイト

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最終章 笑顔の絶えない世界

再集結

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 リーマ、フォルス、シーラ、ハナコ、ゴルガ、そして真緒。次々とエジタスに倒され、残るはサタニアだけとなってしまったその時、ジェド達が救いの手を差し伸べて来た。



 「危なかったわね」



 「あ、あなたは!!!」



 サタニアは、驚きの表情を浮かべながら差し伸べられる手を取り、ゆっくりと立ち上がった。



 「サタニア様!!」



 「クロウト!!」



 ジェド達の後ろから、戦線離脱したクロウトが、サタニアの元へと駆け寄って来た。



 「サタニア様、お怪我はありませんか!!?」



 「僕は大丈夫!!それより、クロウトの方こそ大丈夫なの!!?」



 エジタスとの激しい攻防戦の結果、逸早く体力が底を尽きたクロウトは、一時的にジェド達の元で保護されていた。



 「サタニア様が必死で戦われているのに、配下である私が呑気に休んでいる訳には行きません!!」



 「クロウト…………」



 完全な痩せ我慢である。数十分そこらで、戦える状態に戻る訳が無い。しかし、サタニアはその事に触れなかった。暗黙の了解。今は少しでも、戦力となる人員が欲しかった。



 「おい、マオ!!マオ大丈夫か!?」



 「「!!!」」



 サタニアとクロウトの二人が話し合っている中、ジェド達は倒れている真緒に向けて必死に声を掛けていた。



 「マオさん!!マオさん!!しっかりして下さい!!」



 「お主がいないと……多くの者達が悲しんでしまうぞ……」



 「目を覚まして!!あんな道化師に負けないで!!」



 「…………げほっ!!ごほっ!!」



 ジェド達の声掛けが届いたのか。咳をする形で息を吹き返した真緒。



 「マオ!!大丈夫!?」



 「サタニア……ごめんね、心配掛けちゃって……」



 「何言ってるんだ!!マオが謝る必要なんて無い!!……本当に無事で良かった……」



 サタニアは目に涙を浮かべながら、息を吹き返したマオを抱き締める。



 「マオ……」



 「ジェドさん……それに皆……」



 サタニアに抱き締められる中、真緒はジェド達と顔を合わせる。



 「皆が助けてくれたんですね……ありがとうございます」



 「助けただなんて、大袈裟だぜ」



 「その通りです。私達は、私達なりに出来る事をしただけに過ぎません」



 「ほほ。それが偶々、命を助けただけじゃな」



 「あなたには、返しきれない程の恩があります。これは恩返しのほんの一部、これだけの事で完全に恩返しが出来たとは思っていません」



 大層な事は成していない。ジェド達にとって真緒は、一生尽くしても返しきれない恩を頂いた人物なのだ。



 「あの化け物に、太刀打ち出来るかどうか分からないが……」



 「微力ながら、私達も戦いに加勢させて頂きます」



 「ほほ。ワシとドラゴンの絆の力を見せてやろうかの」



 「あいつに奪われた大切な物を取り返さないと、私の気が収まらないね」



 「皆……ありがとうございます……皆の力を合わせれば百人力です……だけど…………」



 すると真緒は、抱き締めるサタニアの両腕を優しく取り外して、静かに立ち上がる。しかしジェド達とは目を合わせず、俯いたままであった。



 「…………マオ?」



 俯く真緒に不安を覚え、サタニアが声を掛ける。すると真緒は、ゆっくりと俯いた顔を上げてジェド達に目線を合わせる。



 「師匠は……師匠は化け物でも……あいつでもありません……私の……私の大切な……“愛する人”です!!」



 「「「「!!!」」」」



 譲れない想い。真緒にとってエジタスは人生の師匠であり、かけがえのない人であり、そして心から愛する人。そんな大切な人の事を悪く言われるのは、決して気分の良い物とは言えない。



