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第三章 冒険編 私の理想郷
曾祖父エジタス
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「「「「…………」」」」
「いやぁ~、まさかこんな所で再び皆さんとお会い出来るだなんて、思ってもいませんでしたよ~」
衝撃の事実からの驚愕の事実。決してこの世にいる筈の無い人物と向かい合う形で座る真緒達は、只じっとエジタスの顔を見つめていた。
「えっ、ちょ、何ですか皆さん? そんなに見つめて……恥ずかしくなっちゃうじゃないですか~」
「皆さん、驚いているんですよ。お爺ちゃんが生きていた事に」
「あぁ~、成る程そう言う事でしたか……すみませんね~、気が付かなくて」
「いえ……それは構わないんですけど……本当に師匠なんですか?」
「おや~、私の顔をお忘れですか~?」
「…………」
忘れる筈が無い。一年前、嫌という程見て来た。目の前にいるエジタスは、かつてのエジタスが被っていた仮面と全く同じ仮面を被っていた。
「もぉ~、“マオ”さんったらその若さで忘れっぽくなってしまったんですか~?」
「!! 私の名前……」
まだ自己紹介も済ませていなかったのにも関わらず、目の前にいるエジタスは、見事真緒の名前を言い当てた。
「知ってるに決まっているじゃありませんか~、何てったって私達は師弟関係なんですから~」
「じゃあ、俺達全員の名前も言えるか?」
まだ疑っている真緒達は、目の前にいるエジタスに各々の名前が言えるかどうか、確かめようとする。
「勿論ですよ~、右からマオさん、ハナコさん、リーマさん、フォルスさん……ね? 確りと覚えていますでしょ~?」
「確かに……」
「それじゃあやっぱり、本物なんですか!?」
「さっきからそう言っているじゃありませんか~、疑り深いですね~」
「だ、だってエジタスさんはあの時……」
「……えぇ、あの時確かに私は死にました……そう思わせました」
「思わせた?」
「心臓の鼓動を限り無く弱め、死んだ様に偽装したのです」
「な、何故そんな事を……?」
「一言で説明するなら……疲れたから……ですかね……」
「…………疲れた?」
「はい、私はずっと長い間……笑顔の絶えない世界の為に頑張って来ました……しかし、計画はマオさん達の手によって失敗に終わりました……その時から、何をするにもやる気が起きなくなってしまったのです……新しい計画を立てたとしても、またマオさんの様な人達に邪魔される……そう考えれば考える程、やる気が薄れてしまったのです……だからもう、世界を笑顔の絶えない世界にするのは諦めて、今まで放っていた“家族”の下へと戻りたいと思ったのです……」
「その為に……死んだ振りを?」
「えぇ、皆さんには悪いと思いましたが……どうしても愛する家族に会いたかったのです……」
「…………信じられない」
「マオさん……」
悲しそうな雰囲気で事情を説明したエジタスに対して、真緒は真っ向から否定した。
「師匠は誰よりも、この世界を笑顔の絶えない世界にしたいと思っていた。二千年も前からずっと準備を重ねていた。時間稼ぎ用のコマまで用意していたのに……たった一回失敗しただけで、やる気を失くして諦めてしまうだなんて……あなたは本当のエジタスじゃない……」
「マオぢゃん……」
「マオさん……」
「マオ……」
供に旅した仲間として、命を削り合った敵として、心から愛した人として、真緒は目の前にいるエジタスの言葉を信用しようとはしなかった。
「う~ん、そうは言ってもですね~、実際私は本物で……「それならさ!!」……?」
何とか信じて貰おうとするエジタスに、側に座っていたメユが提案をする。
「ひいおじいちゃんの“素顔”を見せれば、信じて貰えるんじゃない?」
「おぉ~、その手がありましたか!!」
そう言うとエジタスは、自身の仮面に両手を掛ける。
「良いですか皆さん、よく見ていて下さいね~、これが……私の……素顔です!!」
「「「「!!!」」」」
