55 / 275
第三章 冒険編 私の理想郷
裏庭
しおりを挟む
「裏庭はどっちだ!?」
「こっちです!! こっちから館の裏手に回る事が出来ます!!」
メユとソンジュの魔の手から何とか逃げ出し、館の外へと脱出する事が出来た三人。しかし一息つく暇も無く、足早に裏庭へと向かう。
「追い掛けて来ませんね……諦めたんでしょうか?」
「どうだろうな……あの女が簡単に諦めるとは思えないが……何だか嫌な予感がする。急ぐぞ!!」
「はい!!」
「分がっだだぁ!!」
一抹の不安を抱きながら、三人は館の裏庭へと回り込む。
「うがぁ……あぐがぁ……」
「「「!!!」」」
しかし、その行く手を遮る存在が目の前に現れた。目は虚ろ、口からは涎が垂れており、更に猫背で背骨が異常に発達した生物。
「アレリテさん……」
「あがぁ……ぐごが……」
それは誰であろうアレリテだった。真緒達との戦いで、メユによって肉体改造されたアレリテが、裏庭に向かう三人の行く手を遮っていた。
「アレリテさん!! 私の声が聞こえますか!!? アレリテさん!!」
「うぅ……うぅ……」
するとリーマの声に反応したのか、突然頭を抱えて唸り声を上げる。
「アレリテさん……?」
「うぅ……うごぁあああああ!!!」
「「「!!!」」」
そして次の瞬間、低い叫び声を上げ、半ば狂乱した様に目の前にいる三人目掛けて襲い掛かって来た。
「アレリテさん!!」
「無駄だリーマ!! アレリテにもう自我は存在していない!! ここで殺るしかない!!」
「で、でも……」
「辛いのは分かる!! だがここで殺らないと、俺達が殺られる事になるぞ!! そうなったら、俺達に託したマオの想いを踏み潰す事になるんだぞ!!」
「…………分かりました。私、殺ります!!」
「うごがぁあああああ!!!」
「アレリテさん……すみません!! “ウインドカッター”!!」
覚悟を決めたリーマは魔導書を開き、魔法を唱える。すると鋭い風の刃が生み出され、迫り来るアレリテ目掛けて勢い良く放たれた。
「あぐぅ!!?」
勢い良く放たれた風の刃は、アレリテの首を通り過ぎる。そして瞬く間にアレリテの首は地面へと落下し、首を切り落とされた体は俯せになって倒れるのであった。
「アレリテさん……安らかに眠って下さい……」
「よし、先へ急ぐぞ」
「…………ぐぉ」
「うん? な、何だ?」
行く手を遮る物が無くなり、先へ急ごうと倒れているアレリテの横を通り過ぎ様としたその時、切り落とされた首が俯せになって倒れている体にくっ付いた。
「ぐ……ぐ……ぐぉおおおおお!!!」
そしてゆっくりと立ち上がり、三人の行く手を再び遮る。
「おいおい、いくら治ると言っても早過ぎるだろ!!」
「それだけ、メユさんの強化が影響しているって事でしょうか!?」
「今はそんな事、どうでもいい!! 兎に角急ぐぞ!!」
「で、でも倒しても倒しても直ぐに治ってしまうんじゃ、どうしようも……」
「……オラが食い止めるだぁ」
「ハナコ……」
「ハナコさん?」
リーマとフォルスが狼狽える中、ハナコが二人よりも一歩前に踏み出した。
「オラが食い止めでいる間に、二人は先に行っでぐれだぁ」
「ハナコ……お前……」
「何も、三人で一緒に行ぐ必要なんが無いだぁ。ごの中の誰が一人が、裏庭に辿り着げれば良いんだがら……先に行っでぐれだぁ」
「ハナコさん……」
「うごぉおおおおお!!!」
ハナコを置いて、先に進むのを戸惑っていると、完全に立ち上がったアレリテが、三人目掛けて両拳を振り下ろそうとする。
「スキル“インパクト・ベア”!!」
拳が振り下ろされそうになった次の瞬間、ハナコが地面を蹴り空中へと跳んだ。そして無防備なアレリテ目掛けて渾身の一撃を叩き込んだ。
「ごぁあああああ!!!」
強い衝撃にバランスを崩したアレリテは、仰向けになって勢い良く倒れる。
「ざぁ!! 今の内に早ぐ行ぐだぁ!!」
「ハナコ……恩に着る」
「ハナコさん、ありがとうございます」
ハナコの想いを胸に、リーマとフォルスの二人は先を急ぐ。
「ぐぅ……あぁああ……」
するとアレリテは、横を通り過ぎ様とする二人の足を掴もうと両手を伸ばす。
「スキル“鋼鉄化(腕)”」
