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第三章 冒険編 私の理想郷
裏庭
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「裏庭はどっちだ!?」
「こっちです!! こっちから館の裏手に回る事が出来ます!!」
メユとソンジュの魔の手から何とか逃げ出し、館の外へと脱出する事が出来た三人。しかし一息つく暇も無く、足早に裏庭へと向かう。
「追い掛けて来ませんね……諦めたんでしょうか?」
「どうだろうな……あの女が簡単に諦めるとは思えないが……何だか嫌な予感がする。急ぐぞ!!」
「はい!!」
「分がっだだぁ!!」
一抹の不安を抱きながら、三人は館の裏庭へと回り込む。
「うがぁ……あぐがぁ……」
「「「!!!」」」
しかし、その行く手を遮る存在が目の前に現れた。目は虚ろ、口からは涎が垂れており、更に猫背で背骨が異常に発達した生物。
「アレリテさん……」
「あがぁ……ぐごが……」
それは誰であろうアレリテだった。真緒達との戦いで、メユによって肉体改造されたアレリテが、裏庭に向かう三人の行く手を遮っていた。
「アレリテさん!! 私の声が聞こえますか!!? アレリテさん!!」
「うぅ……うぅ……」
するとリーマの声に反応したのか、突然頭を抱えて唸り声を上げる。
「アレリテさん……?」
「うぅ……うごぁあああああ!!!」
「「「!!!」」」
そして次の瞬間、低い叫び声を上げ、半ば狂乱した様に目の前にいる三人目掛けて襲い掛かって来た。
「アレリテさん!!」
「無駄だリーマ!! アレリテにもう自我は存在していない!! ここで殺るしかない!!」
「で、でも……」
「辛いのは分かる!! だがここで殺らないと、俺達が殺られる事になるぞ!! そうなったら、俺達に託したマオの想いを踏み潰す事になるんだぞ!!」
「…………分かりました。私、殺ります!!」
「うごがぁあああああ!!!」
「アレリテさん……すみません!! “ウインドカッター”!!」
覚悟を決めたリーマは魔導書を開き、魔法を唱える。すると鋭い風の刃が生み出され、迫り来るアレリテ目掛けて勢い良く放たれた。
「あぐぅ!!?」
勢い良く放たれた風の刃は、アレリテの首を通り過ぎる。そして瞬く間にアレリテの首は地面へと落下し、首を切り落とされた体は俯せになって倒れるのであった。
「アレリテさん……安らかに眠って下さい……」
「よし、先へ急ぐぞ」
「…………ぐぉ」
「うん? な、何だ?」
行く手を遮る物が無くなり、先へ急ごうと倒れているアレリテの横を通り過ぎ様としたその時、切り落とされた首が俯せになって倒れている体にくっ付いた。
「ぐ……ぐ……ぐぉおおおおお!!!」
そしてゆっくりと立ち上がり、三人の行く手を再び遮る。
「おいおい、いくら治ると言っても早過ぎるだろ!!」
「それだけ、メユさんの強化が影響しているって事でしょうか!?」
「今はそんな事、どうでもいい!! 兎に角急ぐぞ!!」
「で、でも倒しても倒しても直ぐに治ってしまうんじゃ、どうしようも……」
「……オラが食い止めるだぁ」
「ハナコ……」
「ハナコさん?」
リーマとフォルスが狼狽える中、ハナコが二人よりも一歩前に踏み出した。
「オラが食い止めでいる間に、二人は先に行っでぐれだぁ」
「ハナコ……お前……」
「何も、三人で一緒に行ぐ必要なんが無いだぁ。ごの中の誰が一人が、裏庭に辿り着げれば良いんだがら……先に行っでぐれだぁ」
「ハナコさん……」
「うごぉおおおおお!!!」
ハナコを置いて、先に進むのを戸惑っていると、完全に立ち上がったアレリテが、三人目掛けて両拳を振り下ろそうとする。
「スキル“インパクト・ベア”!!」
拳が振り下ろされそうになった次の瞬間、ハナコが地面を蹴り空中へと跳んだ。そして無防備なアレリテ目掛けて渾身の一撃を叩き込んだ。