エジタスは仮面を勢い良く外し、真緒達に堂々と見せ付ける。その素顔は、半分以上の肉が削がれており、所々骨が見えていた。また、残った皮膚の殆ども、火傷を負った様に爛れていた。特に口は酷く、歯茎がむき出しになっていた。人間らしい皮膚を見つける事の方が困難であった。そう、一年前真緒達が目にしたエジタスの素顔その物だった。
「どうだ? これで“俺”が本当のエジタスだって認めるだろ?」
「「「「!!!」」」」
更に仮面を外した途端、先程の口調とは異なる口調に変わっていた。まるで二つの人格があるかの様に。
「ま、まさかその顔を再び見る事になるとはな……」
「焼き爛れた皮膚、剥き出しの歯茎……同じ様な顔を持つ人間がいるとは思えません。つまりあなたは……本物のエジタスさん……」
「び、びっぐりじだだぁ……まざが本当に生ぎでいるだなんでぇ……」
「…………」
各々が驚きの声を上げる中、真緒だけは一言も発する事無く、じっとエジタスの顔を見つめていた。
「どうやら……信じてくれたみたいだな……」
そう言い終えると、エジタスは外していた仮面を再び被り直す。
「まぁ、皆さんなら必ず信じてくれると思っていましたけどね~」
仮面を被った途端、人格が変わったかの様に口調が変わる。
「ははは……それでエジタスさん……本題なんですが……」
「何ですか?」
「今俺達は、エジタスさんが昔作ったロストマジックアイテムを回収しているんですが、何処の誰に渡したのか教えて頂けないでしょうか?」
「ロストマジックアイテム……あぁ~、あれですか~、いや~懐かしいですね~、暇潰し程度に作った物なんですけどね~」
「ひ、暇潰しって……その暇潰し程度に作ったアイテムで死に掛けたんですけど……」
「それはそれは、ご迷惑を掛けている様で申し訳ありません……しかし残念ですが、作ったのが随分と前の事ですからね……全く覚えていないんですよ」
「そ、そうですか……」
作った本人に聞けば何か分かると思ったが、有益な情報は得られず、分かりやすく落ち込むフォルス。
「そう言えばエジタスさん、少し聞きたいのですが……」
「何ですか?」
そんなフォルスを他所に、リーマがエジタスに対して質問する。
「こうして生きている事を、私達以外に話したんですか?」
「いえ、さすがに事が事なので……あなた方四人以外には、話していません」
「そうですか……それでもせめて、“アーメイデ”さんには伝えた方が良いと思いますよ。今もまだクラウドツリーにいますから」
「アーメイデさんですか……そうですね、アーメイデさん位には伝えた方が良いかもしれませんね~。今度、会いに行ってみたいと思います」
「その方が良いですよ」
会いに行くと答えたエジタスに対して、リーマは満足した様に笑みを浮かべながら頷いた。
「そうだ、師匠……」
「今度は何ですか?」
次から次へと声を掛ける真緒達に、若干疲れを見せるエジタスが返事をする。
「娘さん……レーヴさんに帰った事を伝えなくて良いんですか?」
「そう言えばそうね。お爺ちゃん、お母さんに帰って来た事を伝えてあげたら?」
娘のレーヴに会ってきたらどうか。そんな真緒の提案に対して、ソンジュが賛成する。
「そうですね~、そこまで仰るのなら……行くとしましょうか~」
「あっ、私も一緒に行く!!」
真緒とソンジュの二人から言われたエジタスは、渋々ながらも娘であるレーヴの下へと向かおうとする。その際、メユも一緒に行くと言い出した。
「勿論、私も一緒に行くわ。ソーニョ、あなたはどうするの?」
「えっ、行きたいけど……でも……」
メユに続き、ソンジュまでもが一緒に行くと言い出した。更にソンジュは、ソーニョにも声を掛けるが、ソーニョは行きたい素振りを見せる反面、真緒達の事を横目でチラチラと見て、行こうとはしなかった。
「ソーニョさん、私達の事は気にせずに行って下さい」
「折角の家族水入らず、一人だけ仲間外れだなんて悲しいじゃないですか」
「ほら、こう言って下さっているのだから……行きましょう」
「そうですね……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