「ごぁあああああ!!?」
しかしその両手は二人の足を掴む前に、両腕を鋼鉄に変化させたハナコによって叩き潰されてしまった。
「悪いげど、二人の後は追わぜない。ごごがら先を通りだげれば、オラを倒ずだぁ」
「ぐっ……ぐぐっ……!!!」
この時、行く手を遮っていた筈のアレリテの立場が逆転する事となった。
***
「はぁ……はぁ……ふぅ……どうやらここが裏庭の様だな……」
「こ、これって……」
アレリテという肉壁を掻い潜り、何とか裏庭へと辿り着く事が出来た二人。しかしその表情は何処か暗く、決して良いとは言い難かった。
「この中から“本命”を見つけ出さないといけないらしいな……」
「で、でも……こんなにも沢山“墓石”があっては、どれが本命かなんて分かりませんよ!?」
二人がやっとの思いで辿り着いた裏庭。それは墓地であった。塀に囲まれ、短く手入れされた草の上にズラリと立ち並ぶ墓石。その片隅には一本の木が生えており、木の太い枝には紐が括り付けられ、先端に横長の板が付けられていた。所謂簡易ブランコである。そして、墓石のそれぞれに“メユ”と刻み込まれていた。
「どうやら……既に対策されていた様だな……」
「こんなの一つ一つ調べていたら、日が暮れてしまいますよ……そしたらハナコさんは……」
絶望。リーマは目の前の現実に、思わず両膝が地面に付いてしまう。
「嘆いてたって始まらない。時間が許す限り、探すしかないだろう」
「……そうですよね。こんな所で挫けていたら、マオさんやハナコさんに笑われてしまいますもんね!! 私、頑張ります!!」
「その意気だ。それじゃあ始めるぞ」
「はい!!」
フォルスに元気付けられたリーマは、やる気を取り戻した。そして二人手分けして、それぞれの墓を掘り返し始めるのであった。
「……くそっ、こっちには無い!!」
「こっちにもありません!!」
墓を掘り返す二人だが、その中には誰もいなかった。
「次だ!! 次行くぞ!!」
「はい!!」
掘る、掘る、掘る、掘り続ける。気が付けば、裏庭は掘り返された土によって酷く汚れてしまっていた。
「はぁ……はぁ……探すしかないとは言ったものの……これじゃあ切りが無いぞ……」
「はぁ……はぁ……も、もう指が限界です……」
掘るのは勿論手作業である。魔法やスキルで掘る事も出来るが、使い過ぎてしまった時に追跡者が現れた場合、対処する事が出来なくなってしまう。そうした考えを配慮しながら、手作業で掘り続けていたが、流石に限界が近付いていた。
「くそっ……どうすればいい……どうすれば…………ん?」
その時、フォルスはこの裏庭にある違和感を覚える。
「(そう言えば……どうしてこんな墓地に、ブランコなんか置かれているんだ?)」
それは純粋な疑問だった。例えどんな強靭な精神の持ち主でも、大量の墓石が並ぶ中、ブランコで遊ぶなど常識的に考えられない。
「(墓石が立てられる前に作られた? だがそれなら、もっと朽ち果てても良さそうだが……もしかして!!?)」
「フォルスさん?」
何かに感づいたのか、フォルスは慌ててブランコの側へと駆け寄る。
「…………あっ」
ブランコの側に駆け寄ったフォルスは、ブランコが括り付けられている木の周りを探し始める。すると木の影に隠れる様に、埃まみれの古ぼけた墓石が立てられていた。他の墓石と比べると非常に小さく、全く手入れはされていなかった。そしてそんな古ぼけた墓石にも、“メユ”と刻み込まれていた。
「あった……あった!! あったぞ!!」
「えっ!? 本当ですか!!?」
フォルスの大声に反応して、リーマも慌てて側へと駆け寄る。
「あぁ、恐らくこの墓の下にある筈だ」
「急いで掘り返しましょう!!」
「何を掘リ返スって?」
「「!!?」」
二人が目的と思われる墓を掘り返そうとしたその時、背後から聞き覚えのある……いや、少し異質に変化した声が聞こえて来た。途端に背筋が凍り付く。そのあまりの恐怖に、思わず唾を飲み込む。
「ソれとコれ……落チていタから、拾ってアげタわよ」
「「……!!!」」
