笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第一章 新たなる旅立ち

ヘッラアーデからの脱出

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 「サタニア、どうしてここに!?」



 「話は後で!! 今はこいつを何とかしないと!!」



 サタニアが突然現れた事に、驚きを隠せない真緒達。色々と話を聞きたいが、サタニアの言う通り、ノーフェイスを退かない限り、ゆっくりと話すのは難しい。



 「ぐぐっ……!!」



 ノーフェイスの一撃を受け止めたサタニアだったが、徐々に傾き始め押し切られそうになる。



 「サタニア!! スキル“ロストブレイク”!!」



 サタニアの危機に対して、真緒は咄嗟にスキルを発動し、ノーフェイス目掛けて放った。強烈な一撃を食らったノーフェイスは、吹き飛ばされる。しかし、両足で踏み留まる事で、仰向けに倒れるのを防いだ。



 「あ、ありがとう……マオ……」



 「お礼を言うのはこっちだよ……助けに来てくれてありがとう……サタニア……」



 「そ、そんな悠長な事をしている場合ですか!? 近付いて来ていますよ!!」



 リーマが声を荒げるのを耳にした真緒とサタニアの二人は、正面を向き直す。すると遠くの方から、ノーフェイスがゆっくりと歩いて来るのが確認出来た。



 「そうだね……時間も惜しい事だし、早々に片を付けよう……“魔力譲渡”!!」



 そう言うとサタニアは、近付いて来るノーフェイスに向かって強く睨み付ける。



 「(“魔力譲渡”……確か、自身が保有するMPを対象の人物に分け与える事が出来る魔法……補助的な能力に思えるけど、対象の人物が保有出来るMP容量をオーバーした場合、その人物は大量のMPに体が耐えきれず、破裂してしまう……恐ろしい能力だよ……)」



 サタニアとの戦いで、真緒自身が苦戦を強いられた魔法。最強の敵だった人物が、こうして仲間として戦ってくれるのは、とても心強い。しかし、サタニアがノーフェイスを睨み付けてから十秒、一向に破裂する気配が無い。



 「はぁ……はぁ……はぁ……」



 寧ろ、MPを分け与え続けたサタニアの方が、MP減少により疲れ始めていた。



 「サタニア、大丈夫!?」



 「こんなの……あり得ない……僕のMPよりも……あいつのMPが高いだなんて……いったいあいつのMPはどの位あるんだ……」



 MP減少による疲れから、思わず膝を付いてしまうサタニア。



 「私が調べて見るよ!! スキル“鑑定”!!」



 サタニアの魔力譲渡を受けて、破裂しない。この不可解な事態に、真緒は鑑定をノーフェイスに向けて発動した。







ノーフェイス Lv???

種族 ???

年齢 ???

性別 ???

職業 ???



HP ???/???

MP 無限



STR ???

DEX ???

VIT ???

AGI ???

INT ???

MND ???

LUK ???



スキル

なし



魔法

なし



称号

なし







 「な、何これ……」



 開いた口が塞がらない。殆どのステータスが不明であり、唯一分かるMPさえも“無限”という、常識から完全に外れていた。



 「マオ、何か分かった?」



 「一応……どうやら、あのノーフェイスと呼ばれる人のMPは、“無限”の様です……」



 「む、無限って……そんなの……あり得るの!?」



 呆気に取られる真緒達を他所に、どんどん近付いて来るノーフェイス。



 「くそっ!! 今の状態で奴と戦うのは得策じゃない!! 逃げるぞ!!」



 MP減少で疲労しているサタニア。それに引き換え、ノーフェイスはサタニアから分け与えられたMPによって、万全の状態。圧倒的不利な状況に、真緒達は背を向けて逃げる事しか出来なかった。







***







 ノーフェイスに追われながら、何とかレッマイルの真下に位置するヴォイス団長の部屋まで辿り着いた。



 「な、何とかここまで辿り着けましたね……」



 「だが、ゆっくりしている場合じゃない。ノーフェイスが、直ぐ後ろまで来ている」



 「ぞれなら速ぐ、動がずだぁ」



 「うん!!…………あれ?」



 地上のレッマイルに戻ろうと、真緒はドアノブを右に9、左に6、右に4、左に3と回した。しかし、何も起こらなかった。



 「どうした!?」



 「それが……パスワード通りに回しているのに、反応しないんですよ!!」



 「そんな、いったいどうして!?」



 「……そう言えばサタニア……」



 「何?」



 何故反応しないのか、頭を悩ませている中、ふとある事に気が付いた真緒が、サタニアに声を掛ける。



 「この部屋が下に降りているのに……サタニアはどうやって、このヘッラアーデ13支部まで来たの?」



 「えっ?」



 「パスワードを知っているとは思えないし、いったいどうやってここまでやって来たの?」



 基本的に、このヘッラアーデ13支部にやって来る為には、レッマイル13支部にあるヴォイス団長の部屋のドアノブをパスワード通りに回さないといけない。しかしそれを知っているのはヘッラアーデの人間だけ、サタニアが知る由も無い。