行く許可を貰ったソーニョは、真緒達だけをリビングルームに残して、エジタス達の後を慌てて追い掛ける
「「「「…………」」」」
やがてリビングルームは真緒達四人だけとなり、静寂が場を支配していた。
「ふぅ、それにしてもよく出来た“偽物”だったな」
「性格、容姿、口調まで瓜二つでしたよ」
「偽物ど分がっでいでも、緊張ずるだなぁ……」
真緒達は気が付いていた。先程まで一緒にいたエジタスが、真っ赤な偽物だという事を。
「それにしても、軽率な奴だったな。エジタスさんは計画が失敗し、自身が死んでしまった時の保険として、ロストマジックアイテムを遺したって言うのに、それを覚えていないだなんて……」
「それにアーメイデさんに会いに行くって言ってましたけど……生きていると思っているんですかね?」
「抜げでいるオラでも、偽物だっで分がっだだぁ」
口は災いの元。それらしい答えを返したつもりだったが、最もエジタスと親しくしていた真緒達を騙す事は出来なかった。寧ろ逆に偽物という事を認めてしまった。
「だけどマオは、俺達が問い掛けるよりも前に、あいつが偽物だって気が付いていたみたいだけどな」
「えっ、そうなんですか!?」
「うん……まぁね……」
「いつ頃から気が付いていたんですか?」
「……仮面を外して、素顔を晒した所かな」
「そんなに早くから気が付いていたんですか!?」
「……師匠は誰よりも自分の素顔を嫌っていた。だから頑なに見せようとはしなかったし、見られた後も見た目について色々と語っていた……それなのに、さっきの奴は何の躊躇いも無く、素顔を見せた……あんな奴、師匠とは似ても似つかない偽物だよ」
「「「…………」」」
言葉の矛盾から偽物だと突き止めたハナコ、リーマ、フォルスに対して、エジタスの過去と心情から偽物だと突き止めた真緒。方法は違えど、どちらとも優秀な解読力だった。
「だがそうなると、不気味なのはあの家族の方になるな」
「どう言う意味ですか?」
「考えても見ろ、こんな草木が一本も生えていない場所に館を構え、外には異様な見た目をした生き物が沢山いる。そして、エジタスさんの偽物を家族に持っている……どう考えても可笑しいとしか思えない」
「た、確かに……」
「取り敢えず今は、この館から離れた方が良いと思う」
「そうだな……もしもここまでの流れが、あの家族による作戦だとしたら、このまま留まるのは危険過ぎる」
「そ、それなら早く出ましょう!!」
得体の知れない家族に対して、恐怖を感じたリーマは慌てて立ち上がり、館から出ようと提案する。
「そうだね、早く出よう!!」
リーマの意見に賛同し、真緒達はあの家族に気付かれない様、慎重かつ急いでリビングルームを後にした。
***
「あら、もうお帰りですか?」
「「「「!!?」」」」
エントランスホール。真緒達が気付かれない様、慎重に館から出ようとしたその時、階段の上から呼び掛けられた。恐る恐る振り返ると、そこにはソーニョ、メユ、ソンジュ、そして偽エジタスの四人が真緒達を階段の上から見下ろしていた。
「す、すみません。一声を掛けてから帰ろうとも思ったんですけど……」
「せ、折角の家族水入らずを邪魔するのもどうかなって思いまして……」
「もっとゆっくりしていけば良いのに……」
「い、いえこれ以上、ご迷惑をお掛けする訳にもいきませんので!!」
「そう? またいつでも遊びに来て良いんですよ」
「は、はい……その時はよろしくお願いします……」
得体の知れない家族という印象を抱いた途端、それまで優しそうな雰囲気だったソーニョ、メユ、ソンジュの三人がより一層不気味に感じる。今すぐこの館を出たい。そう切実に感じる真緒は、玄関のドアノブに手を掛ける。
「マオおねーちゃん」
「!! な、何……?」
玄関の扉を開けようとした瞬間、メユに声を掛けられる真緒。ゆっくりと振り返ると、メユは満面の笑みで言った。
「また……遊ぼうね?」
「…………」
真緒達は息を飲んだ。満面の笑みに隠された不気味な気配。メユの言葉に対して、何も返さず真緒達は館の外へと飛び出した。