二人が振り返るよりも早く、二人の間を物体が勢い良く通り過ぎる。物体はそのまま塀にぶつかり、地面に叩き付けられる。その物体はボロボロであり、見るも無惨な形をしていた。しかしそれは見覚えのある……いや寧ろいつも見ている物……。
「「ハナコ!!!」」
アレリテを食い止めると言って分かれたハナコ。そんなハナコが、血塗れの状態で二人の目の前に現れたのだ。二人は慌ててハナコの安否を確かめる。
「ハナコ!! ハナコ!!」
「ハナコさん!! ハナコさん!!」
「…………」
激しく揺すっても、二人が呼び掛けても反応しない。
「そんな……嘘だろ……」
「嫌ですよ……ハナコさん……こんな……こんな別れは嫌ですよ!! 目を開けて下さい!! ハナコさん!!」
「悪いんだけど、あなた達に悲しんでいる隙は無いわよ」
悲しみに暮れる中、再び背後から声が聞こえる。二人は涙を流しながらも、ゆっくりと振り返る。
「化物め……」
「許さない……許さない!!」
「許さない? それはこっちの台詞よ!!」
そこにいたのはメユだった。しかしその姿は明らかにこの世の生物では無かった。足はムカデの様に小刻みに動いており、体は蝶の様に大きな羽が生え、両手はカマキリの様に鋭く、そして顔は特に異様であり、丸い輪郭にスイカ並の大きな目玉が一つ付いているだけだった。鼻や口などの他のパーツは存在していなかった。しかし、声だけは何故か聞こえて来ていた。
「さぁ、思い知らセてアげる。圧倒的な絶望を!!」
「こっちです!! こっちから館の裏手に回る事が出来ます!!」
メユとソンジュの魔の手から何とか逃げ出し、館の外へと脱出する事が出来た三人。しかし一息つく暇も無く、足早に裏庭へと向かう。
「追い掛けて来ませんね……諦めたんでしょうか?」
「どうだろうな……あの女が簡単に諦めるとは思えないが……何だか嫌な予感がする。急ぐぞ!!」
「はい!!」
「分がっだだぁ!!」
一抹の不安を抱きながら、三人は館の裏庭へと回り込む。
「うがぁ……あぐがぁ……」
「「「!!!」」」
しかし、その行く手を遮る存在が目の前に現れた。目は虚ろ、口からは涎が垂れており、更に猫背で背骨が異常に発達した生物。
「アレリテさん……」
「あがぁ……ぐごが……」
それは誰であろうアレリテだった。真緒達との戦いで、メユによって肉体改造されたアレリテが、裏庭に向かう三人の行く手を遮っていた。
「アレリテさん!! 私の声が聞こえますか!!? アレリテさん!!」
「うぅ……うぅ……」
するとリーマの声に反応したのか、突然頭を抱えて唸り声を上げる。
「アレリテさん……?」
「うぅ……うごぁあああああ!!!」
「「「!!!」」」
そして次の瞬間、低い叫び声を上げ、半ば狂乱した様に目の前にいる三人目掛けて襲い掛かって来た。
「アレリテさん!!」
「無駄だリーマ!! アレリテにもう自我は存在していない!! ここで殺るしかない!!」
「で、でも……」
「辛いのは分かる!! だがここで殺らないと、俺達が殺られる事になるぞ!! そうなったら、俺達に託したマオの想いを踏み潰す事になるんだぞ!!」
「…………分かりました。私、殺ります!!」
「うごがぁあああああ!!!」
「アレリテさん……すみません!! “ウインドカッター”!!」
覚悟を決めたリーマは魔導書を開き、魔法を唱える。すると鋭い風の刃が生み出され、迫り来るアレリテ目掛けて勢い良く放たれた。
「あぐぅ!!?」
勢い良く放たれた風の刃は、アレリテの首を通り過ぎる。そして瞬く間にアレリテの首は地面へと落下し、首を切り落とされた体は俯せになって倒れるのであった。
「アレリテさん……安らかに眠って下さい……」
「よし、先へ急ぐぞ」
「…………ぐぉ」
「うん? な、何だ?」
行く手を遮る物が無くなり、先へ急ごうと倒れているアレリテの横を通り過ぎ様としたその時、切り落とされた首が俯せになって倒れている体にくっ付いた。
「ぐ……ぐ……ぐぉおおおおお!!!」
そしてゆっくりと立ち上がり、三人の行く手を再び遮る。
「おいおい、いくら治ると言っても早過ぎるだろ!!」
「それだけ、メユさんの強化が影響しているって事でしょうか!?」
「今はそんな事、どうでもいい!! 兎に角急ぐぞ!!」