「ごぁあああああ!!!」
強い衝撃にバランスを崩したアレリテは、仰向けになって勢い良く倒れる。
「ざぁ!! 今の内に早ぐ行ぐだぁ!!」
「ハナコ……恩に着る」
「ハナコさん、ありがとうございます」
ハナコの想いを胸に、リーマとフォルスの二人は先を急ぐ。
「ぐぅ……あぁああ……」
するとアレリテは、横を通り過ぎ様とする二人の足を掴もうと両手を伸ばす。
「スキル“鋼鉄化(腕)”」
「ごぁあああああ!!?」
しかしその両手は二人の足を掴む前に、両腕を鋼鉄に変化させたハナコによって叩き潰されてしまった。
「悪いげど、二人の後は追わぜない。ごごがら先を通りだげれば、オラを倒ずだぁ」
「ぐっ……ぐぐっ……!!!」
この時、行く手を遮っていた筈のアレリテの立場が逆転する事となった。
***
「はぁ……はぁ……ふぅ……どうやらここが裏庭の様だな……」
「こ、これって……」
アレリテという肉壁を掻い潜り、何とか裏庭へと辿り着く事が出来た二人。しかしその表情は何処か暗く、決して良いとは言い難かった。
「この中から“本命”を見つけ出さないといけないらしいな……」
「で、でも……こんなにも沢山“墓石”があっては、どれが本命かなんて分かりませんよ!?」
二人がやっとの思いで辿り着いた裏庭。それは墓地であった。塀に囲まれ、短く手入れされた草の上にズラリと立ち並ぶ墓石。その片隅には一本の木が生えており、木の太い枝には紐が括り付けられ、先端に横長の板が付けられていた。所謂簡易ブランコである。そして、墓石のそれぞれに“メユ”と刻み込まれていた。
「どうやら……既に対策されていた様だな……」
「こんなの一つ一つ調べていたら、日が暮れてしまいますよ……そしたらハナコさんは……」
絶望。リーマは目の前の現実に、思わず両膝が地面に付いてしまう。
「嘆いてたって始まらない。時間が許す限り、探すしかないだろう」
「……そうですよね。こんな所で挫けていたら、マオさんやハナコさんに笑われてしまいますもんね!! 私、頑張ります!!」
「その意気だ。それじゃあ始めるぞ」
「はい!!」
フォルスに元気付けられたリーマは、やる気を取り戻した。そして二人手分けして、それぞれの墓を掘り返し始めるのであった。
「……くそっ、こっちには無い!!」
「こっちにもありません!!」
墓を掘り返す二人だが、その中には誰もいなかった。
「次だ!! 次行くぞ!!」
「はい!!」
掘る、掘る、掘る、掘り続ける。気が付けば、裏庭は掘り返された土によって酷く汚れてしまっていた。
「はぁ……はぁ……探すしかないとは言ったものの……これじゃあ切りが無いぞ……」
「はぁ……はぁ……も、もう指が限界です……」
掘るのは勿論手作業である。魔法やスキルで掘る事も出来るが、使い過ぎてしまった時に追跡者が現れた場合、対処する事が出来なくなってしまう。そうした考えを配慮しながら、手作業で掘り続けていたが、流石に限界が近付いていた。
「くそっ……どうすればいい……どうすれば…………ん?」
その時、フォルスはこの裏庭にある違和感を覚える。
「(そう言えば……どうしてこんな墓地に、ブランコなんか置かれているんだ?)」
それは純粋な疑問だった。例えどんな強靭な精神の持ち主でも、大量の墓石が並ぶ中、ブランコで遊ぶなど常識的に考えられない。
「(墓石が立てられる前に作られた? だがそれなら、もっと朽ち果てても良さそうだが……もしかして!!?)」
「フォルスさん?」
何かに感づいたのか、フォルスは慌ててブランコの側へと駆け寄る。
「…………あっ」
ブランコの側に駆け寄ったフォルスは、ブランコが括り付けられている木の周りを探し始める。すると木の影に隠れる様に、埃まみれの古ぼけた墓石が立てられていた。他の墓石と比べると非常に小さく、全く手入れはされていなかった。そしてそんな古ぼけた墓石にも、“メユ”と刻み込まれていた。
「あった……あった!! あったぞ!!」