「…………へ?」
そこに広がっていたのは岩だらけの道では無く、人で賑わう活気に溢れた街並みであった。
「いやぁ~、まさかこんな所で再び皆さんとお会い出来るだなんて、思ってもいませんでしたよ~」
衝撃の事実からの驚愕の事実。決してこの世にいる筈の無い人物と向かい合う形で座る真緒達は、只じっとエジタスの顔を見つめていた。
「えっ、ちょ、何ですか皆さん? そんなに見つめて……恥ずかしくなっちゃうじゃないですか~」
「皆さん、驚いているんですよ。お爺ちゃんが生きていた事に」
「あぁ~、成る程そう言う事でしたか……すみませんね~、気が付かなくて」
「いえ……それは構わないんですけど……本当に師匠なんですか?」
「おや~、私の顔をお忘れですか~?」
「…………」
忘れる筈が無い。一年前、嫌という程見て来た。目の前にいるエジタスは、かつてのエジタスが被っていた仮面と全く同じ仮面を被っていた。
「もぉ~、“マオ”さんったらその若さで忘れっぽくなってしまったんですか~?」
「!! 私の名前……」
まだ自己紹介も済ませていなかったのにも関わらず、目の前にいるエジタスは、見事真緒の名前を言い当てた。
「知ってるに決まっているじゃありませんか~、何てったって私達は師弟関係なんですから~」
「じゃあ、俺達全員の名前も言えるか?」
まだ疑っている真緒達は、目の前にいるエジタスに各々の名前が言えるかどうか、確かめようとする。
「勿論ですよ~、右からマオさん、ハナコさん、リーマさん、フォルスさん……ね? 確りと覚えていますでしょ~?」
「確かに……」
「それじゃあやっぱり、本物なんですか!?」
「さっきからそう言っているじゃありませんか~、疑り深いですね~」
「だ、だってエジタスさんはあの時……」
「……えぇ、あの時確かに私は死にました……そう思わせました」
「思わせた?」
「心臓の鼓動を限り無く弱め、死んだ様に偽装したのです」
「な、何故そんな事を……?」
「一言で説明するなら……疲れたから……ですかね……」
「…………疲れた?」
「はい、私はずっと長い間……笑顔の絶えない世界の為に頑張って来ました……しかし、計画はマオさん達の手によって失敗に終わりました……その時から、何をするにもやる気が起きなくなってしまったのです……新しい計画を立てたとしても、またマオさんの様な人達に邪魔される……そう考えれば考える程、やる気が薄れてしまったのです……だからもう、世界を笑顔の絶えない世界にするのは諦めて、今まで放っていた“家族”の下へと戻りたいと思ったのです……」
「その為に……死んだ振りを?」
「えぇ、皆さんには悪いと思いましたが……どうしても愛する家族に会いたかったのです……」
「…………信じられない」
「マオさん……」
悲しそうな雰囲気で事情を説明したエジタスに対して、真緒は真っ向から否定した。
「師匠は誰よりも、この世界を笑顔の絶えない世界にしたいと思っていた。二千年も前からずっと準備を重ねていた。時間稼ぎ用のコマまで用意していたのに……たった一回失敗しただけで、やる気を失くして諦めてしまうだなんて……あなたは本当のエジタスじゃない……」
「マオぢゃん……」
「マオさん……」
「マオ……」
供に旅した仲間として、命を削り合った敵として、心から愛した人として、真緒は目の前にいるエジタスの言葉を信用しようとはしなかった。
「う~ん、そうは言ってもですね~、実際私は本物で……「それならさ!!」……?」
何とか信じて貰おうとするエジタスに、側に座っていたメユが提案をする。
「ひいおじいちゃんの“素顔”を見せれば、信じて貰えるんじゃない?」
「おぉ~、その手がありましたか!!」
そう言うとエジタスは、自身の仮面に両手を掛ける。
「良いですか皆さん、よく見ていて下さいね~、これが……私の……素顔です!!」
「「「「!!!」」」」
エジタスは仮面を勢い良く外し、真緒達に堂々と見せ付ける。その素顔は、半分以上の肉が削がれており、所々骨が見えていた。また、残った皮膚の殆ども、火傷を負った様に爛れていた。特に口は酷く、歯茎がむき出しになっていた。人間らしい皮膚を見つける事の方が困難であった。そう、一年前真緒達が目にしたエジタスの素顔その物だった。