 「私は一度、師匠の容姿に対して戸惑いを見せてしまいました……でもだからこそ、師匠の本当の姿を確認した今だからこそ、この想いを師匠に伝えたい……」



 後悔先に立たず。真緒はエジタスの容姿に対して、酷く落胆してしまった。その事実は変えられない。ならば、その過去すらも乗り越えられる程の想いを伝えようと決意した。



 「…………」



 「…………えっ?」



 その時、エジタスについて語る真緒の肩をサタニアが軽く叩いた。真緒は振り返ってサタニアの方に顔を向ける。



 「忘れないで欲しいけど、僕だってエジタスの事を愛しているんだからね……」



 「あっ……えっとそれは……」



 「アルシアから教えて貰った……愛するのに性別は関係無い……大切なのはその人を愛する気持ちだ……って……」



 「サタニア…………」



 「…………負けないよ」



 「えっ?」



 するとサタニアは、真緒の胸に右拳を置いた。



 「エジタスの気持ちを手に入れるのは……僕だ。マオ、君には負けないよ」



 「…………私も……私も負けないよサタニア。師匠の心を射止めるのは、私です」



 そう言うと真緒も、サタニアの胸に右拳を置いた。



 「話は纏まったか?」



 「はい、皆の力を合わせ……ってそう言えば他の皆は!!?他の皆は無事なんでしょうか!!?」



 「シーラ!!ゴルガ!!」



 危機的状況から見事生還した二人だったが、他の仲間達の安否を未だ確かめていなかった事に気が付き、急に慌て始めた。



 「俺達がどうしたって?」



 「さすがに心配し過ぎですよ。魔王様」



 「「!!?」」



 声が聞こえた方向に、慌てて振り向く二人。するとそこにいたのは…………。



 「この通り、俺達は大丈夫だ」



 「マオさん、ご心配お掛けしました」



 「マオぢゃん!!オラ達、人魚の人達ど鳥人族の人達に助げで貰っだだぁ!!」



 「魔王様、只今戻りました」



 「オレタチハ、マダマダタタカエマス」



 トハ率いる鳥人族と、人魚達に支えられながら戻って来るフォルス、リーマ、ハナコ、シーラ、ゴルガの五人の姿であった。



 「フォルス、リーマ、ハナちゃん…………」



 「シーラ、ゴルガ……」



 「「良かったぁあああああ!!!」」



 二人は、無事に戻って来た五人の元へと駆け寄り、それぞれ抱き締め合った。



 「トハさん……ありがとうございます。皆を助けてくださって……」



 「僕からもお礼を言わせて下さい。皆さんが助けてくれなかったら、一生悔やみ続けていたと思います……」



 「お礼なんて止してくれ水臭い。困った時は助け合うのが仲間ってもんだろ」



 そう言いながらトハは、真緒とサタニアそれぞれの背中を強く何度も叩いた。



 「まぁ、何はともあれこうして全員が一度に揃う事が出来たのはチャンスだ」



 「あぁ、この人数……パワーダウンしている今のエジタスになら、そのまま押し切る事が出来る筈だ」



 「行こう皆……私達の手で、師匠を止めるんだ!!」



 真緒の言葉が、その場にいる全員の意思を強くそして固くした。一同は、真緒の言葉に首を縦に振る。



 「……それで……いったい誰が誰を止めるって……?」



 「「「「「「「!!?」」」」」」」



 気付かなかった。気配すら感じ取れなかった。その場の全員が、声のした方向に顔を向ける。するとそこには、何気無い雰囲気でエジタスが立っていた。



 「は、速い!!!」



 「あの押し寄せる波から、こんなにも速く脱出するだなんて……!!」



 「そうそう、波……全く次から次へと面倒事が増えて行く……だがここまで来たら、最後までお前達の悪足掻きに付き合ってやる……まずは厄介な波を引き起こす魚類から……」



 「!!!」



 その瞬間、エジタスの姿が一瞬の内に消えて無くなり、瞬きをした次の瞬間、人魚の女王の目の前にエジタスがその姿を現した。



 「海の藻屑になって死ね」



 「……させるかよ!!」



 すると一番側にいたジェドが、人魚の女王の目の前に現れたエジタス目掛けて持っていた剣を振りかぶる。



 「常人以下は引っ込んでろ」



 「がはっ!!?」



 しかしエジタスは、見向きもせずに片手で迫り来るジェドの腹部を殴り飛ばし、意図も簡単に対処した。



 「ドラゴン!!踏み潰すんじゃ!!」



 「グォオオオオオ!!!」



 「爬虫類は大人しく冬眠するんだな!!」



 「グガァ!!?」



 「ドラゴン!?」



 鳥人の族長とドラゴンが、エジタスを踏み潰そうと試みるが、足がエジタスに届く前にドラゴンの首元を殴られ、くっきりと後が残った。呼吸が上手く出来ず、息が苦しくなっていくドラゴンはそのまま倒れてしまった。巨大なドラゴンが倒れた事により、辺り一面に土煙が舞い上がった。



 「く、くそっ!!何も見えない!!」



 「と、取り敢えず女王様を守りましょう!!」



 土煙の影響で視界が悪くなる中、周囲を警戒しつつ、人魚の女王の側に歩み寄る一同。



 「気を付けて!!何処からエジタスが襲って来るか分からない!!全神経を集中させて、見極めるんだ!!」



 「しかしサタニア様、こう視界が悪くては……見極めるのも非常に困難です!!」



 「…………っ!!」



 クロウトの言う通り、細かい土の粒子が視界を遮るこの状況で、肉眼では捉えきれないエジタスを捉えるのは、雲を掴む様な話だ。



 「それでも……それでも何もせずじっとしているよりは、良い筈だよ!!」



 「(何もせずじっとしているよりは……そう言うのは言い訳にしか過ぎないんだよ……)」



 エジタスは、土煙が舞い上がっていない外側から状況を把握していた。そしてサタニアの言葉を小馬鹿にしていた。



 「(人魚の女王が狙われると思っている様だが……俺の狙いは“サタニア”……お前だよ)」



 そう言いながらエジタスは、周囲を警戒しているサタニアに狙いを定めながら、両足に力を込める。



 「(ティルスレイブの力は残り一回……使えば確実に死ぬ事になっているが……それでも残り一回は使える……万が一、その身を犠牲にして使われては元も子も無い……一致団結した早々に悪いが……)」



 そしてエジタスは、肉眼では捉えきれない速度で、サタニアの元へと跳んで行く。



 「…………」



 「ここで死ね」



 右腕全体に力を溜める。パワーダウンしているとは言え、ある程度力を溜めれば顔の一つや二つ、簡単に吹き飛ばせる。そしてエジタスは流れる様な動きで、サタニアの顔面目掛けて右拳を勢い良く突き出した。

































 「…………は?」



 その瞬間、エジタスの体に鋭い斬激が走った。エジタスの右腕とあばら骨数本が消し飛ばされた。
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