笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第六章 冒険編 記憶の森

真緒パーティー VS ユグジィ(全盛期)(後編)

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 「スキル“ロストブレイク”!!」



 真緒が放った渾身の一撃が、ユグジィの体に直撃した。勢い良く吹き飛ばされるが、体を捻る事で体制を整え、足から着地して見せた。



 「効かないな……その程度の攻撃じゃ、俺の肉体には傷一つ付けられないぞ?」



 更にスキルを受けた箇所には、それらしい傷は付いていなかった。



 「それなら……」



 「これはどうだ!?」



 すると今度は、リーマとフォルスの二人が一斉に攻撃を仕掛けた。



 「貫け!! “ブースト”!!」



 空中にいるフォルスは、風属性魔法を付与した矢を、ユグジィ目掛けて放った。矢は目にも止まらぬ速さで、飛んで行く。



 「そして!! “スネークフレイム”!!」



 するとそれと同時に、リーマも魔導書を開き、炎の蛇を生成すると勢い良く放った。しかし狙ったのはユグジィでは無く、フォルスが放った“矢”の方だった。



 「こ、これは!!?」



 矢という物質に、炎という現象が混ざり合う。更にフォルスが施していた風属性魔法によって、炎の勢いはより激しさを増した。



 「これが!!」



 「私達の新しい合体技!!」



 「「“ブーストフレイムアロー”!!」」



 炎を纏った矢が、目にも止まらぬ速さで、ユグジィに向かって飛んで行く。



 「す、凄いよ!! いつの間にこんな技を考えていたの!?」



 「強敵に備えて、フォルスさんと前々から試してみようと、話し合っていたんです」



 「だが、まさかぶっつけ本番でやる事になるとは、思わなかったがな」



 「でも、その価値は充分あったと思いますよ」



 「……だな」



 「「いっ、行けぇえええええ!!!」」



 二人の掛け声と共に、燃え上がる矢が、ユグジィの目と鼻の先まで近付いたその瞬間!!



 「……ふん!!」



 「「!!!」」



 片手で意図も簡単に振り払われた。



 「……で?」



 「そんな……二人の合体技が……」



 「「…………」」



 「無様だな。仲間の力を合わせれば、この俺を倒せるとでも? 笑わせるな!! 所詮仲間の力など、圧倒的な力の前では、塵に等しいんだよ!!」



 「確かに……そうかもしれません……でも……」



 「あ?」



 「塵だって、積もれば山になります。それはもしかしたら、人々に大きな影響をもたらすかもしれませんよ?」



 「おんどりゃあああああ!!」



 「!!?」



 その時、ユグジィの死角からハナコが飛び出して来た。



 「ハナちゃん!!?」



 「ま、まさかあの合体技は“フェイク”!!? 本命はこの女だったと言うのか!!?」



 「ユグジィ……あなたは強い。この中の誰よりも強い。それは認めます。でも、その強さを過信している所が、弱点です」



 「理由は知らないが、お前は仲間という存在を毛嫌いしている。戦う時も、俺達四人では無く、俺やマオ、リーマ、そしてハナコなどの、一人一人と戦おうとする。だから、ハナコが背後まで近付いている事に気付かなかった。個人しか見ていないから、全体が見えていないんだよ」



 「貰っだだぁ!! スキル“インパクト・ベア”!!」



 「く、くそっ!! 間に合わない!!」



 突然の奇襲に、戸惑いと動揺を隠し切れないユグジィ。咄嗟に防御の姿勢を取るが、懐に入られた時点で最早意味を成さない。ハナコの強烈な一撃が、至近距離で直撃する。



 「ぐはぁ!!!」



 苦しい。両足が地面から離れ、ユグジィは勢い良く吹き飛ばされる。



 「こ、この程度の攻撃など、効いていないも同然……っ!!?」



 ユグジィは、吹き飛ばされながらも、ハッキリと自身の目で確認した。飛ばされた先に、真緒が剣を構えながら立っているのを。



 「スキル“乱激斬”!!」



 「ま、不味い!!」



 慌てて体を捻り、地面に着地しようとするが、時既に遅し。真緒の放った無数の斬激が、背中に直撃する。



 「あがっ!!!」



 苦しい。背中に強い衝撃を受けたユグジィは、そのまま前方に勢い良く吹き飛ばされる。



 「くそっ……立て続けに二回も攻撃を食らってしまうとは、一生の不覚……っ!!?」



 その時、ユグジィの脳裏に嫌な予感が過る。先程、後方に吹き飛ばされた為、運悪く真緒のスキルを食らってしまった。では、前方に吹き飛ばされた今は? ユグジィが前方を確認すると、ハナコが全身を鋼鉄に変化させて立っていた。