「で、でも倒しても倒しても直ぐに治ってしまうんじゃ、どうしようも……」
「……オラが食い止めるだぁ」
「ハナコ……」
「ハナコさん?」
リーマとフォルスが狼狽える中、ハナコが二人よりも一歩前に踏み出した。
「オラが食い止めでいる間に、二人は先に行っでぐれだぁ」
「ハナコ……お前……」
「何も、三人で一緒に行ぐ必要なんが無いだぁ。ごの中の誰が一人が、裏庭に辿り着げれば良いんだがら……先に行っでぐれだぁ」
「ハナコさん……」
「うごぉおおおおお!!!」
ハナコを置いて、先に進むのを戸惑っていると、完全に立ち上がったアレリテが、三人目掛けて両拳を振り下ろそうとする。
「スキル“インパクト・ベア”!!」
拳が振り下ろされそうになった次の瞬間、ハナコが地面を蹴り空中へと跳んだ。そして無防備なアレリテ目掛けて渾身の一撃を叩き込んだ。
「ごぁあああああ!!!」
強い衝撃にバランスを崩したアレリテは、仰向けになって勢い良く倒れる。
「ざぁ!! 今の内に早ぐ行ぐだぁ!!」
「ハナコ……恩に着る」
「ハナコさん、ありがとうございます」
ハナコの想いを胸に、リーマとフォルスの二人は先を急ぐ。
「ぐぅ……あぁああ……」
するとアレリテは、横を通り過ぎ様とする二人の足を掴もうと両手を伸ばす。
「スキル“鋼鉄化(腕)”」
「ごぁあああああ!!?」
しかしその両手は二人の足を掴む前に、両腕を鋼鉄に変化させたハナコによって叩き潰されてしまった。
「悪いげど、二人の後は追わぜない。ごごがら先を通りだげれば、オラを倒ずだぁ」
「ぐっ……ぐぐっ……!!!」
この時、行く手を遮っていた筈のアレリテの立場が逆転する事となった。
***
「はぁ……はぁ……ふぅ……どうやらここが裏庭の様だな……」
「こ、これって……」
アレリテという肉壁を掻い潜り、何とか裏庭へと辿り着く事が出来た二人。しかしその表情は何処か暗く、決して良いとは言い難かった。
「この中から“本命”を見つけ出さないといけないらしいな……」
「で、でも……こんなにも沢山“墓石”があっては、どれが本命かなんて分かりませんよ!?」
二人がやっとの思いで辿り着いた裏庭。それは墓地であった。塀に囲まれ、短く手入れされた草の上にズラリと立ち並ぶ墓石。その片隅には一本の木が生えており、木の太い枝には紐が括り付けられ、先端に横長の板が付けられていた。所謂簡易ブランコである。そして、墓石のそれぞれに“メユ”と刻み込まれていた。
「どうやら……既に対策されていた様だな……」
「こんなの一つ一つ調べていたら、日が暮れてしまいますよ……そしたらハナコさんは……」
絶望。リーマは目の前の現実に、思わず両膝が地面に付いてしまう。
「嘆いてたって始まらない。時間が許す限り、探すしかないだろう」
「……そうですよね。こんな所で挫けていたら、マオさんやハナコさんに笑われてしまいますもんね!! 私、頑張ります!!」
「その意気だ。それじゃあ始めるぞ」
「はい!!」
フォルスに元気付けられたリーマは、やる気を取り戻した。そして二人手分けして、それぞれの墓を掘り返し始めるのであった。
「……くそっ、こっちには無い!!」
「こっちにもありません!!」
墓を掘り返す二人だが、その中には誰もいなかった。
「次だ!! 次行くぞ!!」
「はい!!」
掘る、掘る、掘る、掘り続ける。気が付けば、裏庭は掘り返された土によって酷く汚れてしまっていた。
「はぁ……はぁ……探すしかないとは言ったものの……これじゃあ切りが無いぞ……」
「はぁ……はぁ……も、もう指が限界です……」
掘るのは勿論手作業である。魔法やスキルで掘る事も出来るが、使い過ぎてしまった時に追跡者が現れた場合、対処する事が出来なくなってしまう。そうした考えを配慮しながら、手作業で掘り続けていたが、流石に限界が近付いていた。
「くそっ……どうすればいい……どうすれば…………ん?」
その時、フォルスはこの裏庭にある違和感を覚える。
「(そう言えば……どうしてこんな墓地に、ブランコなんか置かれているんだ?)」
それは純粋な疑問だった。例えどんな強靭な精神の持ち主でも、大量の墓石が並ぶ中、ブランコで遊ぶなど常識的に考えられない。
