笑顔の絶えない世界 season2 ~道楽の道化師の遺産~

マーキ・ヘイト

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第七章 冒険編 大戦争

危機的状況の回避

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 「助けに来てくれたんだな」



 「当たり前じゃないですか」



 「ヴォイスの方はどうなった?」



 「バッチリ片付けました」



 「それを聞いて安心した。皆には色々話したい事があるんだが、その前に急いでこの牢屋を出よう。今の騒ぎを聞きつけて誰か来るかもしれない」



 「そうですね。でもどうやって鍵を開ければ良いんですか?」



 「鍵なら牢番が持っている筈だ」



 「見つけました!!」



 既にリーマが牢番の持ち物を物色し、鍵の束を見つけ出していた。



 「マオさん!!」



 リーマは真緒に声を掛けると、鍵の束を投げ渡した。



 「ありがとう!! フォルスさん、今助けますからね」



 「恩に着る」



 鍵穴に鍵を差し込み、牢屋を開ける。



 「次はフォルスさんの装備を取り返さないといけませんね」



 「だが、何処にあるか分からないんだ」



 『おい、地下牢で何か物音が聞こえたぞ』



 真緒達が立てた物音を聞き付け、階段の方から兵士達が降りて来ようとしていた。



 「不味いな、これ以上騒ぎが大きくなると、ますます動きづらくなるぞ」



 「ここは私に任せて下さい。フォルスさんは一度、牢屋の中に入って下さい」



 「わ、分かった」



 「ハナちゃんも一緒に牢屋の中に入って。そして入ったら見つからない様に、フォルスさんを盾にして身を隠して貰える?」



 「了解だぁ!!」



 真緒に指示された通り、ハナコとフォルスは牢屋の中へと入り、ハナコはフォルスを盾にして身を隠した。



 「リーマは牢番を心配する振りをしておいて」



 「分かりました」



 そう言うとリーマは、気絶している牢番の側へと駆け寄り、安否を確認する振りをし始める。



 「後は私次第……」



 全員が配置に着いた数秒後、物音を聞き付けた兵士達数人が階段を駆け降りて来た。そして現状の有り様を見て、驚きの表情を浮かべた。



 「これはいったい……!!?」



 驚いている兵士達に、真緒は敬礼をしながら口を開いた。



 「ご報告します!! 連行した勇者一行の一人が突然暴れ出し、脱走してしまいました!!」



 「何だと!!? それで被害は!!?」



 「はい!! 牢番が重症を負ってしまい、連行するのを手伝っていたもう一人が安否を確認しております!!」



 真緒が考えた作戦は、連行していたハナコが暴れ出してしまい、脱走したという虚偽の情報を流す事で注意をそちらに向けさせる事であった。



 「勇者一行の一人が逃げたとなると、城の警備を厳重にしなくてはならないといけないな」



 「お、おいマオ、どういうつもりだ!? このままじゃ、余計に動きづらくなってしまうぞ!!」



 城の警備が更に強化されそうになり、焦ったフォルスは小声で真緒に問い掛ける。



 「落ち着いて下さい。全て作戦通りですから」



 「そうは言ってもな……」



 心配するフォルスを尻目に、話を続ける真緒。



 「提案なのですが、恐らくハナちゃ……勇者一行の一人は、ここにいる仲間を助けに来ると思われます。そこでこの者を囮として利用したいと考えています」



 「成る程、一理あるな。しかし、そんな勝手な行動を取れば、エイリス大司教様やリリヤ様にどやされるぞ」



 「分かっています。ですので、その許可を得る為にも、この囚人と一緒に玉座の間にいるリリヤ様にお目通りを願って来ます」



 「正気か!!? 只でさえ、一人取り逃しているのに、あまつさえ意見を申し出るなど、おこがましいにも程があるぞ!!」



 「その通りです。ですが今優先すべきなのは、脱走した囚人の確保ではないでしょうか? それが例え、上に対する不敬に当たる行為だとしても」



 「っ!!!」



 ぐうの音も出ない。ヘッラアーデにとって上に意見する事は、神に唾を吐き掛ける事と同じ扱い。故に今まで誰も意見を述べる事無く、上からの指示に盲目的に従って来た。しかし今、兵士の格好をした真緒がそれまで誰も成し得なかった事をやり遂げようとしている。本来なら止めさせるのが正しい。しかし、勇者一行の一人が逃げ出したという失態が、兵士達を精神的に追い詰めた。その結果……。