「どうだ? これで“俺”が本当のエジタスだって認めるだろ?」
「「「「!!!」」」」
更に仮面を外した途端、先程の口調とは異なる口調に変わっていた。まるで二つの人格があるかの様に。
「ま、まさかその顔を再び見る事になるとはな……」
「焼き爛れた皮膚、剥き出しの歯茎……同じ様な顔を持つ人間がいるとは思えません。つまりあなたは……本物のエジタスさん……」
「び、びっぐりじだだぁ……まざが本当に生ぎでいるだなんでぇ……」
「…………」
各々が驚きの声を上げる中、真緒だけは一言も発する事無く、じっとエジタスの顔を見つめていた。
「どうやら……信じてくれたみたいだな……」
そう言い終えると、エジタスは外していた仮面を再び被り直す。
「まぁ、皆さんなら必ず信じてくれると思っていましたけどね~」
仮面を被った途端、人格が変わったかの様に口調が変わる。
「ははは……それでエジタスさん……本題なんですが……」
「何ですか?」
「今俺達は、エジタスさんが昔作ったロストマジックアイテムを回収しているんですが、何処の誰に渡したのか教えて頂けないでしょうか?」
「ロストマジックアイテム……あぁ~、あれですか~、いや~懐かしいですね~、暇潰し程度に作った物なんですけどね~」
「ひ、暇潰しって……その暇潰し程度に作ったアイテムで死に掛けたんですけど……」
「それはそれは、ご迷惑を掛けている様で申し訳ありません……しかし残念ですが、作ったのが随分と前の事ですからね……全く覚えていないんですよ」
「そ、そうですか……」
作った本人に聞けば何か分かると思ったが、有益な情報は得られず、分かりやすく落ち込むフォルス。
「そう言えばエジタスさん、少し聞きたいのですが……」
「何ですか?」
そんなフォルスを他所に、リーマがエジタスに対して質問する。
「こうして生きている事を、私達以外に話したんですか?」
「いえ、さすがに事が事なので……あなた方四人以外には、話していません」
「そうですか……それでもせめて、“アーメイデ”さんには伝えた方が良いと思いますよ。今もまだクラウドツリーにいますから」
「アーメイデさんですか……そうですね、アーメイデさん位には伝えた方が良いかもしれませんね~。今度、会いに行ってみたいと思います」
「その方が良いですよ」
会いに行くと答えたエジタスに対して、リーマは満足した様に笑みを浮かべながら頷いた。
「そうだ、師匠……」
「今度は何ですか?」
次から次へと声を掛ける真緒達に、若干疲れを見せるエジタスが返事をする。
「娘さん……レーヴさんに帰った事を伝えなくて良いんですか?」
「そう言えばそうね。お爺ちゃん、お母さんに帰って来た事を伝えてあげたら?」
娘のレーヴに会ってきたらどうか。そんな真緒の提案に対して、ソンジュが賛成する。
「そうですね~、そこまで仰るのなら……行くとしましょうか~」
「あっ、私も一緒に行く!!」
真緒とソンジュの二人から言われたエジタスは、渋々ながらも娘であるレーヴの下へと向かおうとする。その際、メユも一緒に行くと言い出した。
「勿論、私も一緒に行くわ。ソーニョ、あなたはどうするの?」
「えっ、行きたいけど……でも……」
メユに続き、ソンジュまでもが一緒に行くと言い出した。更にソンジュは、ソーニョにも声を掛けるが、ソーニョは行きたい素振りを見せる反面、真緒達の事を横目でチラチラと見て、行こうとはしなかった。
「ソーニョさん、私達の事は気にせずに行って下さい」
「折角の家族水入らず、一人だけ仲間外れだなんて悲しいじゃないですか」
「ほら、こう言って下さっているのだから……行きましょう」
「そうですね……それじゃあ、お言葉に甘えて……」
行く許可を貰ったソーニョは、真緒達だけをリビングルームに残して、エジタス達の後を慌てて追い掛ける
「「「「…………」」」」
やがてリビングルームは真緒達四人だけとなり、静寂が場を支配していた。