「えっ!? 本当ですか!!?」
フォルスの大声に反応して、リーマも慌てて側へと駆け寄る。
「あぁ、恐らくこの墓の下にある筈だ」
「急いで掘り返しましょう!!」
「何を掘リ返スって?」
「「!!?」」
二人が目的と思われる墓を掘り返そうとしたその時、背後から聞き覚えのある……いや、少し異質に変化した声が聞こえて来た。途端に背筋が凍り付く。そのあまりの恐怖に、思わず唾を飲み込む。
「ソれとコれ……落チていタから、拾ってアげタわよ」
「「……!!!」」
二人が振り返るよりも早く、二人の間を物体が勢い良く通り過ぎる。物体はそのまま塀にぶつかり、地面に叩き付けられる。その物体はボロボロであり、見るも無惨な形をしていた。しかしそれは見覚えのある……いや寧ろいつも見ている物……。
「「ハナコ!!!」」
アレリテを食い止めると言って分かれたハナコ。そんなハナコが、血塗れの状態で二人の目の前に現れたのだ。二人は慌ててハナコの安否を確かめる。
「ハナコ!! ハナコ!!」
「ハナコさん!! ハナコさん!!」
「…………」
激しく揺すっても、二人が呼び掛けても反応しない。
「そんな……嘘だろ……」
「嫌ですよ……ハナコさん……こんな……こんな別れは嫌ですよ!! 目を開けて下さい!! ハナコさん!!」
「悪いんだけど、あなた達に悲しんでいる隙は無いわよ」
悲しみに暮れる中、再び背後から声が聞こえる。二人は涙を流しながらも、ゆっくりと振り返る。
「化物め……」
「許さない……許さない!!」
「許さない? それはこっちの台詞よ!!」
そこにいたのはメユだった。しかしその姿は明らかにこの世の生物では無かった。足はムカデの様に小刻みに動いており、体は蝶の様に大きな羽が生え、両手はカマキリの様に鋭く、そして顔は特に異様であり、丸い輪郭にスイカ並の大きな目玉が一つ付いているだけだった。鼻や口などの他のパーツは存在していなかった。しかし、声だけは何故か聞こえて来ていた。
「さぁ、思い知らセてアげる。圧倒的な絶望を!!」
「こっちです!! こっちから館の裏手に回る事が出来ます!!」
メユとソンジュの魔の手から何とか逃げ出し、館の外へと脱出する事が出来た三人。しかし一息つく暇も無く、足早に裏庭へと向かう。
「追い掛けて来ませんね……諦めたんでしょうか?」
「どうだろうな……あの女が簡単に諦めるとは思えないが……何だか嫌な予感がする。急ぐぞ!!」
「はい!!」
「分がっだだぁ!!」
一抹の不安を抱きながら、三人は館の裏庭へと回り込む。
「うがぁ……あぐがぁ……」
「「「!!!」」」
しかし、その行く手を遮る存在が目の前に現れた。目は虚ろ、口からは涎が垂れており、更に猫背で背骨が異常に発達した生物。
「アレリテさん……」
「あがぁ……ぐごが……」
それは誰であろうアレリテだった。真緒達との戦いで、メユによって肉体改造されたアレリテが、裏庭に向かう三人の行く手を遮っていた。
「アレリテさん!! 私の声が聞こえますか!!? アレリテさん!!」
「うぅ……うぅ……」
するとリーマの声に反応したのか、突然頭を抱えて唸り声を上げる。
「アレリテさん……?」
「うぅ……うごぁあああああ!!!」
「「「!!!」」」
そして次の瞬間、低い叫び声を上げ、半ば狂乱した様に目の前にいる三人目掛けて襲い掛かって来た。
「アレリテさん!!」
「無駄だリーマ!! アレリテにもう自我は存在していない!! ここで殺るしかない!!」
「で、でも……」
「辛いのは分かる!! だがここで殺らないと、俺達が殺られる事になるぞ!! そうなったら、俺達に託したマオの想いを踏み潰す事になるんだぞ!!」
「…………分かりました。私、殺ります!!」
「うごがぁあああああ!!!」
「アレリテさん……すみません!! “ウインドカッター”!!」
覚悟を決めたリーマは魔導書を開き、魔法を唱える。すると鋭い風の刃が生み出され、迫り来るアレリテ目掛けて勢い良く放たれた。