 「……えっと僕の場合、下の方から微かに声が聞こえるなって思って……その……ね?」



 歯切れが悪そうに、サタニアは俯きながら真上を指差した。指に従い、真緒達は真上に顔を動かす。すると天井には大きな穴が空いており、地上にあるレッマイル13支部まで続いていた。



 「……これだな……パスワード通り回したのに反応しない理由……」



 「…………ごめんなさい……」



 申し訳なさそうに、サタニアは真緒達に謝罪した。するとその時、扉を激しく叩く音が聞こえて来た。



 「来だだぁ!!」



 「と、とにかく今は、一刻も速くこのヘッラアーデ13支部から脱出しましょう!!」



 「そ、そうだな。部屋が動かない以上、空を飛んで脱出するぞ。俺はハナコを持ち上げる。マオは“虚空”を使ってリーマを持ち上げてくれ」



 「分かりました……“虚空”」



 フォルスに言われた通り、真緒は“虚空”の能力を発動して、浮かび上がった。そしてフォルスはハナコ、真緒はリーマを上空に持ち上げた。



 「サタニアは、一人でも大丈夫?」



 「問題無いよ。スキル“エンジェルウィング”」



 真緒達が空を飛ぶ中、サタニアは“エンジェルウィング”を発動させる。サタニアの背中から白い翼が生えると、翼を羽ばたかせ上空へと舞い上がった。



 「よし!! 皆、脱出するよ!!」



 「「「「おぉ!!」」」」



 真緒が仲間達に声を掛けたその瞬間、扉が蹴破られ、後を追って来たノーフェイスが入って来た。



 「来たぞ……まさか、こんな上空までは追っては来ないだろう……」



 「大丈夫の筈です。私が鑑定した時、飛べる様なスキルや魔法は、持っていませんでした」



 真緒の言う通り、ノーフェイスはこちらを見つめるだけで、飛ぼうとはしなかった。しかし、次の瞬間……。



 「「「「「!!?」」」」」



 目を疑った。突然ノーフェイスが壁に向かって走ったかと思うと、壁を蹴って向かい壁の少し上に飛んだ。そして重力で落ちる前に再び壁を蹴り、向かい壁の少し上に飛んだ。この行為を何度も繰り返し、真緒達がいる上空まで蹴り上がって来た。



 「う、嘘だろ!!?」



 「ほ、本当に人間なんですか!!?」



 「怖過ぎるだぁ!!!」



 「不味いよ!! このままじゃ、追い付かれちゃう!!」



 「それなら……ねぇ、聞こえてる!!? 君の魔法で全身鎧の奴を叩き落として!!」



 ノーフェイスが凄まじい勢いで蹴り上がって来る中、サタニアは地上で空いているレッマイルの穴に向けて、“誰”かの名前を叫ぶ。



 「はいはーい!! 話は聞いてたよ“サッチャン”!! あたしに任せて!!」



 逆光の関係でその姿はよく見えないが、穴の上から覗き込む人物がいた。



 「それじゃあ悪いけど、大人しく落ちてよね“ライトニング”!!」



 すると次の瞬間、穴の上にいる人物の指先から電撃が繰り出された。電撃は真緒達を通り過ぎ、その下にいるノーフェイスに直撃した。



 「やった!!」



 強烈な電撃を食らったノーフェイスは、動きが鈍くなった。その為、重力に従って落下し始める。



 「へへーん!! これ位、私に掛かれば余ゆ…………!?」



 しかしその直後、真横を鋭い剣が勢い良く通り過ぎる。



 「マジで? あの体制から、持っていた剣をここまで投げ飛ばしたの?……人間業じゃないでしょ……」



 頬から血が流れる。その血を手で拭いながら、落ちて行くノーフェイスを見つめる。その間に、真緒達はヘッラアーデ13支部から脱出した。



 「ふぅ……何とか地上まで戻って来れた……」



 ノーフェイスを退け、何とか地上のレッマイル13支部に戻って来た真緒達は、ホッと胸を撫で下ろす。



 「サタニア、改めて礼を言わせて。助けてくれてありがとう」



 「お礼なら、そこにいる“エレット”に言ってよ」



 「“エレット”?」



 サタニアの目線を辿り、真緒達が顔を向ける。するとそこには、先程真緒達の危機を助けた人物が立っていた。



 「どーも、初めまして」



 非常に大胆な衣服に身を包み、背中からは蝙蝠の羽や、鏃型の尻尾が生えていた。



 「“サキュバス”の“エレット”って言いまーす。一応、魔王軍の新四天王をやらして貰っていまーす」



 エレットと名乗る女は、顔の横に右手であざとくピースサインを作っていた。
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