「ふぅ、それにしてもよく出来た“偽物”だったな」
「性格、容姿、口調まで瓜二つでしたよ」
「偽物ど分がっでいでも、緊張ずるだなぁ……」
真緒達は気が付いていた。先程まで一緒にいたエジタスが、真っ赤な偽物だという事を。
「それにしても、軽率な奴だったな。エジタスさんは計画が失敗し、自身が死んでしまった時の保険として、ロストマジックアイテムを遺したって言うのに、それを覚えていないだなんて……」
「それにアーメイデさんに会いに行くって言ってましたけど……生きていると思っているんですかね?」
「抜げでいるオラでも、偽物だっで分がっだだぁ」
口は災いの元。それらしい答えを返したつもりだったが、最もエジタスと親しくしていた真緒達を騙す事は出来なかった。寧ろ逆に偽物という事を認めてしまった。
「だけどマオは、俺達が問い掛けるよりも前に、あいつが偽物だって気が付いていたみたいだけどな」
「えっ、そうなんですか!?」
「うん……まぁね……」
「いつ頃から気が付いていたんですか?」
「……仮面を外して、素顔を晒した所かな」
「そんなに早くから気が付いていたんですか!?」
「……師匠は誰よりも自分の素顔を嫌っていた。だから頑なに見せようとはしなかったし、見られた後も見た目について色々と語っていた……それなのに、さっきの奴は何の躊躇いも無く、素顔を見せた……あんな奴、師匠とは似ても似つかない偽物だよ」
「「「…………」」」
言葉の矛盾から偽物だと突き止めたハナコ、リーマ、フォルスに対して、エジタスの過去と心情から偽物だと突き止めた真緒。方法は違えど、どちらとも優秀な解読力だった。
「だがそうなると、不気味なのはあの家族の方になるな」
「どう言う意味ですか?」
「考えても見ろ、こんな草木が一本も生えていない場所に館を構え、外には異様な見た目をした生き物が沢山いる。そして、エジタスさんの偽物を家族に持っている……どう考えても可笑しいとしか思えない」
「た、確かに……」
「取り敢えず今は、この館から離れた方が良いと思う」
「そうだな……もしもここまでの流れが、あの家族による作戦だとしたら、このまま留まるのは危険過ぎる」
「そ、それなら早く出ましょう!!」
得体の知れない家族に対して、恐怖を感じたリーマは慌てて立ち上がり、館から出ようと提案する。
「そうだね、早く出よう!!」
リーマの意見に賛同し、真緒達はあの家族に気付かれない様、慎重かつ急いでリビングルームを後にした。
***
「あら、もうお帰りですか?」
「「「「!!?」」」」
エントランスホール。真緒達が気付かれない様、慎重に館から出ようとしたその時、階段の上から呼び掛けられた。恐る恐る振り返ると、そこにはソーニョ、メユ、ソンジュ、そして偽エジタスの四人が真緒達を階段の上から見下ろしていた。
「す、すみません。一声を掛けてから帰ろうとも思ったんですけど……」
「せ、折角の家族水入らずを邪魔するのもどうかなって思いまして……」
「もっとゆっくりしていけば良いのに……」
「い、いえこれ以上、ご迷惑をお掛けする訳にもいきませんので!!」
「そう? またいつでも遊びに来て良いんですよ」
「は、はい……その時はよろしくお願いします……」
得体の知れない家族という印象を抱いた途端、それまで優しそうな雰囲気だったソーニョ、メユ、ソンジュの三人がより一層不気味に感じる。今すぐこの館を出たい。そう切実に感じる真緒は、玄関のドアノブに手を掛ける。
「マオおねーちゃん」
「!! な、何……?」
玄関の扉を開けようとした瞬間、メユに声を掛けられる真緒。ゆっくりと振り返ると、メユは満面の笑みで言った。
「また……遊ぼうね?」
「…………」
真緒達は息を飲んだ。満面の笑みに隠された不気味な気配。メユの言葉に対して、何も返さず真緒達は館の外へと飛び出した。
「…………へ?」
そこに広がっていたのは岩だらけの道では無く、人で賑わう活気に溢れた街並みであった。
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