 「……分かった、お前に託そう」



 従う事を選んでしまった。自らの意思で動く兵士(真緒)に全ての責任を押し付け、出来る限り自分達に被害が及ばない様にする為。



 「ありがとうごさいます。では皆さんは、牢番の手当てをお願いします。私は同僚と一緒にフォルスさ……この者をリリヤ様の下に連れて行きます」



 そう言うと真緒は、リーマにこっちへ来る様、合図を送った。受け取ったリーマは牢番を心配する振りを止め、真緒に駆け寄る。



 「後は任せました」



 「あ、あぁ……くれぐれも失礼の無い様にな」



 「はい、勿論です」



 そうして真緒は、合法的にフォルスを牢屋から連れ出した。当然、ハナコが見つからない様に三人が盾になって必死に隠した。







***







 「まさかこうもあっさり行くとはな……」



 端から見れば杜撰としか言えない作戦であったが、実際気持ちいい位に上手く行った。しかし、それに対して真緒の表情は険しかった。



 「所詮は寄せ集めの組織って事ですよ。信じる心は大切ですけど、それによって自己判断が出来なくなるのは、本末転倒……今まで警戒していた自分が馬鹿に思えて来ました」



 「なぁ、マオはどうしてあんなに怒っているんだ?」



 「さ、さぁ……?」



 「マオぢゃん、どうじで機嫌が悪いんだぁ?」



 こういう時にハナコは役立つ。聞きづらい事でも、直球で聞いてくれる。



 「別に……只、私以外にも師匠の事を思ってくれる人達がいるんだって、今までずっと密かに嬉しく感じていたけど、蓋を開けてみればその殆どが、現実から逃げ出す為に信仰していたから、少し腹が立って……」



 「そう言う事か……相変わらず、エジタスさんリスペクトだな」



 「でもその方がマオさんらしいですけどね」



 「間違いないだぁ」



 「ほら皆、無駄話してないで先に進むよ」



 真緒のエジタスに対する強い愛情は、相変わらずだと感じる三人だった。



 「それにしても、フォルスさんの装備はいったい何処にあるんでしょうか?」



 「そうだな……俺の勘が正しければ……んっ?」



 真緒達が玉座の間に向けて廊下を歩んでいると、目線の先にリップがいる事に気が付いた。その手にはフォルスの装備一式が握られていた。



 「リップ……」



 「マオさん、やっぱりここまで来ましたか……さすがは勇者一行です」



 「リップ、これから私達はリリヤの所に向かうつもり」



 「そうでしょうね……」



 「出来ればあなたとは戦いたくは無い。フォルスさんの装備を返して、そこを通らせて欲しい」



 「えぇ、良いですよ」



 「やっぱり……戦うしかないんだ……って、えっ? 今何て?」



 何を言われたのか訳が分からず、思わず聞き返してしまう真緒。



 「だから、フォルスさんの装備は返します。その為にわざわざ持って来たんですから」



 そう言うとリップは、フォルスの装備を真緒に手渡した。



 「それじゃあ私はこれで失礼しますね。皆さん、頑張って下さい」



 「いったいどういうつもりだ? お前はリリヤに忠誠を誓っているんだろう?」



 「えぇ、勿論です。でもそれと同時に皆さんの事も信頼しているんです。リリヤ様は可笑しくなってしまわれた。もう私の知っているリリヤ様じゃない。どうか、皆さんの手でリリヤ様を元に戻して欲しいのです。あの慈悲深く優しかったリリヤ様に……」



 「……どうします?」



 「こいつの考えている事は理解出来ない。だが、こうして装備が戻って来たんだ。文句は無いさ」



 「今はリリヤの方が先決ですしね。それじゃあリップ、遠慮無く通らせて貰うよ」



 「頑張って下さい。応援しています」



 そうして真緒達は、リップの真横を通り過ぎて行くのであった。



 「……もうすぐだ、もうすぐ長年に渡る保険が適用される……くふっ」



 去り行く真緒達の背中を見つめながら、リップは不適な笑みを浮かべるのであった。
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