「あぐぅ!!?」
勢い良く放たれた風の刃は、アレリテの首を通り過ぎる。そして瞬く間にアレリテの首は地面へと落下し、首を切り落とされた体は俯せになって倒れるのであった。
「アレリテさん……安らかに眠って下さい……」
「よし、先へ急ぐぞ」
「…………ぐぉ」
「うん? な、何だ?」
行く手を遮る物が無くなり、先へ急ごうと倒れているアレリテの横を通り過ぎ様としたその時、切り落とされた首が俯せになって倒れている体にくっ付いた。
「ぐ……ぐ……ぐぉおおおおお!!!」
そしてゆっくりと立ち上がり、三人の行く手を再び遮る。
「おいおい、いくら治ると言っても早過ぎるだろ!!」
「それだけ、メユさんの強化が影響しているって事でしょうか!?」
「今はそんな事、どうでもいい!! 兎に角急ぐぞ!!」
「で、でも倒しても倒しても直ぐに治ってしまうんじゃ、どうしようも……」
「……オラが食い止めるだぁ」
「ハナコ……」
「ハナコさん?」
リーマとフォルスが狼狽える中、ハナコが二人よりも一歩前に踏み出した。
「オラが食い止めでいる間に、二人は先に行っでぐれだぁ」
「ハナコ……お前……」
「何も、三人で一緒に行ぐ必要なんが無いだぁ。ごの中の誰が一人が、裏庭に辿り着げれば良いんだがら……先に行っでぐれだぁ」
「ハナコさん……」
「うごぉおおおおお!!!」
ハナコを置いて、先に進むのを戸惑っていると、完全に立ち上がったアレリテが、三人目掛けて両拳を振り下ろそうとする。
「スキル“インパクト・ベア”!!」
拳が振り下ろされそうになった次の瞬間、ハナコが地面を蹴り空中へと跳んだ。そして無防備なアレリテ目掛けて渾身の一撃を叩き込んだ。
「ごぁあああああ!!!」
強い衝撃にバランスを崩したアレリテは、仰向けになって勢い良く倒れる。
「ざぁ!! 今の内に早ぐ行ぐだぁ!!」
「ハナコ……恩に着る」
「ハナコさん、ありがとうございます」
ハナコの想いを胸に、リーマとフォルスの二人は先を急ぐ。
「ぐぅ……あぁああ……」
するとアレリテは、横を通り過ぎ様とする二人の足を掴もうと両手を伸ばす。
「スキル“鋼鉄化(腕)”」
「ごぁあああああ!!?」
しかしその両手は二人の足を掴む前に、両腕を鋼鉄に変化させたハナコによって叩き潰されてしまった。
「悪いげど、二人の後は追わぜない。ごごがら先を通りだげれば、オラを倒ずだぁ」
「ぐっ……ぐぐっ……!!!」
この時、行く手を遮っていた筈のアレリテの立場が逆転する事となった。
***
「はぁ……はぁ……ふぅ……どうやらここが裏庭の様だな……」
「こ、これって……」
アレリテという肉壁を掻い潜り、何とか裏庭へと辿り着く事が出来た二人。しかしその表情は何処か暗く、決して良いとは言い難かった。
「この中から“本命”を見つけ出さないといけないらしいな……」
「で、でも……こんなにも沢山“墓石”があっては、どれが本命かなんて分かりませんよ!?」
二人がやっとの思いで辿り着いた裏庭。それは墓地であった。塀に囲まれ、短く手入れされた草の上にズラリと立ち並ぶ墓石。その片隅には一本の木が生えており、木の太い枝には紐が括り付けられ、先端に横長の板が付けられていた。所謂簡易ブランコである。そして、墓石のそれぞれに“メユ”と刻み込まれていた。
「どうやら……既に対策されていた様だな……」
「こんなの一つ一つ調べていたら、日が暮れてしまいますよ……そしたらハナコさんは……」
絶望。リーマは目の前の現実に、思わず両膝が地面に付いてしまう。
「嘆いてたって始まらない。時間が許す限り、探すしかないだろう」
「……そうですよね。こんな所で挫けていたら、マオさんやハナコさんに笑われてしまいますもんね!! 私、頑張ります!!」
「その意気だ。それじゃあ始めるぞ」
「はい!!」
フォルスに元気付けられたリーマは、やる気を取り戻した。そして二人手分けして、それぞれの墓を掘り返し始めるのであった。
「……くそっ、こっちには無い!!」
「こっちにもありません!!」
墓を掘り返す二人だが、その中には誰もいなかった。
「次だ!! 次行くぞ!!」
「はい!!」
掘る、掘る、掘る、掘り続ける。気が付けば、裏庭は掘り返された土によって酷く汚れてしまっていた。
「はぁ……はぁ……探すしかないとは言ったものの……これじゃあ切りが無いぞ……」
「はぁ……はぁ……も、もう指が限界です……」
掘るのは勿論手作業である。魔法やスキルで掘る事も出来るが、使い過ぎてしまった時に追跡者が現れた場合、対処する事が出来なくなってしまう。そうした考えを配慮しながら、手作業で掘り続けていたが、流石に限界が近付いていた。
「くそっ……どうすればいい……どうすれば…………ん?」
その時、フォルスはこの裏庭にある違和感を覚える。
「(そう言えば……どうしてこんな墓地に、ブランコなんか置かれているんだ?)」
それは純粋な疑問だった。例えどんな強靭な精神の持ち主でも、大量の墓石が並ぶ中、ブランコで遊ぶなど常識的に考えられない。
「(墓石が立てられる前に作られた? だがそれなら、もっと朽ち果てても良さそうだが……もしかして!!?)」
「フォルスさん?」
何かに感づいたのか、フォルスは慌ててブランコの側へと駆け寄る。
「…………あっ」
ブランコの側に駆け寄ったフォルスは、ブランコが括り付けられている木の周りを探し始める。すると木の影に隠れる様に、埃まみれの古ぼけた墓石が立てられていた。他の墓石と比べると非常に小さく、全く手入れはされていなかった。そしてそんな古ぼけた墓石にも、“メユ”と刻み込まれていた。
「あった……あった!! あったぞ!!」
「えっ!? 本当ですか!!?」
フォルスの大声に反応して、リーマも慌てて側へと駆け寄る。
「あぁ、恐らくこの墓の下にある筈だ」
「急いで掘り返しましょう!!」
「何を掘リ返スって?」
「「!!?」」
二人が目的と思われる墓を掘り返そうとしたその時、背後から聞き覚えのある……いや、少し異質に変化した声が聞こえて来た。途端に背筋が凍り付く。そのあまりの恐怖に、思わず唾を飲み込む。
「ソれとコれ……落チていタから、拾ってアげタわよ」
「「……!!!」」
二人が振り返るよりも早く、二人の間を物体が勢い良く通り過ぎる。物体はそのまま塀にぶつかり、地面に叩き付けられる。その物体はボロボロであり、見るも無惨な形をしていた。しかしそれは見覚えのある……いや寧ろいつも見ている物……。
「「ハナコ!!!」」
アレリテを食い止めると言って分かれたハナコ。そんなハナコが、血塗れの状態で二人の目の前に現れたのだ。二人は慌ててハナコの安否を確かめる。
「ハナコ!! ハナコ!!」
「ハナコさん!! ハナコさん!!」
「…………」
激しく揺すっても、二人が呼び掛けても反応しない。
「そんな……嘘だろ……」
「嫌ですよ……ハナコさん……こんな……こんな別れは嫌ですよ!! 目を開けて下さい!! ハナコさん!!」
「悪いんだけど、あなた達に悲しんでいる隙は無いわよ」
悲しみに暮れる中、再び背後から声が聞こえる。二人は涙を流しながらも、ゆっくりと振り返る。
「化物め……」
「許さない……許さない!!」
「許さない? それはこっちの台詞よ!!」
そこにいたのはメユだった。しかしその姿は明らかにこの世の生物では無かった。足はムカデの様に小刻みに動いており、体は蝶の様に大きな羽が生え、両手はカマキリの様に鋭く、そして顔は特に異様であり、丸い輪郭にスイカ並の大きな目玉が一つ付いているだけだった。鼻や口などの他のパーツは存在していなかった。しかし、声だけは何故か聞こえて来ていた。
「さぁ、思い知らセてアげる。圧倒的な絶望を!!」
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