 「おりゃあああああ!!!」



 「(う、嘘だろ……これってまさか……)」



 ハナコは、飛んで来るユグジィ目掛けてタックルを繰り出した。今更、体制を整えたとしても、避ける事は不可能。出来るのは、防御の姿勢を取るだけ。しかしそれも焼け石に水。ハナコの重たい一撃が、全身に痛みを走らせる。



 「ごはっ!!!」



 苦しい。後方に吹き飛ばされたユグジィが目にしたのは、またしても剣を構えながら立っている、真緒の姿だった。



 「ふざけやがって……そう易々と、何度も食らうと思ったら大間違いだ!!」



 そう言いながらユグジィは、体を百八十度捻ると、吹き飛ばされながら真緒の方向に振り返った。そして拳を構え、真緒目掛けて突き出そうとする。



 「(地に足が着いていないから、多少威力は殺されてしまうが、この際贅沢は言えない。今はこの状況を打破する事が、先決だ!!)」



 剣と拳が届く射程距離に入った瞬間、各々攻撃を繰り出す。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 「食らえ!!」



 しかし、ユグジィの拳が真緒に届く事は無かった。その前にフォルスの放った矢が、手の甲に突き刺さった。



 「っ!!!」



 痛みから、一瞬怯んだユグジィは、そのまま真緒のスキルを食らい、再びハナコが立っている方向に吹き飛ばされる。



 「フォルスさん、ありがとうございます!!」



 「気にするな、それよりこのまま、ハナコとのコンビネーション攻撃を続けるんだ」



 「はい、分かりました!!」



 「(苦しい……苦しい……何故、何故こんな事になっている……何がコンビネーション攻撃だ……大人数で一方的に殴り合っているだけじゃないか……)」



 「スキル“インパクト・ベア”!!」



 「(痛い……痛い……苦しい……個人しか見ていない? 全体が見えていない? そうだ、その通りだ!! 仲間なんてのは、都合良く個人を縛り付ける存在なんだよ!!)」



 「来るぞマオ、そろそろ構えておけ」



 「分かってますよ」



 「(だからこそ俺は、仲間という存在を全否定し、俺という個人のみで勝利を納めて見せる!!)」



 するとユグジィは、吹き飛ばされながら両手を高く上げた。



 「何かするつもりですよ!!?」



 「心配する必要は無い。俺の矢で未然に防いで見せる」



 「うぉおおおおお!!!」



 そして高く上げた両手に拳を作ると、勢い良く自身の腹目掛けて振り下ろした。



 「「「「!!?」」」」



 「ふぐっ!!!」



 進行方向とは逆の方向から、それなりの衝撃を食らった事で、吹き飛ばされる勢いが急激に弱まった。



 「はぁ……はぁ……と、止まったぞ……」



 漸く、地に足を着ける事が出来たユグジィ。しかしそれまで相当なダメージを負ってしまい、体中が傷だらけだった。



 「不味い!! 攻撃の手を緩めるな!!」



 「はぁ……はぁ……くそったれがぁあああああ!!!」



 真緒達は、慌ててユグジィ目掛けて走り出すが、辿り着く前にユグジィは両手に拳を作り、高く上げたかと思うと、勢い良く地面に向かって振り下ろした。



 「「「「!!!」」」」



 すると地面は強い衝撃により、地割れを起こした。その結果、各々の足場は残ったが、完全に分断されてしまった。



 「皆、大丈夫か!?」



 「私達なら大丈夫です」



 唯一、空中にいたフォルスだけは逃れる事が出来た。仲間達の安否を確認する。



 「はぁ……はぁ……仲間……仲間……仲間がそんなに偉いのか……」



 「ユグジィ……」



 「…………話して下さい」



 「何?」



 「何故あなたが、そんなにも仲間を毛嫌いするのか、教えて下さい」



 仲間を大事にする真緒だからこそ、知りたかった。そこまで仲間という存在を嫌うその理由を。



 「そんな事、お前に話して何になるって言うんだ?」



 「分かりません。でも、今のユグジィはとても苦しそうに見えます」



 「そりゃな、お前達にフルボッコにされたからな!!」



 「そう言う意味で言った訳じゃありません。私が言っているのは、心の話です」



 「…………」



 「私達はこれまで、様々な人達に会って来ました。そして、その人達にはそれぞれ辛い過去や、悲しい過去がありました」



 「だから? 何だって言うんだ!?」



 「一人で抱え込まないで下さい!! 誰かに話す事で、少しでもその痛みや苦しみを和らげる事が出来るかも知れません!! お願いです、話して下さい」



 「…………」



 真緒の言葉に、しばらく黙り込むユグジィ。そしてゆっくりと口を開いた。



 「一人で抱え込まないで……か、“あいつ”と同じ事を言うんだな」



 「“あいつ”?」



 「そうさ……“あいつ”とは、今から1500年前、あの忌まわしきエルフの里で出会った……」



 語り始めるユグジィの過去。それはエルフという一族の偏った考えが生んだ、悲劇の物語であった。
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