「(墓石が立てられる前に作られた? だがそれなら、もっと朽ち果てても良さそうだが……もしかして!!?)」
「フォルスさん?」
何かに感づいたのか、フォルスは慌ててブランコの側へと駆け寄る。
「…………あっ」
ブランコの側に駆け寄ったフォルスは、ブランコが括り付けられている木の周りを探し始める。すると木の影に隠れる様に、埃まみれの古ぼけた墓石が立てられていた。他の墓石と比べると非常に小さく、全く手入れはされていなかった。そしてそんな古ぼけた墓石にも、“メユ”と刻み込まれていた。
「あった……あった!! あったぞ!!」
「えっ!? 本当ですか!!?」
フォルスの大声に反応して、リーマも慌てて側へと駆け寄る。
「あぁ、恐らくこの墓の下にある筈だ」
「急いで掘り返しましょう!!」
「何を掘リ返スって?」
「「!!?」」
二人が目的と思われる墓を掘り返そうとしたその時、背後から聞き覚えのある……いや、少し異質に変化した声が聞こえて来た。途端に背筋が凍り付く。そのあまりの恐怖に、思わず唾を飲み込む。
「ソれとコれ……落チていタから、拾ってアげタわよ」
「「……!!!」」
二人が振り返るよりも早く、二人の間を物体が勢い良く通り過ぎる。物体はそのまま塀にぶつかり、地面に叩き付けられる。その物体はボロボロであり、見るも無惨な形をしていた。しかしそれは見覚えのある……いや寧ろいつも見ている物……。
「「ハナコ!!!」」
アレリテを食い止めると言って分かれたハナコ。そんなハナコが、血塗れの状態で二人の目の前に現れたのだ。二人は慌ててハナコの安否を確かめる。
「ハナコ!! ハナコ!!」
「ハナコさん!! ハナコさん!!」
「…………」
激しく揺すっても、二人が呼び掛けても反応しない。
「そんな……嘘だろ……」
「嫌ですよ……ハナコさん……こんな……こんな別れは嫌ですよ!! 目を開けて下さい!! ハナコさん!!」
「悪いんだけど、あなた達に悲しんでいる隙は無いわよ」
悲しみに暮れる中、再び背後から声が聞こえる。二人は涙を流しながらも、ゆっくりと振り返る。
「化物め……」
「許さない……許さない!!」
「許さない? それはこっちの台詞よ!!」
そこにいたのはメユだった。しかしその姿は明らかにこの世の生物では無かった。足はムカデの様に小刻みに動いており、体は蝶の様に大きな羽が生え、両手はカマキリの様に鋭く、そして顔は特に異様であり、丸い輪郭にスイカ並の大きな目玉が一つ付いているだけだった。鼻や口などの他のパーツは存在していなかった。しかし、声だけは何故か聞こえて来ていた。
「さぁ、思い知らセてアげる。圧倒的な絶望を!!」
0
あなたにおすすめの小説
無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜
黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。
ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。
彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。
賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。
地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す!
森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。
美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。
さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる!
剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。
窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる