笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第一章 新たなる旅立ち

勧誘大作戦(前編)

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 歓迎パーティの隙を突き、ヴォイス団長の部屋に忍び込んだ真緒達。捜索の末、見事ヘッラアーデへの入会条件が記された書類を発見する。情報を頭に叩き込んだ真緒達は、その日から入会条件に従い、行動を開始するのであった。そんな奮闘する各々の様子を、簡易的なダイジェストにしてお送りしよう







***







 1.勤勉である事(どんな頼み事も喜んで引き受ける者とする)



 「おはようございます!!」



 早朝、教会に足を運んだ真緒が大きな声で挨拶を交わす。まだ他の団員は来ておらず、教会内にはヴォイス団長と真緒の二人だけだった。



 「おっ、ソルトさん!! 今日も一段と早いですね!!」



 「はい、 少しでも多くの人達が笑顔になって欲しいですから、その為にも私自身が頑張らないと」



 「うんうん!! 良い心掛けです!!」







***







 「はぁ……はぁ……これ、重いな……」



 ある日の事、一人の団員がスラム街の人達に配る為の食料が入った箱を運んでいた。しかし、相当な量が積まれており、運ぶのに苦戦を強いられていた。



 「オラも手伝うだぁ」



 「あぁ、ハラコさん。本当ですか? ありがとうございます!!」



 そんな団員にハナコは、意欲的に手伝いを志願した。二人で協力し合いながら、食料が積まれた箱を運ぶ、そんな様子を遠くからヴォイス団長が見守っていた。その手には一冊の手帳が握られており、二人を見守りながら何かを書き込んでいた。







***







 「さて、皆さん!! 今日もスラム街の人達にパンとスープを届けに行きましょう!!」



 「「「「「はい!!」」」」」



 ヴォイス団長及びその他の団員達は、いつも通りの行動として、スラム街の人達にパンとスープを届けに行く為、準備を進めようとする。



 「それでは今日の分の食料を……あれ? 今日の分の食料が入った箱は何処です!!?」



 いつも通り、今日の分の食料を外に運び出そうとするが、本来そこにあるべき筈の食料が入った箱が無かった。ヴォイスは慌てて辺りを見渡す。するとその瞬間、教会の扉が勢い良く開いた。



 「それなら問題ない。もう既に外に運び終えているぜ」



 「ル、ルフォスさん!!?」



 フォルスの声に、ヴォイス団長は慌てて外へと飛び出す。するとそこには、今日の分の食料が入った箱が綺麗に置かれていた。



 「おぉ!! す、素晴らしい!! 既に運び終えていたとは、その意欲的な態度は大変立派です!! 皆さんもルフォスさんの様に、意欲的に行動して下さい!!」



 その日、フォルスに対して団員達から絶賛の言葉や拍手が送られた。







***







 「いやー、今日も疲れました……それではヴォイス団長、今日はこれでお先に失礼します」



 「うん!! 今日も一日ご苦労様!! また明日も一緒に頑張りましょう!!」



 深夜。殆どの団員が帰り、賑やかだった教会も静けさが漂っていた。



 「……さて、私もそろそろ帰るとしましょうか……ん?」



 団員達を見送り、一人残ったヴォイス団長。そろそろ自分も帰ろうと、振り返る。するとそこには、一人黙々と毛布を縫っているリーマがいた。



 「おや、マリーさん!!? まだ残っていたんですか!!?」



 「あっ、ヴォイス団長……すみません、この毛布を縫い終わってから帰ります。戸締まりは私がしておくので、先に帰って頂いても構いませんよ」



 「毛布なら明日でも縫えるじゃないですか!!? あまり無理してはいけませんよ!!」



 「そうなんですけど……実は、この前スラム街の子供達に約束したんです。今度持って来る毛布には、花柄の模様が付いていて可愛いよって……」



 そう言うとリーマは、縫っている毛布をヴォイス団長に見せる。確かにそこには白色の花柄模様や、黄色の花柄模様が刺繍されていた。



 「どうしてそんな嘘を…………」



 「……温かくしたかったんです……体だけじゃない……心も一緒に温かくしたいんです……あのスラム街には、夢も希望もありません……だからせめて、これからを生きる子供達だけでも、心の底から温かくなって欲しいです……」



 これはリーマの本心だった。冷たく暗いスラム街に、一筋の光を差し入れたい。そんな細やかな願いを叶える為、リーマは出来る事から少しずつ行動し始める。



 「……私も残ります……」



 「えっ、そんな!? 悪いですよ!! ヴォイス団長に迷惑は掛けられません!!」



 「迷惑な物ですか!! あなたの優しい想いと強い願いは誰も否定出来ません!! ですが勘違いしないで下さい、私はあなたの為に残るのではありません!! 明日花柄の毛布が届けられるのを楽しみにしている子供達の為に残るのです!!」



 そう言うとヴォイス団長は、残っている毛布を手に取り、リーマと同じ様に縫い始めるのであった。



 「ヴォイス団長……ありがとうございます……」



 ヴォイス団長に感謝を述べながら、リーマは毛布を縫い始める。







***







 2.コンプレックスを抱えている事(容姿に関係するコンプレックスなら、尚に良い)



 「はぁー…………」



 ある日、ハナコは深い溜め息を吐いていた。何処か上の空で、心ここに在らずという状態であった。



 「ハラコさん!! どうしたんですか!!? 何か悩み事ですか!!?」



 「あっ、ヴォイス団長……いや、悩みっで程の悩みじゃ無いでずだぁ……」



 「まぁまぁ、そんなに無下にならずに話してみて下さい!! 誰かに話す事で気が紛れるかもしれませんよ!!?」



 「ぞうだがぁ? なら、少じ話ぞうがなぁ…………実はオラ、ゴンプレッグズを抱えでいで……」



 「……ほほぉ、コンプレックスですか……それで、ハラコさんはどんなコンプレックスを抱えているですか?」



 その瞬間、ヴォイス団長の目が怪しく光輝く。少し前のめりになりながら、ハナコのコンプレックスを聞き出そうとする。



 「ぞれは……ごの体型だぁ……」



 「体型……ですか……」



 いつの間にか、ヴォイス団長は大きな声で話さなくなっていた。品定めする様な目で、変化しているハナコの体型を見る。



 「ごの前、スラム街の人達に言われだだぁ……“お前みだいに肥えでいる奴に、俺達の気持ぢが分がる筈が無い”っで……」



 「成る程……つまり……ハラコさんのコンプレックスは、“容姿”という事ですか……」



 しばらく考え込んだヴォイス団長は、ゆっくりとハナコの側へと歩み寄り、肩に手を添えた。



 「大丈夫ですよ……その人だって、ハラコさんの事を本心で罵った訳じゃありません……諦めず、根気良く接していればきっと分かって貰える筈ですよ……」



 「ヴォイス団長……ありがどうございまずだぁ……」



 「さぁ、そう決まれば今日も一日、頑張って行きましょう!!」



 ハナコを元気付け終わると、ヴォイス団長の声の大きさは元に戻っていた。







***







 「…………」



 ある日、フォルスは教会の窓の反射を利用し、鏡の様にして自身の顔を眺めていた。



 「…………」



 「何しているんですか!!?」



 すると突然、背後からヴォイス団長に声を掛けられる。一瞬、体を強ばらせるがすぐに冷静を装う。



 「!!……ヴォイス団長か……何か用か?」



 「いえ、ずっと教会の窓とにらめっこしていたので、どうかしたのかなっと思いまして!!」



 「そうか……変に気を使わせてしまった様だな……すまない……」



 「……何か悩み事ですか?」



 この時、再びヴォイス団長の声がいつもの大きさでは無くなった。



 「……いや、大した事じゃ無い。気にしないでくれ」



 「大した事じゃ無いのなら、話してみて下さいよ……私で良ければ、力になりますよ」



 「…………」



 少し不気味さを感じながらも、フォルスは悩み事を口にした。



 「実は……以前、スラム街の子供達にパンとスープを配っていたんだが……その内の何人かが、突然泣き出してしまってな……何でも、俺の目が怖いらしい……」



 「確かに……ルフォスさんの目は、とても鋭いですからね。幼い子供には怖く感じたのでしょう」



 「あぁ、だがこれは生まれながらの顔付きだ。変える事など出来ない……しかしそんな言い訳、子供達には通用しない……だからどうにかして、子供達に泣かれない顔付きになりたいと思ってな……」



 「成る程、それで教会の窓とにらめっこしていた訳ですか……つまりルフォスさんは、自身の“容姿”で悩まれている訳ですね?」



 「まぁ……そうなるな……」



 ヴォイス団長の口元が緩む。満面の笑みの筈なのに、何処か不気味さを感じさせた。



 「大丈夫……今はまだ、接する時間が短いだけです。根気良く接していれば、その子供達だって、ルフォスさんの事を好きになってくれますよ……」



 「……そう言う物だろうか……」



 「はい、そう言う物です……」



 「……そうか、そうだな。ちょっと重く考え過ぎだったのかもしれん。ヴォイス団長、俺の悩みを聞いてくれて、感謝する」



 「いえいえ、私もルフォスさんの新たな一面を知る事が出来たので、大満足ですよ」



 「よし、今日も一日頑張るとするか!!」



 そう言いながらフォルスは、その場を離れて行った。そんなフォルスに対して、ヴォイス団長は品定めする様な目線で見守る。



 「……これは、思った以上の人材を勧誘する事が出来そうです……」



 そんなヴォイス団長の独り言は、誰にも聞かれる事は無かった。
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